2009.12.2

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『聴覚障害偽装事件』
(制作:北海道文化放送)

虚偽の診断により身体障害者手帳が不正に取得されたとして、北海道で900人近くが手帳を返還した聴覚障害偽装事件。返還者の多くは芦別市、赤平市など旧産炭地に暮らす高齢者で、知人などから誘われ札幌で診断を受けて手帳を取得し、障害年金などを不正に受給していた。障害者福祉を食い物にしたこの大規模な偽装事件には、虚偽の診断をしたとされる医師、手続きを代行した社会保険労務士、患者と医師の間を取り持った仲介役など、さまざまな立場の人間がかかわっている。番組では、手帳返還者への徹底取材で、偽装の実態を検証すると共に、不正を見過ごしてきた行政の問題点を浮き彫りにする。

徹底取材で、偽装の実態を検証すると共に、不正を見過ごしてきた行政の問題点を浮き彫りにする!!

<2009年12月4日(金)深夜3時35分〜4時30分>


 2007年12月、障害福祉を食い物にした前代未聞の疑惑が発覚した。札幌の耳鼻科医が、長年にわたって聴力がある患者に対し聴覚障害で最も重い2級にあたるとして虚偽の診断書を作成し、不正に身体障害者手帳を取得させていた疑いだ。聴覚障害2級に認定された人は、医療費や税金、公共交通費などで助成措置が受けられるほか一部には障害年金を支給されていた人もいた。
 疑惑発覚後、医師の診断を受けていた900人近くが手帳を返還したが、その多くは芦別市や赤平市など、かつての産炭地に暮す高齢者だった。
 担当の記者はかつて住友系の炭鉱があった赤平市の返還者のもとを訪ね歩き、話を聞き取ろうとするが、閉じられた地域社会の中で返還者たちの共犯意識が高い壁となり取材は難航する。
 一方で当事者の医師は「診断は正しい。患者らが自ら詐病した」と主張。また600人以上の患者の手帳の申請手続きを代行した社会労務士も「一部の患者がうそをついた」など、責任を手帳返還者に押し付けようとしていた。
 さらに北海道をはじめ各自治体は「自分たちは税金をだまし取られた被害者だ」として手帳の返還者にこれまで受け取っていた医療や税金の助成費を返すよう求めていく方針を決める。

 

 こうした中、返還者たちは記者の取材に徐々に重い口を開き始める。手帳を取得した人の多くは、もともと耳の悪い人が多く、「医療費が安くなるから」と誘われ軽い気持ちで診断を受けていた人が多かった。中には不正行為に巻き込まれたことを事件の発覚まで知らず、手帳を返還した後も罪の意識にさいなまれ、自殺さえ考えている人もいた。
 また事件の背景に、旧産炭地の歴史的経緯や手帳の交付権限を持つ道のチェック機能の甘さなどがあることも明らかになってきた。
 メディアの取材を拒否し続けてきた渦中の医師に記者はインタビューを敢行し、返還者たちの思いを代弁して「虚偽の診断をしたという認識が本当になかったのか」など質問をぶつける。記者の気迫に押され医師は、立件まで秒読みといわれる段階の中、ついにカメラの前で語り始めた…。

【涌井寛之ディレクターコメント】

 2009年6月11日、診断をしていた札幌の医師が逮捕されました。番組の放送からおよそ10日後のことでした。2007年冬に地元紙のスクープから発覚したこの事件。当時1年生記者だった私は先輩記者と旧産炭地を歩き回りました。取材ではできるだけ多くの当事者に取材することを心掛けましたが、手帳取得者の多くが「もう終わったこと」と口を閉ざし、玄関先で怒鳴られることもありました。それでも、1年以上にわたる取材の中で少しずつ証言は積み上げられたのです。番組は声なき彼らの記録でもあります。この事件で不正受給された年金や医療助成金は10億円を超えましたが、返還は道半ばです。これからも取材を続けていきたいです。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『聴覚障害偽装事件』
(制作:北海道文化放送)

◆放送日時

2009年12月4日(金)深夜3時35分〜4時30分

◆出演

ナレーション
菊池英登
松本裕子

◆スタッフ

プロデューサー
吉岡史幸(北海道文化放送)
ディレクター
涌井寛之(北海道文化放送)
カメラマン
川上 敬(ノーステレビ)
編集
浜潟 淳(オーテック)
音効
早川歩希(スポット)

2009年12月3日発行「パブペパNo.09-299」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。