インタビュー

まず、“チーム朝顔”の撮影現場の印象からお願いします。
リハーサルのときから和やかな雰囲気でした。この先、芝居を重ねていく中で、もっと良いチームワークが生まれてくるんじゃないかと思っています。
万木平というキャラクターを演じるにあたって、特に意識されたことは?
東日本大震災をバックボーンにしたキャラクターということで、どうしても想像でしかない部分があるわけです。その想像の部分を、どれだけリアリティーを持って演じていけるか、ということについては意識しました。でも、難しいですね。簡単に理解できるようなことではありませんから。そういう経験をされた方にしか感じることができないことだってたくさんあるでしょうし……。
ドラマは、上野樹里さん演じる娘の朝顔と平の日々を追い続けています。台本を読まれて、印象に残った部分は?
単純に、ストーリー展開がとても速いのでエンターテイメントとして楽しんでいただける作品になるんじゃないかな、という予感はしました。
上野樹里さんとは実質初共演となりますが……。
実質ね(笑)。彼女は、子どもっぽい部分ととても大人っぽい部分……芯の強さとか華やかさが混在しているんですけど、でもとてもバランス感覚が優れている女優さんだと感じました。撮影中、鼻がグズグズしたときがあったんですけど、そのときにサッとティッシュを差し出してくれたんです。ポケットからね(笑)。そういうさりげない気遣いもできる女性だから、きっと周りのこともよく見えているんじゃないかなという気がしました。
父と娘という関係性を演じるにあたって、おふたりの間で何か話されたことは?
特に何か具体的な話をしたということはないんですけど、実際に僕も娘がいるので、そういう意味では把握しやすいかもしれないですね。ただ、一番難しいのはあの日から行方不明になっている妻の里子(石田ひかり)をずっと探し続けているという意識の部分です。そこには、どういう思いがあるのかな、と。それは、まだ把握しきれていないので、今後の課題でもあるんですけど……。妻を亡くした人の気持ちも、想像でしか把握することが出来ないので。
劇中では、食事をするシーンが度々描かれています。第1話も、朝顔と平の朝食シーンから始まりますが、食べるということはとても大事なことなんだな、と改めて感じました。
平野眞監督も、食べるシーンは重要だとおっしゃっていました。食べることは生きることに直結しているじゃないですか。でも、食べながらしゃべる、というのは大変なんですよ(笑)。リアルに考えると、食べながらしゃべる、というのは実生活ではあまりないことじゃないですか。むしろ、ほとんどの人が「食べながらしゃべるのはやめなさい」と言われて育ってきたわけですからね。
セリフはもちろんですが、食べること自体もお芝居ですしね。
そうなんですよね。失敗したら大変ですよ。ご飯の用意が(笑)。
ただ、食べるという行為が日常を感じさせてくれたり、あるいは悲しみを少しずつ癒してくれたりすることもあるわけで。
 どんなことがあっても、人は食べなきゃ生きていけないわけですからね。食欲がないけど「食べなきゃ」って娘に言うシーンもあるんですけど……当たり前のことですけど、いろいろ考えさせられますよね。
役者さん同士の関係性として、例えば敵対する役柄同士ですと、撮影以外の時間もあまりしゃべらないようにしている、という方もいらっしゃいます。娘を持つ父としてこの現場に臨むとき、娘の恋人・桑原真也を演じる風間俊介さんに対する時任さんの目線はどういう感じになるのでしょうか?
基本は、自由にしてください、ということなんでしょうけど時々ふっと、自分の思いだけで言ってしまうようなこともあるのかもしれないですね(笑)。平だって、基本は自由に恋愛すればいいと思っているでしょうし、結婚だってしたいならすればいい、というスタンスではあると思うんです。とはいえ、父親としての思い、みたいなことはやっぱりあると思いますよ。
朝顔の幸せを一番願っているのは平さんですからね。
そうですね。ひとり娘ですし、妻が亡くなってしまって……身内に対する思いみたいなものは、人一番強いと思いますから。
何か辛い状況に遭遇したとき、それでも一生懸命生活している中で少しずつ“日常”は戻ってくるわけですけど、もしかしたらそれは以前と同じ日常ではない、と感じることもあるかもしれません。ドラマとはいえ、今回の作品からはいろいろなことを考えさせられました。
ふとした時に甦ってくる感情だってあると思うんですよね。何かを見たときとか、会話をしていたときとかに。平も朝顔も、日々の暮らしの中で、里子のことを感じながら生活をしているようなところがあると思いますしね。そういう切なさは、台本を読んでいるだけで感じています。
刑事という職業に関して、何か意識されていることはあるのでしょうか?
刑事ドラマの影響もあって、みなさん、何となく刑事というものに対するイメージがあると思うんです。でも今回は、そういったイメージじゃない、普通っぽい感じを出せたらいいなと思っているんです。いかにも刑事、という感じではなく。言葉じりなども監督と話したりして、調整してもらいながら演じています。平は、コツコツと足で稼ぐような刑事ですしね。理屈を述べるより足を運ぶ、というタイプですね。
職業こそ違えど、父と娘がともに真実を明らかにしたいという思いが重なっているところも印象深いです。
その辺も、妻を探し続けていることに関係しているような気もしています。どこでどうやって亡くなったのか知りたい、という思いもあるんでしょうね。見つけることが、自分の中での区切りなのか、世間体の中での区切りなのかはまだわからないですけど……。プロデューサーにも、「最後には一歩進めるようになるんですか?」という疑問はぶつけているんですけど、まだ回答はないです(笑)。冷蔵庫に貼られた里子のメモが、いつまであるのか。ずっとそのままなのか、あるいははがすときが来るのか……。個人的には、心の中にちゃんとしまい込める日がくるといいな、と思っています。

BACK NUMBER