広島市内を一望する小さな山の上にある放射線影響研究所、通称「放影研」。放射線が人体に及ぼす影響などを調査する研究機関だ。その事業費は日米両政府で折半されていて、日本は厚生労働省、アメリカは核開発などを行うエネルギー省の所管となっている。被爆者の平均年齢が82歳を超える現在、放影研がたどってきた歴史を知る人は少なくなっている。その前身はアメリカが1947年に設立した原爆傷害調査委員会。略称の「ABCC」と呼ばれてきた。アメリカは原爆を実戦で使用する以前から、放射線が人の身体に影響を与えることを把握。そして広島・長崎に原爆を投下後、長期的な影響調査を行うため設けたのがABCCだった。ここでは、被爆者の検診や遺体の病理解剖が行われ、膨大な数の血液や尿のサンプルが収集された。しかし、被爆者が望んだ“治療”は行われなかった。戦勝国が敗戦国を調査すること、それは被爆者を「科学の目」で見ることであり、被爆者をいわば「モルモット」として扱ったことはヒロシマの人々に大きな怒りと悲しみを与えることになった。番組では、ABCCの検査によって心に深い傷を負った被爆者の証言や、放影研で働く研究員、放影研の最高意思決定機関の議長を取材。放影研は誰のために、何のために存在したのか。被爆者を70年以上見つめてきたこの研究機関の過去から現在までの歩みを振り返るとともに、これからのあり方について考える。