(1)番組の狙い
連日メディアに登場し全国で最も有名な知事となった東国原英夫知事。タレント出身の異色の知事だ。タレント・そのまんま東が知事を目指したきっかけ、それは故郷宮崎で起きた官製談合事件だった。
2006年10月以降、福島、和歌山、宮崎と続いた官製談合事件。3県の知事が逮捕される異常事態となった。
宮崎県では、2006年12月に安藤忠恕前知事が逮捕された。安藤前知事に選挙資金を提供した東京の設計会社ヤマト設計に、災害復旧工事を受注させた官製談合容疑だった。ヤマト設計は東京に本社があり、橋の設計や橋の耐震解析用ソフトを開発していた。宮崎県の誘致企業として宮崎県内に支店を設け、社員の多くは宮崎県出身者だった。だが県外企業のため公共工事の受注競争では苦戦していた。業者間での談合が日常化していた宮崎県では、新規参入の県外業者が公共工事を受注するのは至難の業であった。このヤマト設計の二本木由文元社長と安藤前知事の関係が今回の事件につながる。知事選挙の資金に困っていた安藤前知事は、二本木元社長に支援を要請。公共工事の受注を望んでいた二本木元社長は、3700万円の多額の資金を提供した。その見返りとなる公共工事の舞台となったのが、宮崎市田野町鰐塚山での災害復旧工事だった。
安藤前知事は疑惑を一貫して否定。知事の指示によって受注させることを意味する「天の声」は、一切出していないと言い続けた。警察は県の部長や職員を次々に逮捕し、知事立件に向けた証拠を積み上げた。
取材班は事件で逮捕されたヤマト設計宮崎支店の元支店長から証言を得ることができた。元支店長は、ヤマト設計の二本木元社長が安藤前知事に積極的に工事受注を働きかけていたことを明らかにする。県の職員からは「上のほうから聞いている」とも言われていたことも明かす。安藤前知事は疑惑を否定し続ける。「上」とは誰なのか。「天の声」とは誰なのか。元支店長は事件となった3つの工事について詳細に証言していく。元支店長は「知事さんというケースが多かったが、“お願いしているので仕事が取れるようになるはずだから”」と語る。二本木元社長と安藤前知事との間で交わされた約束が元支店長のもとに降りてくる。
そして元支店長は痛感する「事件の発端は選挙のときの金。これがなければヤマト設計が無理に安藤前知事に受注を迫ることはなかった」と。官製談合事件が摘発された福島・和歌山・宮崎3県とも事件の背景にあるのは「選挙とカネ」だったのだ。今回の事件の逮捕者は16人。起訴されたのは4人。このほかの12人は「上の指示に従っただけ」と起訴されず起訴猶予処分となった。
事件から半年。華やかな東国原知事の誕生で事件は人々の記憶から忘れ去られようとしている。一貫して容疑を否定し続ける安藤前知事の事件への関与は本当になかったのか。「真実はひとつ」こういい続けてきた安藤前知事。真相解明のカギとなる安藤被告の公判は、まもなく始まろうとしている。
(2)制作担当のコメント(テレビ宮崎 報道部 中村清子ディレクター)
全国で知事の逮捕が相次いだ官製談合事件。しかしその仕組みや何が問題なのかを十分に理解できる人は少ないのが現状です。業者間談合との違いがわかりにくく、表に出てこない水面下の話が多いためです。番組で事件を語った設計会社の元支店長は、「天の声」がどのように聞こえてきたかを詳細に告白しました。公に語られることのなかった官製談合の実態に迫る作品です。
(3)スタッフ
ナレーター |
: |
岡本嘉子 |
撮影・編集 |
: |
中川邦俊 |
取材 |
: |
テレビ宮崎報道部 |
MA |
: |
前田博文(VSQ) |
CG |
: |
森山里香 |
ディレクター |
: |
中村清子
水主義人 |
構成 |
: |
中村清子 |
アドバイザー |
: |
松石 泉 |
プロデューサー |
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赤塚 剛 |
制作 |
: |
弥勒 猛 |
制作著作 |
: |
テレビ宮崎 |