FNSドキュメンタリー大賞
鹿児島県垂水(たるみず)市の山間にあった大野小中学校。
昭和30年代には200人前後いた児童・生徒数も年々減り続け、平成17年にはわずか9人。遂に閉校となった。
番組では、日本の過疎と少子化の縮図として大野小中学校の閉校を見つめる。

第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『過疎と少子化の縮図〜さようなら大野小中学校〜』

(鹿児島テレビ制作)

<10月1日(日)深夜2時35分〜3時30分放送>

 鹿児島県垂水(たるみず)市の山間にあった大野小中学校。校区は、大正3年の桜島大爆発で桜島から逃れてきた移住者によって開拓されたという特異な歴史を持つ。
 昭和30年代には200人前後いた児童・生徒数も年々減り続け、平成17年にはわずか9人。遂に閉校となった。
 僻地にもたらされる閉校という静かな衝撃、そして苦悩。どうしても避けられないことなのだろうか。
 10月1日(日)放送第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『過疎と少子化の縮図〜さようなら大野小中学校〜』<深夜2時35分〜3時30分>(鹿児島テレビ制作)では、日本の過疎と少子化の縮図として大野小中学校の閉校を見つめる。

(内容)

 鹿児島県垂水(たるみず)市立大野小中学校。創立は大正4年。児童・生徒数は昭和36年度の191人をピークに年々減り続けてきた。
 小学校は複々式(2年、3年、4年が一学年)、中学校も1・2年が複式学級の小中併設校として存続してきたが、平成18年3月に遂に閉校という運命の日を迎えることになった。

 校区は、桜島を見上げる錦江(きんこう)湾沿いの町、垂水市中心街から内陸へ13キロ、高隅(たかくま)山系の中腹にある大野原(おおのばる)・垂桜(たるざくら)・高峠(たかとうげ)・駒ケ丘(こまがおか)の4つの集落からなっている。校舎は大野原にあって標高550メートル地点の僻地1級の学校である。そもそもこの一帯は、大正3年の桜島大爆発で桜島から逃れてきた移住者と戦後の入植者によって開拓され、畑作を中心に農業を営んできた。

 開拓当初は、83世帯が入植して原野や原生林を開墾する苦闘と電気・水道のない苦難の多い生活であった。当時は84人の児童がいながら学校に通っていたのはわずかに20人程度との逸話もある。おそらく手伝いや子守りに借り出されていたものと思われる。

 その開拓地も高齢化による過疎や少子化の大きな歴史の流れの中で徐々に児童・生徒数が減り続けて、昭和45年には100人を切り、平成元年には50人を割った。そして、平成17年はひと桁の9人(44年間で20分の1)にまで減ったのである。5世帯に小学生が5人、中学生が4人いる。平成17年4月の小学校入学生はゼロ、中学校入学生は1人、平成18年3月の卒業生は中学校に1人、迫田和(さこたいずみ)君だけである。

 閉校……。子どもたちは閉校という運命をどう受けとめているのだろうか。地域にとって閉校はなにを意味するのか。番組では、閉校が決まった去年から取材を開始。母校がなくなる9人の子どもたちとその家族に接触を始めた。中学卒業の和君は校内では下級生からも頼りにされている頼もしいお兄さんであり、リーダーである。その和君が小学校に入学した時の貴重なインタビュー映像がある。好きな物は「車!」と答えている。和君の中で車にかける夢はだんだん大きくなって高校進学は県立の工業高校の機械科を受験する。閉校の憂いを乗り越えて夢を叶えるべく受験勉強も追い込みに入った。

 校区内の住民には「学校のことならどんな協力も惜しまない」との気風が受け継がれているという。学校行事は地域の大事な行事でもある。例えば、中学生の学習発表会の授業であっても、子どもがいない住民まで大勢、教室に駆けつけてくる。その住民にとっても閉校はただ事ではない。

 平成18年3月14日中学校卒業式。大野中学校、最後の卒業生を送り出した。
 そして、19日の閉校式。いよいよ学校との別れがやってきた。閉校式には、地域の住民や都会に出ている卒業生など400人が参加。盛大に催された。思い出話に花が咲き、久しぶりに大野がにぎやかになった。しかし、あすから学校はなくなる。

 平成11年に完成したりっぱな体育館はまだ真新しい。地区には、地元大学の付属演習林もある。これらを利用して、閉校後、小中学生に対して環境教育を行う「自然学校」を設立する計画が立てられ、関係機関や地元住民の間で検討が続けられている。閉校の憂いを跳ね返してくれる新たな光りは差してくるのか。

 全国各地に数ある僻地1級の小規模学校には常に閉校の不安が消えない。毎年のようにどこかが閉校という宿命を迎えている。僻地にもたらされる閉校という静かな衝撃、そして苦悩。どうしても避けられないことなのだろうか。
 番組では、日本の過疎と少子化の縮図として大野小中学校の閉校を見つめる。

<制作者コメント>

 鹿児島テレビ 番組制作局アナウンス部 山本慎一

 山村、漁村のコミュニティーの崩壊が進んでいます。農業・漁業の担い手はなく、山林の荒廃も抜き差しならないところまできています。都市部への集中が進み、多くの集落が消え去る運命にあります。「学校」の閉鎖はその象徴です。10年後、20年後の地域社会はどうなるのか。そして日本は?
 番組は、学校を残したい「地域住民」としての立場と子どもに良い教育環境を与えたいという「親」の立場で揺れるPTA会長や、同級生が多いほうがいい、というものの、自分たちの学校が消えることの寂しさを隠しきれない9人の子どもたちを中心に展開します。本当に地域全体が家族のような集落の人たちの笑顔のおかげでほのぼのとした温かい番組になっていますが、私としては、厳しい現実を日本人に突きつけたつもりです。


スタッフ

 総括 吉留勝之
 プロデューサー 徳留孝一
 ディレクター 山本慎一
 構成 徳丸 望
 ナレーター 藤田弓子
 撮影・編集 山内誠洋
 音声 日高康太
 MA 万善弘美
 美術 畠中夏紀
 制作 鹿児島テレビ

2006年9月20日発行「パブペパNo.06-317」 フジテレビ広報部