FNSドキュメンタリー大賞
酒のボトルやシェーカーを宙に投げ自在に操るフレアバーテンダーの前田兄弟。
兄弟として、悩み、ぶつかり、時に自分を見失いながら、
いくつかの選択をして心の成長を遂げていく姿を追う。

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『俺たちのフレア〜前田兄弟の選択〜』

(制作:山陰中央テレビ)

<2007年6月2日(土)深夜4時10分〜5時5分>

 鳥取市の繁華街にあるパブで働く前田知憲さん(28)。店の練習場で汗を流す弟、武頼さん(24)。二人は、酒のボトルやシェーカーを宙に投げ自在に操るフレアバーテンダーだ。世界の競技会で活躍し、テレビにも進出、知名度も上がった二人。しかし、その裏で、彼らは兄弟として、悩み、ぶつかり、時に自分を見失いながら、いくつかの選択をして心の成長を遂げていた。6月2日(土)放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『俺たちのフレア〜前田兄弟の選択〜』(制作:山陰中央テレビ)<深夜4時10分〜5時5分>では、彼らの心の動きを3年以上前からの映像も交え、お届けする。


(内容)
 鳥取市の繁華街にあるパブで働く前田知憲さん、28歳。店の1階専用練習場で汗を流す弟、武頼さん、24歳。二人の兄弟は、酒のボトルやシェーカーを宙に投げ自在に操るショーマン、フレアバーテンダーだ。フレアとは「自己表現」。カウンターの内側、わずかなスペースを巧みに移動しながら縦横無尽に繰り出される彼らのショーは、気がつけばフレアバーテンディング(以下、フレア)という競技で日本のトップレベルに立ち、やがて兄弟ともに世界の舞台に踊り出ていた。
 夜の世界とはいえ、聖地ラスベガスを筆頭に世界的な協会もあるフレア。見た人の度肝をぬき、また魅了する華々しいフレア。近頃はテレビにも活躍の場は広がりだし、知名度もアップした。しかし、その裏で、彼らは競技者として、ショーマンとして、そして、兄弟として…悩み、ぶつかり、時に自分を見失いながらフレアと向き合った。そして自分たちの進むべき道を探り出すとともに心の成長を遂げた。
 番組は、そんな彼らの表舞台だけでなく、日常の心の動きをつぶさに描き出し、彼らが今、何にたどり着こうとしているのか、3年以上前から追い続けてきた映像をもとに構成し、そこから透かして見えてくる現代社会に必要な「心の絆」を探る。
 兄、知憲は中学時代、わずか2年足らずの経験で、フィギュアスケート国体の県代表選手に選ばれる。しかし膝の故障で引退。県内有数の進学校に進むも、ついえた夢が大きかっただけに、目標を見出せないでいた。やさぐれもした。そんな時、出会ったのがトム・クルーズ主演の映画「カクテル」。映し出されるフレアショーに魅了された。その瞬間、ついえた夢をフレアに変え、新たな道を歩み出す。フレアバーテンダーになるために…。目標を見すえた彼の努力は、夜の世界へ。時には、物理で10をとるほどの秀才ぶりを発揮した集中力はすべてがフレアへと注ぎ込まれた。地方都市・鳥取、フレアに関する情報は皆無に等しい中、競技に使う道具の購入から練習方法まで、すべてを開拓していった。フロンティアスピリッツ。彼にふさわしい言葉だ。高校を卒業後、現在のパブで働き出した兄はバーテンダーの仕事を終えた深夜、まさしく血のにじむようなフレアの練習を続けた。そして、瞬く間に全国、世界の舞台へと駆け上がっていく。
 幼い頃、そんな兄の背中を追いかけていた弟・武頼。彼もまた、同じフィギュアで挫折し、その後東京で金を稼ぐだけの生活を送っていた。こちらもやさぐれた。そんな中、再び出会ってしまった。大会に出場し、スターダムを疾風のごとく駆け上がる兄・知憲に…。こうしてまた、同じ道を歩み出した前田兄弟。兄は努力の天才、弟はセンスの人。それぞれのフレアを追及するうち、いつしか二人の間には目には見えない溝ができていた。それぞれが違った個性を主張する兄弟であるがゆえに。そして、世界最高峰の大会で個人として競った結果は兄3位、弟9位。同じ大会に出れば順位が決まるのはあたりまえだ。兄弟として、競技者として、ショーマンとして…。いつも心は揺れていた。近づいたり遠のいたり。一人の時間、二人の時間、フレアの技がシンクロするショー「タンデム」。そして二人は一つの答えを導き出す。兄として弟としてお互いが、今はまだ必要なんだと…。
 「ショーマン」…「人々の心を魅了する芸の人。フレアとは自分を表現すること。形にはこだわらない。見てくれる人にもこだわらない。夜の世界も飛び出した。
 そして今、二人はまた新たなフレアをつむぎだす。フレアバーテンダー前田兄弟として。


<制作者のコメント>

 この企画は、彼ら兄弟が活躍しだす前にニュースで取り上げたのがきっかけでした。その後も彼らの技術、思い、考え方に興味がひかれ「彼らはすごい、追っかけたい」といった土井カメラマンとともに取材を続け、ついにはドキュメンタリーへとつながりました。
 見た目は茶髪にタトゥーと派手な兄弟ですが、彼らの中には一つのことを真摯に追及し、努力を惜しまない、あきらめない、そんな今の若者に欠けている部分がいくつも見え隠れし、「なんでだろう」という素朴な疑問はどんどんエスカレートしていきました。
 世界を舞台に飛び回る彼らの表の活躍ぶりを取材するうち、見えてきたのは心の兄弟ゲンカでした。直接、殴りあうわけではありませんが、フレアという競技を通し、お互いの心がぶつかり合うシーンに出会いました。華やかなだけではない、彼ら兄弟の普段の素の表情は、純粋そのもので、取材する私たちの心に直接何かを語りかけてくる日々でした。学生時代は決して優等生ではなかったこの兄弟がフレアを通じて大きく成長する姿に出会えたことに感謝しています。

【ナレーター】 篠原まさのり
【企画・撮影・編集】 土井康雅
【音響効果】 関口政孔
村松勝弘
【CG】 清山肥美
【構成】 高橋 修
【ディレクター】 大坂和正
【プロデューサー】 野津富士男

2007年6月1日発行「パブペパNo.07-154」 フジテレビ広報部