みどころ

僕には絵子という娘がいます。彼女が小学校3年生くらいの時、初めての登山で冬の八ヶ岳に連れて行きました。麓の民宿に宿泊し翌朝出ようとするとすごく吹雪いていて、登山口で気温が氷点下17度。山頂まで行くのは無理だと思いましたが、出発してすぐの樹林帯を抜けると山小屋があるので、そこまで行こうと決めました。なんとか樹林帯を抜けて山小屋に着き、娘に「今日はここまで」と言うと、「どうして?」と聞いてきます。「『無理』という言葉があるよね。お父さんには『8の字』のように見える。下の丸はしていい無理で、その上にしてはいけない無理がある。何かを成し遂げるためには最大限無理しないといけないけれど、してはいけない無理の世界に入ると、山では死ぬのは簡単だから、今日はもう下りるんだ」と説明しましたが、当時は小学生ですからよくわからないようでした。その後もトレーニングを積みながら、一緒に山に登り続けています。どこまでがしていい無理、どこから先がしてはいけない無理かというのは、どの世界でも人生でも当てはまる話だと思うのですが、山はそこを突きつけられます。娘にはピタッと感性に響いたのだと思います。山登りは、自己判断力や、生き抜く力などを本当に養えます。「おそらく何年か後には一緒にエベレストに登っていることになっているのだろうな」などと想像しつつ、これからも娘と共に冒険をしていきたいと思っています。
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