2009.6.23

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『平和の種になりたい…〜カンボジアに帰った日本人〜』
(制作:テレビ愛媛)

自衛隊PKO活動でカンボジアに魅せられた自衛官が定年退官後すぐに現地に戻り、世界初の住民参加による地雷処理を進めている姿を追う。

<2009年6月19日(金)深夜3時20分〜4時15分放送>


 2009年6月19日(金)深夜3時20分〜4時15分放送の第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『平和の種になりたい…〜カンボジアに帰った日本人〜』(制作:テレビ愛媛)は、自衛隊PKO活動でカンボジアに魅せられた自衛官が、定年退官後すぐに現地に戻り、世界初の住民参加による地雷処理を進めている姿を追う。

<企画意図>

 愛媛県出身の元自衛官・高山良二(62)さん。自衛隊PKO活動でカンボジアに魅せられた高山さんは、定年退官後すぐに現地に戻り、世界初の住民参加による地雷処理を進めている。「支援に頼らず、住民の手で戦後復興する」というのが高山さんのこだわりだ。高山さんは地雷の危険と貧困から住民を救おうと井戸や学校の整備にも力を入れるが、支援は簡単には根付かない。高山さんは復興支援の難しさを感じながら、現地で活動を続けている。

<番組内容>

 遠く離れたカンボジアで地雷処理に取り組む日本人がいる。愛媛県出身の元自衛官の高山良二さん62歳。高山さんは、1992年に自衛隊PKOに参加して初めて以来、カンボジアへの思いを強くし、定年退官してすぐ地雷処理のNGOスタッフとしてカンボジアに戻った。年間約9カ月を現地で過ごし、住民とともに復興に向けた活動を続けている。

 高山さんの取材を始めたのは2年余り前。地雷という死の危険と隣り合わせの現場での活動であること、そして1年の大半を現地で過ごし、住民たちの生活に溶け込んで復興支援にあたっていることに強い関心を持った。紛争跡地の地雷処理という国際的な課題は、日本の日常生活からはすぐには想像できないものだが、高山さんの取材を通して、多くの人たちが高山さんの活動を支援し、国際貢献に手を差し伸べていることを知った。定年後、ゆっくりと第二の人生を過ごすこともできたはずだが、なぜ高山さんはカンボジアに戻ったのか。その原点を見たいとの思いから現地取材に臨むことになった。

 高山さんが活動するカンボジア・タサエンは首都プノンペンから車で8時間もかかる人口5300人ほどの田舎の集合村。内戦時代はポルポト派の拠点があり、激しい戦闘が繰り広げられた地区だ。カンボジア全土には内戦時に埋めた地雷が、いまだに400万〜600万個も残るといわれていて、世界各国から地雷処理や生活復興に支援の手が入っている。それらのほとんどは外部専門スタッフによる地雷処理活動や、物資や援助資金を贈るというものだが、高山さんは世界で初めての試みとして、住民の手で行う地雷処理活動をタサエンでスタートさせた。「外国からの支援に頼るのではなく、住民自らが地域の復興をするべき」というのが高山さんのこだわりだ。しかし地雷処理活動は困難の連続だ。戦闘の激しかった土地には小さな爆弾の金属片などが無数に散らばっていて、これら1つ1つが金属探知機に反応する。地雷はわずか1キロの重みで爆発するため、多くの金属反応の中から慎重に地雷を探りあてるのは、気の遠くなる作業だ。危険と隣り合わせの炎天下の作業は、肉体的、精神的にも過酷だが、地雷処理にあたる村人たちの表情は一様に明るい。地雷処理活動で家族を養う給料をもらい、地雷除去で土地が安全になれば、危険な地雷原が畑に変わる。高山さんがタサエンに来てからのこうした生活に、住民たちは希望を抱いているのだ。しかし地雷処理は死と隣り合わせの危険な作業、2年前には作業中に死傷者が出る大きな事故も起きてしまった。高山さんにとっては悔やみきれない出来事として心に残り、犠牲者のためにもこの活動を成功させたいと願っている。

 タサエンの復興に向けた課題は地雷だけではない。多くの家庭では農業しか収入がなく、住民を貧困から救わなくては自立した生活はできない。このため高山さんは村の復興に向けて、現地で井戸の整備にも取り組んでいる。多くの家庭では雨水や池の水を生活に使うため、不衛生で病気になる人も多く、井戸の整備は住民の健康を考える上でも必要なのだ。井戸1基を整備するのにかかる費用は7万円。高山さんは日本の支援者に寄付を呼びかけ、これまでに69基の井戸を整備することができた。村の人たちは高山さんや日本からの支援で生活環境が改善されていくことを実感しているが、高山さんが心配するのは、ここから先のことだ。高山さんがタサエンを去った後、住民たちだけで村の自立、復興ができるように、意識を変えなくてはいけないのだ。

 現地の人たちと触れ合いながら、時には怒り、時には涙する高山さん。人間味溢れるその活動は、顔の見える国際貢献を実践している。

<ディレクター片上裕治・コメント>

 カンボジアの地雷処理活動は、日本での生活からはあまりにかけ離れていて、すぐには実感できないテーマでした。しかし元自衛官の高山良二さんは、地元愛媛に帰国するたびに写真展や講演会を開き、カンボジアへの支援の輪は着実に広がっています。
 高山さんは自衛隊PKOで初めてカンボジアを訪れた後、10年もの間カンボジアへの思いを抱き続けました。その強い意志が今のカンボジアでの活動を支えています。地雷の危険と貧困に囲まれた住民の生活は、想像以上に過酷です。しかし高山さんは住民の生活を少しでもよくしようと、1年の大半を現地で過ごし、住民との信頼関係を築きながら活動を進めています。高山さんにとっては、まさに今が「人生の本番」なのでしょう。
 国際貢献という大きなテーマの中から、現地で奮闘する高山さんの姿を通して人の生きる力を感じてもらえればと願っています。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『平和の種になりたい…〜カンボジアに帰った日本人〜』

◆放送日時

2009年6月19日(金)深夜3時20分〜4時15分

◆スタッフ

プロデューサー
村口敏也
ディレクター
片上裕治
構成
片上裕治
撮影
岡田健太郎
編集
茅切伸也
ナレーション
三好千博

2009年6月19日発行「パブペパNo.09-146」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。