FNSドキュメンタリー大賞
過疎・高齢化が進む笠岡諸島の島民が、島の活性化に取り組む姿を追うドキュメンタリー

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『島に笑顔を〜笠岡諸島再生への挑戦〜』

(制作:岡山放送)

<2007年12月22日(土)深夜2時55分〜3時50分放送>

 12月22日(土)深夜2時55分〜3時50分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『島に笑顔を〜笠岡諸島再生への挑戦〜』(制作:岡山放送)は、過疎・高齢化が進む笠岡諸島の島民が、移住者を空き家に受け入れる事業により島の活性化に取り組む姿を追う。

<企画意図>

 瀬戸内海沖に浮かぶ笠岡諸島。石材業などが衰退し、昭和30年代に1万人以上いた人口は現在3000人を割り、高齢化率は56%。過疎・高齢化が急速に進む島は日本の将来の縮図と言える。小学校の廃校、経営難から廃業した雑貨店、地域の衰退は目に見える形で進行している。危機感を抱いた島民たちは空き家に人を呼び込む事業を開始。これまでに17世帯38人の移住者を受け入れてきた。島を活性化するには、どうすればいいのか。番組では笠岡諸島の取り組みからヒントを探る。

<番組内容>

 瀬戸内海国立公園のほぼ中央に位置する笠岡諸島。大小30の島が岡山から四国に向かい飛び石のように連なっている。笠岡諸島最大の島、北木島は石材産業が古くから盛んだった。しかし、15年ほど前から中国から品質が良い安い石材が輸入され始めると、島を支えてきた基幹産業は衰退した。昭和30年代に1万人以上いた笠岡諸島の人口は、現在約2800人。仕事が減り、若者は職を求め島の外へ出て行ったため、高齢化率は実に56%に達している。
 島おこし活動をしている人から「今の笠岡諸島の姿は将来の日本の縮図」という言葉をきっかけに、番組では彼らの姿を追うことになった。過疎・高齢化という問題は離島だけが抱える問題ではない。高齢化率が50%を超え、将来的に集落が消滅してしまう可能性がある「限界集落」は、陸地部の農村地域でもすでに深刻な問題になり始めている。将来的には人口減少社会に突入している日本という国全体が直面する普遍的なテーマでもある。今の笠岡諸島を取材することで、今後私たちの社会で起こってくるであろう福祉や介護などの問題を提起し、その解決策のヒントを番組で探ってゆく。
 島には過疎・高齢化の影響が目に見える形で現れてきている。子供たちを長年見守ってきた小学校が廃校になり、地域のコミュニケーションの場所だった雑貨店が経営難で廃業を余儀なくされた。そして、ケア施設や本格的な病院が十分ではない島の環境の中で、体の不自由な91歳の母親の入浴介護や身の回りの世話を71歳の息子が続ける老老介護の姿。子供が仕事や結婚といった理由で島を離れてしまい、病気を抱えながらも生まれた島で最後まで暮らしたいと思い、一人で孤独に生活する高齢者。人口が減ることで島はますます不便になり、人が住みにくくなるという悪循環、そこには島が抱える厳しい現実の姿があった。
 しかし、あきらめない人たちがいた。衰退する島の現状に危機感を抱いた島民グループは自ら島おこし組織を立ち上げ、島の活性化のために積極的に活動を始めている。特にユニークなのが、人口減少に歯止めをかけるために島に増えた空き家を活用し、外から来た人に安く貸し出す空き家対策事業。2003年から始まったこの活動はマスコミに取り上げられたのをきっかけに、移住希望者が増加し、これまでに笠岡諸島全体で17世帯38人が移住してきた。
 しかも、この移住者たちは島に新たな魅力をもたらし、活性化に一役買っている。京都から移住してきた料理人は島でレストラン兼民宿を開業。外から来た観光客に島ならではの魅力やよさを知ってもらいたいと、食材は地元の漁師の協力を得ながら、とれたての新鮮な魚を提供している。東京から移住してきたすし職人は、一人暮らしの高齢者が多い島で弁当の宅配サービスを始めた。栄養のバランスが偏りがちの高齢者のために、できるだけいろいろなものを食べてもらえるようメニューも工夫している。また、一軒、一軒、弁当を配ってまわり、高齢者の体調や普段の様子もみている。大阪から移住してきた建設会社の元社長は、自分が子供の頃に体験した海と山がすぐ側にある自然に恵まれた島の環境を気に入り、ここで余生を送ることを決心。なんと、土地を購入し、新しい家を建てることにした。住み慣れた故郷を離れ、環境を変えてまで島で生活を始める理由は何なのだろうか。移住者が口をそろえて言うのは、「島での生活は、不便で我慢しなくてはならないことも多い。しかし、都会では失われつつある助け合いの精神や、人と人とのつながり、美しい風景が残っている」ということだ。
 こうした島ならではのよさや魅力を伝えることで、島に再びにぎわいを取り戻すヒントが隠されているのではないか。島おこしに取り組む人や移住者の生活を通し、過疎・高齢化という問題に挑む笠岡諸島の姿を追ってゆく。

<制作者のコメント>
ディレクター・勝谷 満

 今、離島で何が起こっているのか? ニュースで都会から島に移住してきた人を取材するため訪れた笠岡諸島の一つ、真鍋島。瀬戸内海の景色はまさに風光明媚という言葉がぴったりで、島を歩いていると島人たちは「こんにちは、どこから来たの?」と話しかけてきてくれた。素朴でのんびりとした雰囲気に包まれた島のイメージ。しかし、島おこしをやっている人は、過疎・高齢化が急速に進み地域の衰退が激しいという。この島では、数年前まで菊づくりが盛んに行われていたが、放置された菊畑は、草が生え荒地に変わっていた。また、若者は仕事を求め都会に出て行ったため一人暮らしの高齢者が実に多い。本格的な医療施設もなく、健康に不安を抱え孤独に生きる高齢者たち。その現実はとてもさみしいものだった。今回の作品を通し、離島に今おきている現実をみつめ、島の未来を開拓しようと努力している人たちの姿を見てもらいたい。


<番組概要>


◆番組タイトル 第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『島に笑顔を〜笠岡諸島再生への挑戦〜』
◆放送日時 2007年12月22日(土)深夜2時55分〜3時50分
◆スタッフ
 プロデューサー 松元範夫
 ディレクター 勝谷 満
 構成 高橋 修
 ナレーター 田中秀幸
 撮影・編集 鴨井 勝
 制作著作 岡山放送


2007年12月19日発行「パブペパNo.07-391」 フジテレビ広報部