FNSドキュメンタリー大賞
大きなハンディを逆バネとして前に進み続ける上田真弓さんと
彼女を支える看護学科の学生たちの交流を中心に、
支えながら生きる人と人、一つの共生の形を描いていく

第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『あしたをうたう〜共に生きるあなたとわたし〜』

(制作:高知さんさんテレビ)

<11月30日(木)深夜3時10分〜4時05分>

 11月30日(木)深夜3時10分〜4時05分放送の第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『あしたをうたう〜共に生きるあなたとわたし〜』(制作:高知さんさんテレビ)は、大きなハンディを逆バネとして前に進み続ける上田真弓さんと彼女を支える看護学科の学生たちの交流を中心に、支えながら生きる人と人、一つの共生の形を描いていく。

<企画概要>

 大学4年生、教師になるという夢が叶う直前に、不慮の交通事故で頚髄を損傷、胸から下が麻痺する重度の障害を背負った上田真弓さん(39)。過酷な現実と向き合いながら厳しい闘病とリハビリを経て、車いすの生活をスタートさせた。その後医療ソーシャルワーカーとして高知市内の病院に職を得た彼女の身辺を、高知女子大学看護学科の学生たちが12年にわたって世話をしている。ハンディを逆バネとして力強く前に進み続ける真弓さんと彼女を取りまく学生たちとの交流を軸に、ひとつの共生の形を描く。

<番組内容>

 南国土佐を一層熱く演出する「よさこい鳴子踊り」、華麗な乱舞の中でひときわ大きな拍手を浴びるチームがある。障害をもつ人たちが参加している「てんてこまい」である。このチームを引っ張るのが車椅子のリーダー上田真弓さん(39)である。こんな明るいほがらかな女性に、胸から下の感覚を全く失った重度の障害があるとはとても思えない。この明るさはどこからきているのだろうか。
 真弓さんは現在、「医療ソーシャルワーカー」として文字どおりてんてこ舞いの日々を送っている。不慮の事故に遭い絶望している人や、病気で落ち込んでいる人の相談に乗ったり援助したりする専門の仕事である。自分の体験を元に、悩む人たちに寄り添いながら仕事をしている。 

 そして、真弓さんの毎日は介助なしには成り立たない。両親や職場の同僚など、多くの人たちに支えられている。とりわけ、多くの“妹たち”が彼女を支えている。県立高知女子大学の看護学科の学生たちが、介助の“生きた教材”として身の回りの世話を含めてサポートしている。介助は先輩から後輩へと引き継がれ、もう12年間になる。
 夕方5時、病院での仕事を終えた上田さんを学生二人が迎えにくる。病院から上田さんの自宅までは車いすで10分。学生の操作する車いすに安心して体をゆだねる真弓さん。会話がはずんでいる。部屋に入ると学生たちは機敏に対応する。洗濯物を取り込む役、お風呂の温度調節をする係。まるで我が家で家事をしているようななめらかな動きである。入浴介助が終わると、しばらくの間おしゃべりが続く。就職の悩みや恋愛、結婚のことなど会話は尽きることがない。介助学生は「高知にお母さんができたみたい」と真弓さんの魅力を語る一方、「真弓さんの介助をしていて、それぞれに介助方法が異なることがわかった。その人に合った介助方法を自分で考えていけるようになりたい」と話す。将来の自分たちの仕事について日々学びながら、真弓さんとの絆を深めている。

 高知県梼原町に生まれ育った真弓さんは、学生時代バレーボールに青春を燃やしていた。地元の高校から中京大学に進み、アタッカーとしてインターカレッジなどで何度も胴上げの感激を味わった。
 その真弓さんの人生が暗転したのは平成元年2月3日。念願の体育教師を目指していた真弓さんが、高知県教員採用試験の一次試験に合格した、まさにその日だった。
 大学生活も残りわずか、友人の運転する車で卒業旅行に出かけ事故に巻き込まれた。一命はとりとめたものの、頸髄(けいずい:脊髄の上部、首の骨の中にある部位。身体を制御する重要な神経系の束が通っている部分)を損傷。胸から下の感覚を失い、手がわずかに動かせるだけという重い障害が残った。同乗のチームメイトは即死だった。
 4年にわたる入院生活、厳しいリハビリの試練を経て、自立の人生を模索する。平成5年、念願の医療ソーシャルワーカーとして高知市の病院に働く場所を得た。車いすでの人生を出発させたのである。
 平成7年から高知市内のマンションで一人暮らしを始めた真弓さん。病院での仕事の傍ら、講演で自らの体験をとおし「あすへの希望」を語ることも生きがいになっている。講演の中で上田さんは障害者としての自分をさらけ出す。不自由な体の様子をこれまでに編み出した生活の知恵の数々とともに淡々と話す一方で、絶望のふちにいた当時の苦しい思いも語っている。上田さんの講演を聞いた女子高生は「1日にして人生が大きく変わったけれど前向きに生きている真弓さんはすばらしい」。また男子学生は「生きるということは自分の全てを使っていくこと、力強く生きていきたい」と感想を語った。

 桜舞う春。かつて真弓さんの介助をしていた高知女子大学看護学科の学生たちの卒業パーティーの日がやってきた。真弓さんから様々な経験と思いを受け取った卒業生たち。真弓さんに向けた別れの歌を歌いながら、それぞれの希望を胸に社会に旅立っていった。
 そして真弓さんも新たな旅立ち−。今春高知大学大学院に入学し、障害児教育を研究することにしたのだ。一度あきらめた教師の夢。真弓さんはこの先、研究する立場から教育に関りたいと思っている。
 この番組では、大きなハンディを逆バネとして前に進み続ける上田真弓さんと彼女を支える看護学科の学生たちの交流を中心に、支えながら生きる人と人、一つの共生の形を描いていく。

<企画・鍋島康夫のコメント>

 上田真弓さんはこの春、高知大学大学院に入学、医療ソーシャルワーカーとしての仕事をこなしながら障害児教育の研究をスタートさせた。上田さんの積極性と明るさは一体、どこからくるのだろうか。取材を終えた今でも明確な答えは見つけられない。
 上田さんと話をしていると、いつのまにか彼女が重度の障害者であることを忘れてしまう。それほど彼女は明るくてほがらかなのである。継続して上田真弓さんの取材を続けたいと思っている。


<番組概要>

◆番組タイトル第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『あしたをうたう〜共に生きるあなたとわたし〜』
◆放送日時2006年11月30日(木)深夜3時10分〜4時05分放送
◆スタッフ
 語り野村 舞(高知さんさんテレビ アナウンサー)
 撮影吉田卓史
岡林 聡
氏原一晃(オーバーラップ)
 編集吉田卓史
 映像処理服部淳一(高知さんさんテレビ 報道部)
 構成・取材大井清孝
 企画鍋島康夫(高知さんさんテレビ 報道部)
 制作高知さんさんテレビ

2006年11月22日発行「パブペパNo.06-407」 フジテレビ広報部