2010.8.19

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『二つの祖国の間で…－アミーゴ教室から見たニッポン－』
（制作：テレビ新広島）

世の中の波に翻弄されながらも固いきずなで結ばれている子どもたち。
日本の経済を支えてきた外国人労働者を巡る問題について考える。

＜2010年9月3日（金）27時40分～28時35分放送＞

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　広島県安芸郡海田町。自動車関連工場が集まるこの町は、県内で最も外国人の割合が高い。入国管理法の改正後、日系外国人が仕事に就き、定住することが可能になったが、2008年暮れ、急激な景気の悪化が外国人労働者を襲った。外国人児童の増加に伴い設置された海田東小学校の日本語学級「アミーゴ教室」にも変化が訪れた。第19回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『二つの祖国の間で…－アミーゴ教室から見たニッポン－』（制作：テレビ新広島）では、世の中の波に翻弄されながらも固いきずなで結ばれている子どもたち、日本の経済を支えてきた外国人労働者を巡る問題について考える。

　広島県安芸郡海田町。自動車の関連工場が集まるこの町は、県内で最も外国人の割合が高い町だ。その多くが日系ブラジル人。バブル期にわいた1990年。3K職場と言われた製造業の人手不足を解消しようと入国管理法が改正され、日系外国人が仕事に就き定住することが可能になった。海田町でも1991年ごろから日系のブラジル人やペルー人が生活するようになる。以来、彼らは派遣労働者として労働力不足に陥っていた町の産業を下支えしてきた。しかし、2008年暮れ、急激な景気の悪化が外国人労働者を襲った。

　そんな町の一角にある海田東小学校。全校児童の1割近くが外国籍というこの学校には、「アミーゴ教室」と呼ばれる日本語教室がある。しかし、景気悪化後、「アミーゴ教室」にも変化が訪れる。不況の影響で帰国や転校を余儀なくされる子どもたちが増えたのだ。

　小学6年生の泉サチエ（いずみ　さちえ・12歳）さんとタハラ　ジャナイナさん（12歳）は日系ブラジル人。同じクラスの2人はいつも一緒だった。しかし、不景気のあおりを受けた泉さんの母は職を失い、母国へ帰国するか迷っていた。泉さんの母はつぶやく…「子供ら、日本好き。私も好き…」。一方、タハラさんの母は、「娘は日本で最後まで学んでほしい」という強い希望を持ちながらも、いつ自分が解雇になってしまうか…という不安を抱えていた。

「人員削減」「契約解除」「派遣切り」…。

　帰国を余儀なくさせられた家族が増え、アミーゴ教室の児童が減っていく中、担任の先生たちも「このままいったら、どうなるんじゃろ…」と不安の色を隠せない。そんな中、ペルーから来日したばかりのコサカ　カルロス君（6歳）がアミーゴ教室に入ってきた。日本語が全く話せないカルロス君の心は、不安でいっぱいだった。

　舩山ダニロ（ふなやま　だにろ・31歳）さんは息子と娘と妻との4人暮らし。ダニロさんの先祖は、100年前、日本からブラジルに移民した日本人の一人だった。その子孫が、今、再び日本の土を踏み、日本で生活している。「ブラジルでは日本人。日本では、ブラジル人。自分は頑張って勉強をして、日本人になりたい…」舩山さんは日本で生活するために、日本語の勉強を始めた。そして息子は、この春、海田東小学校に入学し、アミーゴ教室にまた新たな仲間が加わった。
　アミーゴ教室を取り巻く、「別れ」「出会い」「友情」。世の中の波に翻弄されながらも固い絆で結ばれている子どもたち。

　1908年に始まったブラジルへの移民。日本から夢を抱きブラジルへ渡った移民の子孫が100年経った今、祖父や祖母の祖国である日本で夢を抱き、働いている。今、日本という国は、彼らにどのように映っているのか。日本の経済を下から支えてきた外国人労働者を巡る問題について考える。

船田興起ディレクターコメント

　私が最初に作ったニュースの特集が、海田町に住む日系ブラジル人の青年の話でした。9年前のことです。それ以来、彼らは、私にとって気になる存在でした。リーマンショック以降、日系外国人が大量解雇されている事を知り、憤りを感じました。 「人が足りない時には呼ばれ、必要なくなるとクビになる」雇用の調整弁として扱われてきた日系外国人。そこには家族がいて、生活があるのです。しかし、日系外国人が働く中小零細企業の話を聞くうちに、この問題の根深さを感じます。
　自分は、この番組で何を伝えようとしているのか？　自問自答の日々でした。取材を重ねる中で聞く、片言の日本語で訴える思いが胸に刺さります。自分とは関係のない外国人の話ではなく、身近な問題として感じてもらえれば…という思いです。