FNSドキュメンタリー大賞
日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)。
番組では竹島問題をめぐる1年の動きを追う。

第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『竹島』

(山陰中央テレビ制作)

<9月27日(水)深夜3時29分〜4時24分放送>

 日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)。戦後占拠を続ける韓国に対し、「両国の国民感情を煽らないで問題解決を図る」という立場の日本。問題解決が長引く中、好漁場である竹島周辺に山陰の漁業者は近づくことさえ許されない。
 島根県の竹島の日条例制定から1年。韓国では子どもでも知っている竹島。記憶の風化を恐れる隠岐の漁師。この問題を伝えた日韓のメディア。そして翻弄された市民交流。解決の糸口はないのか。9月27日(水)放送の第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『竹島』(山陰中央テレビ制作)<深夜3時29分〜4時24分>では竹島問題をめぐる1年の動きを追った。

【竹島問題とは…】

 日本海に浮かぶ竹島。日比谷公園ほどという小さな竹島を巡り、日本と韓国が領有権を争っている。そもそも日韓両国が領有権を主張する根拠とは何か。
 日本は、遅くとも江戸時代には、鬱陵島(ウルルンド)で漁をするための中継基地として竹島を利用し、1905年には国際法に則り、竹島を島根県に編入した。これに対し韓国側は、6世紀の自国の文献に書かれた于山島が独島だとし、島根県の編入は朝鮮半島侵略の第一歩と反発している。
 戦後、実効支配を続ける韓国。「両国の国民感情を煽らずに問題解決を図る」立場の日本。問題解決が図られないまま半世紀が過ぎた。

【竹島で漁をした数少ない漁師】

 竹島は隠岐の漁師が生活の糧を得るため漁場として開拓した豊かな漁場だ。しかし、戦後、韓国が実効支配を始めて以降、日本の漁船が近づけない状況が続いている。多くの漁船員が韓国側に拿捕された。また、銃撃を受け犠牲者が出る事態も起きた。
 また、領土問題を棚上げにして日韓で設定した竹島周辺の暫定水域には、両国の漁船が入れるはずだったが、現実は違った。
 竹島問題は領土問題という側面だけではない。山陰の漁業者の生活に直結している問題なのだ。
 「もう一度行ってみたい…」
 島根県隠岐の島の漁師、八幡尚義さん。80歳。竹島で漁をしたことのある数少ない漁師だ。父・才太郎さんは、かつて政府に竹島問題の解決を訴えたが、目立った反応はないまま世を去った。才太郎さんから竹島返還運動を引き継いだ尚義さんの弟、昭三さんは、政府そして国会議員の消極的とも映る姿勢に批判的だ。こうした姿勢が漁民の長年の願いである、竹島問題の解決を遅らせていると感じている。

 「露日戦争直後に所有者のない島だと言い張っては困るんだよ」(「独島は我が地」の歌詞より)

 韓国では、こうした歌を歌いながら小学生の時から竹島について学ぶ。

 「独島教育は、反日教育ではありません。お互いに理解し合い、互いに平和を求める教育が優先されなければならない」

 小学校の校長は、竹島を学ぶことについてこう語った。

 韓国の小学校にとって「独島教育」は領土問題の勉強ではない。郷土学習なのだ。一方、日本では最近まで教育現場でこの問題を取り上げてこなかった。韓国とは対照的だ。

【竹島の日条例の波紋】

 こうした中、竹島を所管する島根県は2005年3月、竹島を正式に編入した2月22日を「竹島の日」とする条例を制定した。竹島問題の世論喚起が目的だった。この状況に韓国側は猛反発。マスコミも一斉に批判した。韓国メディアのひとつは、竹島についての報道をこう語る。
 「独島が韓国領だということは政府と同様、当然と思っている。国民の声を代弁するのがマスコミの立場。韓国民は領土の侵略だと考えており、それを反映して報道している」
 日本のマスコミも連日、報道を続け、国内でもこの問題に対する認知度が上がった。韓国に比べて関心が低く、知る人も少なかった竹島問題。これまでマスコミがあまり取り上げてこなかったことと無縁ではない。
 また、2006年4月、海上保安庁が計画した竹島近海の測量調査を巡り、日韓の外交問題まで発展した時も、日韓のマスコミは大々的に伝えた。この“騒動”を山陰の漁業者は冷ややかに見つめた。
 「この騒動で漁業者は何も変わっていない。騒いでいる現象ではなく、問題の元が何なのかをマスコミは伝えてほしい」

【翻弄された市民交流】

 こうした騒動に翻弄されたのが日韓の市民交流だった。中でも自治体間の交流は、断絶や中断に追い込まれた。
 韓国のオンヌリ国楽芸術団は、結成10周年の2005年、記念イベントに島根県内の芸能団体を招いていたが、この団体の安全が確保できないとして断念した。
 団長は、日韓交流の大切さをこう説く。
 「日本と韓国は、政治的な対立をしながらも古くから文化交流をしている。だから政治的に対立しても文化交流は切れないし、文化交流があっても政治的対立がなくならない。だからこそ政治対立が大きくなればその分、民間交流をふやすべきだ」

 韓国が実効支配を続けて半世紀。領土意識を着々と築いてきた。一方、竹島の歴史の風化が懸念される日本。正反対の両国で、解決の糸口さえ見出せない竹島問題を追った。

<澤田陽ディレクターの話>

 「これまで、日本のマスコミはあまり竹島問題を取り上げてくれなかった」。
 韓国に占拠されて半世紀。ずっとこの問題の解決を願っている隠岐の漁師さんの言葉です。この問題を知る人さえ少なかった日本。これまで地元の放送局としてどうだったのか。自問自答しながらの取材でした。
 竹島問題解決の第一歩は、まず日本人がこの問題について知り、客観的事実を正しく理解することではないでしょうか。これが、日本人も韓国人もできているのでしょうか。
 この番組を通して、竹島問題という日韓のトゲについて両国の人々が認識を新たにしてもらい、この問題をクリアした真の日韓交流について考えるきっかけになればと思います。


<スタッフ>

 プロデューサー 小原千明
 ディレクター 山根 収
澤田 陽(構成)
 ナレーション 吉田 孝
 カメラ 曽田泰弘
杉谷俊洋
 MA 宮地 亨
 編集 古川 淳
 制作 山陰中央テレビジョン

2006年9月15日発行「パブペパNo.06-311」 フジテレビ広報部