2009.11.9
<2009年11月13日(金)深夜3時35分〜4時30分>
2008年1月に議員立法で「薬害肝炎救済法」が成立した。2002年から始まった薬害肝炎訴訟の原告患者を「一律救済」するという当時の福田総理の方針を受け、C型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤を投与された患者に一定の給付金を支払うという内容だ。
その直後、福井県内では、C型肝炎患者たちの患者会が相次いで結成された。しかし、患者会の設立総会などを取材して見えてきたのは、多くの患者たちの「救済」とは、ほど遠い現状だった。患者たちは、一筋の光明を求めてやむにやまれず患者会を結成していたのだ。
患者たちから聞かされたのは大きく分けて2つの問題。1つは、C型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤の投与の事実を証明するカルテなどの医療記録がないということ。「フィブリノゲン」など問題となった血液製剤の投与時期は20年以上前のケースがほとんど。しかし、医師法ではカルテなどの保存期間を5年と定めていて、多くの病院が当時の記録を廃棄しているのだ。
そして、もう一つは、感染原因がそもそも分からない患者が圧倒的多数を占めているということ。手術や出産など血液製剤を使うような場面に遭遇していない患者たちは、救済の対象から外れ、結果的に患者同士の「線引き」につながっているということだった。
薬害肝炎訴訟は最終的に製薬会社と原告側の正式和解で一応の決着を見て、患者救済の熱気は徐々に冷めようとしている。こうした中、福井県内でひたむきに暮らす肝炎患者たちが、自分たちの現状を訴えようと取材への協力を申し出てくれた。
・肝炎の発病と進行という不安と向き合いながら、農家として忙しい日常を送る母親。
・余命半年を宣告されながら生体肝移植で再起し、肝炎患者の支援に奔走する元サラリーマン。
・合併症で満足な治療を受けられないが、夫に支えられながら生きる元保育士の女性。
3人とも「いつ、どこで、なぜ」C型肝炎ウイルスに感染したかは定かではない。けれども不安や悩みを抱えながらも肝炎という現実を受け入れて<生>を燃焼させようとしている。その具体的な成果として、それぞれの立場で患者会に関わることになったのだ。
今回の番組ではこの3人を軸にしながら、肝炎患者の置かれた現状と、薬害C型肝炎訴訟の波紋を伝えたい。そこから透けて見えるのは、救済から取り残された“圧倒的多数”の肝炎患者たちの無念の姿と、「国内最大の感染症」となった肝炎の根深さであると考えるからだ。
そして、番組の終盤では、患者が求めている「真の救済」とは何なのかを、東北の小さな町の取り組みを紹介しながら提案もしていきたい。この町では、患者、行政、医師が一体となって肝炎患者の支援に動いているが、わずかなきっかけがあれば現状は変えられるということ、そして地味ではあるが着実な活動こそが患者の救済につながっていくことが分かるからだ。
「全員一律救済します」。薬害C型肝炎訴訟は福田総理(当時)のこの一言が強烈に印象に残っています。と、同時にこの言葉に違和感を覚えたのも事実でした。そして福井県内のC型肝炎患者の皆さんを取材するうちに、この「一律救済」がいかに政治的スローガンだったかを確信しました。取材の終盤で薬害肝炎全国原告団代表の山口美智子さんを取材する機会がありました。そこで聞かされたのは、官邸で福田総理に対して「私たちは頂上に昇ることができました。残された患者さんのためにその道幅を広く、確かなものにしてください」と訴えたというエピソードでした。山口さんは訴訟によって患者同士が線引きされたことに心を痛めていました。国や製薬会社は、この山口さんの訴えにどこまで誠実に応えているでしょうか。番組は福井県内の話題を中心に構成されていますが、全国の肝炎患者の皆さんの思いを少しでも代弁できればと思います。
第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『200万分の一の闘い 〜C型肝炎患者のいま〜』
(制作:福井テレビ)
2009年11月13日(金)深夜3時35分〜4時30分
2009年11月9日発行「パブペパNo.09-272」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。