2008.10.29

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『もうひとつの水俣病 〜未認定患者の闘い〜』
(制作:新潟総合テレビ)

新潟水俣病の公式認定から43年。初めて水俣病患者としての認定を求め名乗り出た彼らの訴えを通して新潟水俣病の行方を探るドキュメンタリー

<2008年10月31日(金)深夜3時45分〜4時40分放送>


 2008年10月31日(金)深夜3時45分〜4時40分放送の『もうひとつの水俣病 〜未認定患者の闘い〜』(制作:新潟総合テレビ)は、新潟水俣病の公式認定から43年たった今、初めて水俣病患者としての認定を求め名乗り出た彼らの訴えを通して新潟水俣病の行方を探る。

(企画意図)

 新潟水俣病の公式認定から今年で43年。4年前の関西訴訟最高裁判所判決以降、九州では訴訟を求める動きが高まっていったが、新潟ではこうした動きはほとんど見られなかった。彼らはなぜ水俣病の被害者として名乗りでてこなかったのか。そこには新潟水俣病をめぐる40年以上の歴史の中で、複雑化した構造が患者救済への道を阻むという現実があった。
 防げなかった第二の悲劇、国と司法で対立する認定基準、いまだに残る差別偏見。初めて水俣病患者としての認定を求め名乗り出た彼らの訴えを通して新潟水俣病の行方を探る。

(番組内容)

 新潟県を流れる日本でも有数の水量を誇る阿賀野川。新潟市をはじめ流域に住む多くの住民たちがこの阿賀野川の恩恵を受けてきた。しかしその恩恵と共にある悲劇が住民たちを襲った。
 第二の水俣病と呼ばれる新潟水俣病。公式確認から今年で43年となる。水俣病をめぐっては1995年に和解が成立、以降問題は影を潜めるようになった。しかし2004年、裁判を続けていた関西水俣病訴訟最高裁では行政よりも幅広い認定基準で国などの責任を認める画期的な判決が示された。これをきっかけに熊本、鹿児島では約1500人の水俣病の認定を受けていない、いわゆる未認定患者が提訴に踏み切るという大きな動きを生み出した。一方、もうひとつの水俣病発生地である新潟でも同じように救済に向けた動きが見られるのではないかと期待が高まった。しかし水俣病と名乗り出る患者は現れなかった。規模の違いがあるとはいえ、新潟でもまだ名乗り出ていない潜在患者が大勢いるのは間違いなかった。
 水俣病の未認定患者による患者団体「新潟水俣病阿賀野患者会」の会長をつとめる山崎昭正さん。山崎さんは3年前に主治医に水俣病と診断されるまで水俣病の症状があることを名乗り出てこなかった。「まさか自分がなるわけがない」という思いはあったが、年を重ねるごとにひどくなる症状は山崎さんの不安を確信へと変えていった。しかしそれでも水俣病と認めたくなかった。そこには水俣病の歴史の中に残る偏見と差別があった。「金目当て」「恥さらし」…いわれのない中傷をおそれ山崎さんは水俣病と名乗り出ることをためらった。その後、関係者と患者会を立ち上げ、会長として本名は公表したが、カメラの前で顔をあかすことはまだできないという。未認定患者の1人・遠藤さん(仮名)も一時取材に顔出しで応じると答えてくれたが家族の反対を受け決心がゆらいだ。
 一方、専門家や当時の国の関係者は水俣病かどうかを判断する国の認定基準が妥当ではないと強く訴える。また長年水俣病患者を診続けていた医者も認定患者と未認定患者にそれほど差はないと主張する。国の基準と最高裁の基準といういわゆる“二重の基準”によって認定された患者とそうでない患者の間で溝もできた。
 こうした中、去年22年ぶりに新潟水俣病の認定患者が現れた。2人とも以前に棄却処分とされながら辛抱強く戦い続け勝ち取った認定だった。今後も認定の動きが広がるかと期待が高まったが、結局その後の認定審査会では全員が棄却処分とされ、認定をめぐる行政の高い壁を痛感することとなった。
 番組では未認定患者たちの思いとともに認定基準の妥当性やその歴史的な経緯を検証し、そもそも新潟水俣病という公害病はどういう病気だったのかあらためて再考する。

<ディレクター・齋藤信明コメント>

 今回番組に出演していただいた患者団体の山崎会長に取材を申し込んだ際、顔出しでの取材には応じられないと断られた。何度も足を運んでお願いしたがだめだった。患者団体のほかのメンバーや認定申請をしているほかの患者も同じ答えだった。九州と違い新潟ではメディアの前で堂々と病状や問題の現状を訴える未認定患者はいない。これまで教科書の中でしか学んだことのなかった水俣病の偏見差別の歴史。あらためて水俣病をめぐる問題の根深さを痛感した。
 彼らの声を通して視聴者に水俣病問題についての現状をあらためて理解してほしいと思う。水俣病は決して過去の遺物ではない。まわりの水俣病に対する理解が問題解決への近道でもある。九州の影に隠れがちな新潟ではあるがここにもこうした声があることを知ってほしい。


<番組概要>

◆番組タイトル

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『もうひとつの水俣病 〜未認定患者の闘い〜』

◆放送日時

2008年10月31日(金)深夜3時45分〜4時40分放送

◆スタッフ

撮影
中島茂雄
尾田 博
山田龍太郎
編集
村山茂之
佐藤誠二
藤井 亮
MA
村松勝弘
音響効果
関口政孔
構成
高橋 修(フリー)
ナレーター
寺瀬今日子(青二プロダクション)
ディレクター
斎藤信明
プロデューサー
高橋義明

2008年10月29日発行「パブペパNo.08-305」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。