2010.6.25

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
明日が見えない ~男が直面する老老介護~
(制作:岡山放送

全国で増え続ける男性介護者は約100万人。
その4割は70歳以上の「老老介護」と言われていれる。
現役時代は仕事に明け暮れ、近所づきあいも薄い男性たち。
先の見えない介護に直面した時、何を支えとしたらいいのか?
2人の男性介護者に密着し、超高齢化社会で拡大する
「男性の老老介護」という断面に迫る。

<2010年6月25日(金)27時30分~28時25分放送>


 全国で増え続ける男性介護者の数は約100万人。そして、そのうち4割は70歳以上の「老老介護」となっている。6月25日(金)27時30分~28時25分放送の第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『明日が見えない ~男が直面する老老介護~』(制作:岡山放送)は、2人の男性介護者に密着し、超高齢化社会で拡大する「男性の老老介護」という断面に迫る。

 岡山県倉敷市の森一彦さん(71)は、認知症になった妻・頼子さん(71)の介護を15年続けている。頼子さんは寝たきりで言葉を発することも出来ない。一人息子は独立し、夫婦2人だけの生活。不慣れな家事に追われながら、単調な日々が続く。わずかな楽しみはイチローが出場するメジャーリーグのテレビ観戦。気分転換に月に一度、近くの山を散策していることは誰も知らない。4月、頼子さんが突然体調を崩し入院した。自分で料理して一人で食べるのはいつものことだが、家の空気が変わったように感じる。森さんは一度だけ、すべてを投げ出したくなったことがある。頼子さんが部屋で大便をし始め、汚物を家じゅうに塗りたくるようになった時だった。自身も心臓の病気を抱え、この先介護ができなくなったら…。この問いに森さんは、玄関に置いている灯油タンクの意味を話してくれた。
 同じ倉敷市に住む牧野洋一さん(68)は母・綾子さん(89)の介護を始めて4年目。介護を始めた時、親身になってアドバイスしてくれたのが、同じ介護の経験を持つ高校時代からの友人夫婦だった。隣に住む幼なじみの女性もおすそ分けしてくれたり、気にかけてくれている。牧野さんは毎月1週間、綾子さんをショートステイに預けて、倉敷を離れなければならなかった。埼玉県の自宅に一人残してきた妻も体調が思わしくなかったからだ。遠く離れた妻と母の面倒…。牧野さんは愛用のノートに「神様から与えられた試練に乗り越えられないことはない」と記している。

 介護保険制度は導入から10年が経過した。超高齢化社会の到来に備え、家族で支える介護から社会全体で支える介護へのシフトが狙いだった。しかし、訪問介護やデイケアなど、重点が置かれたのは介護される側のケア。介護する側のケアは見落とされてきた。
 そんな中、年々増え続けてきた男性介護者は今、全国に約100万人。そのうち4割が70歳以上の「老老介護」となっている。不慣れな家事に追われ、いつまで続くかわからない不安な毎日…。ある専門家の調査研究によると、1998年から2003年までの介護保険制度導入前後の6年間に起きた介護殺人の件数は198件で、加害者は男性が4分の3と圧倒的多数を占めている。
 去年1月、岡山市で94歳の母親が当時68歳の長男に首を絞められ殺害された。母親は寝たきりで、自力で食べ物を飲み込むことも出来ない状態だった。長男は11年間、妻と一緒に介護を続けていたが、その妻にも認知症の症状が出始めていた。検察の取り調べに対し長男は、「母を殺せば、様子のおかしい妻も楽になると思った」と供述している。長男の献身的に介護する姿は近所でも評判だったが、事件に至るシグナルには誰も気づいていなかった。
 森さんと牧野さんはこの事件を一体どう受け止めたのか? 男性介護者の胸の内が明かされる。

新田俊介ディレクターコメント

 まだ20代半ばの私にとって、「介護」というテーマはあまりにも縁遠いものだと思っていました。しかし、それが間違いだと気付いたのは今回取材させていただいた2人と出会ってすぐのことでした。想像していた安らかな老後…しかし、それは突然やってくるのだと、2人は私に話しました。
特別な趣味もなく、単調すぎると言っていいほど単調な毎日。その何げない日常の中で、男性介護者は一喜一憂しながら介護を続けています。森さんに「今一番したいことは?」と聞いた時、返ってきた「元気になりたい」という一言。あまりに強烈な言葉でした。
 今や世界一の長寿国となった日本。しかしその裏では介護に直面する人が確実に増え続けているのも事実です。もし介護に直面したら…この問いを自分に投げかけながら番組を見ていただければと思います。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『明日が見えない ~男が直面する老老介護~』
(制作:岡山放送)

◆放送日時

2010年6月25日(金)27時30分~28時25分

◆スタッフ

プロデューサー
塚下一男
ディレクター
新田俊介
構成
高橋 修
ナレーター
竹下美保
撮影・編集
菊井晴美
制作
岡山放送

2010年6月25日発行「パブペパNo.10-121」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。