
- 今回の撮影現場の印象はいかがですか?
- マイペースな方が多いから、割と淡々とした感じなんですけど仲が良い、という印象です。世代も違いますからもちろんキャピキャピはしていないですし、親睦を深める会があったわけでもないですけど、最初から自然と打ち解けて、良いチームワークが出来ていたと思います。みなさんがそれぞれ、自分の時間を大切にされているので、そういう空気も心地良いです。
- 大人な現場、という雰囲気ですよね。
- みなさん、色々な現場を経験されてきた方ばかりですからね。真剣にやるときはやる、遊ぶ時は遊ぶ、というメリハリがあると思います。どうなんでしょうか?ただ、上野樹里さんや山口智子さんがとてもフランクな方なので、おふたりがそういう空気を作ってくださっているところもあるような気がします。
- そんな中で、中尾さんの立ち位置は?現場でのコミュニケーションにおいて、何か意識されていることはありますか?
- 平野眞監督が入ってくると面白いんですよ。監督は、みんなをひと通りイジるんです。でも、僕に対してはそれが他の方より多いような感じがします(笑)。そういうイジられキャラ的なところもありつつ……。例えば、朝から解剖のシーンがあったりするときは、夕休(※夕食休憩)くらいになると疲れも出てくるので逆にテンションがハイになるんです。そういう時は会話も盛り上がりますね。
- そういう空気は、作品の性質にも左右されるのでは?
- それはあると思います。このドラマは、命を題材にしていますし、重たいシーンも多いですから。前室から、作品の雰囲気を作っているので。
- 高橋というキャラクターを演じるにあたって、特に意識されたことは?
- 監督やプロデューサーといろいろとお話させていただいた中で、重たいテーマを扱う作品でもあるので、「高橋というキャラから明るさが滲み出てくるような感じしたい。法医学教室に光を灯すような存在でいてほしい」というリクエストはいただいていました。そこは、僕自身も意識していた部分です。解剖室のシーンはまた別なんですけど、それ以外の法医学教室のシーンは明るく、賑やかで、生きている人たちの活気みたいなものもしっかり見せていけたらいいな、と思っています。
- 確かに、高橋の存在に少しホッと出来る部分があります。
- みなさん、「先生」ですからね。そういた中で、高橋はずっと立場も変わらず……カッコ良く言えば“縁の下の力持ち”ということで、みなさんをしっかり支えつつ、普段の空気作りにも気を配っているというか。そういう存在でいたいなとは思いながらお芝居をしています。

- 物語の中でまだ描かれていない、高橋の隠し設定のようなものもあるのでしょうか?
- 「彼女はいない」というのは間違いなくありますね(笑)。家族は……多分、お姉ちゃんがいそうな気がしています。朝顔(上野樹里)先生、茶子(山口智子)先生、絵美(平岩紙)先生との接し方にも、年上の女性からいろいろ言われ慣れているような感じはあるので。仕事はしっかり出来るタイプだと思うんです。「えっ、いまからこれ調べるの!?」というようなことも、テキパキとこなしていますから。でも、何故か女の子にはモテない、ということなんだと思います。
- 台本に描かれていない部分というのは、ご自身でもいろいろと想像されますか?
- 役作りで言うと、作り込むようなタイプではないと思います。今回で言えば、台本を読んで頭の中に浮かび上がった高橋というキャラと、自分の中にある高橋的な要素を照らし合わせて、そのすり合わせの中でひとりに人間を作っていくようなイメージです。もちろん、いろいろ想像はしますけど。
- では、中尾さんご自身と近い部分もあるんですね。
- あると思います。でも、実際のところ、「自分」ってよくわからないところがありませんか?僕という人間を、そもそも僕自身がわかっていないようなところもあって、だからこそ役者という仕事が面白いのかもな、と思うこともあるんです。まあでも高橋は、僕がご機嫌なときに近いような気はしていますね(笑)。

- 朝顔役の上野樹里さんとの実際にお芝居されてみての印象は?
- 普段から、そこに朝顔先生がいる、みたいな感覚があるんです。だから、「上野さん」と言うより「朝顔先生」と言う方が呼びやすいくらい。そう見えてしまうくらいの、素晴らしい女優さんだと思います。
- そういう表現も、役者さんならではの感覚かもしれません。
- 普段は、割と天然なところもある方なんですよ。それがまた、魅力的なんです。「クイズ!ドレミファドン!SP」にチーム朝顔で参加したときに、モノマネタレントの方が来て、たまに本物の方が来る、という問題があるじゃないですか。そういうとき、芸人さんとかはみんな、「本物!?」みたいに盛り上げるんです。僕も、モノマネが面白くて笑っていたら、上野さんだけは本気で信じていて、「中尾くん、ダメだよ!ご本人が歌われているんだから笑っちゃダメだよ」って(笑)。そのとき、「可愛い人だな」と思いました。すごく真面目な方なんだと思います。
- 役者さんのタイプもさまざまですよね。
- みなさんは、どうやって役にアプローチしているんですかね?そういうのはまったくわからないので。さっきの話で言えば、自分の中で高橋というキャラを考えてはいるものの、台本には決まったセリフがあって、僕自身が発する言葉ではないので、どこか“高橋”という着ぐるみを着てから撮影に臨むことになるわけですけど、上野さんからはそういう部分が見えてこないんですよね。
- こうしたインタビューを通じても、役者さんにはそれぞれのアプローチの仕方があることがわかります。「現場の空気を感じてから」という方もいらっしゃいますし、「衣装やアクセサリーを選んだりして外見から整えたい」という方もいらっしゃいましたから。
- あとはもう、監督のジャッジなんだと思うんです。視聴者のみなさんに喜んでもらうためにやっている中で、最初の視聴者は監督ですからね。だから、僕がどう思うかではなく、監督が良いというものならOK、という思いはありますね。もちろん、分からないことがあれば監督に聞きますし、「こういう風にしたい」と言うこともありますけど。僕も他の役者さんのインタビュー記事をよく拝見しますけど、そのときに「ああ、そういうやり方もあるんだな」と思ってその方のことをますます尊敬したりもする一方で、それをそのままやってみてもどこかが違ったりもしますからね。そこがこの仕事の面白い部分でもあると思いますし、そういう違った個性が集まるからこそ面白い作品ができるんじゃないかという思いもあります。高橋というキャラだって役者であれば、別の人が演じても成立するんですよ。だから、僕が演じるんだったら、僕の中にあるものの中で表現する、というその楽しさは、大事にしていきたいですね。
- でも、あの空気感はこのメンバーでなければ出せないわけですよね。
- それはあると思います。普段の会話の明るい感じも、解剖シーンの緊張感もこのメンバーだからこそだと思います。だから、この先の撮影も楽しみなんです。このメンバーで、この空気の中で撮影できるのは、この作品でしか味わえないものなので。
