2009.6.17

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『最期の医療 〜主治医とガン患者の記録〜』
(制作:テレビ西日本)

福岡市の病院でガン患者と向き合う医師の姿を通して、日本の医療の現状と課題について考察するドキュメンタリー

<2009年6月12日(金)深夜3時20分〜4時15分放送>


 2009年6月12日(金)深夜3時20分〜4時15分放送の第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『最期の医療〜主治医とガン患者の記録〜』(制作:テレビ西日本)は、福岡市の中核病院で、ガン患者と向き合う医師の姿を通して、日本の医療の現状と課題について考察する。

<企画意図>

 外科や産婦人科などを中心に、深刻な医師不足に陥り、地方の医療体制が危機にひんしている。番組では福岡での現状を探るため、拠点病院のひとつである九州中央病院の外科病棟で1年間にわたり、密着取材を続けた。見えてきたのは「ガン難民」の現実。超高齢化社会を前に、「最後まで治療を」という患者の声が届かなくなっているという事実だった。医師の責任感だけでは、もはや医療は持ちこたえられない。崩壊を食い止める方法はあるのか、現場の声から日本の医療の今後を考える。

<番組内容>

 いま全国的に病院勤務の医師が疲れ果て、次々に病院を去っているという。テレビ西日本では、医師を取り巻く真の現状を探るため、福岡市の中核病院で働く外科医の長谷川博文ドクター(39)を1年間にわたり密着取材した。外科医の多忙な一日は早朝のミーティングに始まり、診察、検査、そして手術と、分刻みのスケジュールが続く。帰宅が深夜0時を過ぎることも珍しくなく、そのうえ長谷川ドクターは夜間の呼び出しに備え、仕事終わりであってもアルコールを一滴も口にしない。
  こうした激務の日々に密着していると、ある病気が現代医療の最重要課題であることが浮かび上がってきた。それはガンだ。日本で一番の死因はガンで、この病気による死者は年間33万人に上る。実に2人に1人がガンにかかり、3人に1人がガンで亡くなる時代だ。ガンは老化現象の一つ。年をとればとるほど、ガン細胞はできやすくなる。超高齢化社会を迎える日本において、ガンはますます身近な病気になっている。
  ガン治療の現場を取材していると、治療が困難な、いわゆる末期患者に対する向き合い方が医師によって異なることがわかった。現代医療で治る病気があれば、治せない病気もある。同様にガンも早期発見による手術で完治する場合があれば、見つかった時にはすでに全身に転移し、治療の手だてがない場合もある。しかしたとえ末期と分かっていても、治療への望みを持ち続ける患者がたくさんいた。長谷川ドクターが私生活を顧みず最後の最後まで末期ガン患者に寄り添うのは、たとえ治療が困難であっても患者の心を大事にしたいという思いがあるからだった。
  ところが長谷川ドクターのように、治る見込みが低いガン患者に粘り強く治療を続ける医師は少なくなりつつある。治せない患者を長期間にわたって入院させておけば、ベッドが空かず、新しい患者の治療の機会を奪いかねないからだ。また病院経営の観点から、ベッドの回転率をあげなくてはならないという事情も見え隠れする。このため急性期病院の医師は末期がん患者を緩和ケア施設にバトンタッチするのが時代の流れだ。日本の医療は「治す病院」と「みとる病院」とで役割分担を徹底し、これからも押し寄せるガン患者に対応しようとしている。
  しかしこうした「割り切り医療」がガン難民を生む原因ともなっていた。ガン難民とは行き場を失った末期ガン患者のこと。信頼していた主治医に治療断念を告げられ、病院を飛び出す患者が後を絶たないのだ。一方、緩和ケア施設に入ったからといって、すべての患者が死を受け入れ、心穏やかになるわけではない。最期の時を安らかに迎えたいと願う患者がいれば、「もう一度抗ガン剤治療にかけてみたい」と苦悩を浮かべる人もいる。しかし時代の医療が末期ガン患者に突きつけている選択肢は「治す」か「みとる」かのどちらか。ドライな縦割り医療のひずみが「ガン難民」として表面化している実態があった。
 「患者は機械と違って心がある。」そう信じる長谷川ドクターは、回復が絶望的であっても、患者に粘り強く接する。他の病院で治療を打ち切られたガン患者であっても、自分のもとで何か良い治療方法はないかと、わずかな可能性にかける。しかし一方で、こうした患者が増えれば増えるほど、かえって自分の時間に余裕がなくなり、患者一人一人に対する本来のケアができなくなっていった。患者を大事にする医療が、逆に患者を不幸にしていないか。理想の医療が抱えた矛盾に長谷川ドクターは戸惑い、苦しんでいた。
  身も心も疲れ果てた勤務医が次々と病院から立ち去る中、ついに長谷川ドクターが最も頼りにしていた同僚までもが辞職を決意してしまう。救急患者のたらい回しや医療事故などのバッシングを浴び続け、燃え尽きようとする医師たち。孤独と不安を抱える長谷川ドクターが悩み抜いた末にとった行動とは。番組では、長谷川ドクターや末期ガン患者への密着取材を通じ、日本の医療の現状と課題について考察する。

<加藤大典ディレクターのコメント>

 外科医や末期ガン患者たちに密着した1年間。この番組では、医療現場で当事者の生の声や、末期ガン患者とどう向き合うかというテーマを通じて、医療崩壊の現状を描きました。
 「末期ガンの妻が病院に受け入れを拒否された」と涙ながらに訴える夫。安らかに最期を迎える緩和ケア病棟で、「本当は抗がん剤治療を続けたい」と打ち明ける男性。患者から「神様」と慕われながらも、その裏で「もう無理」と限界を口にする主人公の外科医。一人の医師が一人の患者と向き合うという、これまで当たり前だった大原則が崩れようとしています。
 日本が超高齢化社会に突入しようとする中、医療現場では人手もベッドも足りていません。また国の医療費も増えるどころか、減らされる一方です。医療にも効率が求められるようになった結果、このしわ寄せが確実に現場に現れ始めているのです。葛藤を抱える外科医や患者たちの心の叫びに耳を傾けて下さい。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『最期の医療〜主治医とガン患者の記録〜』

◆放送日時

2009年6月12日(金)深夜3時20分〜4時15分

◆スタッフ

プロデューサー
小島 洋(テレビ西日本)
ディレクター
加藤大典(テレビ西日本)
ナレーター
手嶌 葵
構成
木村 仁
撮影
安波嘉寛(ビッグベン)
編集
岡本浩明(VSQ)

2009年6月16日発行「パブペパNo.09-137」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。