2009.9.18

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
あすのりんかく 〜小さな宅老所の物語〜
(制作:仙台放送

高齢化と人口減少が進む小さな町・宮城県美里町にある
小さな宅老所「まりちゃん家」。
この宅老所を「家」として過ごすおばあちゃんと、元ヤクザで介護の仕事に就いて4年になる若者との
かかわりを軸に、いのちと向き合う日々を見つめた。
神経難病を患い弱っていくおばあちゃんの姿を目の当たりにした若者は、
何を感じ、どのように変わっていくのか…。

<2009年9月27日(日)深夜2時45分〜3時40分放送>


 2009年9月27日(日)深夜2時45分〜3時40分放送の、第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『あすのりんかく 〜小さな宅老所の物語〜』(制作:仙台放送)は、高齢化と人口減少が進む小さな町・宮城県美里町にある小さな宅老所「まりちゃん家」で過ごすあるおばあちゃんと、元ヤクザで介護の仕事に就いて4年になる若者とのかかわりを軸に、命と向き合う日々を見つめた作品だ。

 役にたたないものとは、駄目なものとは、大事なものとは、なんですか?
 行き場のないお年寄りと行き場を見失った若者が、東北の小さな町の小さな宅老所で出会ったことから、その問いかけは始まった。
 急速な高齢化と少子化と景気の悪化と温暖化と…数え上げたらきりがないドン詰まり。そんな時代状況は、すべて人間が作り出したもの、それも経済偏重の拝金主義がもたらしたありさまだ。豊かになったという日本で、この国を築いたはずのお年寄りの居場所はなく、その一方で若者たちも使い捨ての労働に生きる意味を見失う。こんな時代だからこそ、大切なこと。
 宮城県美里町、人口26,000人ほどの東北の小さな町にある小さな宅老所「まりちゃん家」。ここのケアの方針は、利用者が望めば最期まで見るという姿勢だ。老いてゆく中で起きる、生きてゆくための方策は医療行為とされ、法律上、原則としては介護職ができないことになっている。しかし、まりちゃん家は、施設を「家」としてみなし、利用者の同意を得ることで、「家族」として、お年寄りに対し、一歩踏み込んだケアにあたる。
 そんな「まりちゃん家」で暮らす80歳のおばあちゃん。次第に身体が動かなくなり、最期には呼吸さえ困難になって、死に至るという難病を患っている。そして、このおばあちゃんの弱っていく姿を間近に見つめ、ケアにあたる一人の若者(33歳)。彼は介護の仕事に就く前はヤクザだった。彼は30歳を目前にした4年前、ヤクザ稼業から足を洗い、介護の道に飛び込んだ。民謡が好きで陽気なおばあちゃん、けんかっ早いが実は泣き虫の若者。ふたりの「ひとつの歩み」が始まった。
 この冬、おばあちゃんは呼吸を確保するために、気管を切開する必要に迫られた。痰がつまり、肺炎や窒息を防ぐための方策だった。病院や医者が大嫌いなおばあちゃん。説得したのは若者だった。
 「もっと長生きしてほしいんだ」。若者の懸命な説得におばあちゃんは気管を切開することを受け入れた。しかし…病院での処置中に、事故が起きた。そして、その2週間後、おばあちゃんは亡くなる。もっと長生きして欲しいがための方策だったはずなのに…。
 おばあちゃんの葬儀で若者は、「生前の約束だった」弔辞を読み上げた。そしておばあちゃんを大きな道しるべとしてきた若者は、あすの輪郭をおぼろげながらも描き始める。

岩田弘史プロデューサーコメント

 母を早くに亡くした私にとって、おばあちゃんたちはすべて母になってしまいます。宅老所、「まりちゃん家」に出会って13年余り、代表の佐々木眞理子さんも、この私と似たような感覚を持ってお年寄りに接していると感じたのが、長くわたしが取材してきた一因なのかもしれません。そして、今は亡き薬師寺管主、高田好胤さんが重ねて講和されてきた「仏説・父母恩重経」の教えが、眞理子さんの奥底にあることを今回の取材で知りました。父母がいるからあなたがいる、この当たり前にみえる奇跡に感謝して暮らすことが、生きることなのだという教え、それはとても重いものです。眞理子さんの母は、彼女が若いころにいなくなりました。ずっと母が許せなかったといいます。しかし、年を重ね、母や父のことを思うとき、いつからか憎しみよりもいとおしさが上回っていきました。そのきっかけが「父母恩重経」の教えでした。高田好胤さんが父母恩重経を説いた本のなかにこんなうたがあります。
 「諸人よ 思い知れかし 己が身の 誕生の日は 母苦難の日」(詠み人しらず)
 「みんなみんな、思ってみてください、あなたが生まれた日は、お母さんにとっては、あなたを産むために、とてもとても苦しかった日でもあったのです」という、うた。
 母も父もいない人はいません、会ったことがなくても、死んでしまったとしても、どこかに源はあり、その源には、さらに源があります。苦しみがあって喜びは生まれます。冬があって春が来るように。今回の「あすのりんかく」はそんな私の思いもあって、生まれた表現でもあります。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『あすのりんかく 〜小さな宅老所の物語〜』
(制作:仙台放送)

◆放送日時

2009年9月27日(日)深夜2時45分〜3時40分放送8

◆スタッフ

プロデューサー・ディレクター・撮影・企画・構成・編集・音効
岩田弘史(仙台放送)
ディレクター・撮影
齋藤剛志
MA
小峰義央(仙台放送)
 

2009年9月18日発行「パブペパNo.09-233」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。