2007年9月3日(月)深夜3時〜3時55分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『眠る魚の大革命〜夢追い人と仲間たち〜』(制作:テレビ大分)は、中国の鍼麻酔からヒントを得、魚の運動機能だけを麻痺させ少ない水の中で生き続ける快眠活魚の技術を開発した大分県の
ト部俊郎さん(51歳)を追う。日本やアメリカの特許をとった技術の開発から10年、生きた魚を手提げの容器で航空機持込みできるまでになったが、ト部さんはその特許を大手会社などに売り渡すことなく漁業者と消費者を直接つなごうとがんばる。失敗や挫折を繰り返しながらも、いろいろな分野の技術開発を進め、今度はマグロの快眠に挑戦しようとするト部さんの10年とは…。
<企画意図>
穀物の大半を外国に依存している日本。マグロが食べられなくなると騒ぐ日本人。そして食の安全が叫ばれて久しい。そんな中で、世界的な特許技術を持ちながら「おいしい生きたままの魚を消費者にじかに届けたいという漁業者の思い」を大切にし、独特のアイデアで孤軍奮闘する男がいる。大分県にある「おさかな企画」代表:ト部俊郎(51歳)。食の安全の確保、そして漁業者、生産者の生きる道を切り開こうとする10年を追い、日本人にとって「食」とは何か、「地方で生きる」とは何かを探る。
<番組内容>
ト部が10年前に開発した技術とは、中国の鍼麻酔からヒントを得た「快眠活魚」。生きた魚のツボに鍼を打ち、運動中枢だけを麻痺させることで普通どおりえら呼吸をしながら何日も生かすことができるという画期的な技術で、日本はもちろんアメリカでも特許をとった世界的にも認められた技術であった。快眠させれば、それまで大型水槽を積んだトラックでしか運ぶことができなかった活魚を魚体より少し大きいだけの容器やビニール袋で陸送はもちろん飛行機便でも運べ、料理店では小さな設備だけで活魚を提供でき、しかもおとなしい状態で調理できる、いわば魚介類の流通革命でもあった。
この特許を大手企業に売れば数億円いや数十億円にもなることは間違いない。しかしト部はあえてそれをすることは一切なかった。
「漁業者の思い」を消費者に届けたい、漁業者ひとりひとりが自信を持って経済的にも自立できる道を作りたいという思いからだった。
釣り上げた魚や養殖した魚をその場で快眠させ、漁業者自身が直接料理店や消費者に送ったり、活魚を仕入れた業者が快眠させて魚体を安定させ、出荷直前にストレスの無い状態で鮮魚にして店頭に送ることで、より新鮮なおいしい状態で食べてもらえる。
実験の失敗、理解してくれない人々などさまざまな挫折も経験した。しかし賛同してくれる産地や水産会社のネットワーク作り、店頭の販売方法や輸送方法、新しい魚種の快眠方法などを家族の協力もあって次々に開発していった。
さらには、そうして送り出した魚をおいしく食べてもらえるためのしょうゆの開発販売、カキやホタテを安全に開くための器具の発明など、すべて「食の安全」、「漁業者の自立」などを夢見ての行動だった。
また、快眠させることで身の質や鮮度の保持ができることから、天然物の少ない魚種や時期にあわせて養殖魚の快眠を積極的に進め、現在の夢は「養殖マグロの快眠活魚」。
「快眠活魚」技術の開発から10年。大分という地方にありながら、その技術、独特の思考方法で世界に挑戦し続けるト部を追う。