FNSドキュメンタリー大賞
体中の筋肉が極端に弱く、自分で歩くことも
呼吸することもできない出生10万人に1人という
難病を抱えた、戸次吏鷹(へつぎりょう)君(11歳)のひたむきさ、
そして、彼を支える家族や養護教諭などの姿を通して、
夢を持って生きることの素晴らしさを描いていく。

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ぼくは小さな大作家〜幸せ描く難病少年〜』

(テレビ大分制作)

<10月17日(月)2時55分〜3時50分【10月16日(日)26時55分〜27時50分】放送>

 別府市に住む戸次吏鷹(へつぎりょう)君(11歳)はネマリンミオパチーという体中の筋肉が極端に弱く、自分で歩くことも呼吸することもできない出生10万人に1人という難病で、大分県立石垣原養護学校の5年に在籍しています。しかし、そのほとんどの時間を自宅のベッドの上で過ごしています。
 自由にしゃべることもできないりょう君ですが、人一倍明るくて好奇心が強く、自宅への訪問授業で習ったパソコンを使って自分の意思や思いを伝えてくれます。
 そして、テレビやインターネットを使って世界観を広げ、文字や情報を次々に手に入れて知識を増やしていきます。
 そんなりょう君がパソコンの愛称「パソコ」を使って始めたのが「おはなし」作り。
 2作目の「からだ大冒険」は身体を小さくする薬で小さくなった名医が患者の中に入って不治の病をなおすといった自分と重ね合わせたようなストーリー展開です。これにイラストがつけられ、絵本として発売されました。

 私たちが初めてりょう君に会ったのは去年の夏。以来、およそ一年間、りょう君とお母さんの生活を目の当たりにしてきました。二人、殊にりょう君はとてつもなく明るいのです。また、小学校の4、5年にしては、ことばや社会の知識が途方もなく豊富なのです。
生後、余命3年といわれたりょう君が11歳の今日まで命の炎を燃やし続け、今もなお、身体の自由はきかなくても同年齢の子ども以上に生き生きと生活できるのはなぜなのか。
それが取材を続けた理由でもありました。

 母親の美津子さんはりょう君が誕生して4年後に離婚、りょう君の通う病院や学校の近く、現在の別府市の住宅に移り住み、二人だけで暮し始めました。
 呼吸器を付けた生活のりょう君は11時に起床、パソコンをいじったり、週2〜3回の訪問授業をうけたりしてすごし、就寝は午前2時頃という生活リズムを刻みます。ひざ枕で寝かしつけた後、掃除洗濯を済ませてようやく美津子さんが眠りにつくのは午前4時を過ぎた頃という毎日です。

 りょう君を支えてくれるのは家族だけではありません。家までやってきてくれる担当のお医者さんや訪問授業の先生、チョッピリ苦手な理学療法士の先生などなど。普段、お母さんやおばあちゃんとばかり話をしているりょう君には大切な話し相手です。

 そんなりょう君の楽しみ、一つは自分で「おはなし」を作ること。そして、もう一つは外に出かけることです。その夢の一つがかないました。車で外に出て大好きな海を見、大分市の水族館に行って魚やセイウチに触ることができたのです。

 そして、もう一つ大きなプレゼントがありました。自分で操作することができる電動ストレッチャーがやって来たのです。病院のフロアで、まるで初めて自転車に乗ることができた子どものように、りょう君は生き生きとストレッチャーを動かします。その顔は喜びと自信にあふれていました。

 いつ症状が悪化し、それが死の引き金になりかねない生活の中でのりょう君の明るさの秘密。それは、周りの人々の支えはもちろん、りょう君自身の旺盛な知識欲、そして何よりも明日に向かって生きていくという希望を持ちつづけていることだったと思います。

 10月16日(日)放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『ぼくは小さな大作家〜幸せ描く難病少年〜』(テレビ大分制作)10月17日(月)2時55分〜3時50分【10月16日(日)26時55分〜27時50分】では、りょう君のひたむきさと彼を支える家族や養護教諭などの姿を通して、夢を持って生きることの素晴らしさを描いていきます。

<制作担当者のコメント>

 りょう君とは一年近いお付き合いですが、最初のうち彼が何を言っているのか。お母さんの通訳無しではわからなかったことが、1ヵ月も経つとストレートに私たちの耳に入ってくるようになりました。ディレクターもカメラマンも音声担当もりょう君に普通どおり声をかけ、彼も何のてらいも無く返事をしてくれます。こうなると、私たちが取材に行く日を楽しみに待っていてくれるようになり、会った日はなかなか帰してくれません。私たちが知っている小学4、5年生の知識などとても及ばない博識で、こちらの方がたじろぐような大人顔負けの答えが返ってくることさえあります。こんな才能豊で素晴らしい表現力をもつ子が常に死を直視しながら生きていかなければならないのか、いつも、今もこう思いながらの取材が続いています。生きていくことの惨さ、そして素晴らしさをりょう君とお母さんは私たちにいつも伝えてくれているのです。


<プロデューサー> 岩尾保次(テレビ大分)
<ディレクター> 岩尾保次(テレビ大分)
<アシスタントディレクター> 田口敏郎(映像新社)
<構成> 森 久実子
<ナレーター> 野間洋子(テレビ大分)
<撮影・編集> 宮本洋一(映像新社)
<MA> 板井雅也(映像新社)

2005年10月3日発行「パブペパNo.05-324」 フジテレビ広報部