2009.9.24

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
眠れていますか
(制作:テレビ静岡

全国の自殺者は11年連続で3万人を超える異常事態だ。
静岡県職員で精神科医の松本晃明は、自殺の多い中年男性をターゲットに富士市で自殺対策を進めている。
松本は、自殺と関係の深いうつ病の早期治療を促すため、うつ病の「眠れない」症状に着目した。
目指すのは気軽に「眠れていますか」と声を掛け合う社会。
今、全国的に注目されつつある静岡県の自殺対策。その中心的な役割を担ってきた男に密着した。

<2009年9月28日(金)深夜2時35分〜3時30分放送>


 11年連続で年間3万人を超える自殺者がいることを、私たちは、どれだけ実感できているだろうか。18分に1人が自殺している計算になる。1人の自殺は、家族や友人を悲しみのどん底へと突き落とす。そして、なぜ食い止めることができなかったのかと後悔させる。
 自殺の問題は非常に大きな問題だが、テレビで伝える難しさがある。どうすればよいかと考えていたとき、県精神保健福祉センターの松本所長に出会った。そして、松本所長と何度も話をするうちに、自殺予防の取り組みを熱く語る松本所長を通じて「自殺問題」を考え、伝えることができるのではと思った。
 松本所長が富士市で進める自殺対策は、睡眠を切り口にしている点が大きな特徴だ。自殺者の4割近くがうつ病だという調査結果もあり、うつ病を早く治療することで、自殺を減らせると考えられている。しかし、自殺が多い中年男性は、うつ病を認めたがらない。精神科への抵抗もあって、病院にも行こうとしない。そこで、松本所長は、うつ病の症状として現れる不眠に着目し、「眠れていますか」というキャッチフレーズを全面に押し出した。内科などのかかりつけの医師が「毎日眠れていますか」と聞き、2週間以上眠れない症状が続いていれば精神科へと紹介する。「自分はうつ病かも」と重くなる前に気づいてもらうことがねらいだ。

 松本所長が進める自殺対策のポスターやチラシには、必ず女子高生の娘が父親に「ちゃんと寝てる?」と呼びかけている。もともと自殺の多い中年男性にどうやったら注目してもらえるかと考えた結果、女子高生の娘をキャラクターにした。それは、自殺やうつ病を感じさせないものだった。そして、娘の声かけが、父親である中年男性の心に響くと、松本さんは考えた。この不況の中で、仕事の上では厳しいことばかり。そんな時、娘から、自分を心配してくれる優しい言葉をかけてもらえれば、自殺をしようとは思わないのではないか、松本さんはそう考えている。
 いま、自殺予防に向けて、内閣府も各自治体もより力を入れ始めている。内閣府が各自治体に要請したり、予算をつけたりして、なんとか増加を食い止めようとしているが、なかなか成果はあがらない。松本さん自身も何度もくじけそうになったが、なんとか踏ん張っている。
 松本さんの自殺対策は、私たちも気軽に協力することができる。それは「眠れていますか」と互いに声を掛け合うこと。自殺対策、自分は何もできないと思うかもしれないが、家族が職場の同僚が、近所の人が、ちょっと疲れたような顔をしていたら「最近ちゃんと眠れてる?」と聞く。そして、2週間以上眠れていないようだったら、病院に行った方がいいと勧める。それが社会全体の取り組みになっていけば、きっと自殺は減るはずだ。あなたは眠れていますか。番組を通じて自殺する人が1人でも減ってほしいと願っている。

制作担当者のコメント ディレクター:武田絢哉

 私が初めて主人公の松本晃明さんにお会いしたのは、2006年の秋でした。松本さんは、当時、自殺対策の取り組みを県全体、そして全国に広げたいと話していました。私はまさか全国に広がるとは夢にも思っておらず、「松本さんを非現実的なことを言う人」「夢が大きい人」としかみていませんでした。しかし、2年後、その取り組みは全国から問い合わせが相次ぎ、注目されていました。松本さん自身も講演などで全国を飛びまわっていて、私はとても驚きました。本気で自殺を減らそうとする松本さんの熱意をたくさんの人に伝えたい、それが取材のきっかけです。
 自殺は、自分とは関係ないと思ってしまう人が多いと思います。しかし、年間3万人が死亡している現状は、他人事ではありません。自殺者は交通事故死者の6倍もいるのに、自殺対策は、交通安全運動のような社会全体の取り組みになっていません。睡眠は、食事、運動とともに生きる上でとても大事なことです。「2週間以上の不眠はうつかも」この言葉が全国に広まれば、きっと自殺も減るはずです。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『眠れていますか』
(制作:テレビ静岡)

◆放送日時

2009年9月28日(月)深夜2時35分〜3時30分

◆スタッフ

ナレーション
神奈延年
撮影
植田孝雄
音声
植松敬之
山本洋久
編集
古本孝子
効果
長田 渉
題字・デザイン
西川清美
ディレクター
武田絢哉
制作統括
橋本真理子
プロデューサー
榛葉晴彦

2009年9月24日発行「パブペパNo.09-234」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。