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- 中居:
- こんばんは、中居正広です。今日は、成人式ですか。みなさんにとって、「あたしって、大人になったなぁ」「あ、俺って大人になったなぁ」って思った瞬間って、何かのきっかけであると思うんですけども、きっかけはともかく、僕が「大人になったなぁ」と思ったのは、ちょうど、14の頃です。なにがきっかけかは、想像にまかせます。さ、それでは今日のゲストをご紹介しましょう。サンプラザ中野さんです。どうも、こんばんは。
- 中野:
- こんばんは、よろしくお願いします。
- 中居:
- 大人になった瞬間って覚えてますか? 何がきっかけでもいいんですけども。
- 中野:
- あぁ、瞬間ね?
- 中居:
- 瞬間でもいいですし。
- 中野:
- 瞬間が14歳だったんですか?
- 中居:
- 僕はですね、14の時に、何らかのきっかけが。なんかがあったんでしょうね。
- 中野:
- しどろもどろですね。
- 中居:
- 「あぁ、俺って大人になったんだなぁ」って。
- 中野:
- 大人ねぇ。最近ですね。
- 中居:
- 遅いですねえ。
- 中野:
- 遅い遅い。ね。え? そっちか。そうきたか。いやいや、それはやっぱりね。
- 中居:
- それは、仕事の過程でも?
- 中野:
- 13ぐらいかな。
- 中居:
- それは、なにかがあったんでしょうね。
- 中野:
- ええ。え? どっちの話?
- 中居:
- それは、僕も想像にまかせますけども。
- 中野:
- でも、実際にね、それはさておき、大人だなと自覚したのは最近ですよ。
- 中居:
- 自覚? それは、仕事を通して、音楽を通して?
- 中野:
- そうですね。仕事で。
- 中居:
- え? 今までの活動のなかではありませんでした?
- 中野:
- 今までね、爆風スランプって、リーダーがドラムのファンキー末吉さんで、わりと彼が運営してたり、プロデューサーみたいな人が運営してたりしたんで、わりと僕はただ、何となくやりたいようにやっていて、あまり全体の運営みたいなものは考えてなかったんですけど。
- 中居:
- ということは、与えられた曲に対して一生懸命歌うだけ、じゃないですけども。
- 中野:
- 曲をもらったら、まあ詞はボクがつけるんで詞はつけて、それで歌うんですけど。「子供みたいに自由で、わがままにやってたのサ」って感じだったんですけど、今はバンドっていうのを、なんかね、「オレが経営しなきゃ」みたいなね。今までは書記長みたいだったのが、委員長なろうと。あれ? ちょっと違う。営業本部長みたいだったのが、ちょっと社長的な感じでバンド全体を見てみて。
- 中居:
- 周りを見て、バンドに対してちょっと責任を取らなきゃいけない、じゃないですけども。責任は持って活動しなくてはいけないという自覚。
- 中野:
- そうそう。それで、仕事。僕の場合、仕事はバンドなんですけど、バンドをやることを通じて、だんだん「あ、これはもっと大人にならなきゃやっていけないし、これがこうなって、こういうふうに転がっていく。こういうふうに転がしてみたい」って思うのが、大人としての喜び。仕事がなんだかオモチャみたいな感じになってきたんですよね。もちろん仕事なんだけど。
- 中居:
- え? やっぱり以前は仕事でグループとしての活動的なことに対して、ちょっと無責任っていったらおかしいですけども。
- 中野:
- ちょっと引いてましたね。
- 中居:
- うーん? 確かに、僕も思うんですけど。え? 爆風は結成して何年ですか?
- 中野:
- デビューは12年ですけど、結成は14年かな?
- 中居:
- 14年。僕、初期の頃の、このあいだも番組でご一緒したときにちょっとお話しましたけど、その、なんていうのかな、勢いなのかパフォーマンス、パフォーマンス的なところがあったじゃないですか。
- 中野:
- ええ。
- 中居:
- なぜ歌だけにね、聴かせる歌じゃなく、見せる歌っていうのかな? あれは、どういう?
- 中野:
- 花火くわえたりね。
- 中居:
- ありましたよね。
- 中野:
- 頭の上で火を燃やしたり。いろいろやってましたよね。お花畑こわしたりね。アルフィーさんのセットをね。いろいろありましたけど、まあ、それが楽しかったんですよねえ。それで僕らっていうのはロックっていうものに、笑いが必要だと思う。今でも思ってるんですけど、特に強く思い込んでたんですよね。
- 中居:
- 初耳ですね。
- 中野:
- ロックっていうのはね、なんだろうな? ギャグってさ、世の中を批評する目線が必要じゃないですか。批評するなりシビアな目線っていうか。
- 中居:
- 意外性だったりしますよね。
- 中野:
- そう。それをひっくり返して笑いにするわけじゃないですか。で、ロックっていうのもそんなもんなんだろうなって思うんですよね。
- 中居:
- ある時期には、「ロックのコンサートは不良の集まりだから行っちゃいけない!」って学校側から伝えられたっていう時代もなくはなかったですからね。
- 中野:
- うん。そういう時代が終わる頃、僕らは出てきたと思うんですけど。清志郎さんが僕のロックアイドルだったんですけど。高校卒業したぐらいの頃の。
- 中居:
- 先週、出ましたね。
- 中野:
- 例えば、清志郎さんとかも、「ナントカだぜ、ベイべー!」とかいって、「ベイべー、愛してるゼィ!」っていう、あれっていうのは、なんていうか普通のことを無理矢理パターンにはめることによって、形を作っているんだけど。それが、「愛してるゼ、ベイべー!」って清志郎さんがいうと、例えば、真面目な顔した人が、「愛してるゼ、ベイビィ」っていうのとはぜんぜん。その人のことを笑ってるんですよね、清志郎さんは。
- 中居:
- 捉え方も違いますしね。
- 中野:
- そうそう。俺は、清志郎さんは僕のロックアイドルだから、そっちの道を行きたかったんですよね。
- 中居:
- ふーん。いわゆる、ちょっとナメた感じですよね?
- 中野:
- うん。「でも、不良なんかじゃないよ」って。社会にっていうか、暴走族の子たちが、夜中にブッ飛ばして、騒音をたてて迷惑をかけるのが楽しいっていう。そういうのはちょっと、小さいじゃないですか、不満が。「でも大人になると辞めちゃうんだろうな」みたいな。大人になるとなぜか解決される不満なわけでしょ。でも清志郎さんて、40歳になってもやってるじゃないですか。そっちの持ってる社会に対する不満みたいなものの方が大きいんでしょうね、きっと。
- 中居:
- そういう不満だったり、反対だったり、そういうものを大人になっても持ち続けていくものなんでしょうね? 清志郎さんっていうのも、未だにその反発心みたいなものを持ってるのかもしれませんしね。
- 中野:
- 未だに見てて面白いですよね。笑っちゃう。
- 中居:
- でも、爆風のみなさんは、最初の頃のね、まあ、反発心としましょう。それがありましたけれど、最近はやっぱり異常におとなしいっていうか、落ち着いてきたっていうんでしょうかね。そういうなにか?
- 中野:
- ああ。まあ「ランナー」とかね。「ランナー」とかは、散々暴れてパフォーマンスして、自分達は楽しくやってたんですけど、まだ時代がそういうのを受け入れてくれてなくって、ずっとコミックバンドっていわれてたんで、ちょっと「みんながいいなあと思う歌も歌ってみようかな」と思って、それで。自然な形じゃなかったですけどね、流れ的に見ると。でも、みんなにも知って欲しいっていう。「本当はこういう気持ちが根底にあって、歌を歌っているんですよ」っていうのをわかって欲しいなっていう気持ちがあってああいう歌になったんですよね。歌い方にしても。
- 中居:
- 音楽を通して歌いたいものが絵的なところで邪魔しちゃったり、本当に伝えたいことがなんらかの形で、パフォーマンスの方が派手に見えて肝心なところを、けっこう見過ごしてしまうみたいなところがあるかも知れないですね。
- 中野:
- うん、そうですね。でもね、自分たちで昔のビデオとか見たりしてね、「これは、理解してくれっていう方が無理だわ」と、思いますよ。
- 中居:
- スゴかったですよ。うん。スゴかったですよ。「うわぁ!! この人たち、何に向かってるのかな?」って。当時、僕は中学生とか小学生とか、小学生までいかないですね。とにかく学生の時でしたから、理解しがたいってうかね。音楽に対する執着心ってうのが浅かったっていうのがあるんでしょうけど、「何だったんだろうな?」っていうのがありますよ。で、よくよく今考えて、今の活動だったり、爆風の皆さんが訴えたいものっていうのが、けっこうわかったりするんですよ。詞の内容だとか読んでますと。そうるすとやっぱり、あのパフォーマンスっていうのは、こういうことの続きだったじゃないかなって思ったりするんですよね。
- 中野:
- いちおう最近はね、自分でもね。まあ、「ランナー」出してしばらくした頃は、自分たち自身を見失ってしまっていて。最初の頃のパフォーマンスのあの激しさと、そのあとのものと、自分たちの中でもバラバラになってたんですけど。
- 中居:
- それは、メンバーのやりたいことっていうことですか? 音楽的な。
- 中野:
- うーん? そうでしょうね。統一感がとれてない自分たちの中でもギクシャクしたものがあって、それが最近、ここ2年ぐらい前から「どういう音楽をやったらいいんだろうか?」っていうのをずっと考え続けていて。いろんな人に参加してもらったりして自分たちを客観的に確かめたりして、やっとね「これからはこれだよ」「あ、これがやりたいから、いままでこういうことやってたんだよね」っていうものが見えてきたところなんですよね。
- 中居:
- それが先程いった、その大人になった?
- 中野:
- そう。「これでいいんじゃないか」ってわかった時に大人になったなって。
- 中居:
- でも最近、パッパラーさんが他のアーティストの方に曲を提供したり、それがヤケに注目されたり。
- 中野:
- 売れちゃったりね。
- 中居:
- 売れちゃったりしてますけど。
- 中野:
- 悔しいですよね。
- 中居:
- 悔しいですか? 心底どうなのかなあって思うんですよ。
- 中野:
- いや、そうですね、やっぱり半分ジェラシー、半分良かったな。
- 中居:
- 複雑ですね。
- 中野:
- いや、そんなに複雑でもないですね。
- 中居:
- 僕なんか例えば、他のメンバーがドラマですごく注目浴びてる。例えば、他のバラエティーでソロでやっててすごく注目浴びてる。他のメンバーの活動っていうのがいろんな人から注目されたりすると、けっこう嬉しかったりするんですよ。「うわぁ、他であれだけ注目されてるメンバーが5人集まってるなぁ。もっともっと一人でいけ!」みたいなの、けっこうあるんですよね。
- 中野:
- あ、それと同じだと思いますね。まあ、河合さんはそういう形で注目されていて、例えばドラムのファンキー末吉は、中国を中心としたアジア圏で音楽的に非常に、アジアのロックアーティストたちに信頼されていて、中国でレコード出したりもしているし。本当に活躍してますから、それだけやる気があって活躍している仲間と一緒にやっているってんでね、それはうれしいことですよね。
- 中居:
- それはありますよね。
- 中野:
- でもただね、解散の危機もあるんじゃないかってね。
- 中居:
- それはやっぱり噂をする人もね、思う人もいると思いますよ。それだけバラバラになっちゃったり。
- 中野:
- SMAPはどうなんですか?
- 中居:
- ………?
- 中野:
- あ、真顔になっちゃった。
- 中居:
- いやいや、僕なんか解散されるグループの人たちに「なぜ解散するんですか?」って言った時に、そのバンドの方々は「個人個人でやりたいことができて、みんなやりたいことがバラバラになってしまった。だから解散します」「音楽性が違うから、解散します」ってよく聞くんですよ。確かに、僕らなんかっていうのは、SMAPっていうのは、最初からやりたいことがバラバラだったりしてたんですよ。で、最初、結成した当時から自分たちの好きなことをやらせてもらってたんですよ。で、今も好きなことやってるんですよ。だから、好きなことをやることによってグループが邪魔になったりだとかぜんぜんないんですよね。だから、例えば木村君だったらお芝居やりたい。吾郎君だったら映画やりたい。僕だったらトークを磨きたい。慎吾君だったら何々。剛君だったら何々。みんなやりたいことはバラバラなんですけど、それが例えばグループが邪魔だったら辞めてそれに没頭する。たぶん森君がそうだったんですよね。自分のやりたいことが明確に出ているんだけれども、やることがやっぱり邪魔だったから抜けたんでしょうし。だから、けっこう好きなことやったうえでSMAPの活動がそんなに邪魔にならないんで、これからもこういう形はたぶん、変わらないんじゃないでしょうかね。でも、けっこう邪魔になったりするんじゃないですか? 河合さんが「他のアーティストとやりたいんだけど、爆風との両立はできないから」っていう話が出たら。
- 中野:
- いや、そんなことは。今のところ、課外活動的にいちばん忙しいのはファンキー末吉なんですけど、ドラムの。でも、バンドって解散する時って、たいてい仲が悪いんですよ。多分ね。解散したことないんで。あ、1回したことあるんですけどね。
- 中居:
- えぇ?
- 中野:
- アマチュアバンドの時ね。
- 中居:
- あ、爆風の前。
- 中野:
- そうそう。「あんまり一緒にやりたくないな」とか、そういうときに辞めるんでしょうね。
- 中居:
- 人間と人間なんでしょうかね。音楽性だけじゃなくて。
- 中野:
- そうそう。そうですね。あと、調子が悪いときは「こいつらと一緒にやっててもいいことないじゃん」って思うと、なんか「辞めちゃおうかなぁ」っていう気になりますよね。メゲるっていうか。あと危険なのは、調子がいい時ですよね。「いいじゃん!! 俺、一人でできるじゃん!!」とか。例えば河合さんが、まかり間違って「オレは作曲家で、プロデューサーで出来るじゃん!!」って思って、「俺、辞めまーす!」ってなったら「おい!!」って感じですけどね。辞めちゃうのかも知れませんけど。でも今のところみんな、それぞれの活躍が美味しいなって思ってるんで、「こいつと一緒にやってたほうが得じゃん」。あと「もっとこいつと一緒にやってたら」。まあ、変な言い方ですけど「いい夢見れるかな」みたいなこともあるから、べつに解散は今のところないですね。
- 中居:
- 今のところっていうの面白いですね。
- 中野:
- 「解散しないようにしてやろうよ」とか「このバンド、あと20年続けようよ」とか、存続させるために努力するのも変じゃないですか。
- 中居:
- そういうところで強制はしたくないですしね。
- 中野:
- だから、辞める時期が来るんだったら辞めるだろうし。まあ、今のところ辞める気持ちがこれっぽっちもないからこういう話ができるんですけどね。
- 中居:
- そうでしょうね。多分、いちばん心地いいんでしょうね。サンプラザさんにとって爆風でいる自分がいちばん心地よかったり。他のメンバーの方もそうだと思う。僕もそうですから。やっぱりSMAPでいる自分がいちばん心地よかったりしますし。他は他で心地よさってあるんですけど、やっぱり帰るところがあるっていうのは。帰るところがあるからこそ、一人でやっていけるんだと思うし。でも「よし! 一人でやっていこう。 あぁ、トーク当たったなぁ。あ、トークけっこうイケるやんか。お、いい笑い取れたなぁ。よし、一人でやっていこう!!」っていうのは、考えないですね。
- 中野:
- あ、考えない。びっくりしたあ。今「考えてます」って言うのかと思って。
- 中居:
- そりゃ、他のメンバーはどう考えてるかわかりませんけど。やっぱりSMAPっていうグループがあったうえで自分が一人で出来たんだろうしって思いますしね。
- 中野:
- うん。やっぱりグループってね、やってない人にはわからない辛さと喜びがありますよね。一人でやるよりは、辛さも喜びも大きいんだと思うんでね。
- 中居:
- 全部降りかかりますからね、一人だと。
- 中野:
- だから、続けちゃうんですよね。
- 中居:
- でも、12年、14年。その長い期間のなかで危機を感じたことってあります?
- 中野:
- 危機はね、よくありますよ。
- 中居:
- それは、さっきの話にもありましたけど「バラバラになっちゃうんじゃないか?」っていう危機かそれとも。
- 中野:
- 「もうやれない。こいつと一緒にいたくない」っていうの。そういうのもありますね。最初の頃、アマチュアの頃、バスでツアーしてたんですよ。マイクロバス。マイクロバスは普通免許じゃ運転できないんですけど、キャンピングカーに改造されたマイクロバスが30万で売ってて。それを買ってそれに楽器積んで、で、そのバスに寝泊まりしてたんで。布団も積んで、みんなで月に一度行ってたんですけど。
- 中居:
- へぇー。いいですね。
- 中野:
- でも、そうやって24時間、四六時中一緒にいたわけですよ。そういう状況続くじゃないですか。グループって。
- 中居:
- ええ。寝る時間以外はずっと一緒だったりしますよね。
- 中野:
- そうすると嫌になりますよね。特にね、うちのファンキー末吉はいびきがデカいんですよ。しかもすぐ寝るんですよ。誰よりも先に寝るんですよ。
- 中居:
- それは別にいいじゃないですか。寝るっていうのは。
- 中野:
- で、いびきがうるさいんですよ。で、同じ部屋で寝たり、同じ楽屋で寝たり、同じバスで寝てたりしてたから、「もうやめてくれ!!」と。「おまえ、殺すぞ!!」と。「そんなに苦しいんだったら殺したろか!?」みたいな。
- 中居:
- もう、些細なことがね。
- 中野:
- よく、夫婦で「箸の上げ下ろしまでが気になる」って言うじゃないですか。そういう状況になっていくんですよ。
- 中居:
- 僕もありますね。吾郎の鏡の見方とかね。「さっき見たでしょ!?」とかね、些細なことがね。日頃はべつに構わないことなんですけどね。なんか、ずーっといるとね、鏡見る回数を数えちゃったりね。
- 中野:
- あぁ、わかるわかる。
- 中居:
- 髪をかきあげる仕草とか。もう本当に些細なことがね。吾郎君だけに限らず、剛君のごはんの食べ方がひと癖あったりね、慎吾君がペチャペチャして喰う。
- 中野:
- あぁ、ペチャペチャ喰う奴いますよね。
- 中居:
- 日頃気にならないものがね、ずーっといると気になりますよね。
- 中野:
- なるなる。
- 中居:
- だから、メンバーとかじゃなくて恋人同士だったり、もちろん奥さんだったり旦那さんだったりっていうのも、ずうっといるとそういうのが見つかっってね。
- 中野:
- 恋人だったら別れりゃいいしね、兄弟だったら注意すりゃいいしね。
- 中居:
- 赤の他人はね、微妙なところですよね。
- 中野:
- 微妙なところだよね。
- 中居:
- さあ、ところで、今「旅人よ」ね。いろんな人に聴いて頂いてるような。
- 中野:
- そうですね。
- 中居:
- あれはねぇ、今、本当にいろんなところで注目されていますけど、猿岩石の二人がいろいろなところをまわってる間に作られたっていうか、テレビで流れた曲ですけども。
- 中野:
- うん。そうですね。
- 中居:
- あの二人とお会いしたんですよね? あっちの方で。
- 中野:
- 会いました。インドで彼らが困ってるっていうんで、その曲を持って応援に行こうという企画だったんで。インドの首都のニューデリーで彼らを探して、公園で見つけて、そこで初めて歌ったんですよね。
- 中居:
- 周りには?
- 中野:
- 周りにはインド人のひとがいっぱい。
- 中居:
- 反応はいかがでした?
- 中野:
- 二人はかしこまって聴いててくれてたんですけど。感動して、涙ポロリみたいな感じで。インド人のひとたちも、曲が終わったら、多分、わけはわからなかったんだろうけど拍手してましたね。
- 中居:
- ふーん。そうですよね。詞は通じない。二人にはもちろん通じてるんでしょうけども。例えばそのインドのひとたちなんかには、言ってることは通じないですよね。
- 中野:
- でも、曲の雰囲気は伝わったでしょうね。
- 中居:
- メロディーだったり、本当に曲ですよね。曲だけでそういうのって通じるものがあるのかな? って思ったりするんですよ。
- 中野:
- まあね、西洋音楽ですからね。西洋音楽の影響下にある国にはだいたい伝わりますけどね。インドってちょっと、いまいちそんなに西洋音楽の影響は。
- 中居:
- たぶん敏感にはなってないでしょうね、その辺に関しては。
- 中野:
- でも、やっぱりマイナーなメロディー鳴らせば、コードを鳴らせば、人間どこの人でも暗くなるっていうか、悲しい気持ちになるんでしょうね。不思議ですよね。
- 中居:
- 本当にそうですかね?
- 中野:
- え?
- 中居:
- 僕なんか本当にそういう経験ないんですよ。
- 中野:
- 多分そうだと思うんですよね。
- 中居:
- 洋楽を聴いて本当に追求しないと詞の内容がわからない部分ってあるじゃないですか。わからないうえでもメロディーだけで自分の気持ちが沈んだり明るくなったりっていう。喜怒哀楽が、そういうなにか動きがあるんですけども。日本のアーティストが外国へ行った時に、外国で歌った時に、そういう反応が「本当に伝わるのかな?」っていうね。
- 中野:
- どうなんでしょうね? 外国人のミュージシャンの音楽を聴いて、こっちが感じるじゃないですか、その言いたいことは。そういうのを裏返して考えれば、向こうもわかってくれてるんだろうなとは思うんですけどね。
- 中居:
- うーん? そうなんでしょうかねぇ?
- 中野:
- 僕もね、中国とか東南アジアの数カ国で演奏したことありますけど、通じてると思いますよ。
- 中居:
- それは、アップテンポのものから、静かなバラードまでってことですか?
- 中野:
- そうですね。
- 中居:
- へぇー。
- 中野:
- でもね、向こうでヒットしていてやってるって訳じゃないんで、やっぱり構成をうまくしていかないと飽きられちゃうんですよね。多分、飽きられてますね。多分、飽きられたんだろうなぁ。
- 中居:
- そういう反応って、定かじゃないですもんね。
- 中野:
- うん。でもタイでレコード出そうっていって、タイにプロモーションにいったことあって、タイのディスコで。あっちはライヴハウスがたいがいディスコなんですけど、ディスコで一週間に10本ぐらいやりましたけど、その後。
- 中居:
- いかがでした?
- 中野:
- その後、お声がかからないんで、多分ウケなかったんでしょうね。
- 中居:
- ダメだったんでしょうね。
- 中野:
- ダメだったんですね。
- 中居:
- 声かかってないってことはね。
- 中野:
- ね。
- 中居:
- 「もう、いい」ってことなんでしょうね。
- 中野:
- 「もう、来るな」と。
- 中居:
- そういうことだったんでしょうかねぇ? でもサンプラザさんは、解散じゃないですけども、ずーっと爆風でやっていくかっていうのも、それも定かじゃないですし。でもやっぱり常に音楽と隣り合わせの人生を送っていきたいっていう気持ちが強いですか?
- 中野:
- そうですね。僕そんなにね、元々ミュージシャン、ミュージシャンっぽい方向から音楽にかかわってないんですよね。
- 中居:
- え? と言いますと?
- 中野:
- 楽器もそこそこ。ギターも、♪ジャンジャン〜っていうくらいはできるんですけど、人前で演奏するほどできないし。子供の頃から洋楽のロック聴いて育ってるとかじゃなくって、小学校・中学校はずーっとテレビ。僕はテレビっ子だったんで、テレビから流れてくる音楽ばっかり聴いてたし。要するに、ミュージシャンの人が語るロックの系譜、みたいなのがあるじゃないですか。「1960年代はなんなんだ、かんなんだ」みたいな。ああいうの、よくわかんないんですよ。
- 中居:
- へぇー。正直ですね。
- 中野:
- だからね、そういう、うちのメンバーたちが他の人と喋ってることがよく理解できない。いや理解できないっていうか。
- 中居:
- 知識がないってことですね?
- 中野:
- 「あー、なんかこの人の名前は前聞いたことあるな」とか、未だにそんな感じなんで。自分でそんなに「俺は、今ミュージシャンだゼ」って感じじゃなくて、それでもやり続けたいって思っているのは、なんか「ミュージシャンに近づきたいな」って思ってる状況だと思うんですよ。
- 中居:
- 「近づきたい」っていうのは? 中野さんのイメージしてるミュージシャンの絵が見えないんですけども。
- 中野:
- そうですよね。俺もよく見えてないんですけどね。
- 中居:
- 何が理想なんですか?
- 中野:
- なんでしょうねぇ?
- 中居:
- 知識的なことは、勉強することでもないような気がしますし。
- 中野:
- あ、そうか。「この人を目指してる」みたいなのだと、目標がはっきりしてますよね。
- 中居:
- ええ。「この人みたいになりたい」「この人のような存在になりたい」っていうのが、誰しもあったりしますよね。
- 中野:
- それを目指しちゃうと、もし達成された時に終わっちゃいますよね。それはマズいと思いますね。
- 中居:
- そうなると人間、やっぱり満足しちゃうんでしょうしね。
- 中野:
- 満足しちゃうと、止まっちゃうんですよね。だから、誰みたいになりたいとか、あんまりわからないなあ。
- 中居:
- 昔からそうでした?
- 中野:
- いやいや、昔はね、俺が好きだったロックの人は、Queenのヴォーカルのフレディー・マーキュリーと、最初のほうで喋ってた忌野清志郎さんだったんですけどね。その人になりたいんじゃなくて、その人の精神状態になりたいんですよね。
- 中居:
- はあはあ。じゃ人間的なところですね? 音楽性とか、こういう曲とか、こういう歌とかじゃないんですね?
- 中野:
- ないんですね。
- 中居:
- その人の持ってる音楽に対しての感性みたいなものが、同じラインで活動したいっていうことですかね? あぁ、なんかわかるような気がしますね、それ。はいはい。それがQueenだったり清志郎さんだったりするんですね。今、それでも、自分がそういう風な目標にしてるものだったりも。今の段階では。
- 中野:
- でもね、それを目指しているだけじゃダメだと思うんで、最近は自分のなかに何かを求めようとしてるんで。それがね、「何になりたいんだ?」「何があるんだ?」っていうのがね、ぜんぜんないんですよね。
- 中居:
- 僕もないですよ。
- 中野:
- ないですか?
- 中居:
- 僕もないですよ。
- 中野:
- いや、俺ね、夢がないんですよね。
- 中居:
- 目標も?
- 中野:
- 目標もないんですよね。なくなっちゃったんですよね、いつからか。
- 中居:
- 「なくなっちゃった」って? 昔はやっぱり何らかの形で?
- 中野:
- 昔はね、「紅白に出たい」とか。今も出たいですよ、ええ。例えばね、「どこどこでコンサートしたい」とかね、明確に思ってた子供の自分があったんですけどね。今は、なんだかなぁ、自分のことで精一杯って感じなのかな。
- 中居:
- 僕もそうですよ、「なんでこんなにいろいろやってるの?」って言われるんですよ。「歌やって、バラエティやって、芝居やって、何々やって。そんなにやらなくてもいいんじゃないの?」「で、何を目指してるの?」「うーん? 何を目指してるのかなぁ? 究極の司会者を目指してるって訳でもないしなぁ。究極のアーティスト? うーん? 役者さん? ダンサー? なんだろうなぁ?」っていって結局、見当たらなかったりするんですよ。でも、何かに向かっているのは確かですよ。絶対にこれは何かに向かっているんですよね。
- 中野:
- やっぱりね、自分ていうか「流れていなきゃダメだな」っていうのが今、一番の実感なんですけどね。
- 中居:
- 「流れていなければならない」?
- 中野:
- うん。
- 中居:
- 何かですね。何かがですよね。でも、その何かがわからなかったりするんですよね。
- 中野:
- わからないんですよねえ。
- 中居:
- 常に欲を持ってないといけないっていうのがあるかも知れないですよね。
- 中野:
- 欲そうでしょうね。うん。
- 中居:
- 音楽にしろ、常にその、順位とかじゃないんですよね。
- 中野:
- まあね。順位も重要なんですけどね。でもまあ、今バンドを運営している立場から見ると、昨日出した音より、今日出した音の方が良くないと不安なんですよね。昨日のコンサートより、今日のコンサートの方が「良くないよ」っていわれると「明日はもっと良くなくなるんじゃないか?」ってすごく怖い。それだけが今、気になるところですよね。
- 中居:
- 常に満足しててはいけないでしょうし。常に今日より明日のものは。
- 中野:
- 常に変わっていきますからね、ヤバいっスよ。
- 中居:
- クォリティの高い作品を作っていかなければならないっていうのは?
- 中野:
- ああ、それは、もう。みなさん非常にレベルが高いですからね、ヒットチャート見るとね「ヤベぇなぁ。こんな人たちと戦わなければならないんだなぁ」って思うとね、茫然としますよね。そこに「ポケットビスケッツ/パッパラ河合・作曲」なんてあるとね、「なんじゃい!?」かなんかいって。「お前ぇぇぇ!!」みたいなね。
- 中居:
- なるほどね。でもそれも、ある意味では刺激になったりしますよね。
- 中野:
- 非常にに刺激になりますよ。だって同じ人が作曲してるんですよ。例えばね、「旅人よ」と「ポケットビスケッツ」ね。
- 中居:
- 同じ時期に出てますよね。
- 中野:
- 同じ人が作曲して、同じ時期に出ている。ね。それで、向こうのほうが絶対売れてるわけですよ。俺たちの「旅人よ」がベストテンに入ったときも、常に上にいたわけですよ。どうしても抜けなかったわけですよ。で、何が違うかっていったら、まず詞を書いた人ね。「旅人よ」はオレが詞を書いたんですけど、「ポケットビスケッツ」は「ポケットビスケッツ」の方で書いてるんですけどね。で、歌ってる人はサンプラザ中野と千秋ですよ。これ、つまり、俺が悪いのかと。
- 中居:
- パッパラーさんも曲はね。まあ曲にしろ詞にしろそうだと思うんですけども、毎回100%のものができる訳じゃないですし、毎回みんなが認めてくれる曲が作れるっていう保証もないですしね。
- 中野:
- そうか!! 河合が悪かったんだ。そういう問題じゃないって。
- 中居:
- というか、曲を作るときの力の入れ具合が違ったんじゃないですか?
- 中野:
- おおぉぉ!!
- 中居:
- まあ、そんなことはないでしょうけど。でも、常に欲だったり、今日より明日じゃないですけどね。今日のステージより、明日のステージの音のほうが良くなくちゃいけないですよね。
- 中野:
- 同じ音でいいんですけどね。
- 中居:
- 最低でも?
- 中野:
- 最低、同じ音だったら安心なんですよ。
- 中居:
- それよりダウンすると?
- 中野:
- ダウンしていくのは怖いですよ。
- 中居:
- でも、そこらへんの判断が難しいですよね?
- 中野:
- そりゃそうですね。
- 中居:
- 基準がそれぞれ人によって違いますし。
- 中野:
- それはスタッフでも、自分たちでも何となくわかるんですけどね。
- 中居:
- 欲っていうのは常に持っていただきたいっていうの、ありますしね。目指すものがないっていうのも、夢がないっていうのも。
- 中野:
- 夢がないっていうのは、まあ、「この世にはあまり夢がないな」と。
- 中居:
- この世に?
- 中野:
- ええ。世の中そんなに「努力すれば絶対叶うよ」とかね、「あなたには白い馬に乗った王子様が迎えに来るのよ」とかっていって育てられるじゃないですか、子供ってね。でもその中で、まあ、白い馬は来ないだろうけど「私はシンデレラだったわ!!」っていう思う人とか、努力して「叶ったぜ!」っていう人って、千人に一人ぐらいじゃないですか。
- 中居:
- うーん? 結果で言いますとね。
- 中野:
- うん。だからその、「夢がないゼ!」って言うんじゃなくて、「この世は最低だよ」って言うんじゃなくって、「この世は、みなさん、そんなに期待しないで下さい」と。「世の中そんなに良くもないし、悪いところ探せば悪いところはいくらでもあるけど、みなさんはこの世の中でどうしますか?」っていう、冷静なもの言いの人をする人がなかなかいないですよね。なんか大人になって、急に挫折感をおぼえちゃったりするのって。子供にね、「この世はね、そんなにいいこともないけど、悪いところもあるけど、最低でもないよ」と。で、「君はどうする? 君が望んだように、君はなれると思うよ。努力すれば。でも、いきなり億万長者にはなれないよ」。そういうことを、そういう前提をみんなが持った上で、努力とか夢が見れるようになればいいなと思うんですよ、子供が。なんか夢を与えすぎてるような。
- 中居:
- もっと現実を見なきゃいけないところが。
- 中野:
- 夢を与え過ぎてるから、ショックを受ける人が多い。ちょっと太ってるっていうだけで、すごくガッカリしちゃう人っているじゃないですか。そういう人がいっぱいいるじゃないですか。そういうのって、可哀想。
- 中居:
- 可哀想ですね。
- 中野:
- 「ちょっと太っててもいいんだよ」っていう。
- 中居:
- 人間の持っているプライドみたいなものが。そんなことじゃないと思うんですよね。そういうところで薄っぺらいプライドを持ってても、仕方がないって思うことたくさんあるんですよ。ま、コンプレックスなんでしょうけど。「わたし、背がちっちゃい」とか、「ちょっと肥えてる」とか、男性だったら「俺、何々だ」とか。
- 中野:
- 「オレはハゲだあぁぁぁっ!!」とか。
- 中居:
- 「問題はそこではないんだよ」っていうのをね、訴えたいっていうのがありますね。「じゃあ、それを征服したことによっておまえ、よくなれるのか?」と。「それなら完璧になれるのか?」っていうわけでもないですし。ある意味では、もっと考えなければならないことっていうのが一歩引いて冷静になって、ちょっと自分を大人として考えた上で、うん、思考回路を。
- 中野:
- うん。そうそう。黄金の国・ジパングはないんですよ。
- 中居:
- なるほどね、うん。
- 中野:
- 普通の国です。かな。
- 中居:
- 夢って難しいですね。
- 中野:
- うん。だから、あんまり大きな夢は、大きな夢っていうか、そんな夢は。
- 中居:
- 叶ってしまうような夢は、持ったらそれを成し遂げたときには、つかんじゃった時には終わっちゃいますしね。難しいですよね、本当に。
- 中野:
- まあね、足下をみてやらないとね。バンドもね、明日は何があるかわからないって感じですね。
- 中居:
- さて今年なんですけども、97年の活動は?
- 中野:
- 活動はしますよ、ええ。レコード作ったりライヴもやると思います。1月の22日に新しいアルバムが出るんですけども、それを出してプロモーションとかして、ライヴをやるのは春過ぎぐらいから全国回ろうと思います。
- 中居:
- 全国ですか。ちなみに全国っていうと何カ所ぐらい?
- 中野:
- 何カ所でしょう? わかりません。今詰めてるとこだと思います、マネージャーが。
- 中居:
- ライヴが一番楽しいですか?
- 中野:
- うーん? 楽しくなってきましたねぇ。今まではそんなに、ちょっと頑張り過ぎてたところもあったりして「お客さんにもつらい気持ちを味わせたかも知れないな」と思うんですけど。今、ライヴを見にくると「いい感じだな」って思いますよ。楽しむ場だと思います。自分たちも、やっと楽しめるようになったし。
- 中居:
- へぇー。
- 中野:
- 本当にライヴやるといいんですよ、うちのバンド。うまいから、みんな。よく言われるんですけどね。「もうリズム隊は日本一だし、ギターは、もうパッパラーのギターは、変態入って最高のギターだし。ヴォーカルだけヘタだ」って感じで。
- 中居:
- もう、ご自身でそんな。でも他のメンバーをね、ある意味で認めるっていうのはすごくカッコいいですよね。
- 中野:
- だから、さっきから言ってるんですけど「こんなヤツらと一緒にやりたくないよ」って思っても、音出されちゃうと。
- 中居:
- 「あぁ、やっぱりいいな」って。
- 中野:
- 「もったいないなこれは」って。
- 中居:
- 常にやっていきたいなっていう気持ちが強くなっていくんでしょうね。
- 中野:
- ええ、そうです。
- 中居:
- じゃ、サンプラザさんにとっては、音は必要なアイテムですよね。
- 中野:
- うん。最近、特に音楽好きですねえ。
- 中居:
- ここ1、2年で変わってきた、その音楽に対する姿勢がちょっと変わってきたところが。その、欲みたいなものは常に持って活動して頂きたいなと思いますんで、どうか頑張って下さい。
- 中野:
- ははっ。ありがとうございます。
- 中居:
- はい、今週のゲストはサンプラザ中野さんでした。どうもありがとうございました。
- 中野:
- ありがとうございました。