2012.5.7

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
遠き故郷-南相馬から神戸へ…ある家族の一年-
(制作:関西テレビ)

東日本大震災は地震や津波による被害だけでなく、原発事故による放射線への恐怖という新たな被害ももたらした。福島県南相馬市の家族は、役場に勤める父を残し、親類を頼って神戸に移り住む。将来が見通せない中、子供たちは除染作業などの復旧に当たる父親を心配する。「家族で平穏に故郷・南相馬で暮らしたい」あの日まで当たり前だった日常を夢見る被災家族の一年を追う。

<2012年5月23日(水)26時10分~27時05分>


 東日本大震災とその影響で発生した、福島第一原子力発電所の事故によって福島県から県外に避難した人は、約4万2千人に上る。それから1年が経とうという中、多くの人たちは、1日でも早く故郷へと戻りたいと考えているが、原発事故の収束に向けた動きは遅々として進まないうえ、放射性物質を取り除く除染作業も十分とは言えず、避難を続ける人は少なくない。福島第一原発の30キロ圏内の南相馬市を離れ、神戸に避難したある家族は、南相馬市職員の父親だけが地元に残った。復旧・復興への激務に疲れ、日々遠く離れた家族への思いを募らせている。また、避難した家族も、ひとり残る父や故郷への思いが頭から離れることはない。家族が再び一緒に暮らせる日はいつになるのか。
 家族の日々と南相馬市の現状を取材し、震災と原発事故からの復興について考える。

【番組内容】

 東日本大震災の直後に発生した、福島第一原子力発電所の事故。鈴木さん家族は、放射線の影響を恐れ、子どもたちを守ろうと原発から30キロ圏内の福島県南相馬市から親戚を頼って神戸に避難してきた。当初は慣れない生活に戸惑いもあったが、神戸の人たちは親切で、近所の人にもよくしてもらい、落ち着いた生活を送ることができている。
 家族にとって忘れられないのは、故郷に一人残っている父・規仁(のりひと)さんのことだ。市の土木課に勤務する規仁さんは、一人地元にとどまることを選んだ。原発の20キロ圏内に入って道路の補修作業をしたり、除染作業に従事したりと、休みもほとんどとれないまま激務に身を投じている。

 小学2年の長女・綾乃(あやの)ちゃんは、神戸の小学校にすっかりなじんだが、父親と故郷のことを思い、いつか地元の友人たちと遊びたいと願っている。
 2011年9月には南相馬市を含む、原発から30キロ圏内の「緊急時避難準備区域」が解除され、学校も再開し、市民が戻ってくるよう条件は整えられ始めた。しかし、現実には市内の放射線量は「絶対安心」といえるレベルでもない。子供たちが外で遊ぶ姿も見られない。父・規仁さんは、休みもろくにとらず、最愛の家族とも離れて必死で仕事を続けているが、復興に向けた除染などの作業は思うように進まず、市民からの厳しい言葉が届く。同じ苦しみを抱える被災者でも、市の職員に向けられる視線は厳しい。
 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の被災地・神戸。家族は、この日、神戸の復興の「灯り」に福島への思いを寄せる。
家族とともに故郷で暮らす」-特別な願いなど何もない。2011年3月11日まで当たり前だった日常の暮らしを夢見る、ある家族の一年を記録する。

藤田裕介ディレクターコメント

「“故郷に帰って、家族みんなで暮らせる日を迎えることが私たちにとっての本当の復興です”鈴木さんたちご家族と出会って間もないころにうかがった言葉です。2011年6月に、避難先である神戸市での避難者の集いが取材の始まりで、その故郷への思いを知ることになりました。自宅があるのは南相馬市の中でも、地震や津波の被害がほとんどない地域で、放射能さえなければ住める状態の家に帰れないという寂しさ。ただ一人残り、市の職員として故郷を守る、父・規仁さんへの思い。そして、その規仁さんは最愛の家族の生活を守るためにも南相馬を離れることはできないという中で、孤独を抱えていらっしゃいました。震災を経験した街・神戸で周囲に温かく迎えられ、溶け込みながらも募る故郷への思いに、私自身“どうしてこうなってしまったのだろう”というやりきれなさを感じました。ご家族が元のように暮らせる日が、1日も早く来ることを願っています」


<番組概要>

◆番組タイトル

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『遠き故郷
-南相馬から神戸へ…ある家族の一年-』
(制作:関西テレビ)

◆放送日時

2012年5月23日(水)26時10分~27時05分

◆スタッフ

語り
門田 裕(関西芸術座)
取材協力
福島テレビ
素材協力
FNN
撮影
松田博之
山本和良
高岡淳二
中靍暢子
VE
山本和良
山下隆司
森本真毅
増田弘一
俵 海太
満木寿夫
編集
片野正徳(報道映像部)
MA
中嶋泰成(テレコープ)
効果
三浦智子(テレコープ)
タイトル
谷 篤史(タイトルエイト)
プロデューサー
土井聡夫(関西テレビ)
ディレクター
藤田裕介(関西テレビ)

2012年5月7日発行「パブペパNo.12-142」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。