2009.11.19

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
それでも私たちは産みたい
   〜南の島の産声を守れ〜

(制作:鹿児島テレビ

「私の赤ちゃんは、どこで産めば?」
産科医の減少は出生率トップを誇る鹿児島県の「子宝の島」をも直撃している。
現実を受け止めながらも“産声”を守りぬこうとする、種子島・徳之島・喜界島の島民の動きを追いかけるとともに、恵まれない環境の中でも、2人、3人と産み、育て続けたいと願う、島々の女性たちの切実な“声”を伝える。

<2009年11月20日(金)深夜3時35分〜4時30分放送>


 2009年11月20日(金)深夜3時35分〜4時30分放送の、第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『それでも私たちは産みたい 〜南の島の産声を守れ〜』(制作:鹿児島テレビ)は、産科医減少という現実を受け止めながらも、“産声”を守り抜こうとする種子島、徳之島、喜界島の島民の姿を追いかけるとともに、恵まれない環境の中でも子供を産み、育て続けたいと願う島の女性たちの切実な“声”を伝える。
 子供たちの元気な声が響き笑顔が輝く鹿島県の南の島々。2009年1月に厚労省が発表した「全国市区町村別出生率」上位20位の半分は、鹿児島県の離島が占めるほど、「子宝の島」ばかり。しかし、決して赤ちゃんを産みやすい訳ではない。南北およそ600キロに広がる鹿児島県には28の有人離島があり、全国一の離島人口を抱えるが、産婦人科医院など、島で赤ちゃんを産める場所があるのは5つの島だけ。23の島で出産する場所がないのだ。女たちは、海を渡り、かわいい我が子や家族と離ればなれになって、赤ちゃんを産む「島外出産」を余儀なくされている。
 喜界島に住む武恵美さん(23)は、島外から定期検診のためやってきた産科医に、突然、切迫早産の恐れがあるため入院が必要だと告げられる。しかも、海を隔てた奄美大島の病院で…。喜界島には、常駐の産科医がいないからだ。かつて町営の助産院「母子センター」があったが、今は赤ちゃんを産める場所もない。喜界島から奄美大島へは、飛行機でわずか15分。船では2時間かかり、妊婦たちは異常が分かれば、「飛行機」に乗って病院へ行く。1人入院生活を送る恵美さんは「帰りたい」と涙を流す。
 榮貴子さん(31)は、2人目の赤ちゃんを妊娠中だが、お腹が大きくなるにつれ、ある悲しい出来事を思い出す。同級生が胎盤早期剥離で亡くなったのだ。母子死亡…。喜界徳洲会病院に産科があった2002年の事。その後、喜界島から産声は消えていった。
 いま出産できる島も、危機と隣り合わせだ。全国市区町村別出生率」上位ベスト3を独占した「徳之島」でさえ、例外ではない。長年産声を支えてきた民間病院の産科が休診、出産できる場所は徳之島徳洲会病院のバースセンター1カ所になってしまった。しかし、このバースセンターも、実は2005年に産科医の突然の退職により、4人の助産師たちが立ち上げた助産院が母体だ。現在1人の産科医が県外から赴任しているが「いつ、この島もドクターがいなくなるか…」助産師は不安を募らせる。
 県本土に近い種子島でも、2007年、唯一の産科医院が年内での休診することになった。民間の産科医院、たった1人の産科医で年間250件のお産に立ち会ってきたが、「毎日が綱渡り」もう限界だという。「私たちの赤ちゃんはどこで産めば?」女性たちに動揺が広がる。1人の産科医の声を契機に、初めて、島民たちは種子島の周産期医療の現状を知る。「種子島の産声を守れ!」島の女性たち、1市2町、県や医師会、皆が必死になって種子島の産声を守るため道を模索した。
 そんな中、出産する場所のない喜界島では、「空港での緊急出産」という事態が起きる。突然の破水した妊婦を島外搬送しようとしたが間に合わず、管理事務所を借りての緊急出産。喜界徳洲会病院の助産師・辻崎理奈さんが赤ちゃんを取り上げた。幸い、母子ともに健康で遅れて到着した飛行機に乗って奄美大島へ搬送されたが、病院のスタッフや消防はショックを隠しきれない。「なぜ、こんな事に…?」再び同じ事態があるかもしれない。「助産院が復活できないか?」喜界島でもみんなの心が一つになる。
 喜界島の病院には今も分娩室が残されている。きょら(美しい)海に囲まれた南の島々は救急体制も整っておらず医療格差は広がるばかりだが、離島には離島の出産の形があるはずだ。
 授かった小さな命。温かく包み込む島の空気。「南の島の産声を守れ!!」

<青木隆子ディレクターコメント>

 離島の出産を取り上げたい」。思いは、もう10年前に遡ります。海を渡り、産科医院のある場所で赤ちゃんを産み続ける女性たちの存在は、鹿児島県内でも意外な事に余り知られていませんでした。都会や陸続きの県本土でも、お産環境は年々悪くなっていますが離島はその比ではありません。なのに「子宝の島」。複数の赤ちゃんを産み、育て続ける「豊かな精神風土」が、今でも受け継がれているのです。「種子島で唯一の産科医院が閉院するかもしれない」という危機を取材するうちに、もっと南の島々の厳しい現状を伝えたいと思うようになりました。愛する家族の側で赤ちゃんを産めない辛さや悲しみは、残念ながら産む性である「女」でないと理解でません。だけど私たちは、意外にも、余り声を上げてきませんでした。「自分たちの未来は、私たちの手の中にある」。次の世代の女性たちが、悲しい思いをせずに出産できますように…。祈りながら、番組を制作しました。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『それでも私たちは産みたい 〜南の島の産声を守れ〜』
(制作:鹿児島テレビ)

◆放送日時

2009年11月20日(金)深夜3時35分〜4時30分

◆スタッフ

プロデューサー
堂脇 悟
永吉周一
ディレクター
青木隆子
構成
中本麻理
ナレーター
青木隆子
古井千佳夫
撮影
平石健輔
音声
高橋良太
音効
伊地知宏和
テーマ曲
dokidoki「チバリヨ」
(喜界島の兄弟デュオ d−music)

「パブペパNo.09-297」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。