薩摩から全国に広まった「さつまいも」。
鹿児島県本土伝来300年の今年、脚光を浴びている。
江戸時代の飢饉、戦後の食料難を救った「さつまいも」の歴史をたどると共に
深く関わって生きてきた人々の思い、そして未来を探る。
第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『さつまいもと生きる〜野の恵み〜』
(鹿児島テレビ)
<2005年11月22日(火)深夜2時33分〜3時28分> |
11月22日(火)深夜2時33分〜3時28分放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『さつまいもと生きる〜野の恵み〜』(制作:鹿児島テレビ)では、今年で鹿児島県本土伝来300年の「さつまいも」にスポットをあて、歴史をたどると共に私たちの生活を支えてきた「さつまいも」の未来を探る。
<企画概要>
今年で鹿児島県本土伝来300年となる「さつまいも」が今脚光を浴びている。江戸時代の飢饉や戦後の食糧難を救った「さつまいも」は、いまや銀座のデパートでは高級スイーツとして人気を集めている。この「さつまいも」の歴史をたどるとともに、深く関わり生きてきた人々の思いを取材し、そして、さつまいもの未来を探る。
<番組内容>
薩摩から全国に広まった「さつまいも」。鹿児島県本土に伝来して300年の今年、さつまいもを見直す動きが高まっている。さつまいもは痩せ地で育ち収穫量が多いという点で、過去の歴史においては江戸時代の飢饉や戦後の食料難を救い、嗜好(しこう)の変わった現代では健康食や加工品としてのニーズに沿った役割を果たしている。鹿児島にとっては、いまや全国区の人気となった黒豚の飼育、いも焼酎の原料としてなど産業の基盤となっている。
幻の焼酎と呼ばれ人気を確立した「森伊蔵」の蔵元を訪ねた。当主は、創業当時から120年使い続ける甕壷(かめつぼ)・木と石で出来た蔵には独自の菌が住みつき焼酎のうまみを醸し出していると語り、蔵の拡張や移転は全く考えていない。年間生産量は1升瓶120万本。需要と供給のバランスは完全に崩れ、手元を離れたところでの価格高騰に心を痛めている。しかし、極力機械を使わず人の五感で焼酎をつくることが森伊蔵の伝統。ものづくりに対する真摯(しんし)な姿勢が、時代を引き寄せている。
鹿児島県出水市出身のフランス料理シェフ・坂井宏行さんはさつまいも嫌い。1942年生まれ、育ち盛りの頃はまさに物が乏しい時代。学校の弁当の中身は毎日さつまいもで、その当時に一生分食べたからと笑う。その坂井シェフは、毎年秋になるとさつまいものスープをコースに加える。嫌いでもさつまいもの美味しさは誰よりも知っているという自負。人生の忘れがたい味は、高級食材を自在に操り華やかな料理を生み出す腕の大きな後ろ盾となっている。
さつまいもは、1705年に鹿児島県山川町の漁師・前田利右衛門が琉球から持ち帰ったものが根付き、青木昆陽の手によって全国に広まった。その功績は大きいが、さつまいもの実はそれ以前にもたびたび渡来している。
種子島では、1698年に領主が琉球から手に入れたさつまいもの苗の栽培を命じられた農民・大瀬休左衛門の子孫が、いまも栽培に励んでいる。種子島は鉄砲伝来の島として有名だが、さつまいも伝来についてはあまり知られていない。大瀬良雄さんは「鉄砲は人の命をとるもの、カライモ(さつまいもの方言)は人を救うもの」、その両方が伝わった島の住民としての誇りを胸に、日々淡々と歴史を受け継ぐ畑での作業に精を出している。
琉球を挟んだ伝来のルーツ・中国は、世界最大のさつまいも生産国。ベトナムとの境に浮かぶ海南島のさつまいも事情を取材した。広々とした畑だけに収まらず、道路脇や建物の陰などいたるところにさつまいもが見られる。さつまいもは「地瓜」と呼ばれ、蔓や葉も食材としてにぎやかな市場に並ぶ。海南島のある地域では、各家庭でさつまいもの酒を作っている。さつまいもを発酵させて火を入れると、日本人の感覚にはやや薄めの酒が垂れ始める。専門家によると大正時代までの鹿児島の風景とよく似ている。さつまいもを食べ、さつまいもで酔う。長い時間の中で培われた共通の生活や文化がそこにあった。
今年全島の避難指示が解除され、復興に取組んでいる東京都三宅島。そこに鹿児島からさつまいもの苗が送られた。主要な農業であった観葉植物類はガスに弱く、新たな産業としてさつまいも栽培に取り組んでいる。草木が伸び荒れ果てた林の中に手作業で切り開かれた小さな畑。そこに根をおろした1500株は、復興の切り札になり得るのか。さつまいもの収穫量が安定すれは、島の土産品としての菓子の開発やいも焼酎の復活など、その可能性に期待が高まっている。
九州沖縄農業研究センターのデータでは、動物実験によりさつまいもに含まれる成分が糖尿病の血糖値を下げる効果や血圧を下げる効果を持つことが明らかになっている。そして、エイズウィルスの増殖を抑えるなど薬として使える可能性を示す結果も出ている。
さつまいもは、あくまで脇役としてそれぞれの時代で役割を持ち、人とのかかわりにおいて進化してきた。
今後、私たちの将来をどのように支え照らしてくれるのだろうか。
<制作担当コメント>
「これまでは、さつまいもなんて身近すぎて目を向けることがなかったけれど、取材でお会いした人たちの話しはどれも力強く温かかった。『いも=ダサい』というイメージが
過去のものとなるよう願うばかり。」
<番組概要>
◆番組タイトル |
: |
『さつまいもと生きる〜野の恵み〜』 |
◆放送日時 |
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11月22日(火)深夜2時33分〜3時28分放送 |
◆スタッフ |
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プロデュ―サー |
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川越保光 山口修平 |
ディレクター |
: |
山下かすみ |
構成 |
: |
中村 裕 |
ナレーター |
: |
藤井千夏 坪内一樹 |
撮影 |
: |
山内誠洋 |
VE |
: |
鳥井ヶ原 良 |
編集 |
: |
中嶋辰郎 |
音効 |
: |
伊地知宏和 |
題字 |
: |
鎌田兼弘 |
制作 |
: |
鹿児島テレビ |
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2005年11月11日発行「パブペパNo.05-391」 フジテレビ広報部
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