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ギゾナッチャ 第131回 2005年1月30日 「ブロッチュチーズ」

ブロッチュチーズは1番目に作られたチーズの残り汁で作られた2番煎じのフレッシュチーズ。しかし栄養価は高く、貧しかった時代に作り出されたコルシカの無くてはならないチーズであり、A.O.C.の称号を得ている。さっぱりとしたその味で料理やお菓子と数え切れないほどのレシピがある。そのフランス本土ではなかなか味わう事のできないブロッチュチーズを使った料理を紹介。
ブロッチュチーズ


食卓に並べられたコルシカ料理の数々…
この、どの料理にも使われているチーズがありました。

島の内陸部に広がる険しい山の中、古くから山羊や羊と共に暮らしてきたコルシカ島の人々。



ここでは、そのコクのあるミルクを使い濃厚で香りの強いチーズが作られてきました。

〜チーズ工場〜

そんな中、島の人達に長い間愛されてきたのが、一度チーズを作った後、その搾り汁を使って作られるフレッシュチーズ。



元々、貧しい人達の栄養源として食べられていたこのチーズは、その昔、羊飼いが生み出したコルシカの味。

それが今では、フランスのフレッシュチーズで唯一、A.O.C.という資格を持つ存在にまでなっているのです。



〜A.O.C.(原産地統制名称)〜

「Brocciu/ブロッチュ」



コルシカの食卓では、もちろんブロッチュチーズを、欠かすことが出来ません。

この日は、チーズの中にミントなどを入れ、パスタに包み、カネロニを作ります。



仕上げは、トマトソースとチーズをたっぷりと載せ、オーブンへ…

〜オーブンで20分〜



「カネロニ・インク・ウ・ブロッチュ」


日持ちがしないため、フランス本土でも、手に入れることが難しいフレッシュチーズ。
ミルクの香りが残る爽やかな味わいが、ブロッチュチーズの魅力なんです。



スタッフからのメッセージ
 コルシカ島は、地中海に浮かぶ島の中でシチリア島、サルデーニャ島に次ぐ3番目に大きな島です。しかし、そこは、広い平野の部分はほとんど無く、島の中に2000メートル級の山が聳える山がちの島。昔から、険しい山が広がる内陸部で生活をしてきたコルシカの人達は、山の急斜面など、厳しい環境の中でも生きる山羊や、牧草を追い求めて何処までも移動する事の出来る羊と共に、自分達の暮らしを守ってきたのです。ですから、山羊や羊のミルクで作るチーズは、昔から島の人達にとって貴重な食材でした。そして、そんな習慣が今でも受け継がれていると実感したのは、取材中のとある夜、コルシカ在住のスタッフと食事をしている時の出来事だったのです。それまで前菜やら肉料理やらサラダやらを一通り食べていて、食事を終わるのを待たずに、既に「今日は、もうお腹が一杯だ」「今夜はデザートを食べるのはやめにしよう」と皆で話していました。ところが、メインの食事が終わり、店の人がチーズを持って現れると、それまで「もう満腹だ」と言っていたコルシカスタッフのお腹が大復活。何種類か出されるチーズの中から自分の好きなものを取り分けて、パンやワインと一緒にチーズを食べ出したのです。そして、満腹の状態でこの様子を見ていた私は、「さっきまでお腹いっぱいだと言っていたのに…」と驚きながらも、この島の人達は本当に、「チーズだけは別腹なんだな」と納得させられてしまったのです。思えば、やはりフランス本土でも食後には同じようにチーズが出されるのですが、その時は、食べるといっても少しだけつまむ程度。口直し?に味わえれば満足するというように私には見えました。中には、私達と同じように、お腹が一杯だからチーズは食べないという人も当然います。それなのに、コルシカの人達といえば、私が見る限りでは、断る人はほとんどいず、それこそチーズだけではなく、わざわざパンもお代わりして美味しそうに食事の仕上げをしているのです。そんな食事風景に取材中ずっと付き合っていくうちに、いつのまにか私も「夕食後の締めはチーズを食べて…」となってしまったくらい、そのチーズ好き振りはかなりのものでした。
 さて、そんなチーズ好きばかりが住んでいるコルシカ島で、様々な料理に使われているチーズ。それが、今回紹介したブロッチュチーズです。これは、食事の後などに食べるチーズを一度作った後、その残り汁にミルクと塩を入れ、再び煮詰めて作る2番煎じのフレッシュチーズです。残り汁を、再び煮詰めて作ることから、昔は、貧乏人の栄養源として食べられていた事もあったそうです。ところが今では、フランスのフレッシュチーズの中で唯一AOCという品質にも合格し、島の人のチーズ好きなお腹を満足させるようにまでなっています。その味は、ミルクの甘さがほんのり残り、さっぱりとしていて、比較的香りが強く濃厚な味わいがするものが多いコルシカのチーズの中では、食べやすいという印象を受けました。ある資料には、このチーズを「フロマージュ・コルス(コルシカを代表するチーズ)」と呼ばれていると書かれているほど、この島にはなくてはならない存在で、このチーズを、物々交換をする際の貨幣の代わりにしていた時代もあったということですから、その存在価値はかなりのものです。残念ながら、そんなに大量に作られるものではなく、日持ちもしないため、コルシカ島以外では滅多に手に入れることが出来ないチーズでもありますが、逆に言えば、コルシカに行きさえすれば、どこに行っても食べられるチーズ。機会があったら、あの味を試してみるのはいかがでしょう。ちなみに、私の個人的な好みでいえば、このブロッチュチーズに果実のジャムを混ぜて食べるのと、アクアビッテという名のアルコール度数の高い食後酒と砂糖を混ぜて食べるのが結構お気に入りとなりました。勿論、そのままパンと一緒に食べても美味しいですよ。

レシピ

「ブロッチュチーズ」
<作り方>
[1] 羊のミルクもしくは山羊のミルクを温め凝固剤を入れて冷ました後、一度、チーズの成分を取り出す。(このチーズの成分を熟成させて羊や山羊のチーズを作る)
[2] 残り汁に、再び羊のミルク(もしくは山羊のミルク)と塩を入れ、煮詰める。
[3] 煮詰めた後、残り汁の中に浮かんできたチーズの成分をすくい出し、チーズ用の籠に入れる。
[4] そのまま冷ましながら水分を抜き、固まってきたら出来上がり。

「カネロニ・インク・ウ・ブロッチュ」
<作り方>
[1] 薄く延ばしたパスタの生地を一度茹でた後、カネロニ用に四角く切り、水気を切っておく。
[2] 器の中にブロッチュチーズ、ビエトラ(甜菜)の葉、ミントを入れて混ぜた後、塩・コショウで味付けをする。
[3] [1] のパスタの上に [2] のチーズを乗せ、筒状に巻き、カネロニを作る。
[4] 耐熱皿にトマトソースを引き、その上に [3] カネロニを並べ、更にその上にトマトソース、羊のチーズを刻んだものを乗せる。
[5] オーブンで20分焼き上げる。

SARE FROMAGERIE OTTAVI(チーズ工場)
住所:STRADA DI A GARA 20240 GISONACCIA CORSICA
TEL:04 95 56 13 03/FAX:04 95 57 38 72
http://www.fromagerie-ottavi.com

「It Might As Well Be Spring "Les Printemps"」
Palmyra & Levita with Joao Donato
作詞:Oscar Hammerstein ll/Richard Rodgers
作曲:Jean Sabion レコード会社/CD NO:Rambling Records/RBCS-2111
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