では、ホームレスの自立支援の新しい方法として注目された、ストリートペーパー「ビッグイシュー」を通して、この雑誌に夢を託したホームレスや活動を支える若きスタッフたちそれぞれの物語を描く。
東京のホームレス約6,000人。(東京都2005年調査)
実際はそれよりはるかに多いともいわれる。
3年前の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の制定を契機として行政による支援が始まったものの、厳しい生活を余儀なくされるホームレスは依然多く、また彼らによる公共施設の占拠も大きな社会問題となっている。
2003年9月に創刊された「ビッグイシュー」というストリートペーパーは、ホームレスの自立を支援する新しい方法として注目されてきた。しかし、1年半が経過した今、経営的には厳しい状況を迎えている。「ビッグイシュー」は果たして日本に根付くのだろうか…。
東京での活動を支えるのは、まだ20代の若きスタッフ。奮闘する彼らと中高年のホームレス販売員との間にいつしか不思議な交流が生まれていた。
「ビッグイシュー」という一冊の雑誌をめぐって、さまざまな人生が垣根を越えて交錯する。番組では、こうした交流の中に従来とは異なるホームレス支援の可能性を探ると同時に、それぞれの「ビッグイシュー」に賭ける想いを描く。
※「ビッグイシュー」とは
1991年創刊。ロンドンに本拠を置くストリートペーパーで、世界24カ国で発行されている。ホームレス自らが販売し利益を得る。近年、ビジネスの手法で社会問題を解決しようとするソーシャルエンタープライズ(社会的企業)が欧米で注目されているが、その先駆的成功例。ホームレスの自助努力による自立支援という活動趣旨に賛同者は多く、イギリス政府、王室、各界著名人が名を連ねる。「ビッグイシュー」の取材なら受けるという大物も多く、これまでにビョーク、ジョージ・マイケル、ブラッド・ピット、メグ・ライアンなどが無償で独占取材に応じ、表紙を飾ってきた。
<番組内容>
「ビッグイシューいかがですかー?」と、駅前で雑誌を売る販売員。販売員になるのに保証人も履歴書も不要。唯一の資格はホームレスであること。
30年近く勤めた警備員の職をリストラで失ったという高橋さん(57歳)。東京にも不案内、ホームレスの生活にも不慣れな中で、ビッグイシューの販売を始めた。200円の雑誌を90円で仕入れ、差額の110円を自分の利益とする。少しずつ売り上げを伸ばしていく高橋さんだったが、雨の続いたある日、体調を崩してしまうのであった。そして、故郷では東京に来た本当の理由が明らかになった。
自立を目指す日々の中で変貌を遂げる彼の姿から、「ビッグイシュー」を通じて得たものとは何だったのかを描く。
こうした販売員を全力でサポートするのが、スタッフの仕事。高田馬場にある古びたマンションの一室で働くのはまだ20代のふたりの若者。池田さん(29歳)と香取くん(28歳)。ともに、これまでボランティアや市民運動の経験はない。数年前までモデルをしていたという池田さんが、「ビッグイシュー」で働こうと思った理由とは、何だったのか。香取くんもまた、人気情報誌の編集をしていた経歴をもつ。親の年ほど離れているホームレスとの仕事は決して一筋縄ではいかない。奮闘する中で、いつしか販売員との間に不思議な関係が芽生えていく。
若い世代にとって働くことの意味とは何だろうか。ホームレスのサポートを通して自分自身を見つめ直す若者の姿を描く。
2003年9月に大阪で創刊された日本版「ビッグイシュー」。代表の佐野さん(63歳)は、日本の社会にこうした敗者復活の仕組みが必要だと信じて事業を立ち上げた。しかし1年あまりが過ぎた今、売り上げは低迷し赤字は1千万円を超えた。原因はどこにあるのか。日本に「ビッグイシュー」は定着しないのだろうか。
世代も境遇も異なる人生が都会の路上で不思議な縁を結ぶ。
「ビッグイシュー」に夢を託したそれぞれの物語を描く。
<宮下佐紀子ディレクターのコメント>
大量のホームレスを生むのも東京ならば、まるで境遇の異なる人々が一冊の雑誌をきっかけに出会い支えあっているのも東京でした。取材を通して痛感したのは、さまざまな事情で路上にはじき出されたホームレスの再起がいかに困難か、ということです。けれど、それでも人がもう一度立ち上がろうとするとき何を必要とするのか伝われば幸いです。
<番組タイトル>
『路上に賭けた人生〜ビッグイシューという挑戦〜』
<放送日時>
<8月12日(金)2時35分〜3時30分放送【8月11日(木)26時35分〜27時30分放送】>
<ナレーター>
戸田恵子
<スタッフ>
プロデューサー |
: |
岡田宏記(フジテレビ情報制作センター) |
ディレクター・構成 |
: |
宮下佐紀子(フジテレビ情報制作センター) |
編集 |
: |
鈴木三貴 |
撮影 |
: |
佐々木秀和 |
制作 |
: |
フジテレビ |
2005年8月1日発行「パブペパNo.05-246」 フジテレビ広報部