FNSドキュメンタリー大賞
冬の三陸を舞台に繰り広げられる男たちのアワビの素潜り漁の“綱取り合戦”に密着し、海とともに生きる漁師たちの誇りを描くドキュメンタリー!

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『男たちの綱取り合戦〜岩手・種市町 アワビの素潜り漁〜』

(岩手めんこいテレビ)

<4月29日(金)2時35分〜3時30分放送>
 【28日(木)26時35分〜27時30分放送】


 岩手県種市町の宿戸地区では、冬の間、アワビの素潜り漁が行われていて、シーズンの水揚げに応じて、相撲のように番付がつけられている。これまで20年以上にわたり、浜一番の水揚げを誇る横綱の吹切信夫さん。関脇である息子の秋則さんは横綱である父を一度だけ破ったことがある最大のライバルで、父を超えようとしている。

 第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『男たちの綱取り合戦〜岩手・種市町 アワビの素潜り漁〜』(岩手めんこいテレビ)では、冬の三陸を舞台に繰り広げられる男たちの綱取り合戦に密着、海とともに生きる漁師たちの誇りを描く。

(内容)
 岩手県内で素潜り漁といえば久慈市にある県北の海女が有名で、十数年前までは実際にこの漁法で漁が行われてきたが、時代の流れとともに海女の数も減り、今では観光の目玉としてイベント的な場所でしか、その姿を見ることができない。
 そんな中、昔ながらの漁法で今もなおウニやアワビなどを採っている地区があることを知ったのは3年前のことだった。
 場所は北限の海女で有名な久慈市の隣町、種市町。驚いたことにここでは冬場にもウエットスーツ一枚で漁が行われるということで、とても興味を覚えるとともに、これまであまりテレビで紹介する機会が無かった三陸の海を撮影してみたいと思った。
 今回お邪魔したのは種市町の中でも古くから素潜りで漁が行われている宿戸地区で、こちらでは面白いことにその年の個人の水揚げを番付で表し、少し競技性を持たせて漁が行われていた。 
 その番付の頂点でもあり、漁師たちの憧れでもある“東の横綱”に20年以上にわたり君臨していたのが、この作品の主人公・吹切信夫さん(58)だ。
 幼いころから海と慣れ親しんできた信夫さんにとって宿戸の海は自分の庭のようなもの。他のどの漁師に聞いても「浜で一番海のことを知っている漁師」という答えが返ってきて、48人いる素潜り漁師たちの目標となっている。
 信夫さんは屈託の無い笑顔で「海は大きな銀行だ!」と言う。その言葉にいやらしさは無く、むしろ海に対する感謝の気持ちが伝わってくる。宿戸の漁師は信夫さんをはじめどこか実直で、陽気で、笑顔が素敵な人間味あふれる人たちばかりだ。きっと、これは大きな自然の中で生きる男たち特有の自然な表情なのだと思った。
 今回の漁ではいつにない天候不順で、16回予定されていた口開けのうち12回しか行われなかった。しかし、漁師たちは「自然相手だから…しけも大事なことだ」と言い、笑顔で海を眺める。ここでは三陸の自然とともにゆっくりと時間が流れている。
 ところが今回、24回目の横綱を目指す信夫さんにとって、これまでとは少し勝手が違った。若者の台頭により横綱の地位もこれまでのように磐石ではなく、ちょっとした気の緩みが横綱陥落に結びつく。実際、2年前には、22年連続して打ちたててきた横綱連勝記録が初めて途切れた。
 その時、信夫さんを破ったのが若手のホープ吹切功一さん(46)。功一さんは信夫さんを目標に日々トレーニングと漁場の研究を欠かさず、おととし初めて信夫さんの水揚げを上回った。しかし、翌年には信夫さんも横綱の意地を見せ、またトップに返り咲き、まだまだ横綱健在をアピールした。そんな中で行われるアワビ漁は新旧、世代の交代をかけた漁師たちの意地と意地のぶつかりあいだ。
 信夫さんが横綱にこだわる理由…それは自分を育ててくれた先輩漁師や海への恩返しからだという。この宿戸の海をいつまでも豊かに守っていき、次の世代に受け渡すためには自分が手本となって、海のすばらしさ、漁師の魅力、やれば出来るということを、体を張って実践していくことが自分の役目だと話してくれた。
 しかし、今回のアワビ漁では天候不順と餌不足によるアワビの成長不足により、水揚げがいつも以上に下回り、どの漁師も苦戦を強いられた。
 漁中盤、信夫さんは追う立場にいた。トップに立つのは信夫さんの最大のライバル吹切功一さん、また二人の後を追うように若手の漁師も綱取り合戦に名乗りを上げた。綱取り合戦は、混戦を極め、漁最終日まで結果が分からない一進一退の状態のまま最後の日を迎えた。
 番組では、冬の三陸の厳しい海をダイナミックに描きながら、綱取りを賭けた男たちの争い、そして海とともに生きる漁師たちの姿と誇りを描いていく。

(制作担当のコメント)
 20年以上、横綱を守り続けている吹切信夫さん。会う前までは気難しい職人気質の人を想像していましたが、実際に会って話をしてみると、とても気さくで元気のいいお父さんといった印象を持ちました。信夫さんとの会話の中からは端々に海に対する思いが伝わってきて、本当に海が好きなんだなぁという感じを受けました。
 しかし、ひとたび海に出れば、厳しい漁師の顔になります。信夫さんの願いは一人だけでなく、みんなが豊かになるような海作り。そんな信夫さんの思いと綱取りにかける漁師たちの姿を伝えたいという思いで制作しました。


 ナレーター 菅原夕美子
 撮影 佐々木 聡
加藤幸平
高橋一彦
 音声 浅利泰介
小友俊英
武蔵彰寿
 編集 佐々木 浩
高橋一彦
 MA 山内智臣
 ディレクター 高橋一彦
 プロデューサー 一戸俊行


2005年4月21日発行「パブペパNo.05-119」 フジテレビ広報部