CLAMP TALK Vol.44 Non-Edit Version

NAKAI in talking with TAKESHI KOBAYASHI.
- 小林:
- どうも。はじめまして。
- 中居:
- はじめまして。
- 小林:
- なんか、ミスチルがいつも野球でお世話になって。
- 中居:
- そうなんです。2回ほどね、やらさせていただいたんで
すよ。
- 小林:
- ええ、見事になんか、勝たれたそうで。
- 中居:
- ええ。2連勝です。野球やられるのは、好きじゃないん
ですか?
- 小林:
- いや、あのね、いちおうユニフォーム持ってるんです
よ、そのミスチルのあれでも。
- 中居:
- 出席しないとダメですよ。
- 小林:
- そうなんですけどね。やっぱりちょっと、いろいろほ
ら、彼らがオフの時に僕がやらなきゃダメなこととか、やっぱりいろいろある
じゃないですか。それでね、今まで一度も、彼らがユニフォーム着てるところも
見たことないんですけどね。
- 中居:
- それはチームの一員とは言えないんじゃないですか?
- 小林:
- ええ、そうですね。
- 中居:
- 野球やるのはでも、嫌いじゃないんですよね?
- 小林:
- そうですね。やっぱり、ちっちゃい頃は普通にね、野球
やってたし。
- 中居:
- で、ジャイアンツがお好きと。
- 小林:
- ええ。奇遇で、一緒でね。
- 中居:
- 共通点があるとは思わなかったですね。
- 小林:
- ええ、そうですね。
- 中居:
- キャラクター的っていうか、あの、イメージ的にね、こ
うやって判断するのはアレですけども、共通点があるとは思えないじゃないです
か。ジャイアンツやっぱり、長嶋選手が?
- 小林:
- 僕はね、王さんが好きだったですね、ちっちゃい頃は。
- 中居:
- 王選手の時代ですね。
- 小林:
- いや、長嶋さんが嫌いだっていうわけじゃないですけど
もね。
- 中居:
- 現役の時代は、あんまりやっぱり知らないんですよね?
- 小林:
- うーんと、ね、長嶋さんで、だから、中期ぐらいからで
すかね、僕は。
- 中居:
- はいはい、はい。
- 小林:
- でも、さっきチラッとあれですけど、原さんからです
か?
- 中居:
- 僕は原さんからなんですよ。
- 小林:
- 巨人もいろんな時代を経てますからね。
- 中居:
- なんか、先程なんか、それを、その時代を知らないなん
て寂しいですねと。
- 小林:
- いやいや、原さんからっていう巨人だと、ちょっと寂し
いかもしれないですよね、僕にしてはね。
- 中居:
- そんなこと言わないで下さいよ。原さんもやっぱり、立
派な夢を作ってくれましたもん、僕たちに。
- 小林:
- いや、本当でも、維持されましたよね、彼もね。
- 中居:
- そうですよ。今だから、今の人たちは松井選手を夢とし
てやっぱり、抱いていくんでしょうね。
- 小林:
- そうですね。松井選手すごいですよね、今年ね。
- 中居:
- すごいですね。あれは何だと思います? オールスター
明け、急でしたよね。
- 小林:
- そうそう。やっぱりあの、もちろん素質があるんでしょ
うけど、あの、相撲、相撲も僕、好きなんですけどね。
- 中居:
- 相撲好きなんですか?
- 小林:
- ええ。 あの、千代の富士さんとかがね、ある時からす
ごく強くなった瞬間のこととか、僕、よく覚えてるんですよ。やっぱり普通の人
にとっての、例えば一秒間とか、そういうのがなんて言うの? 拡大して見える、
みたいな感じが見ててしますけどね。
- 中居:
- 瞬間、瞬間ですよね。
- 小林:
- ええ。瞬間がすごい本当にあの、捉えるなんて言うか、
幅みたいのが、すごい急に出てきてるっていう感じじゃないかな。
- 中居:
- それでやっぱ、魅力を感じたわけですね。
- 小林:
- だからあの、彼のね、バッティング、振り方でホームラ
ン飛んでく感じって、奇麗じゃないですか。
- 中居:
- ええ、派手ですよね。
- 小林:
- ええ、やっぱり魅了するものがありますよね。
- 中居:
- 野茂さんともなんかね、ドジャースの。
- 小林:
- ええ、対談して。
- 中居:
- 対談をなさったっていって。あの、それはロスのほう
で?
- 小林:
- そうです。あ、それはベロビーチで。
- 中居:
- あ、ベロビーチで。
- 小林:
- フロリダですけどもね。
- 中居:
- ええ、ええ。その時、僕なんかにとってはやっぱり、羨
ましいというか。え? それは、なんか面識あったんですか?
- 小林:
- いや、なかったんですけど。たまたままあ、友人の友人
みたいなのが、そういう企画がなんか持ち上がって。いや、僕もすごい好きだっ
たんですけど。
- 中居:
- 世界の違う人ですよね。
- 小林:
- そうですね。いや、ほら、野茂さんてすごいフェアプ
レー精神の持ち主って感じするじゃないですか。野球に対して自分で新天地を求
めてアメリカまで渡るとか。本当に野球が好きで、楽しくやるべきだ、みたいな
正しい考え方持ってるんだけど。一方であの、彼のフォークボールっていうの
が、僕からして見るとすごいクセモノで。
- 中居:
- え? どういうことですか?
- 小林:
- っていうかね、彼が言うには、自分が本当にキチンと投
げられ、ウマくいった時のフォークボールは打てないって言うんですよ。あの、
バッターは。打てないボールなわけですよ。で、打てないボールなんていうのが
ゲームにちゃんと存在してるっていうんだったら、多分ルールブックで禁止し
たっておかしくないような、半分反則みたいなもんじゃないですか。
- 中居:
- 面白い捉え方しますね。
- 小林:
- でもやっぱ、それをちゃんと。なんかね、縫い目が。普
通、フォークボールって真直ぐ飛んでくるんだけど、彼の場合は回転、直球と同
じように回転して落ちるから読めないんですって。
- 中居:
- 待つバッターは、もうストレートだと思ってやっぱり。
- 小林:
- ストレートとフォークの球種の違いがわからない。
- 中居:
- ええ、ええ。
- 小林:
- で、突然グァーンと落ちたり、なんか曲がりながら落ち
たりするから。で、とにかくストライクゾーン真直ぐ来たところから、一番ウマ
くいった時はワンバウンドになるから、打てるわけがないっていう。
- 中居:
- すごいんですよね、あれ。本当にカターンと落ちるんで
すってね。
- 小林:
- 多分、バッターボックス入ってみたら、もっとすごいん
でしょうけどね。
- 中居:
- でも、実際にはゲームは見られなかったんですって?
- 小林:
- ちょっと忙しくってですね。
- 中居:
- 一日たりともって言ったらおかしいですけども、やっぱ
り余分な時間ていうのは。れそはレコーディングの音作りに?
- 小林:
- そうですね。だから、今回はその、3ヶ月間ずっと行っ
てて。今年ほとんどもう4/5ぐらいはずっと、去年の暮れからずっとニューヨーク
とロサンゼルスとロンドン、その行ったり来たりで。
- 中居:
- へぇー。
- 小林:
- で、今はちょうど、Mr.Childrenのツアーがあって。
- 中居:
- はいはい、はい。
- 小林:
- それの要するにプロデュースもやってますから、それ
で。まあ、もう始まって。また戻るんですけど、ちょうど今年前半、去年の暮れ
からですけど、ミスチルのアルバムと、MY LITTLE LOVERの秋に出るシングルと、
あとまあ、もう一つその、岩井俊二監督の映画の要するにサウンドトラックと。
あとまあ、もう一つその中にYEN TOWN BANDっていうのが出てきて。
- 中居:
- はいはい、CHARAさんが。
- 小林:
- そうそう。で、まあ、CHARAがグリコっていう役名で、
その「スワロウテイル」には出てるんですけど、彼女をヴォーカルとした、ま
あ、バンドなんですよ。バンドのメンバーは、その中にいることはいるんですけ
ども、表立っては一応なんか、ちょっと匿名みたいな感じでやってるバンドが
あって。いや、だから、今年すごい、もう3枚やりましたから。その、創作するの
がすごい僕遅いって。遅いっていうか、多分、小室さんなんかに較べると、すご
い量産型じゃないですから。
- 中居:
- ゆっくりと言うか、ジックリタイプかもしれないですよ
ね。
- 小林:
- そうですね。その割りには、まあ、サウンドトラック含
めてだけど3枚もプロデュースしてますいから。そんなぐらいですから、忙しかっ
たですね。
- 中居:
- でもあの、やっぱりそのね、ミスチルもそうですし、
MY LITTLE LOVERのみなさんもそうですけど。今のそのサウンドトラックのほうも
そうですし、期限があったり、時間に追われることって絶対出てくると思うんで
すよね。そういう時に、例えば何日、何ヶ月の間、何日の間に作ってくれって言
われて。でも、時間がなくってどうしようもない時に、もう安易なものを出した
経験ていうのあります? 「もう時間がない。これが、この時間内での自分の精一
杯なんだ」っていう作品ていうのは、今までありました?
- 小林:
- いや、だから、それに、そう言われてそれに当てはまる
というのは無いかなぁ? あんまり考えたことはなかったですけど。ただね、その
時間の中にて出来ることをやってるんだとは思うけれど。やっぱり何だろう? 一
生かけてでもいいから、一ついい作品が出来ればいいと思ってるわけじゃないで
すね。やっぱ、僕も。やっぱりそれは何だろう? 人間としてなんか、生きていく
リズムみたいなのあるじゃないですか。一人の人間として。だから、それでやっ
ぱり時代と言っていいのか、なんか。とにかく周りの人間と共に生きてますか
ら、僕も。そこの中でやっぱりなんか、コミュニケーションというか、そういう
人との呼吸みたいなののところで、やっぱりこれがベストだなというか。なんか
ね、よく言うんですけど、ベストっていうかね、自分の中で必ず、ボーダーライ
ンみたいのがあるんですよ。
- 中居:
- 自分の基準の中ですね。
- 小林:
- 基準が。その作品を、最初になんかやる時に、何だろ
う? 人に与えていく快感みたいなものに、「ここを越えていけば、なんとか多
分、大丈夫だ」っていうか。恥ずかしくないっていうか、自分の中で「やり遂げ
た」と言える。まあ、それを越えさえすれば。
- 中居:
- でも、その基準っていうのが、人それぞれですし。小林
さんの基準と、周りの人が求めてる基準て、多分、違いますしね。そこらへんの
やっぱりその、行き違いみたいのって絶対生じるでしょうね。出て来るでしょう
ね。
- 小林:
- それはね、あんまり生じたことはないかもしれない、周
りとはね。あの、ただ、もちろんその、第三者の人がね、本当にあの、いいと
思ってても全く別の角度からの批評とかね、感じ方っていうのは当然あると思い
ますけども。でも、やっぱり僕がプロデュースしてるアーティストと、僕の中で
そこが食い違ったまま発売するとか、世の中に出したっていうことは、多分ない
と思いますね。
- 中居:
- 今までもありませんでした? ミスチルもそうですし。
- 小林:
- MY LITTLE LOVERでも、例えばもうちょっと古く言えば
サザンでも、ないかな。
- 中居:
- メンバーの中で、「ちょっと小林さん、これは違うん
じゃないか? 僕の求めてる音楽とは、ちょっとこれは違うんだけども」っていう
葛藤じゃないですけども。
- 小林:
- あ、だから、それはね、えぇと、そういうの本当に少な
いですけど。例えば、このあいだも「深海」っていうアルバムやってて、その中
の一曲で、ほとんどもう全員が納得したミックスが終わってて。で、ギターの田
原っていうのが、野球のわりとあの中ではウマいほうの田原君が、アルペジオの
パターンっていうのがあって、で、それを「音もやり直したい」っていう話が出
てきた時に、それ、すごい僕は彼の気持ちをすごいよくわかってたし。で、その
曲のなんか、在り方っていうのも、やっぱり漠然と僕も不安を感じてたところが
あって、最終的に「深海」の中に入れる、そのさっき言ったボーダーラインのと
ころで。やっぱり、それだけは日本で少し手直しをして、やり直したんですけ
ど。だからもう。
- 中居:
- とにかく彼の音楽性というか、そのギター、まあ本当
ね、ちっちゃいとこだったかもしれませんけど、彼の気持ちやっぱり尊重はした
わけですよね。
- 小林:
- そうですね。だから、本当に細かい、本当にちっちゃい
ことで、「気にすることないよ」っていうようなところは、そう言いますけど。
でもなんか、そのへんはすごいもう、呼吸がとれてるっていうかね。
- 中居:
- へぇー。それっていいでいよね、でも。
- 小林:
- そうですね。
- 中居:
- でもほら、その音楽も正解がないですよね。
- 小林:
- うん。
- 中居:
- それでやっぱ音楽あのね、曲を作る時も、その人の生き
様であったり、その、小さい頃抱いてたその自分の好きな音楽像じゃないですけ
ども、みんな音楽への接し方っていうのは、もうそれぞれみんな違いますから。
やっぱりその、センスが違いますよね。
- 小林:
- そうですね。
- 中居:
- その、センスがもう食い違っっちゃった時っていうの
は、どうすることもできないんじゃないかと思うんですよね。「こういうセンス
なんだから、しょうがない」ってことになっちゃうんじゃないかなと思うんです
けどね。
- 小林:
- ただあの、なんだろう? そこの中で、今なにをやるべ
きかっていうことがあるじゃないですか。
- 中居:
- ええ、ええ。
- 小林:
- だからやっぱり、よく僕はそれを必然性とかって言うん
だけど、なんか、それを今とるっていうのは、僕のべつに欲とか欲求であった
りするわけじゃないっていうか、それだけじゃなくて。なんかね、そこになんと
なく周りの、周りっていうかそこの中の空気っていうかムードがもう、なんかな
んて言うの? 選んでしまうみたいなものを、ただキチンとなぞってあげるってい
うか。それをまず、勘を働かせて、それを見付け出して、何だろう? イメージト
レーニングにすごい近いかもしれないけど。そういうのがあって。そこで最初に
なんか、最初っていうか、見えてったら、あとはもう、みんなでなんかそこにあ
るものをなぞっていくみたいな形っていうかね。
- 中居:
- はいはい、はい。
- 小林:
- 何だろう? エゴのぶつかり合いで、何かものを作って
いくって、ゴリゴリゴリゴリね、切磋琢磨してってなんかものを作ることって、
確かにせめぎ合いの要素はすごく多いんだけど、なんかそんなね、なんかいがみ
合って作ってるようなことではないんだと思いますね、多分。
- 中居:
- でも、それはでも、メンバーの人たちと小林さんの関
係っていうのが、やっぱり、あるそのボーダーラインていうのが、もしかして一
緒かもしんないですよね。あるいは近いかもしれないですよね。
- 小林:
- かもしれないね。
- 中居:
- いろんなだってね、音楽性っいうのは、みんなそれぞれ
多分、本当に違うでしょうしね。今まで聴いてきた音楽もそれぞれ違うでしょう
し。音楽環境っていうのは違いますからね。
- 小林:
- そうですね。
- 中居:
- で、あの、さきほどチラッとおっしゃいましたけど、
ニューヨークとロンドンとロスっておっしゃってましたよね。
- 小林:
- ええ。
- 中居:
- で、僕の中では、ちょっとわかんないんですけども、
ニューヨークとロンドンとロスの、その環境の違いですか。やっぱり、環境が違
うからこそ場所を点々とするのかな? と思いますけど。
- 小林:
- うーん? そうですね。あと、もっともちろんあの、他
にもいっぱいあるんでしょうけどね。よく言われますね、あの、僕もだからそ
の、ニューヨークのウォーターフロントスタジオのいろいろレニー・クラビッツ
とか、あのへんやってるヘンリーハッシュってすごい仲がいいんですけど。エン
ジニアでもありミュージシャンでもあるんですけど。彼とかは、その、アメリカ
はもっと南部のほうが絶対面白いとかね。ナッシュビルとかニューオリンズと
か。で、「やっぱり、ああいうとこで今度レコーディングとかしてみようよ」み
たいなこととかね、言われますけどね。
- 中居:
- それはやっぱり、周りの雰囲気なんですかね?
- 小林:
- うーん? いや、だから、ルーツとしてやっぱりブルー
スとかから始まってきてる、なんか生音の在り方とか、そういうことを彼は多
分、僕にすごい言ってたんですけども。でも、音楽的にそうですね、だから、南
部のほうまでいっちゃうと、本当深いっていうか。僕もまだよくわからない話で
すけど。ニューヨーク、ロンドン、ロスっていっても、それぞれやっぱり当然違
いますよね。あの、ロンドンていうのは、もうああやって作り込んでく、建築し
てくみたいな形にすごい近いような感性っていうか。まあ、本当ジェントルマ
ン、ジェントリーな国ですから。国っていうか、ミュージシャンもスタッフも本
当、そういう人多いですから。本当、ビートルズの中期以降とかでもよくわかる
通り、もう本当に音を作り込んでいくっていうことに関してはね、貪欲なところ
すごくあるし。今回だから、アビーロード、よくビートルズがずっとやってたア
ビーロードで、それはその「スワロウテイル」のオーケストラをね、録ってきた
んですけど。
- 中居:
- オーケストラ?
- 小林:
- ええ。あの、ロンドンロイヤルフィルっていうオーケス
トラを使って。アビーロードの1スタっていう、もうすごい天井が高い、要するに
教会みたいなリバーヴ感がある。それがね、本当にまあ、映画まだ観てないで
しょうけども、あの、ちょっと観ていただければ、かなりのスケール感ていう
か。
- 中居:
- そのサウンドトラックに入る?
- 小林:
- そうそう。
- 中居:
- オーケストラ。
- 小林:
- オーケストラ。
- 中居:
- え? それは初めての経験ですか? それとも。
- 小林:
- えぇと、まあ、レコーディングでねチョコチョコ。チョ
コチョコっていうか、もちろんストリングスである程度2〜30人ぐらいの編成で実
際にライヴやったこともありますし。あの、LIVE UFOとか。今、一瞬、局を確認
しましたけど、頭の中で。
- 中居:
- へぇー。でもそれ、YEN TOWNじゃないですけども、今ま
でのあれと違うじゃないですか。アーティストに曲を提供するのとは、またやっ
ぱりわけが違うと思うんですよね。そのサウンドトラックになるっていうのもそ
うですし、その映画の中に入る挿入歌じゃないですけども。
- 小林:
- YEN TOWN BANDって、まあアルバム出るんですけども
ね。
- 中居:
- 絵があって、ストーリーがあって、その中に歌をね、入
れ込むのとまた作り方もまた違うんじゃないかなとも思うんですけども。
- 小林:
- うん、そうですね。だから、今回は岩井監督が最初にス
トーリー設定の出来た、生み出したバンドですから。それに生命力みたいなのを
僕が吹き込んでいくっていうことから始まったから。でも、やっぱり実際に
Mr.ChildrenとかMY LITTLE LOVERみたいに、アーティストとして生身の姿を持っ
てて、ちゃんと看板を背負ってローテーションこれからもアーティスト活動を続
けていかなくちゃダメだっていうのとは違って。やっぱり映画の中のストーリー
上の架空のものが、なんかリアルに展開してくって面白さを、本当にただ僕が楽
しめばいいんだっていうふうに、もう最初っからわりと思ってたから。
- 中居:
- まあ、ある意味で自由と捉えたわけですね。
- 小林:
- そうですね、ええ。だから逆に、アルバムも英語が半分
ぐらいだし。やっぱりまあね、映画ってある意味では、すごい海外とか出やすい
環境でもあるし。そういうことはすごい考えて。岩井君と考えながら、かなり本
当に遊べたなというか。これはね、でもね、いい映画なんですよ。すごい。もう
ちょうど日本に帰ってきてちょうどあがりを見て。岩井君と、僕のほうがちょっ
と先に帰ってきて。ちょうど編集もギリギリまで彼もロスに残って頑張ってて
戻ってきて。で、彼はちょうど二度目かな? 試写見たので。僕は初めてそこで二
人で見て、なんか本当に興奮しましたけどね。
- 中居:
- ああ、そうですか。
- 小林:
- ええ。
- 中居:
- いい映画。
- 小林:
- いい映画ですよ。本当に。もうこれは本当に出来るだけ
多くの人に観ていただきたいと本当に思いますけどね。
- 中居:
- え? どういう? ストーリーを軽いタッチでいいんです
けども。
- 小林:
- うーん、そのYEN TOWNっていう、まあ東京なんですけど
もね。未来か過去かちょっとわからない、まあ東京に、YEN TOWNという架空の地
域というか、そういうのがあって。その、そこにまあ、いろんな国、アジアの、
アジアだったりアメリカだったり、そういうところから円を求めていろんな人が
集まってくるという。そこの中でいろいろ音楽が、バンドがね、登場してきた
り、なんて言うの? サスペンスっていうか、そういう事件が起こったりとかして
いきながら、まあ展開してくっていう映画なんで。まあ、そうとう情報量はね、
すごい多い、何だろう? 冒険活劇みたいな側面もすごいあるし。いわゆる青春恋
愛ものっていう感じももちろんあるし。あと、なんか、近未来的なタッチってい
うのもあるし。なんか、そういういっぱい要素があるからいいって言うんじゃな
くて、なんか、それが全部すごいあの、岩井君ていうのは、ものすごい情報を
いっぱい入れて、それをすごいコントロールできる頭脳を持ってる人だけど、な
んか、それを貫いていくピュアさというか。だから、複雑な味わいのものなんだ
けれど、なんかスッキリしてるっていうかね。
- 中居:
- ああ、わかります、わかります。決して観てる人に混乱
を招くような作品ではないと。
- 小林:
- ではないですね。僕は本当、そう思いますけど。
- 中居:
- その中に架空のYEN TOWN BANDがあるわけですよね。全
てが架空ですから、その架空のキャラクターっていうのもね、自分御自身で多分
イメージして作られたものですけど、ゼロからですよね、そうなりますと。
- 小林:
- そうです。だから、それでまあ、ミスチルの「深海」と
かでもずっと言ってて。さっきも言ってましたけど、その、ニューヨークの
ウォーターフロントスタジオっていうアナログのね、アナログのヴィンテージも
のの機材がいっぱいあるところで録ったんですよ。だからまあ、よく聞かれるの
はその、「70年代の音楽とかわりとマニアなんですか?」とかね、なんか。でも、
決してそういうわけじゃなくて、なんかただ、一つ一つの音の存在感ていうか、
それを自由に解放してあげるっていうかね。あの、そういうふうに思うと、一つ
一つの音をキチンと録るっていうか、太く録るっていうのがずごく大事になるん
で。それでわりとそのスタジオを使ってるっていう感じなんですけどね。まあ、
コンピューターミュージックなんかでいうと、まあ、ベースがシーケンスで鳴っ
てて、シンメトリックに左右のものが、この音はこの右側の音があるから左もあ
るとかね、対になって考えでいくっていうか。そうじゃなくて。その一つ一つの
音が、もう「僕はそういうふうに存在していたいんだ」っていうか、そういう主
張をもった音が、なんか左右対称とかを考えずにね、いたいものがゴツゴツとい
るっていうバランスが、僕はやっぱ本当に一番カッコいいんじゃないかと。
- 中居:
- わかるような気がします。それはもう音楽に限らず。多
分、それっていうのは、小林さんが多分、音楽を作る姿勢ですか? にも共通する
んじゃないかと思うんですよね。自分の音楽っていうもの。
- 小林:
- でも、ふと、まあ知ってるかもしれないですけど、
SMAPっていうグループも、でもね、そういう感じがやっぱりみんなに評価されて
るってところあるんじゃないですかね?
- 中居:
- どうでしょうかね?
- 小林:
- いや、でも、個の在り方として一生懸命バランスをとろ
うとしてるというよりも。
- 中居:
- そうですね。個人一人のその、まあ例えばSMAPを楽器に
例えると、ギターがいて、ベースがいて、キーボードがいて、ドラムがいて、
ヴォーカルがいるとすると、みんなやっぱり自分の音を出そうという気持ちはあ
りますね。自分だけの音。左の音に囚われず、自分の音を。で、全部の音は、み
んなが「これ」って思える音を出して成立するような音楽ができればいいなって
いう気持ち、あるかもしれないですね。でも、どうですか? いろんなプロデュー
スもちろんそうですし、あの、曲を作る上であの、やっぱセンスだと思うんです
よね。うん、それは音楽のもう感性としか思えないんですよね、曲を作るってい
うのは。だから、僕なんかから見て、何がそうさせているのか。やっぱり小林さ
ん自身が子供の頃やっぱり聞いてた音楽っていうのが。なんかね、いつも思うん
ですけども、懐かしい感じがするんですよ。
- 小林:
- ああ、そうですね。
- 中居:
- 昔を思い出すじゃないですけども、そういうイメージが
僕なんかにはありますね。それは御自身で意識されて作られて?
- 小林:
- そうですね。だからやっぱり一つはやっぱり何だろう?
あんまり言葉にすると、ちょっと照れちゃうところもあるんですけども。やっ
ぱりなんかね、あの、なんか少年性みたいなものっいうのは、やっぱりいろんな
ところに絶対潜んでいるものだから。あの、それがなんか、岩井君なんかとも話
すんですけども、ね、なんかあるじゃないですか。これ、言っていいのかな? わ
かんない。岩井君とちょっと話したんだけど、例えば休みの前の日の感じとかが
あってね。明日休みで学校が始まるまで、みたいなところがあったとすると、な
んかそこに全てが集約されるっていうか。そこまでのなんか、気持ちの昂りと、
どこまでいけるのかって。なんか永遠に続きそうな気もするし、みたいななんか
そういうところで、ほとんどものというのはなんか、彼は存在しているんじゃな
いか、みたいなこと言ってたんですけど。
- 中居:
- そうですよね。ある意味でその私生活。普通に暮らして
普通に生活を送ってる。で、改めて考えないと気付かないことを、なんか小林さ
んはなんか、音にしてるんじゃないかなとか思ったりしてるんですけどね。で、
あの、ミスチルもそうですし、MY LITTLE LOVERも。あの、MY LITTLE LOVERは去
年、急に参加したんですよね?
- 小林:
- そう、アルバムの時からですね。
- 中居:
- そうですよね。今までは、まあ裏方っていっちゃあおか
しいですけども、制作専門だったわけですよね。だから、それが去年の暮れから
自分が出る側っていったらおかしいですけども、アーティストとしての一員に
なったわけですよね。やっぱり変わりました?
- 小林:
- うーん? 本当の日常の生活自体は何も変わってないで
すけども、それは本当に。やっぱりでも、僕はいろんな例えば宣伝の方向性だっ
たりとか、やっぱりそういう細かい人間関係のメンタリティの問題だったりと
か、そういうこともやっぱり僕の範疇の中でやらなきゃダメなこととしていっぱ
いあるから。だから、まあ、変わりはしないんですけども、その、曲なり詞なり
を書く時の立場が。だから、もうちょっとなんて言うんだろう? 逆に自分が出る
ことによって楽になったっていうところはあるかもしれないですね。
- 中居:
- あ、楽になった?
- 小林:
- うん。だからほら、裏方は裏方の美意識みたいなのがあ
るとするじゃないですか。そこで色があんまり、例えば出過ぎないようにとか、
そういうバランスって、なんか無意識のうちに考えたり、まあ、意識して考えた
り、いろいろなことがあるんだけど。それがわりとだから、ちょっと自由になっ
ただろうなという。プロデューサーとして、それもやっぱりプロデューサーとし
ての僕が見てて、「ここは、もうちょっとカラー出していいんじゃない?」みたい
なことを多分、その曲を書いたり、詞を書いてたり、アレンジしてる時の僕に
やっぱり許可を出すみたいなね、そういうところあるかもしれないですね。
- 中居:
- でも、その日常じゃないですけど、仕事に対する接し方
であったり、音楽に対する接し方、基本的にはやっぱり変わらないと。
- 小林:
- それはもうぜんぜん変わらないですね。
- 中居:
- でも、テレビはやっぱりなんか、嫌いっぽいですね。
- 小林:
- うーん? まあ、待ち時間がね。
- 中居:
- ああ、待ち時間が。
- 小林:
- 待ち時間がね、ダメなんですよ。
- 中居:
- 今日、今日のことですか?
- 小林:
- いやいや、違います。そんなことはないですけど。い
や、でも、テレビに限らずだけど。
- 中居:
- 時間を有効に使いたいんでしょうね。
- 小林:
- そうだね、そうかもしれない。
- 中居:
- まあ、無駄な時間ていったらちょっとあれですけども、
なんか、何となく過ぎる時間を無駄だと感じているかもしれないですね。
- 小林:
- うーん、そうね。っていうか、やらなければならないこ
とが山のようにあるから、「あ、この時間があれば、これを出来たのに」と、つ
い考えてしまうところは。休みの時は別ですよ。その、もう自分でこれはスペー
スを作って、フリースペースだと思えば、そこはもうそこで完全に自分を解放し
てやるけども。東京にいてね、特に会社とか。まあ、会社、僕も自分の会社が
あって。そこでまあ、ミスチルとかMY LITTLE LOVERのマネジメントとかもやった
りしてて。そういう時にはね、やっぱりいろんなことが。「もっと、こうすれば
より良くなる」とか、もうそれはほんの些細なことでもね、つい考えてマネー
ジャーが泣きますよね、やっぱりね、大変で。
- 中居:
- それはもう、もう多分、今後もそうでしょうけども、
ずっと与えられるテーマかもしれませんよね。
- 小林:
- そうですよね。
- 中居:
- 例えば、これが終われば楽になるだったり、これが終わ
ればちょっと一段落付くんじゃないかっていう、なんか常に希望を持ってたりし
ません?
- 小林:
- そうですね。
- 中居:
- とりあえずこれを。
- 小林:
- まあ、本当にでも、それはそうだね。中居さんなんかど
うなんですか? それは。僕なんかよりも多分、もっとぜんぜん殺人的にきっと忙
しいんでしょうけど。
- 中居:
- いや、それは忙しさも多分、違うと思うんですよね。僕
なんかってのはもう、例えば、来たお仕事をこなす、時間内に、その時間内って
いうのも短い、長ーい目で見てるわけじゃないですから。例えばまあ、番組の収
録あるっていっても、長い目で見てるわけじゃなくて、もうその時間内で、どん
だけ自分のベストを尽くせるかじゃないですけども。でも、その物事を作るって
いうのは、僕も好きなんですよ。で、コンサートのプロデュースみたいのも、メ
ンバーの、メンバーっていうか、大人の人に任せないで、スタッフに任せない
で、僕らだけでけっこうやったりするんですけども。やっぱりその、成功した時
の満足感みたいっていうのは、やっぱりいいですよね。
- 小林:
- そうね。
- 中居:
- あれがあるからやっぱりその、まあね、小林さん自身も
追われたり。ね、そのマネジメント、忙しい中を縫ってでもやろうっていう気持
ちがあると思うんですよね。
- 小林:
- そうですね。いや、このあいだもだから、ずっと3ヶ月
そうやって間海外いきながらミスチルのステージのプロデュースの準備をいろい
ろやってるわけですよ。今回はロンドンとボストンとか、そういうところの人間
と映像からステージの舞台美術から、そういうの全部、海外の人間とやってまし
たから。で、やっとだから、東京で初日終わって、あの、「これで間違ってな
い」ってことがわかってね。「これは正しかった」っていうことがわかって、も
う本当、そのね、2時間ぐらいかな? もう本当、報われたと思うんですよ、その
時は。でも、その1時間後には、もうその細かいチェック、直していかなきゃダメ
な部分てあるから。そこにやっぱりもう、どんどんダメ出しじゃないですけど、
そういうふうに無かっていく性があるから、自分でも困ったもんだなと思いま
す。でも、その本当に、ひょっとしたらその2時間のために、やっぱりいろんな苦
労というか、やっぱり「何かあるのかな?」と思わせるだけの、なんか何ですか
ね? 「ああ、何か一つ越えたな」という。
- 中居:
- ある意味では、もしかしたらたった2時間かもしれない
ですけどね。
- 小林:
- そうかもしれない。
- 中居:
- たった2時間のために、この準備をするために何ヶ月っ
ていう期間をね、その体を奪われるわけですから。だからその相撲っていうのは
ね、好きだっていうのも、本当、何秒っていう一瞬のためにですよね。そのため
にやっぱり、何十時間、何日間もやっぱり稽古をして。その瞬間が多分、その瞬
間の満足感ていうのが多分、小林さんにとって快感に感じるんじないでしょうか
ね。
- 小林:
- そうですね。そうだと思います、本当に。
- 中居:
- でも、あっという間じゃないですか、その満足する期間
ていうのは。
- 小林:
- そうね。だから、レコーディングしてても、一曲一曲の
中でも、本当にその曲がなんか、その曲の命みたいなっていうか、輝きみたいの
が、ガァーッて立ち上ってくる瞬間てあるんですよ。ダビングしてても何してて
も。それはミックスの時ただったり、ヴォーカル入れが終わった時だったり、い
ろんな段階でそれがあるんだけど。でも、やっぱりその瞬間のために、そのま
あ、作ってる側としてはね、その瞬間のためにその曲は僕のためには存在してる
しね。だから、それが世の中に出ちゃって、また他の人が聴いて喜んでたりする
と、僕が例えば作ったとか、僕がプロデュースしたっていう目とは。ぜんぜん別
のところで、その第三者の人と一緒の目線で見ちゃうけど。
- 中居:
- 一緒の喜びですよね。ああ、なるほどね。その瞬間です
よね。瞬間のために長い時間苦労して、長い時間考えて、悩んで。
- 小林:
- そうですね。
- 中居:
- 多分、ずっと音楽作ってくんでしょうね。
- 小林:
- そうですね。やっぱり本当に。
- 中居:
- 今後、なんか自分がこういう音楽をやりたいとか、なん
か自分がイメージしてるものってあります?
- 小林:
- うーん? いや、もう本当に今の、今のまま、本当にな
んか、自分がやっぱり楽しめる音楽。で、やっぱり人が聴いて、何か伝えられる
力を持った音楽をやっぱり作っていくっていうことだけだと思うんだけど。それ
以上に今なんか他に面白いことって、そんなに思い付かないものね。音楽にまつ
わるね、いろんなことはあるけど。ビデオクリップを作ったりとかね、ミスチル
の映像を作ったりとか。そういうことは、本当に面白いことなんだけど。
- 中居:
- もしかして、呑気かもしれないですね。
- 小林:
- ああ、ああ、それは新説ですね。新しい説かもしれな
い。
中居あの、時間に追われたり、そう、注目を浴びたりしてるんでしょうけども、
周りの人にあんまり囚われず、すごい呑気な人なんじゃないかなって。
- 小林:
- ああ、そうかもしれないですね。
- 中居:
- ある意味で、その気持ちの中のどっかで、すごい熱い部
分があるんでしょうけども。例えばね、音楽、その作品が出来た時、100人が100
人みんな丸を出すわけじゃないと思うんですよ。やっぱり反論する人もいれば、
「これは違うだろ!?」っていう人もいるんでしょうけども、そういう人たちに対
して「ふーん。あ、そうなんだ」って。強くなんか「ここがいいんだよ! 聴いて
みろ。ここがいいんだよ!」って。そういう自分のことを支持される人には、「う
ん、いいでしょ」って優しく言えるけども、べつに反対する人に対して、べつに
熱くなるわけでもないですよね。
- 小林:
- そうだね。それは本当にそうだと思う。なんだろう?
- 中居:
- ね。呑気さんですね。
- 小林:
- やっぱり、自分そうね、多分、自分のやってることに興
味があるんで、あまり外とか他の人に、そんなにやっぱり興味ないのかもしれな
いですけどね。
- 中居:
- 多分、自分の好きな音楽であったり、自分のその音楽に
対する感性っていうの、人一倍信じた上でのやっぱり、うん、活動なんじゃない
かな、仕事なんじゃないかなと思うんですけどもね。
- 小林:
- いやいや。
- 中居:
- いや、でも今日はいろいろお話、どうもすいませんでし
たね。テレビが嫌いなのにも関わらず。またぜひとも。
- 小林:
- はい。
- 中居:
- いろんな作品、僕たちが求めてる作品を、ぜひとも作っ
ていただきたいと思います。
- 小林:
- ありがとうございます。
- 中居:
- はい、えぇ、今週のゲストは小林武史さんでした。どう
もありがとうございました。
- 小林:
- ありがとうございました。
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