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- 小室:
- こんばんは。小室哲哉です。「TK MUSIC CLAMP」2回目なんですが。えぇと、ゲストが豪華だというのが自慢な番組になりつつあるということでですね、今日は2回目にして、すごく僕たちにとっては本当よく来ていただいたな、というゲストをお招きしてお送りします。ええ、というわけでですね、今夜はスタジオにですね、一番わかりやすい言い方でいいですか?
- 小林:
- どうぞ。
- 小室:
- Mr.Childrenのプロデューサーの小林武史をお招きしてます。どうも、よろしくお願いします。
- 小林:
- よろしくお願いします。
- 小室:
- 今、こういうふうに言っちゃったんだけれども、もっと本当はプロフィールとか言うと、いろんなアーティスト出てくるんですよね。
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- でも今は、やっぱりどうしてもそう言われます? ミス・チルのプロデューサーって。
- 小林:
- 新しいアーティスト、まあ、今度MY LITTLE LOVERっていうのやりますけど、それがもう2年振りぐらいですからね。ずーっとちょっとミス・チルにかかりっきりっていうぐらい。ライブの演出から、今度、映画のことまで含めて、ずいぶん範囲が広く、やっぱりプロデュースワークとしてやってましたからね。どうしてもミス・チルに、後についてくって感じでね、ここ数年はやってますね。
- 小室:
- あの、僕もまあ、TM終わって、すごくそのプロデューサーっていう言葉を使って、そういう役割でいろいろな活動も含めてやってきて、ずいぶんプロデューサーって名前を世の中に広げてるつもりなんですよ。
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- それで、ちょうどべつに、小林君もずっと同じことをやってたと思うんだれけども。ここにきてまあ、俺のせいっていうのかもしれないけどプロデュースっていう、みんなそれなりに「あ、これは誰がプロデュースしてるのか」っていう注目、そういうちょっと関心っていうのも出てきたと思うところに小林君いたわけですよね。それで、もともとそういうふうに続いてたし。で、なんていうかな? 僕なんかほら、こういう番組もやってるわけで、出まくりですよね。テレビも出てるし、自分も演奏もして、一緒になんか宣伝活動も、プロモーションもするっいてう感じなんだけど、小林武史さんのプロデュースっていうのは、まあ例えばミス・チル、Mr.Childrenとの関わりで、どういうポジションなんでしょうね?
- 小林:
- いや、だから本当に、今日ははずみで出てきちゃいましたけどね。
- 小室:
- じゃあ、まあ、本来だったらこういう……、まあこれもいちおう、表ってことになるのかな。
- 小林:
- やっぱりでも、あの、裏のといいますか、スタッフ・ワークに近いところでのプロデュースっていうのが、やっぱり僕の。かなりやってる部分なんか、共通してる部分があるとは思いますけれども。
- 小室:
- そうだね。多分ね、「小室哲哉って演奏してんのかな?」ってぐらい、こういうふうにですね、あまりわからないと思うんですけどね。僕なんかも、きっと同じだよね? キーボードだもんね、もともとね。
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- だからレコーディング、やっぱりああやって? 打ち込みもスタッフと一緒にやったりとか、曲作りとかも一緒にやったりとかするわけだよね?
- 小林:
- やっぱりほら、それがコンピューター出て、サンプラー出て、シュミレーションっていうのが出来るようになったっていうのが。やっぱり僕らキーボード出身で、なにかこうやろうとするって時に、大きかったんじゃないかなとは思いますけどね。
- 小室:
- 一番重宝だったもんね、僕たちが。例えばギターを持って歌を作るミュージシャンの人がいる時に、さっきのその話でシュミレーションしたい時に、まあ、俺たちみたいのがそばにいると、すごく役に立ちますよね。なんかそういうところって、例えば桑田さんとかでもそういう協力っていうのあったのかな?
- 小林:
- そうですね。だからまあ、だいたい昔はね、レコード会社にハコがあってっていうか、スタジオがあってミュージシャン呼んで作るしかなかったんだけど、今はね、ある意味でどこでもその、なんか輪郭を見ることがどこでもできるでしょ?
- 小室:
- そうですね。
- 小林:
- いつもどこでやられてるんでしたっけ?
- 小室:
- 僕はね、自分のスタジオを、えぇと、2年ぐらい前にちっちゃいの作って、今だんだん充実して、やりやすいようにしてってるんで、もうほとんどそこ以外ではやってないのね。だからもう、そこにフェーダーを立ち上げれば、もうどのシンセも出るようになってるし、ミックスまで出来るようになってるから、環境はすごくいいんで。これを、楽器また運んで、セットしてっていうふうになるとちょっとね。僕の場合だから、もうそこでずっとやってますけど。
これ、ビールですね。本当の。
あの、曲作らないっていうか、例えば、作詞作曲っていうこととプロデュースで関わるっていうので、僕なんかは自分で作ってるから見えちゃうとこあるんですけど、いわゆるあるアーティストが作るものを、「おまえはこれをやりたいのね?」「こういうのをやりたいのね?」っていうのをわかるのって、すごい大変だと思うんだけど。自分で曲作ってる場合は、自分で自分に指示をすればいいから。だからけっこう、あの、けっこう早かったりするんですよ。なんか一日でその、言ったことを形に、自分の頭の中でもう作っちゃえるんで、それが逆にそういうアーティストをすごくちゃんと尊重してっていうのが、本来プロデュースのけっこう大事な役目だったりすると思うんだけど。そこらへんは、多分、小林君とかずっとそうやってますよね?まあ、自分でももちろん作ると思いますけど。- 小林:
- だからやっぱり、似てる部分ももちろんあるんですけどね、ただ僕の場合やっぱり、人が持ってるなにかっていうのがね、その最初の時点では他の人が例えば見ても、まあ、「これはもうすごくいい」とは誰もが言わないやつでも、なんか僕の中に感じるものがあって、例えばそういうのを、引き伸ばしたりいろいろしてるうちに、やっぱりこう、よくなっていくっていうのが、やっぱそういうのに感動する場面が何回もあって。なんかそうですね。まあ、ミス・チルなんかでも、「cross road」なんていうのはもうわりと、彼が、桜井がね、桜井君が曲を持ってきた段階で、もうある程度できちゃったんだけど。「innocent world」あたりは、やっぱ当初あそこまでなんかこう、ああいう完成型を見るっていう感じじゃなかったんだけど。でも何かね、やっぱりプロデュース・ワーク、もちろん彼も入れながらのプロデュース・ワークの中で、突然あるところから化けていくところがあるじゃないですか。もちろんそれを段階を踏んで待つわけなんだけど、仕掛けて待つんだけど、やっぱそれが起こった時は、なんか駆け抜けますよね。なんか電流みたいな快感が。
- 小室:
- ああ、それはわかります。もうすごくよくわかりますけどね。
- 小林:
- まあ、そういうふうに自分で作ってても同じようなとこあるでしょ?
- 小室:
- 同じようなとこありますね。僕なんかもそうですね。自分で作っても自分じゃない自分が見てますから、そういうふうに。「きたな」って時はわかりますけどね。あの、「innocent world」とかは、すごくミュージシャンの人たちとかにも新鮮だったと思うんですよ。あの、まあ、僕を例にすればですけど、やっぱタイ・アップが必ずつけなきゃいけなくて。で、15秒であったり、1分であったりの部分で、やっぱり勝負させられるとこあるでしょ。で、もうそれは当然小林君なんかもそういうのは、もう強いられてきてると思うんだけど、あれもタイ・アップじゃない。一応、ちゃんとねぇ。それだけど、「innocent world」っていうのは、アタマから聴いて終わりのフェイクまで聴かないと、やっぱ僕なんかラジオで流れて来るでしょ。僕、聴かなきゃ嫌だったんですよ、あの曲とか。イントロまで聴いてフェイドアウトしたら、けっこうアタマきてたし、ラジオ局に。あれなんかやっぱエンディングの桜井君のね、フェイクのとこまで聴いて一つだったから、それをこの時代に、ちゃんとやってくれたっていうのがね、すごく僕なんかは嬉しかったんだよね。そこらへんが。あれは僕なんかの目からすると、あれがプロデュース・ワークだとか思ってたんですよ。そういうキッチリした聴かせ方をしようと、これはきっとプロデューサーの人がキッチリ見せようと思ってそうしたんじゃないかなとか思ってて。そこらへんはどうなんですかね?
- 小林:
- やっぱりでも本当に、曲を作る、もしくはどの曲を世の中にこう、これから出すという時には、どういうふうに聴かれるかっていうところまでイメージしないと、最初の一歩も踏み出せないっていうところがあるでしょ。例えばまあ、アレンジとかするっていう、そのアレンジっていうのはやっぱ、トータルな出口というかね、トータルにいろんな形でこう出ていくっていうことを、頭の中で本当にそれがどういう形なのかね、わかってないと。ドラムの、極端にいえばスネアの音まで決められないみたいなとこが。極端にいえばね。
- 小室:
- いや、まさにそうだと思いますよ。最初なにからトラッキングって、一番最初は何からやるんですか? バンド演奏だとリズム・トラックっていうのが多いのかな?
- 小林:
- でも、必ずシュミレーションしますね。だからやっぱり、まあ僕キーボードで、まあ仮メロもしくは仮歌。それからまあ、仮の、だからダミーのドラム、ベース。ま、ベースがやっぱ僕ものすごい好きだから、ベースを入れる時に、まあほとんどアレンジの方向性みたいなものは考えちゃいますけどね。
- 小室:
- ああ、まあそうですね。ベース・ラインとか面白いよね。
- 小林:
- まあでも、もちろんね、ミス・チルのベーシストがその後こう、いろいろまた試行錯誤したりとかも、当然あるわけだけど。あと物によっては「せーの!」でこうね、ガーンとなんにもプリプロなしでやっちゃおうみたいな、そういう音数の少ない初期衝動でやれるようなやつは。
- 小室:
- じゃあまあ、そういう時に、さっきの話でいくと、ある程度もう世にどこらへんに落とし込もうっていう、バンドのリズム・トラックは録ってくわけですよね?
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- そこらへんはやっぱ本人たちじゃあ、見えなくなっちゃうとこあるかもしれないもんね。まあ見えてたとしても、やっぱり一緒に考えてくれる人はほしいですよね。
- 小林:
- そうでしょうね。
- 小室:
- それはそうですよね。ええと、ちょっともう一個。ちょっと古いのかもしれないですけど。あの、小泉今日子さんの「あなたに逢えてよかった」って曲ありますよね。で、あれなんかは僕なんかからすると、すごくやっぱりコード的なものが、その、普通の概念のポップ、ヒットポップソングからは、やっぱり少しこう、ひねくれて、お洒落に作るっていうまあ言い方そういう感じかな。それが全編になんか色合いとして出てるなぁと思ったんですよ。で、これで、ああいうのが「いける」っていう感じでした?
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- それはまあ、もともと小林君が持ってる、その、カラーっていうか、色なのかね?
- 小林:
- そうですね、だからで僕は、あの、スタイルでわりと物ごとを決めていくっていうのが、わりと苦手な。だからMr.Childrenって4ピースのバンドだけれども、「バンドサウンドです」っていう感じじゃないし。やっぱ何かと何かの間でこう、必ず揺れるじゃないですか。いろんな人が感じる物って。甘酸っぱいだの、切な悲しいでもなんか、明るい日の光りが注している時にもの悲しいとか。ああいう感覚がやっぱすごい好きなんだと思うんだけど。だからやっぱりレコーディングでいうコンプレッサーとかああいうふうに弱い音を強くするみたいな、ああいうデリケートなコード進行が張った感じで聴こえるとか、そういうのはすごいやっぱ好きみたいですね。僕の質だと思いますけど、それは。
- 小室:
- なるほどね。あ、でも、それもわかりますね。その、非常にマニアックになっちゃうんですけど、俺、リミッターとコンプレッサー一番好きなんですよ。エフェクターでいくとね。だからリミッターでどれだけ音圧なり迫力ってパワーをね、特に僕なんかリズムは打ち込みが多いですよね。どれだけこの、決まった容量の中にそのパワーを押し込むかがけっこう狙いで。で、それでいいリミッターを使って、あらゆるリミッターを使わないとその押し込まれ方がね、なんか無理やり押し込まれるみたいになっちゃうんで、非常にこだわるんですけどね、そこらへんは。でも、多分、生楽器多いともっとそれ、あれですよね? 繊細ですよね?
- 小林:
- そうですね。トッド・ラングレンとかもね、前いたけど。弱い音ってものに対して、ちゃんと市民権を与えるみたいなところがあったでしょ? ロックってそこらへん、強い音出してるヤツが一番強いわけじゃないから。一見そう見られがちだけど、もうちょっとこうなんか、女性ホルモンの強さみたいなのをロックって抱え込むじゃないすか。ああいうの好きですね、僕は。マニアックな話になっちゃいましたね。
- 小室:
- かなりマニアックですけどね、いいんですね。っていうことらしいんでね。えぇと、じゃあですね、ああ、そうですね。ここでクリップもいきたいんですけども、ミスター・チルドレンの『es−Theme of es−』あのes君ていうのはあれですか?アニメーションのあのキャラクターですか?
- 小林:
- そうです。CGの。あの「Everybody goes」ってやった時に初めてまあ、世の中に出たんですが。まあかなり長いカラクリで、まあ本当に半年以上ずーっとカラクリを作ってって。あれですよフロイトのね、精神用語ってまた固い話になっちゃうんですけど。まあ、その映画が6月に出るんですが、それの主題歌ですね。
- 小室:
- なるほど。あ、6月に。じゃあその話は後で聞くということで、まず、esのテーマ。6月上旬公開予定。ミスター・チルドレン・フィルム「es」。小林武史、制作・総指揮ですね。
- 小林:
- そうですね、すいません。
- 小室:
- これをじゃあちょっと見てみましょう。で、一回見てみると。見れないんですけど、見たいんですけど。
- 小林:
- ないんですよ。間に合わなかったんですけど。
- 小室:
- でも、入るんですよね? ここにはね。
- 小林:
- ここには入りますか?
- 小室:
- オンエアには入りますよ。
(そのまま話しててください)
- 小室:
- はい。わかりました。はい、じゃあいきます。映画音楽はわかるんですよ。まあ自分でも何回か関わってきたし、大体わかるんですけど。やっぱり映像まで責任を持つっていう、その。映画音楽ってすごいやっぱり大事な映画の要素でもあるけれども、やっぱり映像の領域ってすごい当たり前ですけど、広いですよね。そこまで責任を持つっていうのは、かなりプロデューサーとしても重いと思うんだけどね。やっぱ必然性ですかね?
- 小林:
- そうですね。必然性……。必然って言葉がすごい好きなんですけど。必然とかあと、企画の「企」って「企てる」とかいう字が好きなんですけどね。ぜんぜん違いますけど、意味が。
- 小室:
- じゃ、もう、小林君の中では、映像っていうか映画っていうのは必然だったんだね。
- 小林:
- そうですね。ただ、映画にしようっていったのはもちろん僕ですし、言い出しっぺはたいがい僕ですけども。それを監督、例えば、を僕が最初はね、するっていうつもりじゃなかったんですけど。ただまあプロデューサーとして、誰が一番それに適任なのかってこと考えてったら、まあ最初、ある人からね、ある映画のプロデューサーから、この映画途中まで進んでて、「これはやっぱり小林君じゃないかな?」っていう話になってきて。なんとなく「そうかなぁ?」とかも思ってたもんで。「まあ、やってみようかな?」って感じでね、そのまま。
- 小室:
- ま、でも、ライブ映像が多いんですか?
- 小林:
- そうですね。分量的にはまあ7割ぐらいはライブ映像なんですけども。ただ、やっぱり見た感じとしては、かなり他の要素っていうのが。だから基本的にはドキュメンタリーのテイストなんですけど、いわゆるこう、本当のドキュメンタリー、例えばテレビでよくドキュメンタリー番組やるでしょ。あれってなにがドキュメンタリーなのか、時々わかんなくなるっていうか、「こういうふうに盛り上がってったんだよ」っていう段取りをこう、どうも繋いでいくように見えるところって僕にはあって。だからドキュメンタリーのテイストっていうのを、本当にそこの内側にある流れみたいなものを、もう一回映画で作ってるって言ったほうがいいかもしれないですね。もっと深くテーマを決めて。やっぱ映画である限りは、1時間50分とか2時間の必然性が絶対必要なわけだから、お客さんは。やっぱそれが大変なんだけど面白いですね、やっぱり映画はまあ僕は、それなりにかなり好きでしたから。
- 小室:
- でも、やっぱりね、すごいプレッシャーはありますよね。映画っていうのは正直いって、そんな日本の場合は成功例が少ないですよね、本当に。まあ音楽をすごくそういうふうにメインにした映画っていうのは、またちょっとテイストが違うからいいのかもしれないけど、ま、そこに敢えて必然っていうことで入り込むっていうのはね、すごいことだなと思うんだけども。
- 小林:
- ただ、あくまでも音楽界からのね、フィールド・ワークだと僕は思ってるんですけども。やっぱり音楽自体がなんだろう? こう、影響力とかそういうの全部含めて、やっぱりもうちょっとリアルな影響力っていうか、リアルに捉えてもらって、影響していくっていうふうにならないかなって。やっぱりずっと僕の周りなんかはね、桑田さんなんかと、よく話してることだったから。それが今回の場合は、映画っていうフィルターなんだろうなっていうふうに。
- 小室:
- なるほどね。あの、もちろん映画はその一つ、映像表現。まあ、クリエイティブな表現の映像ですよね。で、あとはCGとかありますけど、そういう結局、僕は機械好きだから、先にハードがけっこう浮かんだりして、いろいろ。だからそれでなにができるかな? って。例えばゲームのソフトとか作ってるんですけど、そういうのはどうです? 機械は好きですよね?
- 小林:
- 機械は好きですね。ただやっぱり、なんていうんだろ? そういうテクスチャーみたいな、なんかそういうところからあんま入っていって。そんなに僕の場合は成功した例が、今まであんまりないのかもしれないけど、ただ、なんかね、なんだろう? 今度もまあCD−ROMにせよインターネットにせよ、いろいろありますけど。さっきもちょっと話したMY LITTLE LOVERなんかユニットですからね。自由度がそうとう広いだろうなっていうことで、なんかそういう冒険は逆にしてみたいですけどもね。
- 小室:
- そうですか。その今出てきたMY LITTLE LOVERってあれですよね? あの、いつデビューするんですか? もうデビューしたんですか?
- 小林:
- いや、5月1日。
- 小室:
- 5月じゃあもうすぐですね。
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- ま、ユニット。まあ僕、こんな初めて聞くようなこと言って、一曲じつは聴かせてもらってるんですけど。密かにちょっと入手しまして。聴かせてもらったんだけど、女性なんですよね。で、まあこれは、仕事的な耳で聴いちゃいますけど「ああ、小林君の今度のですよ」っていう。で、まあ、非常にいいとこに落とし込んだなっていうのが正直なところで。ここじゃないし、ここじゃないしここでしょ? っていうここにポンて、落ちてる感じしたのね。だから、これ、僕もよくいいますけど、ポストがそこにあるっていうポジションですね。そんなとこがなんかポッカリあったところだなぁと思ってて、いいなって思ったんだけども。でも、さっきほどの、ちょっとまあ、まあまだ短いですけど、お話の流れでいくと、そこの色はあったとしても。でも、最初の発信は必然的に、べつにここがあるから考えてやろうとしたわけじゃないですよね?
- 小林:
- そうね。
- 小室:
- なんとなく「ここかな?」って思って?
- 小林:
- そこは、なんとなくまあ、ありますよね。入り口としてはやっぱりなんかこう、「自由度の高いものをやりたいな」ってすごくあって。それは、おそらくこの滑り出しでいけばかなりそういう僕の中でのいろんな遊びがね、あとまあギタリストの男の子と、ヴォーカルの女の子とすごい少数ですけれど、いろんな遊びが多分できるなあって。そんな気が。
- 小室:
- じゃ、まあ、可能性はいろいろ持ちつつ、ノリシロも持ちつつって感じで。
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- でも、やっぱりこれだけその、マーケットを今、席巻してコントロールする力があるところで、わかっちゃいますよね、ある程度は。ここじゃないかな? っていうそれは。「こういうのやりたいな」って思った時に、それと「ここにいくといいな」って思うとこと、まあ知らず知らずのうちに、けっこう接点ができちゃったりとか。そのMY LITTLE LOVERとかは、聴かせてもらうと、すごくもう発信はネイティブなんだけど、結果はなんかすごいタクティクスというか。そういう感じもするんだけどね。そこらへんが面白いと思いましたけど。これも見れるのかな? これもクリップ放送では見れると。ちょっと見たいですね。どんな女性なんですか?
- 小林:
- なかなか、いやもう本当、明るいですよ。なんか本当、ピュアなの。うーん? なんだろう? 本当、染まってないっていえば。よく今までのいろんな人がね、新人紹介する時に言いそうなんだけど、でも抜けがいいんですよね。体育会系のノリも少し入ったりして。新体操、高校の時やってて、なんかこう、いわゆるクラブ活動としてのね。そういうのでちょっと行き詰まって、突然方向性をなんか、ちっちゃい頃から一応ピアノやってたって音大志望に変えて、高校の最後の一年間で頑張って、なんか一応、国立に現役で入学するみたいな。なんかそれぐらいの、べつに大して偉いってことじゃないですけどね。
- 小室:
- まあ、キャパシティ広い人ですね、すごい。
- 小林:
- でしょうね、多分。
- 小室:
- ということは、音楽の素養はある人なのね。
- 小林:
- 少しは。
- 小室:
- じゃあ、まあ、そういうとこ関係ないとこで、ポロッと歌えちゃうみたいな感じですか?
- 小林:
- 本当にそうですね。意外とそういう教育受けてる人にありがちな、ガシガシした壁みたいのはね、ぜんぜんないんですよ。
- 小室:
- それでその、彼女からユニットを考えたわけですか?
- 小林:
- いやギタリストの方から。
- 小室:
- 当然、僕もよく聞かれることなんだけど、「これをやろう」と思って「もう行こう」っていう時っていうのは、やっぱさっきのこの、なんか瞬間があるんですかね?
- 小林:
- そうですね。ありましたね。それを彼女に「これをじゃあ、やるから」って言った時はなんか、けっこうクサ目なドラマのようななんか。ウゥーッなんか泣いちゃって、みたいなそういう。マネージャー候補の女の子も貰い泣きする、みたいな、なんかそういうのありましたからね。
- 小室:
- なんかこう、あれですよね。鏡みたいですね、ちょっとね。
- 小林:
- そうですか?
- 小室:
- ある程度ね。なんか自分で自分に聞いてるような部分も多少あるし。面白いねなんか。僕もそういうのありますからね。
- 小林:
- いや、だからまあ、僕ほとんどテレビとかあれなんだけど、今日、ほとんどまあ、初対面で話して「話は多分すんなり廻るんだろうな」って思ってたんですよ。
- 小室:
- もう、ある程度それはね、まあ話せばね、もっともっと「ああ、そうなんだ」って思うこともあると思うけどね。でも、まあ大体わかりますけどね。僕もそうで、やっぱり、まったく、なるべくならマイナスぐらい、ゼロよりもさらに多少、負い目というか、そういう負の部分があるぐらいの人が、ドーンとプラスでいっちゃうようなのが好きなんで。だからなんか、そういう人を無意識に捜してたりするんですよね、どっかでは。
- 小林:
- なるほど。
- 小室:
- だから、ごくごく当たり前の、例えば女の子だったりしても、聞いてくうちにいろんなことが出てきたりすると、けっこうワクワクしちゃって、「あ、そうなんだ」っていうのがね。で、さらに興味を持つ、とかっていうのはけっこうあるんですよ。それでまた音楽もね、変わってくるんですよね。
- 小林:
- 幅がでますね、それはね。
- 小室:
- あの、大体はこれもわかるんだけど、ルーツというか、まあ自分のアレンジメントとかの基本になってるのって、どこらへんの音楽ですかね?
- 小林:
- うん。やっぱりブリティッシュ。ビートルズ以降のブリティッシュ。60年代、70年代とかっていうのは、まあそのかなりエルトン・ジョンあたりのポップフィールドまでいったところでも、それがありますね。ちょっと宣伝ぽく言ってしまえば、小室さんもやってらっしゃいますけど、ライブUFOでね、桑田さんとミス・チルで「奇跡の星」っていう、あれはロック・オペラなんですよ。ミュージカルじゃなくて。ある程度一つの裏ストーリーっていうのがあって、それをまあ、カバーでね、ロックの名曲でカバーで、オーケストラ使って。
- 小室:
- あ、そうなんだ、へぇー。あ、じゃあ昔の曲はたくさんやるんだ?
- 小林:
- まあやっぱ、それのテイストっていうか僕が演出・監督っていうかね、やってんですが。やっぱり、やりたかったのはなんかあの、映画と同じ時期にやっちゃったんだけど、とんでもないことなんだけど。
- 小室:
- そっちも演出と監督やってるんだ。
- 小林:
- そうそう。舞台美術の打ち合わせから何から。すべてそっから始まって。
- 小室:
- なるほどね。多分、さっき睡眠時間の話ありましたよね。僕よりは寝てないですね、それはね。
- 小林:
- かもしれない。今に限って言えば。
- 小室:
- 編集とかさ、もう、とてつもない時間がかかるじゃない。多分、絶対ですね、多分じゃないですね、僕よりは睡眠時間足りないですね、それは。
- 小林:
- 小室さんにそう言われるってのは、すごいこともしれないけどね、それは。
- 小室:
- 僕は案外ね、大丈夫だから、それは。寝てるんですよ。寝てるし、あと、まあなんかズルいのは、プロデューサーとアーティストっていう顔を一応。
- 小林:
- 使い分けて?
- 小室:
- 使い分けてんですよ。だから寝れると思うのね。「今、眠いからアーティストにちょっとならして」っいう感じで、2時間昼寝できたりするですよ。そこらへんは、今、僕ズルい使い分けちょっとしてて、なんとか体力をね、保ってるんだと思うんだけども。あの、じゃあ、まあ当然、僕もライブUFOはその代々木の第一と、その隣の第二でやってるんですけど。当然、僕も、出演はしないし、で、僕の場合は演出も、フジテレビのナカヤマさんっていう方がやってるんで、演出もしてないし、音楽だけなんですよ。でもまあ、なんとなくああいうところで、ミュージカルをやるっていうとこで、すごく嬉しくてね、やったりしたんですけどね。やっぱりなんか、あれですか? 代々木も今までは、普通のライブばっかりだったでしょ? ライブUFOも。それで今度で、こういうなんていうんですかね? オファーがあった時は、やっぱ変わったものじゃなきゃっていうか。ちょっと今までとは違うものをやりたいなっていう感じでした?
- 小林:
- いや、まあ、本当、正直いうと、桑田さんとミス・チルのそれぞれの事情でね、まあオリジナルでこうやって、二つでジョイントみたいなことがしにくいってこととか、いろいろあったんですが。
- 小室:
- そうですね、しにくいですよね。
- 小林:
- で、前に一回ね、桑田さんなんかとアコースティック・レボリューションっていうコンパクトなやつをライブハウスでやったことがあって。それのなんか、「もうちょっとパッケージのでかいやつをやりたいな」なんてのは前からね、思ってて。だからさっきの質問の、その音楽的ルーツみたいなとこに戻っちゃいますけど、やっぱりザ・フーとかね、まあ、トミーとか「さらば青春の光」のあのへんの感じとかが、テイストとしては好きたったもんですからね。なんか、あっ!! ってピッと閃いたやつがあって、まあそれを相談してったら。まあ、桑田さんとか、ああいう人ってのは、かなり自由奔放な、絵に描いたような、そういう意味では。ステージ乗っかる時は、特にそういう人だから。そのへんの部分は、ちょっと時間かかりましたけど、コンセンサスをとっていくのは。でも、最終的にはね、ちゃんと理解してくれてっていうか、まあ、今はまとまってますけどね。
- 小室:
- なるほどね。またこれも、自分に置き換えちゃうと、だから桑田さんは僕も知ってますけども、桑田さんとミス・チルで今、自由に動いてもらえば、それだけそれでマーケットがあって、それなりのセールスがあって、まあ、ちゃんとできますよね。それを敢えてここでグッとコンプレッションしてやる作業ってけっこう重労働だなと思うんだよね。自分の中とかでも。それはやっぱり、ある程度チャレンジなんですかね?
- 小林:
- そうですね。
- 小室:
- それから、さっき言ってたその、なんかどっかから必然性で、「これは今やんなきゃダメだよ」って感じで出てきちゃうのかな? なんとなく。
- 小林:
- でもまあ、まあ両方ですね。そういうふうに必然を感じるから始めるけど、当然「大丈夫か? これ」っていうのも、何度もあるでしょ、局面で。その度にやっぱり本当にそれこそ、「まあこれは一つの実験的な、まあチャレンジなんだから」ってどっかで思い込むしかないってとこありますけどね。
- 小室:
- そうですね。まあこれは多分、話聞けば聞くほど、こう、身につまされるっていうの? 「すごく大変だな」って感じにね、なってくるんだけど、それは自分もやってることなんで、まあ、しょうがないのかなと。僕たちが今、動かないと。いやべつに、これでなにかなくなっちゃうとかね、終わっちゃうとかとは思いませんけど、でもある程度やっぱりちょっと使命感みたいのありますか?
- 小林:
- そうですね。あの、もちろん自分のためにやっていることが一番なんだけど、音楽に対してすごい感謝してるっていうか、ちょっとクサい言い方をすれば。やっぱりね、僕をなんとか真っ当に生きさせてくれてるものだし、あの、本当にいろいろ見回してみても、神様からの最大の贈り物だと思うから、音。音に周波数をいくつか付けると音階になるっていうのはね。すごいマジックだと思うし。そういうことに対して、なんかね、誠意っていうかまあ、精一杯のことはやんなきゃなとは思いますけどね。日本と例えば世界の問題とか、どんなところにも問題はありますからね。出てきますから。関係ないっていうことじゃないじゃないですか。ってやってると、忙しくなっちゃうんですけどね。
- 小室:
- そうですね。音に誠意を持ったりとか、まあだからイコール手抜きしないってことになっちゃうんだけど、そうやってるともう、確実に時間はどんどんなくなりますよね。で体力もなにもとにかくどんどん。ま、自分を多少ね、犠牲にしてかなきゃなんなくなりますよね。ま、でも今は、まあ、やる時期ですよね。僕たちはね。そうですか。それはよくわかります、本当に。だから若干闘う時もありますけどね。手抜きというんではないんだけど、自分がジャッジをすればいい言葉もたくさんあるし、そういうのはもう、一日何百ってあると思うの、ジャッジが。その時の「こっちいっちゃおうかな?」っていう時、簡単な方ですね、そういう時はけっこうあるんで、それなりには苦しんでるんですけどね。一応そこは。
- 小林:
- やっぱ小室さんのとこに集まってきますか? ジャッジが。
- 小室:
- おかげさまでもう。小林君もそうですか?
- 小林:
- そうなりますね。みんなそれなりに判断できてても、それがどういうふうに絡んでるのかっていう。複雑に絡んだりすればするほど、そのカラクリっていうかね、そういうのが複雑であればあるほど、末端の一つのジャッジが難しくなるんでしょうね、やっぱり。
- 小室:
- 多分、桜井さんとかミス・チルのメンバーとか、あと桑田さんとかも、みんなジャッジできますよね。音楽のことも。でもイエスと思ってるのは、イエスと言ってほしい時もありますね、絶対ね。
- 小林:
- そういう部分はありますね。
- 小室:
- そういうことも「いいんじゃないの」って言ってあげなきゃなんないし。まあね、そこのへんも同じですね。本当に。でこれはもう、テレビの番組なんでね、なかなか、もっと突っ込んだ話をしたいんですけどね。でも、それはさせてください。忙しいとは思いますけどね。あの。この番組、そういう小林さんみたいに、やっぱり本来テレビとかの媒体、メディアで自分が出るべきじゃないっていう、とかそういうアーティストもたくさんいますよね。で、そういう人になんとか話し聞きたいなって思って作ってるような番組で、また、今度はあの、桜井君とかと、例えば二人でとか話し聞くと、面白いのかなと。「こういう時こういってたけど、どうだったの?」とかって話も、ちょっと聞いてみたいんですけどね。それはぜひお願いします。
- 小林:
- ええ、はいはい、わかりました。
- 小室:
- ありがとうございます、本当、来ていただいて。というわけでですね。Mr.Childrenというかもう、今日の話で「ああ、それだけじゃなくて、こういうこともやってるんだな」っていうのが、よくわかったと思うんですけども。プロデューサーの小林武史君でした。