アナマガ

どちらかというと シッカリ書きたい人のためのコーナー 10年以上の渡り、続いてきたアナルームニュースの中で 好例の連載企画を「コラム」という形で集めました。 個性あふれるラインアップ!ブログとはひと味違う魅力をお楽しみください!

2010年02月12日号

「馬、そしてそれ以外も」#9 ~貴重な、かつスリル満点の経験~
ご無沙汰しております。
これを書いているのが1月の下旬。
もっと早くにご報告すべきだったのですが…
今年から「またまたまた」競馬中継の司会になりました。

2年間のブランクはさすがにつらいものがあります。
競馬そのものはそのくらいの時間で大きく変わることはありません。
変わるのは、馬です。
前に担当していたときに現役だった馬がかなり引退している。あるいは、その頃まだ下級クラス(条件馬なんて言い方をします)の馬が出世してメインレースに出てくる。
MCをやると、こういうのが結構キイてくるのです。
そして、人も。
新しく騎手になった、調教師になった人たち。
牧場も一企業ですから、そこに新規で入ってくる組織もあれば人もいる。
覚えるのも大変です。だってその分僕も年を取りましたから、記憶力がねえ…でも仕事で競馬に携われるのは幸せで貴重なこと。
これからもこの気持ちでがんばります。

なんてことはさておき。
この「アナマガ」も変わっちゃってるじゃないですか。
「どちらかというとシッカリ書きたい人のコーナー」
ですって!
どちらかといえばそういう気持ちではあるんですけど、シッカリ書けているかはとてもじゃないが自信ありません。
今回からも引き続き、わが道を行くコーナーになると思いますのでよろしくお願いします。
で、今回も競馬中継復帰なので、馬の話。
それも乗馬の話。
とうとう、ここまで来ました。それは、

『G1レース優勝馬に乗る』

今回も場所は苫小牧。ノーザンホースパークです。
雪予報の合間を見事にぬって、北海道にしては暖かいプラス気温。
落馬にも気をつけますが、こういう気候のときは屋根から雪がドサッと落ちてくるのにも気をつけないと。その音に馬が驚いて跳ねてしまうこともあるからです。

着くとすぐに「厩(うまや)に来て」。
スタンバイしていましたよ~
ご紹介します。
2004年菊花賞(G1)・2006年メルボルンカップ(オーストラリアG1)優勝馬
デルタブルース号です!!!
菊花賞を勝った時の体重が526キロ。
現在はおそらく600キロを超えているとのこと。かなり大きい部類です。 引退後種馬にならずに去勢手術を受け、乗馬に転用されてきました。
G1レースを二つ勝てば、たいていの馬は種馬になれるはずなのですが、近年の競馬ビジネスはさらにシビア。
彼のような(去勢されたなら『元彼』というべきか?)長距離のレースに実績があると、最近のスピード志向の市場では人気が出にくい=相手の牝馬に恵まれないことが多いのです。種馬としてやっていけなくなると、かなりかわいそうな末路を辿ることもあるとか。この馬の場合は、生まれ故郷に立派な乗馬施設があったために、男性機能は失われたものの、ある意味で幸せな余生を手に入れたといえるかもしれません。

でも、そんなことに思いを馳せている場合でもないんです。
この馬に乗るのはかなり大変だろうということが、予測がついていました。
だって、激しいレースを勝ち抜いてG1馬の称号を手に入れているのですから、おとなしいわけがないのです。
一般に去勢手術をすると気性が穏やかになると言われています。ですからたいていの乗用馬は、元オスか、メスです。 ロデオは…知りませんが。
去勢されていても現役時のアタマの何割かは働くはず。
しかし、僕の師匠はとにかくドンドン乗って上手くなれ、というタイプ。

厩の前でいきなり乗りました。
乗った直後に師匠が一言。
「デルタブルースに
   ヘルメットしないで乗るとは…」

そうです。以前このコーナーで紹介した乗馬経験、坂路を駆け上がる=スピードが出る可能性が事前に予測されていたケースを除いて、いつも「ノーヘル」なんですよ。それにすっかり慣れてしまっていて。
いつもなら馬がおとなしいから大丈夫だろうと思われているようなんですが、スピードが出ていなくても落ちるリスクはあるわけですよね。今回はそのリスクが~かなり~あることを、先の一言は示していました。
まあしかし、僕も「ならば落ちないぞ」と思うタチなので、ヘルメットが届くまでの間もがんばって乗ってみました。 まずは馬の上から一枚撮りましたよ。余裕を示さないと馬に「馬か」にされちゃいますから!





インドア馬場のほうが、よりおとなしくなるはずですが「よし、外に行こう。」



雪です。まぶしく反射があります。
風も吹いて木々がゆれます。屋根から雪が落ちる音が聞こえてきます。
マジで馬が暴れる2秒前くらいの感覚です。
でも師匠は容赦ありません。
「はい~お腹蹴って前に出して~」
足を乗せる鐙(あぶみ)でわき腹を蹴ると、それがアクセル。
しかしこの馬は大排気量のスーパーカーなわけです。

合図を送ったらどうなるか?怖くて、そっとしかできません。
そのうちに馬が元気になってきました!
最近は感じてなかった、
「あ、落ちるかも」の感覚。
それが襲ってきたのです。


以下続く!!