インタビュー

第1シーズンはとても大きな評判を呼びました。それを受けての第2シーズンですが、前作の時、上野さんご自身の周りでも反響はありましたか?
私は撮影をしているので全然わからないんです(笑)。ただ、お世話になった監督さんやプロデューサーさんから感想をいただきました。「感動した」とか。
上野さんは、放送をリアルタイムでご覧になれたのですか?
自分が出演している作品は進んで見ないですけれど……。どうしてたかな?完パケで見ないと見られない時もあったかもしれないですけど、『朝顔』の現場は比較的早く終わることが多いので、オンエアには間に合っていたことが多かったと思います。共演者のみんなもなるべくオンエアで観てるって言っていたような。夫と見ていたかもしれないですね。でも、自分の作品はあまり冷静に見ることができないので、客観的に見てどう思うか、ということは難しいです。
特に好きだったエピソードやシーンを教えていただけますか?
娘のつぐみ(加藤柚凪さん)が楽しい空気を作ってくれるので、そういったところとか、ドラマの本題でもあるお父さん(時任三郎さん演じる万木平)のとのシーンとか。『朝顔』は、大体ワンテイクしか撮らないので、生のお芝居という感じが楽しかったんです。楽しいっていう言葉がふさわしいかどうかわからないですけど……。みんなでご飯を食べるシーンとか、研究室のみんなで明るい雰囲気を作って頑張っているときとか、そういう日常の中にある、ちょっとした喜びとか。朝顔は、母(石田ひかりさん演じる里子)の死というものを背負ってはいるんですけど、いたって前向きに明るく生きている女性ですし。さぶちゃん(もんじゃ焼き店を営む朝顔の幼なじみ・浅井三郎。演じたのはきづきさん)の奥さんの結衣さん(松長ゆり子さん)さんが亡くなった回とか、母の手袋が見つかったときとか、桑原(風間俊介さん)くんと結婚してお父さんに「一緒に住んでいい?」っていうときとか、桑原くんと一緒にかき氷を食べるシーンとか、思い出したらいっぱいあるんですけど、どれかひとつ、というのは難しいですね。
撮影現場の雰囲気はいかがですか?
みんな、帰るのが早いです(笑)。私、着替えるのが凄く早いんですけど、みんなもめちゃくちゃ早くて。その理由のひとつは、みんな家庭を大事にされているから。既婚者の方が多いんです。なので、みんな家での普段の生活を大事にしているんです。でも、それがこのドラマの大切なことでもあるので、それが寂しくもあり、嬉しくもある、という感じです。法医学教室のみんなが集まって、バーッとシーンを撮るときは一日中一緒なので、誰かが最近のことをしゃべったら、それについて話す、みたいなこともあります。中尾(明慶)くんがYouTubeを始めた話、志田未来ちゃんが最近家電を買った話とか(笑)。でも、ずっと喋っているわけでもなく、自然にそういう空気になったら喋る感じで、セリフが結構多いときはみんなちょっと静かになるかもしれない(笑)。あんまりしゃべりすぎても大変だと思うし。万木家の時は万木家のときで、やっぱり一日中ずっとそのセットで撮るんですけど、つぐみがムードメーカーなので、どんな生活をしているのか聞いたりしています。つぐみ役の柚凪ちゃんは私のSNSを見てくれているみたいで、ウチの犬の絵を描いてくれたりとか、よくお手紙を書いてくれるんですよ。
そうした撮影ので、上野さんが特に意識されていることは?
毎回、ゲストの方というか、ご遺体のご遺族の方に、最後に死因を説明するシーンがあるんですけど、ゲストの方もとても緊張感を持って現場に入られますし、その1日で、その1シーンで、いろいろな感情を出してもらえるような空間を一緒に作って、用意してくださった感情を出せるような、そういう空間になればいいなと思っています。だから、「あまり話さない方がいいのかな」とか、逆に「ちょっと声をかけてリラックスできる雰囲気の方がいいかな?」とか、どうすれば一番良いセッションができるかということをいつも考えています。
前作も、家族の何気ない日常がとても魅力的に描かれていました。会話のシーンや食事のシーンで、一番大事にされていることは?
ほとんど、ありのまま動いている感じです。つぐみは、本番で毎回違うので(笑)。彼女からポンって出た言葉を受けたりするので、考えていたら多分出来ないと思うんです。万木家の温かさは損なわずに、しっかり伝えられるドラマになればいいなと思っています。
食事のシーンでは、つぐみちゃんが自由な感じで、それにみなさんが合わせている感じですね?
でも、風間くんが結構、「ここでこうだよ」「こっちの道通って」とか、教えてくれているんです。でも、その通りじゃなく、ちょこっとはみ出たことも全部味というか、何回か違うポジションで撮った時に、全部ちょっとずつ違うんですけど、全部OKみたいな(笑)。そうなるから、大人にかかっているんです。大人が全部同じことをやっていたら、ちょっとおかしくなってしまうので。柚凪ちゃんは、本当に心でやってくれているので一緒にお芝居をしていて楽しいんです。そういう温かさが伝わるように私も頑張ります。
東日本大震災を題材にしている作品でもあります。第2シーズンにあたり、上野さんは「まだ『朝顔』を通してみなさんに伝えるべき役割がある」とコメントされていました。
現在、新型コロナウイルスの影響で日本だけでなく世界中が大変なときですけど、10年前に被災した東北や、私が足を運んだ陸前高田市は、今やっと埋め立てて整備されて、まだショベルカーとかもあるけど、以前よりは土というよりコンクリートになって平らになってきて、「これから人が訪れてくれる街作りをしよう」という時だったんです。街が復興する、というのは、新しくなることですけど、10年でいろいろな物事は変わっても、人の心は10年ではそんなに変わらないと思うんです。第1シーズンのときは、震災で突然母を亡くした朝顔が、それを乗り越えて、法医として成長していく中で母親になりました。私は、人生の中にも四季のようなものがあって、出会いがあったり、別れがあったりして、楽しい時期もあればつらい時期もあると思うんです。第2シーズンでは、そういう部分も包み隠さずに描いていくと思います。ただ、苦しくなったり、悲しくなったりするようなことが起きても、例えば法医学チームのメンバーが明るく過ごす空気を大切にしていたり、万木家がみんなで家でご飯を食べる時間を大事にしていたりするように、前向きに明るく生きようとしている朝顔の強さは大事にしながら最後までやりたいと思っています。

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