2011.6.29

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
大地にかける-河北潟干拓地の25年
(制作:石川テレビ放送

石川県金沢市の郊外にある「国営・河北潟干拓地」。そこでは1つだけ許されていない作物がある。それは「コメ」。水田拡大を目的に造られた河北潟干拓地は、完成間近に始まった減反政策のため、コメが作れなくなってしまった。TPPなど外圧、自給率低下への不安など、転換期を迎える日本の農業。しかし国の農業政策はコロコロ変わり、明確なビジョンが打ち出せていない。いつになれば、農家は自分の土地で自由に物を作れるのだろうか。河北潟干拓地の四半世紀を通して、日本農業の姿を見つめる。

<2011年7月6日(水)26時20分~27時15分>


 金沢市郊外にある「国営・河北潟干拓地」。東京ドームおよそ290個分と広さ1356ヘクタールの農地では、現在288戸の農家が畑を耕し、大豆や麦、それに野菜や果物など、さまざまな作物を作っている。しかし干拓地では1つだけ許されていない作物があった。それは“コメ”。「河北潟干拓地」は戦後の食糧増産と 水田拡大を目的に、1964年から工事が国により行なわれた。しかし完成を間近に控えた1970年、コメ余りとなった国内の状況を受け、国は減反政策を始めたのだった。第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『大地にかける-河北潟干拓地の25年』(制作:石川テレビ放送)では河北潟干拓地の四半世紀を通して、日本農業が抱える問題点を見つめる。

 完成までに22年、283億円あまりもの莫大な税金を投入した河北潟干拓地は当初の造成目的を失い、その後、稲作が一切できなくなった。農家はいつかコメが作れると信じ、麦・大豆、それに野菜を作ってきた。しかし湿地帯の干拓地は水はけが悪く、コメ以外の作物はうまく育たない。慣れない畑作と膨らむ借金、多くの農家が干拓地をあとにした。

 今、日本の農業は大きな転換期を迎えている。TPPなどの外圧、自給率低下への不安…。しかし政府の農業政策はコロコロ変わり、明確なビジョンは打ち出せていない。このまま減反を続けるのだろうか。いつになれば農家は自分の土地で自由に物を作れるのだろうか。河北潟干拓地の四半世紀を通して、日本農業が抱える問題点を見つめる。

 金沢市内で祖父の代から続く農家の北良久さん(64)。河北潟干拓地で農業を営む1人だ。大量生産が可能な干拓地で米を作ろうと31歳の時、干拓地に3ヘクタールの土地を2500万円で国から購入した。水田から畑作になった干拓地。それでも北さんは「いつかコメ作りができるようになる」と希望を持ち、麦や大豆、それに6年前からは加工米の栽培に取り組んできた。農地の使い方を工夫し、今ではスケールメリットを生かした農業を営み、経営も軌道に乗り始めている。

 今年は北さんにとって、大きな節目。この3月に25年間の土地代の支払いが終わり、畑が名実ともに自分のものになったのだ。しかしそれでも、自由にコメは作れず、さらに農機具などの設備投資でまだ1億円近い返済が残っている。「これからは自分の土地で効率よく、コメを中心にした農業の複合経営を目指したい」と願う北さん。しかし、河北潟でのコメ作りは規制の枠がはめられたまま。北さんは将来像を描けずにいる。北さんたち農家が、自分の土地で自由に物を作れる日は来るのだろうか。この国の農業は、いまどのような状況で、どこに向かおうとしているのだろうか。北さんたち河北潟の農家の姿から、この国の農業を見つめる。本編では、このほか干拓地で畑作に見切りをつけ果樹園を始めた農家の男性、また国の減反政策と闘い独自の道を進んだ秋田県大潟村の取り組みも紹介する。

三田村涼子ディレクターコメント

「河北潟干拓地」には、これまで収穫祭などの取材で訪れることはありましたが、歴史や規制については知る機会がありませんでした。取材を通して一番驚いたことは、農業には莫大な設備投資がかかるということです。土地や農機具に何千万円と支払い、まだ数千万円の借金が残っているという方もいらっしゃいました。しかしそれでも自分の土地で自由に作物が作れず、さらに作物の値段も下がっている…これは死活問題です。農業にまつわる問題は世界でも深刻化しています。大国の中には発展途上国の農地を買い占めて自給率の確保に努める国もあります。そのような中で日本は減反ばかりを推し進めていて大丈夫なのでしょうか。戸別保障制度もいつまで続くか保障はありません。解決策がすぐに出るとは思いませんが、番組を見てくださった方が少しでもふるさとの農業に興味を抱いていただけたらうれしいです。それが問題解決への1つのきっかけになると思います。


<番組概要>

◆番組タイトル

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『大地にかける-河北潟干拓地の25年』
(制作:石川テレビ放送)

◆放送日時

2011年7月6日(水)26時20分~27時15分

◆スタッフ

プロデューサー
米澤利彦(石川テレビ放送)
ディレクター
三田村涼子(石川テレビ放送)
撮影
中岡克也(オン・エアーとやま)
編集
大竹真利(フリーランス)
構成
関 盛秀(フリーランス)
MA
大川育三(東海サウンド)
ナレーション
多田木亮佑(クリアレイズ)

2011年6月29日発行「パブペパNo.11-145」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。