CLAMP TALK Non-Edit Version Vol.33

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NAKAI in talking with TAMIO OKUDA.


奥田:
こんばんは。(「TUBE」のロゴが入ったTシャツを着 て、頭にはタオルを巻いている)

中居:
まずですね、今回の出演されるうえでのコスチュームか ら説明していただきたいんですけども。

奥田:
一応ですね、先週の佐野元春さんをちょっと見掛けまし てですね、一応その、全く違った方向でいこうと。

中居:
いいですね。この、未来を感じさせるセットと。

奥田:
ええ、その辺で掃除しててもおかしくないっていう格好 で。一応そこにあったんで、これ。カッコいいですね、フジテレビマークのつい てるタオル。

中居:
そのまま山中湖に行ってもおかしくない感じがしますけ ど。

奥田:
はい、大丈夫ですね。

中居:
なんかね、釣りをずっとやられてらっしゃるということ で。

奥田:
ええ、そうなんスよ。

中居:
ユニコーンの解散後、ソロの活動に至るまでの間は、釣 り釣り釣りと。

奥田:
ちょうどだからその時に始めてですね。まあ、釣りは小 学校の頃からやってたんですけど。たまたまそのルアー釣りを。ちょうど、あま りにも暇だったもんですから、「なんかやろうかな」って思って始めたらハマっ て。とにかく仕事がないですから、毎日釣り。

中居:
仕事がない。

奥田:
まあ、休んで充電をするということでね。

中居:
よくアーティストの方は、充電期間1年間乃至2年間とか 言うじゃないですか。僕なんかにとっては、ちょっと考えられないことじゃない ですけども。とりあえず、何を充電してるのか?  

奥田:
ああ、いや、まあ。

中居:
いや、本当にわからないんですよ、本当に。ただ体を休 めてるっていっても、1日2日寝れば休まるんじゃないかなとか。

奥田:
ああ、そうですね。

中居:
1年か2年間ぐらい充電期間て? 

奥田:
体力面で言うと、なくなりましたから、体力が、休んだ から。マイナスになってるんですけどね。充電したのがね。あの、まあ曲とかを 作るのに、まあ作るだとかライヴをやるだとか、そういうのをずっとやってると 飽きるというか。なんて言うのかな? まあ要するに煮詰まって作るのが楽しくな くなってたりちょっとしたんですよ。だからもう音楽とかをぜんぜん家でも聴か なかったし。

中居:
それは自分に対して「忘れたい」っていう? 

奥田:
忘れたいっていうか、そういう気が起こらなかったんで すよね、当分。もう解散して、抜けた状態になってですね、けっこう何もやる気 が起きない的なことになったんですよ。それでまあ、1年ぐらい休めるよというよ うな周りの状況だったんで、どうなるのか、まあちょっと。

中居:
じゃあ、その間はもう本当、真っ白の状態ですか? 

奥田:
そうですね。あんまだから、人の曲とかも聴かなかった し。ギターを持つこともあんまなかったですし。

中居:
それは何がきっかけで自分が曲を作るなり、何がきっか けで? 

奥田:
そうですね。まあだから、ずっと離れていたら、まあ逆 に、だんだんやっぱりやりたくなってきてるんですね。

中居:
恋しくなる? 

奥田:
そうですね。それで、例えば友達のライヴとかに観に いったりすると、もう「ああ、これをやっぱりやりたいな」という気持ちで。

中居:
刺激されてってことですね。

奥田:
うん。それでまあ、休んだ分なんて言うんスかね? 曲 とかも素直にどんどん出来たというかですね。まあ、やる気が増したというか。

中居:
じゃあ、休んでる間もう音楽に対してはもう真っ白な状 態で。

奥田:
ええ、そうです。何もしなかったですね。

中居:
周りからも「何か作れ」とか「何かやれ」とか。

奥田:
まあ、ちょっとはあったんですけど、「まあまあ、まあ まあ」とか言いながら。「まあ、そう言わず。もうちょっと」とかって言ってた んですけど。結局はその、本当は僕「2年ぐらいレコードとかは作らないで」とか 考えてたんですよ。それで、自分で個人的に曲を溜めて、自分でたくさんの中で 選んだりとかして、で、スタッフなり外に出そうかなって思ってたんですよ。ま あ、そのやり方がいいか悪いかわからないですけど。で、まあ、そう言ってたん ですけど、結局はね、なんかまあ、流れもあって「とりあえずデモテープでも作 るか」とか言ってたら、それが本チャンになりぃのみたいな感じでまあ、案外早 く職場復帰をですね。

中居:
じゃあ、それは周りからの強制的なもんじゃなく、自分 の気持ちの趣くままに作られたっていうことですね。

奥田:
まあ、そうですね。べつにやりたくないのにやったとい うわけではないので。まあ、タイミング的にはよかったんだと思うんですけど ね。

中居:
でも、そういうのが逆にね、よかったりもするんですよ ね。ダラ〜じゃないですけども、「じゃあ、ちょっと作ってみようか」っていう 小さなきっかけがね、自分にとってよかったりもするんじゃないかと思うんです けど。

奥田:
それでまあ、その前のバンドの頃は、やっぱりスケ ジュールが先に決まって、それに自分を会わせて持っていかなきゃいけなかった んで、それを何とかね「30にもうすぐなることだし」とか言いながらですね、何 とかいい感じは、やり方はないかなと思ってまあ、今もやってるんですけど。

中居:
やっぱりグループでいたヴォーカルの民生さんと、一人 のアーティストとしての奥田民生さんていうのは、また違うと思うんですよね。

奥田:
ええ、ええ、そうですね。

中居:
やっぱりぜんぜん勝手が違うんですか? 

奥田:
勝手? そうですね。あの、今は例えばツアーのメン バーとかとね、レコード作ってて。その現場ではバンドの乗りでべつに変わらな いんですけど。なんか一人になった時というかですね、曲を作る時にまあ。

中居:
不安感とかありませんでした? 

奥田:
一人のですか? ありますよ。例えば、こういう場にも 一人で来て喋らなきゃいけないじゃないですか。それがね、恐かったんですよ ね、最初。まあ、今もちょっと恐いんですけど。

中居:
今、恐いんですか? 

奥田:
っていうか、いたら何とかなるじゃないですか。

中居:
まあ、無責任じゃないですけどもね。

奥田:
そういうのでやってきたので、ポッと一人になるとね、 辛いんスよね、けっこうね。

中居:
え? それはこういう番組だけでなく、音楽に対しても もちろん? 

奥田:
そうですね。曲作る時とかも、メンバーのその「こうい うことをやりそうなメンバーだ」っていうのをわかっていて、それを頭で想定し て曲を作ってたんで。それがなくなると本当にもう、まあ自由にはなるんですけ ど、その自由なぶん何やっていいのか、ちょっとわからなくなったりすることも あるんじゃないかと思うんですよ。

中居:
まあ、自分の出した作品が全部自分に返って来るわけで すし。

奥田:
そうですね。そういうのもありますし、人のせいに出来 ないのでちょっとね。だから、今はこの一人の状態なんですけど、早く友達が欲 しいなと思いまして。

中居:
でも、木村君とかもね。

奥田:
っていうか、バンドを僕はやっぱり結成したいんですけ ど。

中居:
改めてですか? 

奥田:
そうです、そうです。バンドは好きなんですよ。

中居:
やっぱり仲間と一緒に音楽を作るっていうのが? 

奥田:
そうですね。それがやっぱり責任逃れというか。そうい うのもまあ、あるんですけど。ある程度無責任なところでやる音楽っていうの も、ありだと思うんですよ。一人の個人的な音楽もまあ確かにいいんですけど。 そうじゃなくて、何人かでやって、いろんな意見が入ってて、統一されてんだか されてないんだかっていう状態の音楽というのも好きで。

中居:
その複数でグループを組んで、バンドを組んでやってま すと、100%120%は自分のやりたいことっていうのは出来ないですよね、逆に。

奥田:
そうですね。まあでも、完全に自分のやりたいことじゃ なくても、逆に自分に出来ないことが出来るので。自分の中でしか考えていない ものが、人の意見が入るとまあダメになることもあれば、大きくなることもある ので。そっちのほうがギャンブル性があるのでね。

中居:
ああ、なるほどね。

奥田:
僕としては、そっちのほうが本当はいいんですけど。解 散してからバンド組もうと思ったんですけどね、まあ、なかなかその。もともと 友達もあんまりいなくてね。で、友達いるけど音楽の友達じゃないんですよ。

中居:
ああ、普通の釣り仲間であったり。

奥田:
うん。普通の友達ばっかりなんで。それを誘ってバンド やるっつうのは出来ないし。

中居:
やっぱりバンド終わってから、解散した後もバンド組み たいっていう気持ちがあったのが、それはちょっと初めてですね、聞いたの。

奥田:
そうですかね? そうなんです。

中居:
へぇー。

奥田:
今もやりたいんですけどね。

中居:
でも今は、自分が歌うだけじゃなく、自分が作るだけ じゃなく、他のアーティストの方に曲を今度は提供するような、プロデュース じゃないですけども。

奥田:
そうですね。あれはね、一応ですね、勉強したいという かですね。まあ、なんて言うんですかね? それをやることによって、要するに自 分の作品作りでですね、凝り固まってきている部分がね、人のためなら普段やら ないこともやるかな? とか、そういうので。最終的には自分の間口を広げること になるかなと思ってやってみたんですけど。実際にそういう感じが自分の一人 の、自分用の曲にも影響はしたので、勉強にはなったんですよ。

中居:
その二人の女の子たちに、最初に作る時に何を考えまし た? その子たちのことを考えたのか、それとも周りのスタッフの方々のいろいろ なあれもありますし。そのアーティストの方々のイメージキャラクターじゃない ですけども、イメージもあるでしょうし。

奥田:
そうっスね、でも最初は人に曲を書くことがあまりない ので、やり方がわかんなかったんですよ。

中居:
初めてですよね。

奥田:
あのね、人に曲をあげたことはあるんですけど、それは なんか、自分用に作ったのを「はい、どうぞ」って感じだったので、ちゃんとそ うやるのは初めてなんですよ。それで、やり方がわからないので、とりあえずテ レビとか見てですね、プロデューサーの仕事振りを見るじゃないですか。「はは あ、どういう曲の作り方をしてるのかな?」とか。見たんだけど、よくわかんない ので、とりあえず自分で歌うつもりで一曲作ったんですよ、最初に。

中居:
あ、その人のためとかじゃなく。

奥田:
じゃなくて。自分用みたいなのを。それで、それを「ど うですかね?」とかいってスタッフとか本人とかにね、聴いてもらって。まあ、モ ロに僕の曲みたいですねとは言われたんだけど、「まあでも、面白いんじゃない ですか」という意見を聞いて。で、まあ、それで最初は楽になって、だんだんそ の人用にちょっと考えながらっていうのを。あの、7、8曲やったんですよ。だか ら、1曲だったらけっこう悩んだと思うんですけど、いっぱいあったので「これは 完全に自分用に作ったやつ」とかね、いろんなのがあったので、まだ楽だったん ですけど。

中居:
でも、結局はね、やっぱり先程いってましたけど、責任 を取らなきゃいけないと。

奥田:
ええ、ええ。

中居:
他に提供しなきゃいけないから。

奥田:
そうなんですよ。自分でやるよりは、ダメだった時の フォローをどうしようかとかって。自分のだったらね、売れなくても「いや、売 れなかったっスよ」って言えるんですが。人のだとね。

中居:
とは言え、結局、自分用に作った曲を提供なさったって いう。

奥田:
そう。最初はそれで。まあでも、売れなかったらね、僕 が小室さんのところに行って土下座して「後はお願いします」って言うしかない かなって思ってたんですけど。

中居:
そういうわけにはいかないでしょうね。

奥田:
まあ。

中居:
けど、初めてですからね、人に提供するっていうのは。 もちろん自分の中で作るのとはまたね。

奥田:
それでなおかつその、若い女の子じゃないですか。その 将来が懸かってるかなって思うと、余計に緊張してですね。

中居:
デビュー曲ですもんね。

奥田:
そうなんですよ。それはちょっと緊張しましたけど。

中居:
でも、僕、聴きましたけど、あれは奥田民生の歌としか 思えなかったりするんですよね。だから、置き換えることができるんですよ。例 えば二人が歌ってる声やアレンジなんかはそうなんですけども、奥田民生の声が フレーズなりメロディの中に入っていくっていうのがね。

奥田:
まあ結局、そんなに間口が広いほうじゃないので、そん なにいろんなタイプの曲は出来ないんですよ。だからまあ、どうしてもね、女の 子だからといってロマンティックなメロディとかっていうのはなかなか出来なく て。まあでも、そこが一応、個性ということで勘弁してもらおうという感じなん ですけどね。

中居:
でも、民生さんの歌っていうのは男の子でも共感できる じゃないですけども、なんて言うんだろ? なんかロマンティックな匂いっていう のがあまりしないですよね。なんか、夢じゃなくてなんかね、すごく現実味があ るっいてうんですか? 

奥田:
そうですね。

中居:
我々の私生活の中でもあるようなないようなことが、 けっこう書かれてるんじゃないかなと思うんですけども。

奥田:
ええ、ええ。あの、性格がけっこう小心者なんですよ。 人見知りとかするんですよ。

中居:
ちょっと嘘臭くありません? 

奥田:
本当です、本当です。本当にその、気が弱いというか、 要するに照れ屋なんですよ。

中居:
………? 

奥田:
いや、本当にそうなんですよ。それでだから、本当にス トレートなね、「君が好きだベイビー」みたいなのを自分で歌うのがちょっと照 れ臭いので。でも、自分で歌わないといけないので、ちょっとそういうのは避け よう避けようとしていたら、10年ぐらいしたらこうなったんですよ。

中居:
あ、それは自分で意識しないまま、自分で書いてうち に? 

奥田:
そう。あんまりストレートなものはね、恥ずかしくて ちょっと照れ臭いので、それでひねりをね。ねじ曲げてしまうというかですね。

中居:
で、自分でやっぱり詞もそうですけども、自分に合った じゃないですけども、架空の、夢のある話じゃないですよね。

奥田:
うん。まあ、かと言って、実生活の全部本当のことでも ないんですけどもね。嘘も多いんですけど。やっぱり、あまりにも自分とかけ離 れたところにいくと、ちょっと照れ臭くなってくるんですよ。だから、ある程度 は自分の中から出たようなぐらいのものをですね、出ししまうというかですね。

中居:
でも、今後はどうなんでしょうかね? まあ、お一人と してもあれですしね。先程バンドも組みたいとおっしゃってましたし。今回、初 めてのプロデュース的な活動もそうなんですけども。今、いちばん自分の音楽に 対してやりたいことですか。

奥田:
まあ、バンドの件に関してはですね、もうもはや諦めと いうか。諦めというか、ああいうものは自然に出来るんですよ、多分バンドっ て。「作ろう!」とかいって「相手は誰がいいか」とか「ドラムは誰々で」とかい うんじゃなくて、自然に会ってね、「あ、バンドやっちゃう?」っていうような乗 りでね。

中居:
「あ、じゃあ、やってみようか」みたいな軽い気持ち だったりする? 

奥田:
そういう乗りじゃないとウマくいかないと思うので。バ ンド結成についてはですね、そのタイミングを待つ。あと20年ぐらいのうちに出 来ればいいかなと、いうぐらいの気持ちでちょっといこうと思ってるんですけ ど。

中居:
呑気な方ですよね。

奥田:
呑気というかその、行動力がないんですよね。面倒臭が りなんですよ。

中居:
いやでも、面倒臭がりの方が曲を作ったり、じっくり出 来るっていうのもね。

奥田:
どうなんですかね? 

中居:
ちょっと今までの僕らが知ってるアーティストの中で、 ちょっといないタイプですね。

奥田:
そうですかね? 

中居:
がむしゃらさが。がむしゃらっていう言葉どう思いま す? 

奥田:
いや、あの、やる時にはやりたいので、なんて言うんで すかね? がむしゃらな状態の自分というのも、時には自分では感じていてです ね、なかなか素敵だと思うんですけど。

中居:
いちばん最初に音楽に目覚めたアーティストってどなた ですか? 

奥田:
えぇとね、バンドはね、ダウンタウンブギウギバンドっ ていうのが、宇崎竜堂さんの。が、僕が初めて生で見たロックバンドだったんで すよ。広島で。それを見て、やっぱりそのバンドの形態というものに憧れてです ね。

中居:
でも、系列はちょっと違いますよね。

奥田:
まあ、そうですよね。要するに、エレキギターをディ ヤーっと掻き鳴らし、歌う姿というのは自分の頭にボンッてそっから入って。そ の、要するにバンドをやりたいんだって思ったんですよ。で、まあ、ビートルズ とかを聴いた時にね、曲の良さとかそういうのに。まあでも、ビートルズもバン ド形態が僕には頭の中にあるんですけど。そういうところから始まっていてです ね。

中居:
でも、決してそれをまあ、自分にとってその当時は刺激 になったでしょうけども、民生さんがやってる音楽っていうのは、決してそれに 沿ったじゃないですが、それにまつわる音楽じゃないですよね。

奥田:
そうですね。僕としてはビートルズに似てるかなと思う んですけど。多分みんなは、そうは思わないと思うので。

中居:
ちょっと…。

奥田:
まあでも、そこが日本人のですね、しかも広島という土 地柄のあれもあり。要するに田舎もんが東京出てきてですね、田舎もんばっかり かもしれないですけど、いかに自分をアピールするかというところで、やっぱり 自分にあるものを出さないとですね、人と違うものにならないので。やはり、そ のビートルズが好きだと言っていても、生まれが違えばみんな結局は同じビート ルズファンとしても、やる音楽は変わるので。そこがやっぱり僕の生まれ育った ところで、そういう今までの環境とかを逆に武器に出来ればいいいなということ なんですけどね。

中居:
じゃあ、決して人真似とかっていうのは好きじゃないで すね。

奥田:
でも、どうなんですかね? いわゆるロックバンドの形 態というのはね、例えばレッド・ツェッペリンとかっていうのは、形態としては 僕はすごくカッコいいと思っていて。それはずっと今でも変わらなくて。あれ以 外のスタイルでバンドを新しいものを作るんだという気はないわけですよ。形態 的にはあれを真似ていたいというかですね、そういう後ろ向きなところがけっこ うあって。

中居:
ああ、なるほどね。

奥田:
音とか音作りとかにしてもね、誰もやっていない新しい 音とか、僕はあまり好きというか、あまり求めないんですよ。その昔のレッド・ ツェッペリンのジミー・ペイジが出してた音が出したいとか。そういうことが けっこう多いので。そういう意味では真似をするのは好きかもしれないですね。

中居:
へぇー。余計わかんなくなってきましたね。

奥田:
まあでも、曲とかそういう作品、なんて言うんですか ね? トータルでね、そういうスタイルを真似するけども、トータルで見ると誰も 他に例がないというのは、目指すところなんですけどね。

中居:
だから、部分部分でね、この音が出したい、あの時のあ のアーティストの音が出したいって。

奥田:
ええ、そうなんですよ。

中居:
それは箇所箇所にね、今までの作品の中にあるでしょう けども。

奥田:
そうですね。 

中居:
まあ、トータル的に、客観的に民生さんや昔のユニコー ンであったり見てると、ちょっと今までと僕なんかの見たバンドの中では違うん じゃないかな。新しいんじゃないかなと思うんですけどね。

奥田:
まあだから、最近はいろんなものがバァーンと出てるの で、そんなに新しいものっていうのはなかなか出てこないじゃないですか。あと はだから、組み合わせというかですね。

中居:
基本的なものっていうのは昔も今も変わらないでありま すからね。

奥田:
あるんですよね。で、その基本的なものというのは、あ げく僕の中にはもう何個かしかないんですよ。それを組み合わせで、人と違う組 み合わせをしようとしてるっていう感じなんですかね。だから、その一つ一つを とってみると、新しいことは一個もやってないと思う。そんなに新しいものは 持ってないと思うので、そういうバランスというか組み合わせというか、そうい うので勝負するしかないかなという。

中居:
やっぱり他のアーティストの方も、そういうふうに思っ てらっしゃるのかな? やっぱり。出てくるものはもう、あらゆるものはもう出て 来てるような気はするんですよね。

奥田:
そうですね。まあ、それをだから、またさらに新しいも のを出す人がもしいたら、それはまた天才と言われ。例えば最初は評価を受けな かったりするかもしれないじゃないですか。でも、そういう人が現われたらも う、いいですけどね。日本とかにも。他人事のように言ってますけどね。いや、 僕はそれを見て「ああ、やった!」っていう。それをちょっと真似したりなんかし て。

中居:
「あの音もらっちゃおうかな?」なんて? 

奥田:
うん。そういう感じいいですね。

中居:
でも、民生さんは音楽は何のためにやってらっしゃるの かな? 

奥田:
あの、結局ですね、いちばん向いてると自分で思ってる んですけど。やっぱり、いちばん自分の中で人に誇れるところというかですね、 そういうところで生きていきたいなぁというのがあって。で、たまたまこういう 仕事に就けて、趣味から始まって仕事に就けて。で、まあ、何年かやっているの で、ある程度「やっぱりこれがいちばん向いてるのかな」と思うんスよね。それ でまあ、自分でやって人に「すごい」と言われたとかね。「好きです」と言われ たとか、曲とかがね。そういうことはやっぱり言われたいなと思うので。その自 分の評価というよりもね、「この人は音楽をやらすと立派な人だ」とか、「すご い人だ」とか、そういうふうに言われたいんじゃないかと思うんですよ。

中居:
それだけなんですかね? やっぱり。

奥田:
そうですね。

中居:
周りの人からのね、評価だったりね、感想・意見だった り。

奥田:
例えば1万人の前でイェーィ! とかっていうカリスマ性 というか、そういうのはあんまりピンとこないんですよ。例えば隣のオバさんが 「なんか、良かったよ」とか言うようなぐらいのほうが僕としては嬉しいですよ ね。

中居:
へぇー。あ、なるほどね。自分に変な話ね、強く興味を 示さない方がチラッと言った、軽い気持ちで言った一言が自分にとってズッシリ きたりするってことですよね。

奥田:
そういうのがやっぱり、いいんじゃないですかね。

中居:
じゃあ、ライヴとかっていうのは? 民生さんにとっ て。

奥田:
あの、まあライヴは単純にコンサートの会場のね、大人 数でも例えば10人以上として、その大人数が集まった時に一斉にみんなが ワァーッと喜ぶとか、悲しむとか、怒るとか、そういうのの力があるじゃないで すか。それは単純にゾクゾクとしたりするので。例えばドームとかで野球とか見 てても、ワァーッて言うだけで涙がチョチョぎれたりするじゃないですか。

中居:
鳥肌立っちゃったりするんですよね。

奥田:
ワァーッてその音だけでも。そういうのが単純に好きな んでね。その、人がたくさんいるところで演奏して、それにお客さんが反応する とか、そういうのが好きなんですよね。

中居:
じゃあ、なんか例えば自分のやりたい音楽であったり、 主張したいものであったりをお客さんに伝えたいっていう強い志っていうのは? 

奥田:
その、伝えるのはね、何なんですかね? 

中居:
「俺の音楽っていうのを、こういうふうに聴いてもらっ て、こういうふうに感じ取って欲しいんだ」っていう? 

奥田:
それがね、なかなか難しくてですね、人それぞれ違う じゃないですか。その楽しみ方なり。

中居:
ええ、基準がやっぱりみんな違いますよね。

奥田:
だから、ライヴで、僕らとしては演るだけしかないです よね。それで、「こういうふうに楽しんでくれ」とかいうのも、実際、何がいい のかも僕わからないので。

中居:
え? 自分のですか? 

奥田:
いや、コンサートとしてどういう状態のコンサートが本 当にいいコンサートなのかというのがね、わからないので。で、例えばローリン グ・ストーンズ見にいって、もうウォーって踊りまくってるようなの見てカッコ いいと思うし。逆にまあ、行ったことないですけど、例えばクラシックみたいな シーンとやるのも僕は、コンサートのすごい正しいやり方だと思うんですよ。だ から、それを僕のコンサートに於いてどっちがいいのかっていうのが、まだ自分 でもわからないので。まあ、ただ僕はひたすらに演り続けてお客さんが、例えば 10年ぐらいしたらね、こういう客層になったのか、とか。そういうのを見てみた いなといのがあるんですけどね。特に「客席をこうしたい」っていうわけでやっ てるのとは、また違って。

中居:
じゃあ、詞を書く時でも曲を作る時でもそうですけど、 やっぱり何らかの形で自分の訴えたいものであったり、自分の主張じゃないです けど、聴く人の前での標準ていうかね、聴き方もぜんぜん違うでしょうけども ね、何らかの形であるような気がするんですよね。僕、曲とか詞とかって作った ことないんで。

奥田:
まあだから、もともとは作り物なので、曲っていうのは ね。なんて言うんですかね? 作り物というか、要するに紛い物でもいいと僕は 思っているので。要するに作品として良ければいいやっていう。けっこうそうい うスタンスでいるほうが、いろんなことが出来るかなと思ってね。あんまり自分 の「俺の心の叫びを聞いてくれ!」っていう状態だと、やっぱりそんなに心の叫 びっていうのはたくさんないと思うので、凝り固まると思うんですよ。やっぱり 広げようとすると、「曲なんてたかが作り物だ」というスタンスでいくのがいい んじゃないかなとは思うんですよね。でも、やっぱり作ると、やっぱり自分の性 格が出てくるので、やっぱりそうは言っていてもね。

中居:
出ちゃいますよね。

奥田:
そう、出ちゃうんですけどね。出て「いかんな」とか 「このまま煮詰まるかな?」とか思いつつ、つい出ちゃうんですけど。一応、志は そういう志を持ちたいと思っていてですね。

中居:
じゃあ、民生さんが自分に一方的に音楽、作品、歌を 作って、一方的にって言っちゃああれですけど、まあ「楽しんでもらえればいい な」と。ライヴなりで。

奥田:
そうですね。まあ、長く音楽をやりたいので、いろんな 方法を試したいし。いろんな音楽をやりたいのでね。その、できるだけ凝り固ま るような要素は排除してはいきたいんですよね。特に、長くだんだんやってる と、まあべつに僕はそんな長くはやってないですけど、それでもまあ、例えば10 年やったら嫌いなもののほうが増えていくんですよね、音楽とかも。

中居:
そういうものですか? 

奥田:
好きなものっていうのは、だんだんなんて言うんですか ね? 嫌いなものってなんか増えるんですよ。

中居:
え? それは音楽? 

奥田:
音楽のジャンルとかにしても。

中居:
そんなもんですかね? 

奥田:
なんかね。だから、そういうのがあった時期とかもあっ て。それで、普通に音楽聴いてるだけだとしたら、そんなこと多分ないと思うん ですけど。自分でやるっていうことで、とりあえず自分に出来ないことだったり とか、そういうのを自然に排除してしまっていたりしてはいないだろうか? とか ね。それがけっこう危機感になってたりするので。

中居:
例えばプレッシャーとかにも。

奥田:
だから、そのままどんどん小さくなって、音楽を嫌いに なったらとうしようかとかいう不安もなんかあるんですよね。

中居:
狭まって狭まって。

奥田:
そうそう、そうそう。

中居:
嫌いなものどんどん避けてってことですね。

奥田:
そう。音楽自体が嫌いになったらね。

中居:
ちょっとマズいっスよね。

奥田:
そう。掃除しなくてはいけなくなってしまう。でも、民 生さんやっぱり今の段階で、音楽だけやってるのが自分ではやっぱり心地いいで すか? 

奥田:
あの、まあ他のことを知らないだけなんですが。あの、 音楽を例えば、もうちょっと突き詰めてなんか「ああ、俺はすごいかな?」って自 分でもし思えば、ちょっと他のことも目に見えてくるかもしれないですけどね。 とりあえずだから、余裕がないですね、その他のことに目を向ける。

中居:
でも、時間がある限りいろんなジャンルじゃないですけ ども。

奥田:
もともと性格としてはね、一つのものをずっと追及する タイプではないと思うんですけど、たまたま音楽以外の才能で、自分で「これ だ!」と思えるもの今のところないし。それで音楽もそのまま楽しくできている し。そういうことで他のものが目に入る余裕っていうのがあんまりなくて。

中居:
好奇心はあるわけですよね? 

奥田:
あると思うんですよ。例えば刑事もの見てて「俺も刑事 役がやりたいな」とかね、そうチラッと思ったりもするんですけど、それってい うのは音楽をやってる俺の気持ちに較ぶると、ぜんぜん違うんですよね。

中居:
ああ、なるほど。わかります、わかります。

奥田:
だから、とりあえず音楽をやっているだけで幸せなの で、まあ、これはこれでいいのかなと。

中居:
多分、この先も民生さんの音楽に対するスタイル、スタ ンスっていうのは、今後も変わらないでしょうね。

奥田:
あの、まあ、変わらないのが多分、変わらないのがじゃ ないや。変わるのが恐いんですよね、だから。

中居:
それは変わりたくないっていうことですか? 

奥田:
そうですね。今の状態っていうのは多分、いい状態だと 思うんですよ。なんか良くさせていただいてるし、いろんな面でもいい状態だと 思うんで、これをこのまま維持したいという気持ちはけっこうあるんですよ。だ から、出来ることならこのままの状態でいけたら、まあ楽は楽だし、いいかなと 思って。音楽的にもね、そうやって一つのことに突き進めるっていうのは、きっ といいことだろうと思うので、いいんじゃないかなと思うんですよね。

中居:
そのスタンスはまあ、ずっと続くでしょうね。姿勢も変 わらないでしょうね。

奥田:
そうですね。まあ、かえたくないんですけど。変わらな いことを願ってはいるんですけど。

中居:
でも、やっぱりずっとやってくうえで、いろんな音楽が 耳に入って、いろんなアーティストが出てきて、すごい刺激されると思うんです よね。

奥田:
ええ。これでまた、すぐ影響受けるんですよ、僕。

中居:
つじつまが合わないじゃないですか。

奥田:
いやいや、人のライヴとか行くと、本当に羨ましいんで すよね。とにかく人の曲聴いたらその人が羨ましくなるし。

中居:
羨ましいっていうのは? 

奥田:
羨ましいっていうか、なんか「クソー、俺よりいい」と かってすぐ思ってしまうんですよ。

中居:
ああ、なるほどね。

奥田:
まあ、それが刺激になって、それに似たような曲を作っ てみたりとかね。そういうこともけっこう多いですよね。

中居:
おかしいですね。

奥田:
けっこうそうなんですよ。最近だと例えばウルフルズと かのコンサートとか行くと、「あ、やっぱりこれぐらい派手にやらんといかんか な」とかね、やっぱり思ったりするんですよね。

中居:
なんか、ホワンとした感じじゃないですけども、やっぱ 力みがないスね。僕はある意味では「余裕があるのかな?」とかクールで「他の アーティスト? まあ勝手にやってくれよ。俺は俺のスタンスでやるからさ」みた いな、テレビ上での僕なんかの判断がね、客観的に見てての判断なんですけど。 なんか、先程いった呑気じゃないですけど、「俺はこうやってやっくりやるから さ。俺は俺のペースでやるから」って。

奥田:
まあだから、ぜんぜんその、人のことはメチャクチャ気 になってるんですよ。でも、それが気になっても、それに対処しようとするのが また面倒臭くて。で、結果的にはマイペース型にはなっているんですけど。気に はしてるというね。気にはしてるんだけど、それに対処するのが面倒臭いし「ま あ、いいか。このままで」っていうようなところでのダラダラさはあるんですけ どね。

中居:
ダラダラ感がありますよね。

奥田:
ダラダラ感。ダラダラ系ですかね。

中居:
もし例えばSMAPにですね、なんか曲を例えばね、今回プ ロデュースなされたわけですけど、なんかプロデュースかするとしたら、どうい う曲を? 

奥田:
どうなんでしょうね? 難しいですよ、まず、すごく。

中居:
まあ、難しいでしょうね。

奥田:
いや、難しいですよ。SMAPの曲って難しい曲多いですよ ね。

中居:
そうですかね? あんまわかんないんですけど。そうで すか? 

奥田:
いや、難しい曲多いですよ。すごい高度な曲が多いです ね。

中居:
うーん? そうかな? まあ、ええ、歌はあれなんですけ ど。

奥田:
いや、まあ、そういう印象があって「これは俺には出来 んな」といつも思うんですよ。だから、僕がやると、もう本当になんか棒状の歌 みたくなってね、ぜんぜんつまんないよ。踊れないと思いますし、だいたい。踊 りながら歌えないと思うんですよ、僕の曲は。

中居:
多分だから、SMAPに限らず誰かに提供する時に、やっぱ 自分とぜんぜん勝手の違うアーティストだったり歌手の人に提供する時に、やっ ぱその人用に考えなきゃね。僕なんかに提供するとしたら、「今までの奥田民生 ワールドである音楽のなかではいけないんじゃないか」っていう危機感みたいの あるじゃないですか。

奥田:
いや、だから本当にぜんぜん違う勉強になっていいかも しれないですよね。

中居:
だから、そうするとまた違った民生さんが見れちゃった りするんじゃないかなと。

奥田:
それはでも、そういう極端な実験というかね、試みがも しあったら、それは大きく変われるかもしれないですね。

中居:
だから、新しい一面じゃないですけども、新しい奥田民 生っていうのが見たいなっていう気もしますけどね。

奥田:
でも、売れないでしょうね。

中居:
そんなことはないですよ。やっぱ音楽に対するスタン スっていうのはね、今後も変わらないなぁとは思ってましたけどね。

奥田:
そうっスね。

中居:
またプロデュースみたいな形っていうのは? 

奥田:
いやぁもどうっスかね? けっこうだから、神経を使っ たんですよね、今回やったやつは。だから「けっこう辛いな、この仕事」と思っ てですね。

中居:
続けていったりは? 

奥田:
「あんま向いてるような気がしねぇな」と、ちょっと 今、思ってるんですよね。だから、自分でも勉強にはなったんですけど、自分が 勉強になったとばっかり言ってるわけにもいかないじゃないですか。だから、そ んなに出来ないと思うんですよね。だから、本当になんかおもしろいタイミング とか、面白い人とかいれば可能性はもちろん、やってみたいとは思うかもしれな いですけどもね。とりあえずだから「どんどんやっていきます」っていう感じ じゃないんですよ。

中居:
それもまあ、自分のペースですよね。

奥田:
ええ。

中居:
なんか縁があればっていう形ですよね。

奥田:
そうそう。だから、べつにそういう方向に進んでいくつ もりも全くないのでね。

中居:
なんかダラダラ感で。

奥田:
なんか、同じように僕みたいな人がもしいたら、一緒に なんかやろうかなっていう気も起こるかもしれないですけど。なかなかいない。

中居:
ダラダラ感すごいでしょうね。

奥田:
そしたら多分、また売れないと思うんですけど。

中居:
いや、でもね、今後の活躍というか、音楽ってけっこう 新しいのが出来るんじゃないかって、僕なんかやっぱり期待感がありますんで ね。

奥田:
まあ、ちょっと、しぶとく生き残ってはいたいので、頑 張らさせていただきます。

中居:
民生さんのペースでね、頑張ってください。

奥田:
ありがとうございます。

中居:
はい。ええ、今週のゲストは奥田民生さんでした。どう もありがとうございました。

奥田:
ありがとうございました。

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