FNSドキュメンタリー大賞
自殺した静岡県内の教師の遺族や
公務災害認定を求める活動を支援する教師たち、
教師を診察してきたベテラン精神科医を取材し、
今、教育現場で起きている問題点を探るとともに、その解決策を考える!!

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『先生の叫び』

(テレビ静岡制作)

<11月2日(水)2時33分〜3時28分>【11月1日(火)26時33分〜27時28分】放送>

 “うつ病”や“神経症”などの精神疾患で休職する教師が増えています。自殺する教師も増えています。教師たちは今、何に悩んでいるのでしょうか。
 11月1日(火)【11月2日(水)】放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『先生の叫び』(テレビ静岡制作)<2時33分〜3時28分【26時33分〜27時28分】>では、自殺した静岡県内の教師の遺族や公務災害認定を求める活動を支援する教師たち、教師を診察してきたベテラン精神科医を取材し、今、教育現場で起きている問題点を探るとともに、その解決策を考えます。

<番組内容>

 昨年9月、静岡県内で、教師になってわずか半年の新人教師が焼身自殺を図りました。5年前には48歳のベテラン教師が自殺。全国で年間70人〜100人の教師が自殺しています。今、学校では何が起きているのでしょうか?
 教師の遺族と、支援する教師の現状を取材していくと、「子どもへの対応が大変だから」という理由だけで教師が「心の病」にかかるのではないとわかります。悩みを同僚に打ち明けられない、教師同士のつながりが希薄になっている現状が見えてくるのです。
 精神科医は言います。
 「先生は孤独だ。クラスを持っていても競争している。本当に治し難い。」と。
 まもなくベテラン教師が大勢退職していきます。これからを担う新人は大丈夫なのでしょうか?
 医師・弁護士・教師…。今、「先生」と呼ばれる人たちが教育現場の問題を洗い出そうとしています。
 自殺した教師の遺族や公務災害認定を求める活動を支援する教師たち、教師を診察してきたベテラン精神科医を取材し、今、教育現場で起きている問題点を探るとともに、その解決策を考えていきます。

○自殺した教師たち

<新人教師の自殺>

 昨年9月、静岡県内の小学校で、教師になってわずか半年の女性教師が焼身自殺しました。娘は何に悩んでいたのか。両親は日記や同僚の証言をもとに知ろうとしました。そこには、授業がうまくいかず焦っていたこと、上司からの叱責などが記されていました。子どもの対応以前に、教師同士の希薄な関係が新人教師を「孤独」に追い込んでいたことがうかがえたのです。

<ベテラン教師の自殺>

 5年前、養護学級のベテラン女性教師が自殺しました。彼女は、重い障害を持つこどもが、養護学校から2週間の体験入学でやってきたことがきっかけで、うつ病になってしまいました。。体験入学の成果を上司にも、同僚にも聞いてもらえなかった孤独。遺族は自殺を公務災害と認めるよう、求めています。
 自殺した教師の弟は、こう語ります。
 「公務災害と認めて欲しい訳ではないのです。教師がうつ病になる原因をなくし、二度と悲劇が起こらないようにしたい。姉を研究材料にして欲しい。先生は貴重なんです」と。

○支援する教師たち

 教師たちの自殺を巡り、必死に戦っている人たちもいます。
 教師歴33年の齋藤達雄先生。齋藤先生も「教師を辞めたい」と思った辛い経験がありました。4年前、ADHD(注意欠陥多動性障害)のこどもを受け持ったときのことです。キレると30分キレ続けるこども。押さえるのに必死でした。他の子にケガをさせてはいけない。こどもに背を向けて黒板に立つことができなくなりました。齋藤先生は、その子の保護者から「病気のことを内緒にして欲しい」と言われ、他の先生に相談することもできませんでした。
 1人で全てを背負い込んだのです。

○うつ病の教師を診察してきたベテラン医師

 浜松医科大学名誉教授 大原健士郎医師。75歳。大原医師は、大勢の教師を診察してきました。
 突然、授業中にチョークを食べだした教師。
 手ばかり洗い続けている不潔恐怖症の教師。
 大半が、「神経症」または「うつ病」です。
 大原医師は言います。「前から教師の心の病はあった。それを教育委員会が隠してきたんだよ。その体質も変えなければならない。教師は孤独だ。本当に治し難い」と。
 大原医師は、8年前に診察した高校の元教師のことが気になっていました。


【橋本真理子ディレクターのコメント】

 相次ぐ教師の自殺・長期休暇・不祥事。先生が病んでいる現状をどう映像化するか、日々悩んでいました。そんな時、5年前に自殺した教師の弟に出会ったのです。
 「“公務災害”と認定して欲しい。二度と悲劇を起こしたくない」
 その思いを無にしてはならないと取材は始まりました。
 去年9月。24歳の女性教師が、自宅近くの駐車場で焼身自殺を図りました。この事実は、警察も発表していません。学校も、こどもや保護者・同僚の教師に対し「不慮の事故」という説明しかしていません。私は、知り合いの教師から「教師になってわずか半年の新人が灯油をかぶって自ら命を絶った」と知らされました。若い女性がなぜこんなにも激しい死を選んだのでしょうか。
 自殺の理由は何なのでしょうか。
 遺族や支援する教師、精神科医からは「教師は孤独」という言葉が頻繁に出てきます。愕然としました。先生同士が話す時間もなく、職員室が冷たい雰囲気でどうやって生き生きとした教育ができるのでしょうか?
 文部科学省も「こどもの心の病」には必死になってきましたが、「教師の心の病」には本腰を入れてはいませんでした。しかしここで、この問題を指摘しなければ、教育は一向に良くならないと私は感じました。正々堂々とカメラの前に立ってくれる人達、正々堂々と叫んでくれる人達を探し出すのに苦労しましたが、モザイクをほとんど使わずに映像表現できたことにほっとしています。


<ナレーション> 大地康雄(俳優)
<教師の声> 新 千恵子(声優)

【スタッフ】

<プロデューサー> 長谷川 明(テレビ静岡)
<取材・構成> 橋本真理子(テレビ静岡)
<撮影> 杉本真弓(テレビ静岡)
<編集> 古本孝子(テレビ静岡)
<映像・編集統括> 大村義治(テレビ静岡)
<制作> テレビ静岡

2005年10月14日発行「パブペパNo.05-344」 フジテレビ広報部