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NON EDIT TALK : 小室哲哉★大沢誉志幸


小室:
こんばんは、小室哲哉です。えぇとですね、僕がレコード会社からTMネットワークでデビューしたんですけも、その年かですね、1984年なんですね。で84年頃は、いろんなロックミュージシャンが一緒にデビューしてるんですけども、今日お招きしてるゲストの方は、僕たちより一年先輩で1983年にデビューっていうか、その前からじつはずっと活躍をしてた方なんですけども、83年に同じレコード会社からデビューしてらっしゃった方を紹介したいと思います。大沢誉志幸さんです。どうも。

大沢:
はい、どうも。こんばんは。

小室:
よろしくお願いします。あの、ほとんどお話したことはないですよね?

大沢:
そうですね。

小室:
まあ、スレ違う感じはあったかもしれないですけど。

大沢:
ええ、ええ、ええ。

小室:
ないですよね、ほとんどね。

大沢:
ないですね、はい。

小室:
レコード会社一緒だったんですけど。

大沢:
そうですよね。

小室:
なんて言うか、やっぱりあんま関係ないですかね?でも、大沢さんはけっこうあれですよね?鈴木さんとかと、いろいろコラボレーションみたいのとかありましたよね?

大沢:
ああ、はい。そうですね、プロデュースの仕事をして、そっから付き合う感じですね。

小室:
あ、そうか。じゃあ、別にメーカーでどうってことではなくて?

大沢:
そうですね。

小室:
とにかくねその、印象としてはやっぱり、同じレコード会社で一年先のデビューっていうか、デビューというよりはやっぱりすごい華やかだったんですよ。大沢さんの周りの状況が。で、印象がすごい強いんですよね、その頃デビューの頃で。だったんですけど、あの、ちょっとそこらへん時の話なんですけど、やっぱり僕と同じようなっていうか、作曲の提供の形で、デビュー以前からされてましたよね?で、まあ、ずっとこれは聞きたかったんですけども、大沢さんの中で、自分でのヴォーカルスタイルっていうか、自分で歌うことと、ああいう提供するっていうので、一つ、考え方としてあったんですかね?それともなんとなく大沢さんの曲を歌おうという人が集まっちゃったんですかね?あの時期っていうのは。

大沢:
あの、そうですね、当時はその、作家の方の名前がね、先に出て。だから、僕はバンド活動やってて、で、まあ、もう一回、自分でソロでやってみようっていう形で。で、まあ、その間の期間ですよね、いわゆる作家活動という。で、その時にまあ、コーラスの仕事やら、CMの仕事やら、まあ、いわゆる作曲家っていう仕事とかもやってて。そっちの方が先に名前が出ちゃって、なんていうんだ?新しいタイプの作家みたいな感じでね、まあ、ちょっとロックフィールドみたいな感じの楽曲を書くという。そういうイメージで捉えられてたんで、それでまあ、だいぶ発注があったっていう感じですけどね。

小室:
すごい広いですよね、ジャンルっていうか、向こう側のタレントさん的な人から、本当、ロックミュージシャンからありましたよね。

大沢:
そうですね。

小室:
だから、そこらへんなんか不思議で。じゃあ、あの、大沢さんの方から「やるよ」って感じじゃなくて?

大沢:
うん、時代の多分、ニーズだと思うんですけど、その70年代の後半ぐらいから、ちょっとニューミュージックとか、ちょっとポップスがロックがかってくるとかっていう、時代の流れがあって。その時の時代のニーズにウマく合ったんだと思いますよね。で、まあ、そういう作家の方があまりいなくて、まあ、僕みたいなタイプのいろんな引き出しがある人が、まあ重宝されたんだというだけだという。

小室:
その他の人に提供した曲と、自分のオリジナルでいく時の、そこの線はありました?

大沢:
それは、あの…。

小室:
やっぱり別けてました?

大沢:
ええ、別けてました。その歌い手の人の、男女問わずですけども、キャラクターなりイメージなりで、自分で作る時に自分の中の変身願望が満たされる気持ち?なんか女性に書く時は、自分の女性的な部分とかっていうのが、すごく引き出されたし。そういったことで、なんか作ってる時はその人格になれるからね。ただ、自分に書く場合には、すごくこう、なんつうんだろ?なんか極めようとか、なんか達成しようとか、なんかこう、自分の中で確固とした、なんて言うんだろうな?なんか音楽的な思想みたいのに忠実にやらなければいけない、みたいなそういう追い込み方で自分のは書いてましたよね。

小室:
なるほどね。あの、それにちょっとつながるかもしれないですけど、ほかの方に提供する時も、なんていうんですかね?普通だったらブルーノートみたいなフレーズっていうのは、たとえばアイドルみたいな人に提供する時は避けたりとかね、これは歌手の人だからとか、そこらへんもあんまり意識してないっていうか、自然とそういうブルージーな感じのフレーズとかね、入ってたと思うんですよ。

大沢:
入ってる楽曲もあります。

小室:
ありますよね。

大沢:
ええ、ええ。

小室:
僕なんかの聴いてるのだけがそうなのかもしれないですけど、あの吉川さんのとかも、それまでのと較べるとすごいそういったR&B的なね、日本の中のですけど、その色がその曲で出てきて「あ、これはメロディラインのせいだな」とか、すごい思ってたんですけど。そこらへんのなんか、まあブルーノートということじゃないのかもしれないんですけど。

大沢:
あの、だから、なんていうの?やっぱ日本の人ってブルーノート歌う人がいないですよね、あんまり。で、僕はどっちかっていうと黒人音楽が持ってる、そのブルーノートのあのカッコ良さっていうかね、あれがじつは個人的にはすごく好きで。それと出会っちゃったがために、なんか音楽が続いてる、みたいなところもあって。だからそれはなんか知らないけど、楽曲依頼された時に無意識にそういうメロディが出てきて、やっぱりそれが心の中でね、いいなと思ってて。やっぱり提供する誰にもなんか、そこは残しとこう、みたいな結果になっちゃってることもね、あったりする。

小室:
それが後々からね、今のこの時代になっても印象に残ってるとこってそういう部分だったりして。メロディラインとして際立ってね、残ってるところがね。すごいそういう気がするんですよ。あと、やっぱり大沢さんの声もあるかもしれないんですけど、べつにブルーノートじゃなくて普通の音階なんだけど、若干こう、低いとことってるのかな?とか、ピッチ的に。で、ブルーノートとまでいかなくても、ゴスペルとかちょっとピッチが低かったりとかっていう話もありますけど。声の質もそうかもしれないけど、そういうところをなんか、僕なんかは聴いちゃうんですよね。だから、また前の曲になっちゃうんですけど『途方に暮れる』とか聴かせてもらってた時とか、メロディライン的にはポップなメロディですよね?すごく。でも「あ、これ、ブルーノートいってるのかな?」みたいな、そう感じた時があったんですよ。

大沢:
あの、歌ってる時にね、その音程の音出してるじゃないですか。そこに抑揚を付けちゃう癖があるんですよ。癖っていうか、自分で会得したように思ってるんですけど。その経過音、次の音に行くまでに、揺れたり揺らしたりっていうことに、けっこうだから、なんていうんだ?歌を歌ってる時に、こう放射線状にね、ここらへんに出てくるんですよ、いつもビャーッと。で、その時に自分は動いてるその音のタイム感覚みたいなものが、時間の流れが気持ちいい時があるんですよね。そうすると、その音の世界になつて、その音の持っているドラマ性に自分がハマって歌唱してる場合があるんですよね。だから、その瞬間ていうのはすごく気持ちいい世界で、歌を歌ってるそのドラマ性の問題もあるし、ベースのノートを聴きながら自分がこういうふうに動いてっていう。そこになんかちょっと、音楽的快楽みたいのを見出して歌ってるんで。

小室:
それがまあ、ワンノートからワンノートの移動ってことじゃなくて、そこを浮遊した感じでいくんですね?きっとね。

大沢:
そういくのかな。

小室:
それがそういうピッチのところを道をいってるって感じなのかな?

大沢:
そうなんですね。その経過でね、だから、ほんの0.0何秒後にはそういうところにギュッていってたり。あと自分の倍音が楽曲によっては下の倍音を出すようにしたりとか、上の倍音を出すようにしたりとか、それはマイクのこともあるんだけども。

小室:
ええ、ええ。倍音出る声っぽいですよね。そんなことないですか?

大沢:
そう?いやぁ?

小室:
なんかダブルにでもしたら、メチャクチャ、ファルセットとか聞こえてくるんじゃないかな?とか気するんですけどね。声質的に。

大沢:
あ、あの、ファルセットが出ないんですよ、僕、じつは。全部、表なんですよ、高い音も。

小室:
ああ、そうですか。じゃあ、あれ、倍音で聴こえてきてるんじゃないですかね?

大沢:
あの妙なところがね。

小室:
だから、上に付いてる感じに聴こえるんですよ。

大沢:
ああ、曲によってね。

小室:
ええ。だから、そういう声質なのかな?と思って。

大沢:
でも、自分がなんか、ドの音出してるつもりでも、その中にいろんな音が含まれてるじゃないですか。だから、喉の形がウマく定まってなかったりもするんだけども、それがけっこう功を奏しちゃう場合もあるんで。

小室:
それはもう、本当、天性のものですからね。声は羨ましいです。もともとそういう声なんですか?

大沢:
いや、声はね、もう変声期から。

小室:
変声期から。べつに潰しちゃったとかっていうんじゃなくて?

大沢:
じゃなくて。

小室:
へー。でもそれで、この声だからR&Bとかっていうわけじゃないですよね?

大沢:
それはないですね。自然と。

小室:
でもあの、よくこのゲスト出てくれる歌の方もね、ワザと潰したとかいう人、けっこういるんですよ。あんまりキレイな声だったから、とかいう人いるんですけど。大沢さんの場合はもう、自然とそういう、いわゆるなんていったらいいんですか?ディストーションていうんですかね?英語で言ったらわかんないですけどね。

大沢:
ちょっと歪みが入ってる?

小室:
ちょっと歪みが入ってるっていうか、ナチュラルディストーションですよね。

大沢:
ただあの、コピーとかしてる時に、やっぱり向こうの洋楽のシンガーの人っていうのは、大体ピッチが高い傾向があるじゃないですか。で、そういうのを真似してると、自分のキーも自然と高くなっちゃって、大体、女性キーに近いから、自分のは。だからまあ、大体、上がAかBぐらいまで出ちゃうんで。

小室:
あ、表で?

大沢:
ええ。だからまあ、ほとんど女性キーに近いのは、やっぱり洋楽のコピーをしてたからっていうとこありますね。

小室:
男の人で表でラまで出ると、すごい便利ですよね。

大沢:
便利ですね。

小室:
コーラス付ける時とかも、それこそ人のでお手伝いで付けたりとか、大体できますね、そうしたらね。

大沢:
そうですね。

小室:
Aが出るか出ないかって、けっこう大きくありません?

大沢:
大きいですね。

小室:
あそこ境ですよね。

大沢:
Aまではいかないですよね。大体、高いことでもGとかぐらいですよね。

小室:
そうですよね。このラが表で出るか出ないかって大きいですよ、すごく。そこらへんは得だなと思いますね。まあ、生まれ持ったもんだからしょうがないですね、でもね。

大沢:
そうですね。ただあの、楽曲を依頼されるときにね「1オクターヴで書いてください」とかあるじゃないですか。ヘタをすると。そうすると、その1オクターヴで書かなきゃいけないんで、そん時はけっこう考えたりもしますけどね。

小室:
そうですね。コントロールできちゃうだけに、コントロールできない人のこと考えるってすごい辛くありません?

大沢:
そうですね。まあ、考えてあげなければいけないっていうところもあって。

小室:
あとまあ、今ちょっと音程のその高さと低さの話なんだけど。タイミングもね、まあ僕たちの世代は今、古いのか新しいのかわかんないんですけど、ただ、僕たちが出た時の大沢さんのそのタイミングの取り方っていうのは、まあ、いわゆる後ろじゃなですよね。

大沢:
ああ、そうですね。

小室:
まあ、突っ込むまでいかないですけど、かなりタイトなところでキてたんで、それもけっこう新しい感じだなと思ってたんですよ。あのタイミングっていうのは、あれはでもまたR&Bとは違うような気もしますけどね。

大沢:
うん、うん。あの、80年代の当初ってほら、デジタルテクノロジーが入ってきて、ジャストなタイミングで入ってくるじゃないですか。その、なんていうんだろ?ただヴォーカルは揺れがあるわけで、なるべくそのジャストに入れて、細かい音符に言葉を詰めちゃおうっていうね。なんかそういうノリの中で作ってたような気もしますね。最初のデビュー時ぐらいのアルバムって。

小室:
そこらへんのは、そういう言葉の符割りですかね。その突っ込み方がね、特にやっぱりそれまでの、いわゆる日本語の仕方と若干違ったと思うんですよ。

大沢:
そうですね。

小室:
それまで8ビートでパッパッパッパッと乗っける早さはあったんだけど、16で食いが入って、それで突っ込んで、詰めてくっていうのは、やっぱり無かったと思うから。

大沢:
それを言ったら多分ね、洋楽のコピーとかやってる時に、やっぱり特に黒人音楽の場合だと、もう「えっ?信じられませんね!」っていうような、けっこう難易度が高いメロディがあるわけじゃないですか。それをやっぱり自分でコピーしてて、なんか会得したものもあるだろうし、それが自分のメロディラインになって出てきて、っていうところもあるんじゃないかなと思うね。

小室:
この今の、今95年ですけど、この時期にそのなんていったらいいんですか?R&Bっていうか、まあ、向こう、欧米ではなにげにみんなアーティストがローテーションでリリースしてると思うんですけども。日本の場合っていうのはちょっと特殊だから、そういう大御所のアーティストがポンッと出せばちゃんとまた、っていうわけじゃなくて、その時代でこう、切り取られちゃうでしょ?欧米のゆったりとしたローテーションみたいのがなくてね。だから、今のこの時期にポップってこと考えて、R&Bとかをね、入れるとしたらね、どういったらいいのかわかんないですけど、なんかそんなアイデアってありますか?なんていうのかな?僕なんかとしては、ここらへんでさっきから話してるようなR&Bというか、ブルーノートのね、メロディがきたりすると、僕なんかはちょうど新鮮で非常にいいなと思うんですけど、いわゆる向こうでいうところの大御所が5年振りになんかボンッとリリースしたのがそういう曲だったりとか。そういうイメージって、なんか、僕は今すごい欲しいなと、すごく思うんですけど。だから大沢さんがなにか体感するものでね、この時期ってどうですかね?そこらへん。

大沢:
どうなんですかね?そうですね、うーん…。

小室:
なんていうの?こう、メロディラインのね、その新鮮さって意味での。

大沢:
ああ、ブルーノートはその、なんていうの?日本の文化基準で言えば、カラオケというものが根付いてから、そこそこみんな歌がウマくなってくるだろうけど、ブルーノートっていう音階をね、まずカラオケで歌う人はもう、何人に一人だなっていう気がするんですよね。何十人に一人とか。

小室:
頭に無いですよね。

大沢:
無いですね。

小室:
学習してないっていうか。

大沢:
そうですね。だから。そういう日本語の楽曲も無かったし、やっぱりあと、よくあるじゃないですか、定説で。ラテン系のノリの楽曲だと当たらないとか、いろんな悪い風潮があったりするんだけど、僕はそっちの悪い風潮の方が好きになっちゃったりすんのね。その音楽形態とか。なんかラテンノリも好きだし、それから16分音符を入れたくなったりとか。4分とか8分の方がやっぱり日本語には縦言葉だし、合うし。ただその、自分が影響された音楽とか、そういうものはやっぱり、そっちのなんていうんだろ?揺らぎの中にある音楽、横になってる音楽の方があるんで。なんかしら形ではまあ、そういうことでアプローチしていきたいところありますね。やっぱりその、どっか横目に見て、やっぱり今の時代風潮とかっていうのは、ちょっと多少なりとも自分では意識して、なんかその、あんまりアーティスト性に自分がバァーッと突っ込まないようにはしてるっていう感じですけどね。

小室:
サウンド的にはどんな方向にいってんですかね?

大沢:
今ですか?最近はギャングスターラップとか、そのドギードッグとか、まあアシッドジャズ系とかも好きですし。

小室:
ああいうサウンドにメロディラインを乗っけるっていう感じですか?

大沢:
そうですね。あの、なんか、あの匂い、そのアシッドジャズが持つブルージーな感じとか、ああいうの日本語で表現できたらっていう。で、あと例えばラップに関しても、まあラップの場合、言葉の問題がね、出てくると思うんだけど。日本だとこう、若者共通言語的なことで今、認知されているんだけれども、もうちょっとメッセージ色が強くなったり、なんかあの、ラップが持ってる独特のメロディ感とか、いわゆる訴えかけたいメッセージとかを日本語でね、なんかやっぱりカッコいい形で出してみたいなっていう。それは自分なりの解釈と、自分っていうフィルターを通った解釈で、なんかやっぱり作ってみたいなというとこがありますね。

小室:
ああ、どっちかっていうとそっちなんですね。なんか、曲はギターですか?作るのは。そういうわけでもないですか?

大沢:
うーんと、最近はなんにも使わない。

小室:
あ、使わないんですか?

大沢:
なんにも使わないでなんか頭の中でベースのラインが鳴ってたり、フレーズが出来上がったりして。なんか、こういう小さいヤツでガチャッと押してなんかやる、みたいな。

小室:
あ、本当に。

大沢:
で、あとでまあ、和音構成考えたりしてってるのかな。

小室:
なるほどね。じゃあ、いわゆる弾き語り形式で作ってるわけじゃなくて?

大沢:
そうですね。

小室:
もとはでも、違うんですよね?

大沢:
もとはギターか鍵盤かどっちかですね。まあ、ギターの比率の方が高いですけどね。

小室:
いやあの、まったく違ったらゴメンなさいね。あのユーリズミックスのね、デイヴ・スチュワートいますよね、ギターの。例えばああいうプロデューサーがいて、大沢さんとかと組んでね、やるとなんかとか。あと、インエクセスとか、なんか勝手にイメージがね「ああいうのって近いのかな?」って思ってたんですけど。あそこらへんのプロデュースワークみたいのって。アルバムなんか聴くと、ポップなシングルはね、入ってんだけど、1曲目から聴くとあらゆるジャンルで入ってますよね。

大沢:
そうですね。

小室:
でもR&Bが通ってるみたいな感じがあるんですけど。そういうのとは、またじゃあ今、ちょっと違いますね。

大沢:
そうですね。

小室:
もうちょっとディープっていうか。

大沢:
そうですね。

小室:
勝手にね、なんかああいうワークなのかなと思ったんですけどね。

大沢:
ああ、決して嫌いではないんですけども、そんなにすごくなんかこう、ググッと引き込まれたというほどではないかもしれないね。

小室:
あの、それよりはさっきのような、そういうドギードッグとかああいうのって、けっこう感じるところあります?

大沢:
あ、うん。やっぱりメロディラインとか考えてみると「なんでここにいくんだよ?」っていうのが。その想像を絶するのは、やっぱ黒人の持ってる独特のリズム感の「なんでここで?」「ああ、ここはやっぱり、ちょっと信じられないな」っていう、そういう音楽的驚きで、まあ言わんとしてるメッセージはあとで解釈した時に「へぇー」っていう感じで、やっぱり惹かれてっちゃうっていう。

小室:
なるほどね。それはけっこう意外でしたね。

大沢:
あ、そうですか。

小室:
あの、その16のっていうか、音符のね、たたみ込み方っていうのは、いずれこれが進化とてくと「大沢さんはラップになっちゃうのかな?」とかは思ってたんですよ。「そっちにいくのかな?」と思ってたんですけど。

大沢:
個人的にね、一番尊敬してる人はボビー・マクファーリンて人いるんですけども、その人はもうグラミー賞も獲ってて、ヴォーカルだけで楽器をやるんですよね。で、体を使って全部…要するに、肉体とヴォイスだけなんですよね。その人はすごく尊敬してて、なんか「いつかはああいう人みたいになりたいな」っていう希望はあるんですけどね。

小室:
なるほどね。ああ、そうなんだ。

大沢:
だから一人でヴォーカルで多重録音して、いわゆる楽器のコピーをするんですよね、口で。だからギターを口でコピーしたり、ドラムを口でやったり、ベースを口でやったり。で、もちろんコーラスも自分でやってっていう。で、まあ、すごい変拍子っぽい曲とか、なんかアフリカのリズム使ったりとかしてやるのもすごくて。じつは心の師と仰いでおります。

小室:
ああ、そうなんですか。

大沢:
ええ。いつかそこまでいけたらいいなという。

小室:
なるほどね。でもそういうのはでも、今までレコーディングでできる機会はあったんじゃないですか?けっこう。

大沢:
うーん。なんか自分の決断が鈍るところありますよね。だから、ア・カペラでやった曲とかもあるんだけども、なんかね。全曲、自分が楽器の態勢に入って、口でドラムをやって、口でベースをやって、口でなんか金物やってっていう。それがなんていうんだろ?「一枚のアルバムを作ろう」っていう次元まではいってないんですけども、いつもなんか、その前に躊躇してしまって。だから、願いとしてはやりたいですよね。

小室:
ああ、そうですか。へぇー。

大沢:
いつかは作ると思います。

小室:
あ、じゃあもう、本当、まあ最初の方ちょっと歌の話し中心になっちゃったんですけど、やっぱ肉体を使うっていうか、肉声ってとこはかなりウェイトは大きいですね。

大沢:
そうですね。

小室:
まあ、サウンドはもちろん必要なのかもしれないけれど、最終的にはその声であったりとか。あの、さっきもちょっと出て、同じになっちゃうかもしれませんけど、ポップシーンと大沢さんのそういった最終的に目指すようなものっていうのの、バランス感覚っていうのはどうなんですかね?

大沢:
うーん。まあ、その時代ごとになんか自分なりに思う、自分の心理みたいなもので決定していく感じですかね。

小室:
そこはアクセスはあるんですか?その。

大沢:
一応あります、ええ。

小室:
常にその時代、その時代の。

大沢:
うん。特にあの、今、今年に入ってオルターマンていうレーベルが、第一弾アーティストってことなんですけど。いわゆるまあ、日本のレコード会社の機構だとディレクターと呼ばれる人がいたんだけども、いわゆるA&Rという、僕が作った作品は買い取ってもらうっていうシステムの中でね、まあ、自分はプロデューサーであり、シンガーでありっていう、すごくマクロな見方とミクロな見方が一緒になっちゃってるんだけども、なんかその分プレッシャーもあり、その反面、楽しさもあり、みたいなね、ことでやってるんで。それがなんか時代の空気っていうか、そういう向こうのね、欧米スタイルの仕組みに変わってくるんじゃないかな?っていう。それの方がいいなっていう気はしてますけどね。

小室:
ああ、なるほどね。じゃあ、それは今の時代を見据えたところで「いいシステムかな」っていう。

大沢:
そうですね。まあ、僕っていうアーティストにとっては、やりやすい環境になってますよね。

小室:
まあ、そうですね。僕もそのレコード会社のディレクターっていう存在っていうのは、ちょっとずっと不思議だったんで。もう、ここ何年ぜんぜん関わってないですけども、レコード会社に入ったらもうディレクターがいて、もう座ってるっていうのは変ですよね、それはね。

大沢:
そうですね。

小室:
まあ、例えばそういう職業があっても、例えばこちらはセレクトする権利みたいなものはね、必要ですよね。それはまあ、新人の人とか、今はどうなんですかね?やっぱりそういうふうなんですかね?

大沢:
まあ、新人の方だとやっぱりなんていうんですか?ノウハウがまたわかんないとかってあるから、そういうのがある程度、道標になってあげるべき人間はね、いてもいいと思うし。それから、やっぱり小室君なんかとかね、小林武志とかやってるプロデューサーのネームバリューで、ある程度認知されてって、枚数が、セールスの結果を産む。まあ、そういうなんか、新しいスタイルに日本の音楽業界も変わってきたってことも、すごく目新しいと思うしね。だから、システムも変わってくし、それに伴って音楽のスタイルも変わってくし。まあ、時代の変化ってとこもあるし。だからもう、音楽がよりよい方向に向かえばいいと思いますけどね。

小室:
大沢さんはローテーションっていうか、レコーディングで必ずやっぱりそれをステージ再現ていうのは、ローテーション的にはそういうのはあるんですか?それは決まってるわけじゃないんですか?

大沢:
なるべく近づけたいとは思いますけど。その音源を聴いて、やっぱりわざわざその客席にきて、なんか同じものを共有したいと思うわけだから。自分もやっぱり「そのためになんかしてあげたい」って気持ちはあるんだけども、その音源的にね、やっぱり限られちゃうところもあるし。なんていうんだろう?ステージに立ってる時の絵の中に、その楽器の構成のものがないと。例えばストリングスがバァーンて音してるのに、やっぱシンセだっていう。まあ、そこらへんはまだ許せるんですけど。それ以外の、もっと特殊な楽器が入ってる場合でライヴを行った場合には、その音がその作品の命だったりするわけだから、そうするとけっこう困ってしまうとかってありますけどね。そういう時は、なるべくちょっとアレンジメントを変えて、ウマい設定を見つけるようにして。

小室:
まあでも、やっぱり再現して、生で、まあ限られた人ですけどね、やっぱり聞かせるっていうのは、自分のミュージシャンとして不可欠なものっていう?

大沢:
なるべくそれは極めたいっていうところありますよね。

小室:
やっぱりあの、いろんなゲストの方に来ていただいて、そこらへんていうのはみんな共通なんで。もう、ずっとステージっていうのはやってなかったんでね。この番組やってから、かなり「やっぱり不可欠なもんだな」ってすごい思ってるんですけども。

大沢:
やっぱりエモーショナルな気持ちっていうかね、なんかこう、肉体化していく自分とか、まあもちろんその、脳が感じる快楽っていうのもあるんだろうけど、なんか、いいもんですよね。

小室:
あの、これも一応、テレビなんですけどね、この間とか『HEY!HEY!HEY!』とか、この姉妹番組じゃないんですけど、出演されたとかっていうので、ずっとあんまりテレビとか出演されなかったじゃないですか。たまたまですか?

大沢:
えぇとね、そうですね。

小室:
っていうか、あの番組やっぱり出たくないって人、けっこうミュージシャンでね、ここには出てくれるんだけど「あっちはちょっと…あの二人に挟まれるのは」みたいなコメントする方いるんですけども。そういうこだわりはないですか?

大沢:
っていうかまあ音楽をね、お披露目できればっていう。

小室:
ああ、なるほどね。

大沢:
そうするとこう、なんていうんだろう?まあ、それを生業としてるわけだから。なんかその、音楽を通して大沢誉志幸というものがね、伝わると、裸の自分がバァーンと伝えられるんで。喋ることが生業ではないし、人に笑ってもらうとか、笑われるというのは生業としてるわけではないんで。だからもしかして、タレント的な要素とか、そういうものはちょっと欠如してるかもしれないんで、その分だけ音楽でなんか表現できる場があれば「ありがとうございます」っていう気持ちでやってますけどね。

小室:
あの、なんか、今の「裸で」っていうのが、ちょっとすごく印象的なんですけど。ああいうトークとか出ちゃうと裸にされちゃう、みたいなミュージシャンがね、音楽っていうもので自分をマスキングしてますよね、いい意味で。それをなんか脱がされちゃうっていうか、そういう感じとか僕、思うんですけど。それよりは逆に、音楽が裸だっていう感じですね、自分のね。

大沢:
そうですね。だから、なんか普段、例えば行っている生活とか、そんなことに自分の能力があるとは思わないし、そこが魅力的かっていったらぜんぜん魅力的ではないと思うし。そこが見たいという人がいるかもしれないけども、自分自身がね、そこになんの意味があって、なんの価値観があるんですか?っていうと、やっぱり自分は音楽をやってると。そのキャラクターを好かれるということを商売にしてるわけではないと。だから、もしかして音楽の中にキャラクターという要素が入ってきてるとするならば、自分がやっていることとはちょっと違う音楽のジャンルであって、っていうふうな捉え方になるっていう。

小室:
なるほどね。でもそれ、わかりやすいですね。音楽が披露できるんで、こういうとこ出るっていうのが。なかなかみなさん、そこが抵抗があるみたいですけどね。

大沢:
ああ。

小室:
その音楽を出すまでに、もういろんな壁があって、けっこう辛いみたいで。

大沢:
でも、音楽をバァンて出しちゃって、その人が出てくるわけじゃないですか。で、その時に自分でなんか有意義だったと思えればいいわけで。なんつうの?そこでなんか自分のこう、ある種マスキングされた世界でも、虚実入り交じった世界でも、やっぱり自分が入ってると思うし、それは何割かっていう割合はどういう割合で入っているかはわかんないけど、やっぱり自分も入ってるし、作ってる部分も出てくるだろうし。その虚実入り交じった自分を提出した方がいいんじゃないかなっていう。

小室:
なるほどね。そうですか。あの、依頼っていうか、今っていうのは依頼がもしもきた場合は、なんか完璧にNGってことはないんですか?

大沢:
ないですね。

小室:
今も興味持つアーティストだったら、さっきの一番最初の話みたいに、自分を映せるみたいなものだったら、けっこう興味ありますか?今は。

大沢:
そうですね。ただ、その視点がどこにあるかっていうことで、音楽が絡んでないとっていうとこありますよね。だから、それ以外の自分のなんつうの?才能、タレントってやつですけど、そういうのは「ちょっと人様にお見せするもんじゃないですね」っていう意識がやっぱりどっかあるんで。

小室:
それはミュージシャンみんなそうですよね。なるほどね。いやぁ、曲は今もいろいろ、僕なんかからしたら提供して欲しいなとは思うんですけどね。すごくそれは思いますね。

大沢:
ああ、そうですね。

小室:
ちょっといろいろ面白かったです。ちょっとこれ、長くなっちゃうんですよ本当に。すいませんね、なんだか。

大沢:
いえ、いえ。

小室:
けっこうもう長いんじゃないですかね?大丈夫ですか。じゃあ。

大沢:
はい。

小室:
どうもありがとうございました。

大沢:
お疲れ様でした。


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