2010.11.15

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
わが子が家にやってきた~里親制度が結ぶ新しい絆~
(制作:テレビ西日本)

番組では、「家族」になっていくいくつかの「里親家庭」を取り上げる。<T家の場合> これまで「里親」として認可されていたT家は、今年2月、「グル-プホーム」の認可を受け、預かることができる子どもたちの数が増えた。T家の里子は、身体や心に障害や問題をもった子どもたちが多い。T家の「里親」はなぜそのような子どもたちを預かるのか? その背景には、かつて生死の境をさまよった、T家の里親のある過去があった…。

<2010年11月19日(金)27時5分~28時放送>


2009年1年間の児童虐待件数は、全国で4万4千件と史上最悪を記録した。相談する相手もなく孤立する母親たちと、苦しみに耐える子どもたち。最近の研究で、虐待を受けた子どもたちの脳は委縮し、視覚、聴覚への影響が出てくることが解明されつつある。また、被虐待児の多くが非行や犯罪に走るケースが少なくないこと、そして親になっても虐待を繰り返し、負の連鎖が続いていくこともわかってきた。終わらない虐待…。その連鎖が続く。第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『わが子が家にやってきた~里親制度が結ぶ新しい絆~』(制作:テレビ西日本)では里親と里子の関係を通して血縁関係を越えた「新しい絆」を見つめる。

 かつて、日本には“里親”という制度が半ば当たり前のようにあった。現代ではあまり耳にすることはなくなったが、今も制度として残っている。里親制度とは、親の病気などさまざまな理由により家庭で養育できない子どもを、都道府県から委託された里親が、家庭で養育する制度で、児童福祉法により定められている。決してボランティアや篤志家がやっているわけではない。社会的養護が必要とされる児童が増加するなか、里親があらためて注目されている。

 虐待の温床ともいえる母親の孤立とともに大きな問題となっている、子どもの孤立。現在、日本では約4万人の子どもがさまざまな事情で親と暮らすことができていない。そして、その数は年々増加している。その子どもたちの9割以上が児童養護施設で生活し、残りの1割が里親のもとで暮らしている。昨年4月に一部改正された「児童福祉法」でも里親支援が強化され、当時の鳩山内閣の「子ども手当の増額」など、ようやく社会が、大人が、子どもたちに本気で目を向け始めた。また、欧米の先進国では「施設擁護」よりも「里親養育」が一般的となっている。人格を形成する大事な幼少期は、「家族」として「家庭」の中で養育するという考え方が歴史の中でも培われてきたのだ。「家庭」を知らずに育った子どもたちは、大人になっても「家族」を作ることが上手ではない。虐待や育児放棄をする親の多くが「両親から抱きしめてもらった記憶」がないのも事実だ。そのような子供たちが世代を超えて連鎖していく。

 今の時代、「子育て」と言うと「実子」「血のつながった子ども」を育てるという思考になっている。しかし、古来日本には、実子だけでなく、地域の子どもを育て面倒を見る文化が存在した。「名付け親」「後見人」は、その名残でもある。現在は、里親問題を「親の愛に恵まれない子どもの養育問題」として扱っているが、今後は、そのような枠を超えて、「育児全般」を問い直す必要があるのではないだろうか? ちょっと想像力を広げ、里親の拡大から育児支援の拡大というレベルまで深めていくことができれば、もっと日本は住みやすく、いい国になるのではないだろうか。本ドキュメンタリーでは、さまざまな「家族」になっていく「里親・里子」を紹介する。そこには血縁関係を越えた「新しい絆」があった。家族とは何なのか? 血のつながりとは何なのか? 里親と里子の関係にこれからの「家族」の在り方を示すヒントがあるはずだ。

正木伸一郎プロデューサーコメント

 今回の取材で最も関係者が悩んだこと、それは「子どもたちの顔を隠すかどうか」ということでした。モザイクのもつ印象が、一般の人が「里親・里子」に抱く「モヤモヤ感」を象徴しているように思えます。「子どもたちの笑顔を見てほしい、普通の子どもと何ら変わらない、ただ、親とのめぐり合わせが悪かっただけで、子どもたちには何の責任もない」と、取材対象者の里親は涙ながらに語りました。しかし、まだまだ「里親・里子」への偏見や差別が残る間は、モザイクが消えることはありません。番組制作者、そして、里親問題に関わる全ての人たちの願いは、里子の子どもたちの「笑顔」を伝える日が一日も早く来ることです。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『わが子が家にやってきた~里親制度が結ぶ新しい絆~』
(制作:テレビ西日本)

◆放送日時

2010年11月19日(金)27時5分~28時

◆スタッフ

プロデューサー
正木伸一郎(テレビ西日本報道制作局報道部)
ディレクター
有隅俊治(TNCプロジェクト)
ナレーター
田久保尚英(テレビ西日本アナウンサー)
出口麻綾(テレビ西日本アナウンサー)

2010年11月15日発行「パブペパNo.10-219」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。