インタビュー

第2シーズンは2クールの放送です。ひとつの役柄を長い期間演じることに関して、お気持ちをうかがえますか?
嬉しいです。撮影に行くときも、仕事に行くという感じではなく、みなさんに会いに行く、という感覚の方が大きいんです。ドラマの中でいろいろな出来事が起きていきますけど、ふたつ生活がある……普段の生活と、『朝顔』のみなさんといる生活があるような感じがしています。もう家族のように思っているので、ドラマの中で悲しいエピソードがあると、とても悲しい気持ちになりますし。普段、泣く演技はあまり得意ではないんですけど、『朝顔』ではぽろぽろ涙が出てしまうんです。それは自分でも不思議だなと思っているんですけど、長くやらせていただいたことで経験できたことなのかもしれないな、と思っています。
そういう感覚は役者さんならではのものかもしれないですね。
そうですね。この経験はありがたいです。
役者さん同士は、ひとつの作品のために集まって、終わればまた別の現場にいき、すぐに再会するケースもあれば、そのまま10数年も会わないこともありますよね。
そうなんですよね。テレビで見て、「あ、元気そうだな」と思ったりするので、しばらく共演していなくても全然会ってないという感覚はあまりないんですよ。だから普段は自分だけの生活でいいや、みたいな、そういう潔い感じが好きなのかもしれない。終わりが近づいてくると寂しくはなるんですけど、終わってしまえばすぐに切り替わるので。
第2シーズンで絵美という役にもう一度取り組むにあたって、改めて何か考えたりはしましたか?
NGをなるべく出さない(笑)。
前シーズンも出していなかったのでは?
出さないように毎日頑張るんですけど、難しい台詞のときは毎回緊張します。逆に今日はみんなひと言ずつ、みたいに振り分けられているときは楽しく演じられるんですけど、そういう時にかぎって出してしまったり…。もともと緊張しやすいタイプでもあるんですけど、それを集中力に変えて、セリフではなくちゃんと自分の中から出てきた言葉にしよう、というのは今期ずっと心がけていることです。慣れて演技をしたくないというか、なるべく新鮮な気持ちでその言葉を言えるようにしようと気を付けています。外から見たらそういう変化は見えないかもしれないですけど……。
夫役の板尾創路さんとの関係に変化はありましたか?前シーズンのときは「『ダウンタウンのごっつええ感じ』世代ですから。あの方たちのお笑いは神だ、と思って育ってきた」ともおっしゃっていましたが。
距離感は変わらないです。縮まりもせず、離れもせず(笑)。絶妙な距離感なんです。板尾さんという存在が自然とそうしてくださっているんだと思うんです。とても優しくて、さらりとした方です。
普段、おふたりの間ではどんな会話があるのでしょう?
法医学教室のセットではデスクが並んでいるんですけど、真下に3cm程の薄い引き出しがあるじゃないですか。そこにいつも、板尾さんが台本を隠しているんです。私は、それが出来ることをこの第2シーズンになって気づいて、「これ、めっちゃ便利ですね!」って言ったら、「知らんかった?ちょうどええねん」って(笑)。すぐ確認できるから便利なんですよ。
設定上は、家でも職場でもずっと一緒、というご夫婦です。
そうなんですよね。でも、役作りのために普段からコミュニケーションをとるわけでもなく、超自然体な感じで(笑)。ずっと一緒でも、しんどくない夫婦。
息子さんも登場しましたね。
凄くたくさんご飯を食べさせているんだろうな、って思いました(笑)。留守を預けている祖母や私達が。可愛い子がやってきましたね。
丁寧な言葉遣いも面白かったです。
とてもきちんとしているんです。「今日、朝ごはん何食べた?」って聞いたら、「ウインナーをいただきました」って(笑)。「ウインナーだけ?」「いえ、ご飯もいただいて……」って、普段から丁寧で。お芝居で台本にない言葉をかけても、ちゃんと返してくれるんです。お母様に「しっかりしていますね」って言ったら、「全然です……」みたいにおっしゃっていましたけど、自分が子どもだったころを考えたら、こんな現場にきたら誰とも話せないですよ。つぐみ(加藤柚凪)ちゃんもしっかりしているし。
大輔(小山春朋)くんがしっかりしているのは、絵美先生のしつけのおかげ、ということになるんでしょうね。
私が主導権を握っているんでしょうね。お父さんは多分、息子にも馬鹿にされているようなところがあるし(笑)。でも、ここぞという時は父親でしょうね。子役の子に会うと、お母さんがどういう教育をしているのか気になるんですよね。母親役といっても、私自身には未知の世界で、“お母さんのフリをしている”みたいなところもあるので、現場にいらっしゃっているお母さんをよく見ています。
今作は2クールですから、前作では描かれなかったエピソードが登場するのは楽しいです。
私自身も、どういう部分が描かれるんだろう、と楽しみにしていました。ウチの夫妻の場合は息子が出て来てくれたので新鮮な感じがしました。『朝顔』って、私たち夫婦の家でのシーンが描かれていませんから、その中でどうやって夫婦感、家族感を出せるかについては考えました。
格差夫婦という設定でもありましたね。
前シリーズのときに出版した本がベストセラーになったんですよね。そこから、身につける腕時計も変わったりして(笑)。
絵美先生はとても正直な方ですよね。
絵美は、理想でもあります。竹を割ったような性格で、言いたいことを言うところが潔いキャラクターなので、演じていてもとても気持ちいいんです。普段、これくらい言えてもいいのかなと思うくらい(笑)。
朝顔(上野樹里)先生、光子(志田未来)先生、そして茶子(山口智子)先生との信頼関係の深さも素敵です。
面白いですよね。女性だけのシーンも好きなんです。女性がみんな強い、というのは良いと思います(笑)。頼もしく、潔く、気持ちの良い上下関係といいますか。
法歯学者というのは少ないんですよね。
そうみたいですね。私も法歯学者の方にお会いしたんですけど、とても謙虚な方でカッコ良くて。このドラマに携わるまでは知らなかったんですけど、知らなかったのが申し訳ないなと思いました。テレビで流れているような悲しい事件の裏で、警察の方はもちろん、法医学者さん、法歯学者さん、検査技師さんたちが一生懸命働いているわけですしね。
光子先生の法昆虫学も面白いなと思いました。
光子先生の実際のモデルのような方がいらっしゃって、指導に来てくださったんですけど、光子先生にそっくりだったんです。服装も髪形も、醸し出す雰囲気も。感動しました。ひとつのことに生涯を捧げるとか、ひとつのことをずっと思い求める姿には憧れます。役者も追求する仕事といえなくもないんですけど、ひとりで黙々と日々研究している姿はカッコ良いと思います。
ドラマの方は、この先どうなっていくんでしょうか。朝顔先生のナレーションなどから、いろいろ想像されている方も多いようですが。
私も台本をいただくたびに、「どうなっているんだろう?」とドキドキしています。悲しい予感もあったりするんですけど、何とか温かい方向にいけばいいな、と思っているんですけど……。ただ、実際に自分自身のことや家族のことで悩んだり苦しんだりしている方もいらっしゃると思いますし、ドラマだからって楽しいことばかりじゃなくて見てくれた方の心に寄り添えるような形もあっていいし、そういう作品に携われることは素敵なことだと思います。
家族を描く、ということはそういうことなのかもしれないですね。
日々の普通の生活が、いかに宝物なのか、幸せなのか、ということだと思います。私も、万木家のみんなの普段の生活シーンを見ているのが好きなんです。みんな揃って朝ごはんを食べて、帰って来たら手を洗って、食事を作って、洗濯物を取り込んで畳んで、布団を敷いて寝る、みたいな普通のことがいかに尊いか。私自身も、それはいつも感じていることでもあるので、そういうドラマにずっと出演させていただけているのは嬉しいです。まだ最後はどうなっていくのかわからないですけど、きっと期待は裏切らないと思いますので、応援してくださっているみなさんにも最後まで見守っていただけたら嬉しいです。

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