あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回>「奇跡を呼ぶ男」
所在する静かな山村・富増村は今日も穏やかな朝を迎えていた。村の入り口に立つ『ピーチとダルマと笑顔の村』という看板からも一目瞭然、この村は桃農園と良き人々が暮らす素敵な山村である。
 大山忠志(香取慎吾)は、母の節子(白川和子)と兄の道夫(井上肇)とこの村で暮らす25歳の青年だ。ミュージシャンになる夢半ばで東京から舞い戻り、今は年寄りばかりになってしまった村役場に勤める忠志は、今では目的の見つからない毎日を送っている。
 そんな忠志に、ある日、村の助役の鴨田(金田明夫)がおもむろにやってきて言った。 
 「ゴミ処理場のトラックと一触即発の状態らしい。警察沙汰になる前になんとかしたい。行ってきてくれ!」。
 「ぼくが、何で?」の反論も聞き入れられず、忠志はしぶしぶ自転車に乗り一触即発するらしい公園通りに向かった。
 道の中央にはバリケードができて、『フナムシ開発』の有害廃棄物らしきものを積んだトラックが処理場へ入る道を完全に遮断していた。
 そしてバリケードの向こうには、鉢巻きをした村の若者たちの姿が見える。忠志は、顔馴染みの青年・山根房吉(石井康太)に招き入れられ、リーダーの林八郎(松谷賢示)と会うと、これ以上こういうことはやめるように説得しようとした。しかし、八郎は生まれ育った村を見捨てることはできない!と突っぱねるのだった。
 村民と『フナムシ開発』のこんな睨み合いは今に始まったことではなかった。村おこしの名目でやってきて土地を買い上げ、そこに工場廃棄処理場を建設してからというもの、村の自然を破壊し、村民の健康をも損ね兼ねない状況に、村民は結束して撤退要求を叫んできたのだ。
 だが『フナムシ開発』の社長・安西景虎(國村準)は、ひるまなかった。やり手のベテラン弁護士・網干頼母(津川雅彦)をがっちりと味方につけ、村民たちの署名嘆願も、後の祭りと意に介そうとしない。その上、老獪な網干は、村長代理でやってきた忠志に、  
 「いちおう交渉は真摯な気持ちで承ったということで・・・」と丁寧な口調で言うと、処理場の近道を塞ぐ、川北義助(梶原善)という男を説得して欲しいと交換条件を突き付けてくる始末だった。だが、こよなく村を愛する義助が簡単に説得に応じるはずもなく・・・。
 こうして忠志が、村民と『フナムシ開発』との間で翻弄されている中、業を煮やした村民たちが夜な夜な結集。「闇に乗じて火を放つ!」などと時代錯誤なことを言い出す騒動が起こった。
 これには、さすがに逃げ腰だった村長・犬塚守孝(田中邦衛)も大慌てで、咄嗟の思い付きで、「裁判しかない!」と言うと、あっちが弁護士ならこっちも敏腕弁護士を擁し、戦うことを宣言してしまったのだ。
 その夜、犬塚とその娘・信乃(鈴木京香)を交えた話し合いの結果、東京へ弁護士を探しに行くことが決定した。犬塚に頼まれ、東京経験のある忠志も同行してのあてのない二人旅。
 二人は、手始めに法律関係の本を買いあさり、執筆した弁護士に片っ端から会ったが、誰も勝ち目がない戦いと引き受けてはくれない。
 村民らと約束したのは4日後に弁護士を連れて帰ること。そしてそんな焦りと気落ちに暮れ、慣れない都会暮らしがたたってか、犬塚が倒れてしまった。「なんで、僕が・・・」ただでさえ、そんな気持ちでやってきた忠志は、いよいよ八方ふさがりになり、ふらりと馴染みだった居酒屋へと足を運んでいた。
 ところが、そこで忠志は偶然にも正義の心に燃える熱血弁護士・鳩山一茂(唐沢寿明)と出会い、協力するという約束を取り付けることに成功したのだ。「これで、胸を張って村に戻ることができる!」と思ったのも束の間、一夜明けると状況は一転。鳩山の件は即刻網干の耳に入り、網干の手回しであっさりと白紙に戻されてしまったのだ。
 「万事休す・・・」。すっかり気落ちし、ホテルのベッドに腰掛け見るともなくテレビに目をやった忠志は、そこに映った男に釘付けになった。その男の名は暁仁太郎(役所広司)。
 この時、まさかこの男が村にとっての救世主になろうとは知る由もなかった・・・!?

<第2回>「サイテーの救世主」
 その日、暁仁太郎(役所広司)は、都内のスタジオでドラマ撮影にのぞんでいた。ヒロインが撃ったピストルにあたり、絶命するという最大の見せ場のシーン。仁太郎は、大張り切りで熱演を見せていた!  だが、共演者で主演女優の名古屋裕子(篠原涼子)、プロデューサーの黒埼(沢渡稔)、ディレクターの松本(吉田朝)らは、そんな仁太郎を見て不快をあらわにしていた。古い、くさい、長い。その芝居はあきらかに時代遅れで勘違い以外の何ものでもないと言いたかったのだ。  しかし、仁太郎はそんなことにお構いなく自分流を貫き通す覚悟。 「出番削るなら事務所を通せ!」と鼻息も荒くまくしたる。  忠志(香取慎吾)は、そんな殺伐とした現場に仁太郎を訪ねた。そして先日見たドラマの感動を伝えると、演じていた弁護士に成り済まし、村に来て裁判は無理だと村人を説得して欲しいと頼み込み始めたのだ。最初はドラマへの出演依頼かと思い、条件等々を聞いていた仁太郎だったが、ことが詐欺まがいの行為と知ると、「ほかを当たってくれ」と言い残して撮影現場に戻っていった。  そして、有無を言わさぬプロデューサーの説得により、すっかり自分らしさのない芝居を展開するのだった。  「売れっ子役者とのバーターなんだから!」。撮影後、立ち寄った所属事務所でこう言われ、むしゃくしゃした気分の仁太郎は、数年来の愛人スナ子(旗島伸子)のアパートへと向った。  だが、そこにはすでに先客がいた。その間男は何と仁太郎のマネージャー鳥居(六角精児)だったのだ!  スタジオから、事務所から、愛人に及ぶまでがこの仕打ち・・・プライドをボロボロに引き裂かれた仁太郎が自宅のあるマンションにたどり着くと、そこには荷物がすっかり運び出され、がらんとした部屋と愛想をつかした妻の尚子(キムラ緑子)がすこし驚いた様子で立っていた。  「家に一銭も入れていないから」と、尚子は家財道具をすべてもらっていくという。その中から、昔テレビ雑誌から貰ったトロフィーを大事そうに拾い出すと、仁太郎は、尚子の運転する車で再びスタジオに戻った。  スタジオには、まだ忠志がいた。「引き受けてくれるまで帰りません!」と再び仁太郎にしつこく迫ってきた。と、そこに岡(原田修一)という馴染みのディレクターが現れ、仁太郎の姿を見つけると「空いてる?」と近付いてきた。なんでも撮影中、キャストにゲガ人が出たので、急きょ代役を頼みたいという。仁太郎は、番組名を聞き、即座に代役をかって出たのだが・・・それが顔もわからない何とも悲惨な役とわかると、「やってられるかぁ!」とキレてスタジオを飛び出してしまった。  だが、キレても大事なトロフィーのことだけは忘れなかった仁太郎は、あるはずのトロフィーがないことに気がつき、探し回った。だが、努力も虚しく仁太郎は形あるプライドまで失ってしまうことに・・・。すっかり気落ちした足取りでスタジオ内を歩く仁太郎は、そこで忠志の姿を見かける。長い時間、何も言わず見つめう二人。  そしてしばらくすると仁太郎が忠志に向かって口を開いた。  「条件は三つ。ダメなら話しはお流れだ!」。  その頃、富増村では信乃(鈴木京香)が先頭に立って弁護士先生を迎えるための歓迎準備が着々と進んでいた。

<第3回>「初めての勝利」
 富増村の人たちは、弁護士・暁仁太郎(役所広司)到着を大歓迎し、仁太郎もこの熱烈歓迎ぶりを、「自分を必要としてくれる人がいるということは素晴らしい!」と紅潮して忠志(香取慎吾)に話した。
 だが、忠志は、本物の弁護士ではないのだし、仁太郎の役目は、あくまでも裁判に持ち込こんでも無駄だと村人を説得することだと釘をさす。しかし、村の有力者・天馬(磨赤児)や、まだ事情を知らない犬塚(田中邦衛)らは、村に滞在し被害状況を視察した上で、今後どうたたかっていくべきかなどを検討することになっているという忠志の説明を聞き、期待を持って仁太郎を見つめるのだった。
 その夜、仁太郎は村にホテルがないため犬塚家に案内された。飲み屋もないし、宿泊場所や送迎車さえない!? 最初はあまりの待遇の悪さにすねていた仁太郎だったが、その不機嫌も信乃(鈴木京香)を見た途端急変。美人で、しかも独身と聞き、東京に出てくる気はない?なとど言い出す始末で・・・信乃に好意を持つ忠志にとっては、心配の種がさらに一つ増えることになった。
 その頃、フナムシ開発の安西(國村隼)と網干(津川雅彦)の耳にも、東京からやり手の弁護士がやってきたとの情報が鴨田(金田明夫)によって入れられていた。だが、所属事務所さえ不明で、村人に対して『七人の侍』を観ろ!と摩訶不思議な演説をしたという暁の正体は、全く見えてこない・・・。フナムシ側としても、仁太郎という男のことを掴みあぐねるのだった。 
 翌日、仁太郎は忠志に連れられ、しぶしぶ村を見回った。調査をしているふりでも見せておく必要があると忠志は考えたのだ。忠志は、道々、富増村の事情を話して聞かせた。村は北と南に別れていて、実質フナムシの被害を受け反対運動をしているのは北の住民であること。南には琴井悌一郎(寺尾聰)と悌三(池田成志)という有力者がいるということなどを。
 だが仁太郎は、これらをまじめに聞いてなどいなかった。だから、話しに出た悌三が、忠志を見つけてやってきて、「あれが弁護士先生か?・・・まともな先生だったら普通は引き受けないぜ」と囁いたことなど、全く気にも止めなかった。
 その後、仁太郎と忠志は、天馬、瀬田(遠山俊也)と合流。とある丘の上でハンカチを広げ、「このハンカチを化学研究所で調べれば、空気中の汚染成分がわかる」などと仁太郎が最もらしくやっていた時だった。信乃の運転する車が彼等の横で止まると、義助(梶原善)がフナムシ開発の監視用のやぐらに立て籠もっていると知らせたのだ。
 「義助を説得してやって下さい、先生!」。
 信乃の頼みにその気になった仁太郎は、すぐさま車に乗り込むと忠志の不安をよそに緊迫する現場に急行するのだった。
 そして現場ー。そこには村長の犬塚や安西社長ら、敵味方が大勢入り乱れ大集合する中・・・。


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