2010.6.7

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
揺れる鉄路~秋田内陸線元気再生プロジェクト~
(制作:秋田テレビ

1989年4月1日、秋田県を南北に結ぶ「秋田内陸縦貫鉄道」が全線開業した。
沿線住民にとっては悲願の開業であったが、
地域の過疎化と車社会の広がりが瞬く間に利用客を減少させた。
「秋田内陸線」の存続に向けて、さまざまな活動をする沿線の人たちの姿を紹介しながら、鉄路の行く末を考えていく。

<2010年6月11日(金)26時50分~27時45分放送>


 1989年4月に全線開業した、秋田県を南北に結ぶ「秋田内陸縦貫鉄道」は、沿線住民にとって悲願の開業であった。しかし、地域の過疎化と車社会の広がりが、瞬く間に利用客を減少させた。6月11日(金)26時50分~27時45分放送の第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『揺れる鉄路~秋田内陸線元気再生プロジェクト~』(制作:秋田テレビ)は、「秋田内陸線」の存続に向けて、さまざまな活動をしている沿線の人たちの姿を紹介しながら、鉄路の行く末を考えていく。

 1989年、平成元年4月1日。秋田県南北に結ぶ、総延長94.2キロメートルの「秋田内陸縦貫鉄道」が全線開業した。この「秋田内陸線」は、北を走る旧国鉄時代の「阿仁合線」と、南の路線「角館線」を引き継いだもので、第3セクターの「秋田内陸鉄道株式会社」が経営している。
 ところが、年々進む地域の人口減少や少子高齢化、そして自家用車の普及などにより、利用客は激減。開業当時、年間100万人が利用していたが、現在は半数以下の48万人にまで減っており存続が危ぶまれている。そこで、地元では「内陸線を守る会」「存続を考える会」などさまざまな団体が結成され、鉄路の存続を求めて沿線住民が乗車運動に力を入れてきたが、思うように赤字は解消しなかった。
 2008年、秋田県が「内陸線」に対してひとつの方向性を打ち出した。それは、2012年度までに目標とする赤字解消ができなければ、「内陸線」の廃止を検討するというもであった。「存続」か「廃止」か。岐路に立たされた「内陸線」では、再び乗車運動の呼びかけが始まった。
 こうした中、昨年秋に国の「地方の元気再生事業」の予算をもとに、「秋田内陸線沿線地域元気再生プロジェクト」が立ち上がった。プロジェクトは、沿線の仙北市と北秋田市、それに民間の代表らが加わり、20人がチームを作った。チームの会長は、地元仙北市田沢湖でデザイン事務所を経営する、三浦陽一さん(56歳)。三浦さんは、これまでも地域おこしのために運動を続けてきたが、あくまでも仙北市周辺を視野に入れたもので、「内陸線」を考えたものではなかった。

 三浦さんたちは、「沿線にモデル駅を作り、コミュニティの拠点とする」「地元の観光資自然資源などのネットワークを図り、滞在・滞留型の観光を進める」「地域コーディネーターの育成を図り、ボランティアとの連携を強化していく」という3つを大きな柱に、存続活動をスタートさせた。チームの中には、「グリーンツーリズム」の普及に努めている、藤井けい子さんもいる。藤井さんは、14年前に秋田県で初めての「農家民宿」を経営した人だ。今では、グリーンツーリズム西木研究会の会長として活動を広げている。また、「内陸線」のマスコットキャラクターをデザインした、イラストレーターの長牛寿子さんは、マスコットの「ないりっくん」を主人公にしたオリジナル絵本を作り続けており、定期的に子どもたちに読み聞かせをしている。
 こうした沿線の取材を進める中、今年2月、秋田県はこれまでの存続の猶予期限をつけた方針を変えることを明らかにした。昨年6月に新しい秋田県知事となった佐竹敬久知事は、公的な支援で持続的に存続させることを決めたのだ。その内容は、新年度から秋田県が1億円、沿線両市で1億円を負担するというものだが、会社の赤字額を2億円以下に減らすことが条件となっている。現実的には、かなり厳しい条件を突きつけられたわけだが、会社側は何とかこの数字を達成するべく新年度の体制作りを図っている。
 公的支援で「存続」が決まった「内陸線」だが、未来永劫(えいごう)存続が決まったわけではない。プロジェクトは3月で解散したが、三浦さんたちは、今後NPO法人を立ち上げ、さらに「内陸線」の活性化を進めていくことにしている。
 番組では、「内陸線」の存続に向けて、さまざまな活動をしている沿線の人たちの姿を紹介しながら、鉄路の行く末を考えていく。

相川克哉プロデューサーコメント

 1989年、「秋田内陸線」全線開業式典のとき、私は記者として現場にいました。それから20年の間、毎年のように鉄路の存廃が問われてきたわけですが、去年の秋から国の補助事業を受けて、新たな存続運動につながる事業が始まったことを知りました。利用客は、開業当時の年間100万人から、48万人まで減っていました。会社の赤字も2億円を超えていました。この時点では、秋田県は2012年度を一区切りに、廃止を検討するという考えでした。この事業次第では、再び沿線の存続運動が盛り上がり、鉄路の延命になるのかもしれないと考えました。結果、この運動が直接影響したわけではありませんが、秋田県は、公的な支援で持続的な存続をしていくことを決めました。取材期間は、実質今年の1月から5月はじめまででしたが、主人公とした三浦さんの活動を通して、私自身も、内陸線を考える良い機会になったと考えています。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『揺れる鉄路~秋田内陸線元気再生プロジェクト~』
(制作:秋田テレビ)

◆放送日時

2010年6月11日(月)26時50分~27時45分

◆スタッフ

プロデューサー・ディレクター・構成
相川克哉
ナレーター
管 奈央子(報道部ニュースキャスター)
撮影
野村敬明
三宅伸介
菊池誉啓
清水 聡  他

2010年6月4日発行「パブペパNo.10-104」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。