2011.5.25

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
先生は桃太郎 ~障害者野球は福祉じゃない!~
(制作:岡山放送

障害がある人にも楽しめるように少しだけルールを変えた、障害者野球。
岡山県にもただ一つある障害者野球チーム「岡山桃太郎」。
下は中学生から上は70代までさまざまな年代の選手が一緒に練習を続けている。
ここに、左腕だけでボールを操る若きエースが入団し、優勝を目指すチームへと変化していく。エースとチームメイトの6年間の心を交流を追ったドキュメンタリー。

<2011年6月1日(水)26時20分~27時15分放送>


 岡山県にある障害者野球チーム「岡山桃太郎」に出会ったのは、今から6年ほど前。左腕だけでボールを操る少年を初めてテレビのメディアで放送したのが、私たちOHK岡山放送のスタッフだった。少年の父親は、大きくメディアに取り上げられると、彼に悪影響があるのではないかと、当初、取材を拒否。しかし、父親への手紙や電話、家族の理解を求めて、ようやく、少年の取材が始まった。野球にひたむきな少年とその家族を通して、彼らが関わる障害者野球の魅力を伝える取材は、6年にわたった。第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『先生は桃太郎~障害者野球は福祉じゃない!~』(制作:岡山放送)は、この左腕だけでボールを操る若きエースとチームメイトの6年間の心を交流を追ったドキュメンタリー。

 もともと、明るく、活発な少年は、自らの障害をハンディキャップと言わなかった。少年は、小さいころから健常者の中で育ち、何でもこなせるように成長した。野球においても、高校の軟式野球の全国大会で優勝に貢献するほどの実力を持っていた。しかし、少年の両親は、そんな息子がいつかは、社会の中で壁にぶつかると危惧している。両親は、その時を見据えて、障害者野球の中で何かを学んでほしいと願いを込めた。しかし、息子は、高校野球も大学の野球も障害者野球も同じ野球だと反発する。障害のある本人と、障害のある子を持つ親の気持ちのギャップ…。障害者野球について、親子で議論する場面は、障害とは何かを考えさせられる瞬間だ。

 下は中学生から、上は70代まで、障害者野球チーム「岡山桃太郎」のチームメイトは、幅広い年代でさまざまな障害や事情をかかえる人たちがいる。選手たちは、これまで、いきがいや体力づくりで満足してきたが、そんなチームが、少年の入団で大きく変わっていく。勝つことが全てだった少年にふりまわされる選手の中には、ハードな練習についていけず、引退を余儀なくされた選手もでるほどだった。しかし、メンバーは、少年を歓迎し、必要な存在だと言った。選手たちは、少年のお陰で、大きな夢を持つこともできた。逆に、少年は、大学生へと成長する中で、将来「教師」になるという夢を見つけた。障害者野球には、少年が、教師になって子供たちに伝えたいと思う、何かがあったのだ。自分の夢を見つけたり、生きがいを見出したり、障害者野球には、何かがあると少年も気が付いていた。障害者野球には世知辛い今の世の中で見失われている大切なものがある。そんなぼんやりとした何かを伝えていければいいと考える。さらに、東日本大震災の起きた今年、どんな困難に遭おうとも、前向きに人生を切り開くことで、幸せを見つけることはでき、再び人生を歩み出すことができるということをぜひ訴え、生きることの素晴らしさについて考えてほしいと願うばかりだ。

竹下美保ディレクターコメント

 この番組はいわゆる障害者ものではありません。ナレーションでは、1回も、主人公が障害者だと言っていません。野球を通して成長した青年とチームメイトの絆を描いた物語です。ただ、6年間追いかけた青年は魅力的でした。21歳で将来の夢をみすえ、努力を続け、両親に感謝し、後輩を育てる。まさに優等生でした。しかし、私達は、彼の中にある、表向きでは出せない本音を聞き出すこと、苦脳する姿を探り、彼の発する言葉の重みをいかに伝えるかにこだわりました。障害者野球は福祉じゃない! という副題は、彼らにしか言えないメッセージでした。障害とは何か、障害者とは、健常者が作り出したものなのではないかを考えてほしい…、そして青年が決して辞めるといわない、障害者野球チームには、今の世の中に少なくなった、人の絆や必要とされていることを実感する居場所などがあるのではないかと感じます。


<番組概要>

◆番組タイトル

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『先生は桃太郎
  ~障害者野球は福祉じゃない!~』
(制作:岡山放送)

◆放送日時

2011年6月1日(水)26時20分~27時15分

◆スタッフ

プロデューサー
岡阪美佐夫(OHK岡山放送報道部)
ディレクター
竹下美保(OHK岡山放送報道部)
構成
梅沢浩一
ナレーター
竹下美保
撮影
浦上順司(OHKエンタープライズ)
渡辺 敦
松本雅司
鴨井 勝
大山賢太
MA
下村真司
CG
加藤裕理
小幡珠希

2011年5月24日発行「パブペパNo.11-106」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。