MUSIC CLAMP
CLAMP TALK :和田アキ子
- 中居:
- さっきソウルのベストを、アッコさんのを聴いたんですよ。
- 和田:
- ああ、「ダイナマイト・ソウル」。
- 中居:
- ええ、「ダイナマイト・ソウル」。いや、カッコいいっスよ。
- 和田:
- 本当に?
- 中居:
- いや、マジで。
- 和田:
- 本当?
- 中居:
- 楽曲もそうですけども、コーラスの人で外人さん、黒人の人も入ってるじゃないですか。
- 和田:
- えぇとね、エッセンス・オブ・カプリコーン。
- 中居:
- それで今、僕も音楽いろいろ聴かせてもらうんですけども、なんて言うんですかね? まずソウルに合う人と合わない人っているんですよ。合いたくても合う人ってやっぱね、無理して歌ってるアーティストの人ってやっぱりいるんですけども、アッコさんの声ってね、ソウルに本当、合うんですよ。
- 和田:
- 声が低いからかな?
- 中居:
- 何ですかね? 僕わかんないですよ、これ。なんでかっていうのもわかんないですし。
- 和田:
- あの、ローヴォイスっていうかね、低いせいもあると思うんですよ、多分。でね、当時もそうでしたけども、あんまりロック歌ったりポップス歌う人で、女性シンガーいるんだけど、R&B、リズム&ブルース歌ってる女性ヴォーカリストって、日本てあんまいなかったじゃないですか。それもあるんじゃないかな? 合うように聴こえるっていうのは。
- 中居:
- 歌う人少ないですし、歌おうと思っても出来ない人っていると思うんですよ。
- 和田:
- いや、今、ウマいのいっぱいいるよ。
- 中居:
- いますかね?
- 和田:
- いる。
- 中居:
- でも、ウマくてもほら、声とか声量とかってあるじゃないですか。アッコさんのね、もうスゴいですよ。
- 和田:
- あ、嬉しい。そう言ってもらえると嬉しいですねぇ。
- 中居:
- いや、マジでスゴいっスよ。
- 和田:
- 本当?
- 中居:
- うん。だから、今のアーティストの人たちいないんですよ。アッコさんみたいな声質の人とか、迫力あるっていうか。何かわかんないですけど。
- 和田:
- どうしてね、でもね、デビューした時はね、本当、和製R&Bの女王って言われたんですよ。それで、さっき言ったようにバラエティとかやっちゃって、ちょっと歌手って遠のいたみたいだけど、今頃になって、みんななんでそんな評価してくれるんだろうね? 年とったから良くなってんのかな?
- 中居:
- いや、でも声質とかっていうのは、昔と今と変わんないじゃないですか。
- 和田:
- あんまりね。でも、昔のほうがやっぱりね。まあ、これはみんな知ってることだけど、十代の頃から煙草喫ってるし、酒飲んでるし、不良なんだけど、昔のほうがやっぱり声が若い。艶があるんですよ。
- 中居:
- 艶?
- 和田:
- うん、艶。ただ、キーとかはね、昔出たキーそのまんまでも歌えるんですけど、下げなくても。だけど、艶がやっぱりぜんぜん違いますね。可愛い。でも、歌で褒められると嬉しいよね、なんか。
- 中居:
- だから、今はいないんですよね。ブルース歌う人ってもちろん少ないですし、ソウルをね。あの楽曲もカッコいいっスよ。
- 和田:
- そう言っていただけると、もう本当にね。
- 中居:
- で、僕なんかが聴いてるものと似てたり。それで、外人さんの洋楽とか聴くじゃないですか。
- 和田:
- 「外人さんの洋楽」?
- 中居:
- 当り前のことなんですけども。洋楽を聴いてる感覚でアッコさんのを聴けたりするんですよ。
- 和田:
- あ、嬉しい。今ね、渋谷とか、「ダイナマイト・ソウル」は限られたところでしか売ってないんですよ。だけど、UAと一緒に平積みになって置いてくれてたり。けっこうそういうのって嬉しいよね。
- 中居:
- そういう曲なんですよ、本当に。
- 和田:
- それで、ジャケットはね、もう今から、今、デビューして29年なのね。10月来ると30年目に入るんだけど。ジャケットがね、29年前のデビューした時のまま。それが今のファッションにぴったしなんですよ、不思議と。
- 中居:
- そうですか。
- 和田:
- だから、そういう何気ないジャンバーも、そのままやっとくとまた流行るかもよ。
- 中居:
- そうですかね? まあ、今、60年代とか70年代とか流行ってたりするじゃないですか。だから、それが今になってアッコさんのね、ブルースでしょ。そういうのって女性でいないんですよ、今。本当、いないですよ。合う人っていうのかな。
- 和田:
- うーん? どうかな?
- 中居:
- それっていうのは、アッコさんなんかがずっと29年やってる間に、いろんな歌手の人がいるわけじゃないですか。もちろんポップスでアイドルの人もいれば、ロックの女性の人も。いろんなアーティストの人見て、「ああ、こういうふうな感じにしたいな」とか「こんなふうになれたらいいな」とか、当時憧れたアーティストの人とかっていらっしゃいます?
- 和田:
- 日本人?
- 中居:
- ええ。
- 和田:
- 日本人はいないんですよ。
- 中居:
- 真似をしようとした人とかいませんでした?
- 和田:
- ぜんぜんいないんです、日本人は。
- 中居:
- ああ、やっぱり。
- 和田:
- あのね、あの、変に取られると困るんだけど、中学生の頃に初めて聴いたのがレイ・チャールズでね。で、その時はあの、黒人ていうか、白人も怖いと思ってたの。その、もう全部アメリカでもイタリアでも、何でも外人は全部うちはアメリカ人って言ってたのね。で、その外人の人と会うっていう機会も少なかったし。で、レコード屋でレイ・チャールズの「愛さずにいられない」、「I Can't Stop Loving You」っていう歌があるんだけど、それをあるきっかけで聴いた時、ゾクゾクッとしたわけ。それでレコード屋の兄ちゃんに聞いたらね、「盲目だ」と。目が見えなくて、King of bluesと、リズム&ブルースの王者だと言われてるって。で、英語もわかんなくて。小学校までローマ字じゃない。
- 中居:
- 意味もわかんないですし。
- 和田:
- 意味もわかんないでしょ。ただ、日本語で「愛さずにいられない」っていいなって思ってたんだけど。その時に私は中学生だったんだけど、不良になるちょっと手前でね。
- 中居:
- すごいギャップですね。
- 和田:
- 子供は異常に好きなのよ。で、子供は好きだけど、まあ、そう、やんちゃするちょっと手前だったから。で、当時から多はかったからね。で、関西人て露骨に言うからさ。
- 中居:
- はっきり言いますよね。
- 和田:
- 「大きいなぁ」とかね、「デカいなぁ」とかって言われると、「デカいのが何が悪いんじゃ!? コラ。大っきいなってみぃ、おまえ」とかって言ってたの。だから、「これは中途半端な悪になるよりは、日本一の女の悪になってやろう」って思ってたの。
- 中居:
- 極めようって思ったんですね。
- 和田:
- そうそう。で、その時にレイ・チャールズの歌聴いて、「あら? 会ったこともないし、黒人の人だし、まして英語もわかんないのに、こんなに感動する。何の職業でもいいから、こんなふうに人を感動させられる職業に就きたいな」と思って。で、レイ・チャールズばっかり聴き出したの。それで、「ああ、こういうふうになりたい」って、レイ・チャールズの歌じゃなくて、こういう人を感動させられる。そしたらね、ものすごく失礼な言い方だけど、可哀想な人に思えたの。そのレイ・チャールズが。
- 中居:
- え? なんでですか?
- 和田:
- あのね、本とか読むと、やっぱり日本じゃ考えられないぐらい黒人社会と白人社会の差別がすごくて。で、自分のなかで、私も女として生まれてきてるのに、なんで大きいだけで怖がられたり「近寄り難い」って言われたりするんだろう?って、すごく悩んでたの。「もっと小さくなりたい」とかね。で、「あ、私と同じだ。私がこの人のレコードを買ってあげないと、この人、生活できないんだ」って思っちゃったの。
- 中居:
- 幼心にね。
- 和田:
- そうそう。それからずっと聴いててね、「ああいうふうになりたい」ってなって、「この人たちはみんな可哀想な人なんだ」って。本読めばね、エラ・フィッツジェラルドとかサラ・ボーンとか、そういう黒人ばっかり聴いてて。で、どうしてもその人たちばっかり聴いてたからね、日本で歌手になるってことも思ってなかったし。で、もともと歌手になったきっかけって、大阪の、今でいうライヴなんだけど、当時はジャズ喫茶っていうところで歌っててスカウトされて。
- 中居:
- え? それはいくつの時ですか?
- 和田:
- 16と半分ぐらい。17でデビューしたから。17とちょっとで。
- 中居:
- 喫茶店ですか?
- 和田:
- 私、年、ごまかしてたんですよ。年上に。
- 中居:
- 年上に?
- 和田:
- うん。働いちゃいけないから、18歳未満はそういうところで。
- 中居:
- 普通、逆ですよね? 若くして。
- 和田:
- 芸能界入る時はね。だから、その時19とか言って。でも、通用したんですよ。で、ダンスホールと、あと当時はね、ゴーゴー喫茶っていって、ゴーゴーガールがいて、今のお立ち台みたいな、ああいうとこのの女の子がいて、その時にスカウトされて東京に来たんだけど。
- 中居:
- その時って、なにを歌ってたんですか?
- 和田:
- その時はね、また不良になりかけた時だったから。
- 中居:
- やんちゃな時。
- 和田:
- そうそう。やんちゃな時だからね、プレスリーをずっと好きだったんだけど、「プレスリーはもうあかんで」とかっていうね。で、ビートルズがちょうど出かかってきた時で。で、「ビートルズもいまいちやで。何かカッコいい音楽ないかな」とかって言ったら、ギターやってる奴がジミ・ヘンとかB・B・キングとか。ジミ・ヘンドリックスの「紫の煙り」ってあるんですよ。
で、「それ、ちょっとアッコ、やってみぃへんか」っていったらね、歌詞がすごい短かったの。♪Purple haze in my head〜かなんか。忘れちゃったけど。それから思い出したらみんなね、カッコいいとかってことになったのよ。それとか、オーティス・レディングのね、口笛、私は吹けないんだけど、バンドのメンバーがやってくれたりすると、不良って今でもそうだと思うんだけど、人のやってることはやりたくないの。何か先に行きたい。
- 中居:
- なんかありますね。自分は我が道を行くじゃないですけども。
- 和田:
- で、みんなと協調するのが嫌でさ、それでやったりして、カッコいいとか言われて。だから、東京に送ったテープっていうのは、もういろいろなテープですよ。ジーン・ビンセントの「Be bop lurer」って歌知ってる? ♪We're be bop ruler.She's my baby〜って。
- 中居:
- あ、聴いたことある。
- 和田:
- これね、わりとこれも簡単な。
- 中居:
- 聴いたことある、聴いたことある。
- 和田:
- ブスなルーラーちゃんていう歌なんだけどね。
- 中居:
- それを東京に?
- 和田:
- そうそう。それとかね、「Cancer city」とかね。
- 中居:
- 全部洋楽ばっかりですね。
- 和田:
- そう。それもね、英語がわかんなかったんだけど、耳で聴いて。当時のね、レコードっていうのはね、輸入盤ね、輸入盤はね、ビニール貼ってて、歌詞ついてなかったの。
- 中居:
- じゃあ、何がなんだかわかんないじゃないですか。
- 和田:
- そう。だから、耳で聴いてそのまんまだから。
- 中居:
- 音の感覚だけで覚えるわけですね。
- 和田:
- そう。だからヒドいよ。何だか意味わかんないんだけど、「One more time」とかっていうのはわかるじゃない。「Let's parking」とかよく言ってんの、私。それとか「古い日記」で、♪あの頃は〜ハッ!〜とかっていうのあるでしょ。あれも、なんだかスティービー・ワンダーがデビューした時かなんかに言ってたの、ハッ! とか。わりとその、ブラックミュージシャンは、そういうの多かったんですよ。なんか言ってたの、「Let's parking」とかハッ! とかなんか。それをそのまま言ってるから。ぜんぜん意味もわからず言ってたから、今は怖くて言えませんね。恐いもの知らずって怖いことですよ、本当に。
- 中居:
- アッコさんとかって、音楽の知識が黒人のものだったり、あっちのものばっかりですから。だから自分が発する音楽っていうのも、そういうものから影響されたものしか出てこないわけですよね。
- 和田:
- だけど、これが不思議なことにね、デビューしてからぜんぜんそういうのを聴いていないし。で、あんまり普段、音楽聴かないんですよ、今でも。嫌いなの。
- 中居:
- え? なんでですか?
- 和田:
- 音、好き?
- 中居:
- ええ、好きですよ。
- 和田:
- あ、そう。
- 中居:
- だから、今日、アッコさんの僕だから、うちで聴けるぐらいのあれですもん。
- 和田:
- 私、誰かにCDとかもらうでしょ。CDまずかけられないんですよ。
- 中居:
- え?
- 和田:
- まあ、かけようと思ったらかけれるけど、つい最近なの。CDがああいうふうにして音が出るってわかったのが。
- 中居:
- CDっていったら、もう7年8年になりますよ。
- 和田:
- そう。だから、マネージャーに「それだけは言わないで下さい」って言われてるんだけど。CDがパッとかけた時にね、最初、ふたも開けられなかったの。かけた時グルーッて回って、故障だと思ったの。本当に。で、今でもマネージャーにカセットテープに録ってもらってやっと聴く。
- 中居:
- ええ!?
- 和田:
- 家に音があるとダメなの。聴く?
- 中居:
- 聴きますよ。
- 和田:
- だから、ほとんど今の人の歌も知らないし。あの、勉強足らないですよね、そういう部分では。
- 中居:
- でも、ある意味ではいいかもしれないですよね。変なものが入らないで、自分の独学じゃないですけど、自分を信じるしかないですからね。自分の感性っていうのをね。
- 和田:
- そういうの部分では、まあ、いいって言われる時もあるけど、でも本当は聴かないとダメだよね。
- 中居:
- でも、アッコさんじゃあ、歌っていう存在は、アッコさんにとってものすごい存在なんでしょうね。
- 和田:
- 私ね、中居君とこんな話するとは夢にも思ってなかったんだけどね、本当に。あの、歌を歌ってる時はね、いい女でありたいの。本当に。あとの時はね、テレビとかラジオとかバラエティとかね、もう「面白い」とか「怖い」とか「デカい」とかでいいんだけど、歌ってる時だけは「おっ? いい女だな。どうしたの?」みたいに言われるとちょっといいな、みたいな。顔、形じゃなくてね。
- 中居:
- 歌を歌ってる和田アキ子っていう。
- 和田:
- そうそう。で、自分ではずっと歌手っていう意識があるんだけど、どうしてもバラエティのほうが多く見られがち。
- 中居:
- 出てるとやっぱりね。テレビはしょうがないと思いますよ。
- 和田:
- またね、好きなのよ、私。お笑いも。
- 中居:
- 好きなんじゃないですか。
- 和田:
- それでね、ヘタな新人より私のがウマいの、喋り。本当に。間とか。
- 中居:
- 面白かったりしますね。
- 和田:
- 自分もそうでしょ? そうでもない? 中居君て歌、歌ってんの?
- 中居:
- ………はい?
- 和田:
- あ、顔、引きつった。今、止まったよ。あ、そう。
- 中居:
- そういうことなんですよ。あの、僕もあれなんですけど………。
- 和田:
- ごめんね。
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