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NON EDIT TALK : 小室哲哉★坂本龍一


小室:
こんばんは。小室哲哉です。ええと、この番組終わって明けるとですね、もう6月になるんですが、学校とかですね、衣替えの季節ということになりますが、果たして、芸者さんも衣替えをするのでしょうか? えぇと、芸者という言葉でですね、もう今日のゲストの方は、みなさん御存じだと思うんですけども、GEISHA GIRLSのプロデューサー……、ということではないんですけども、坂本龍一さんに来ていただきました。

坂本:
はい。こんばんは。

小室:
御無沙汰してます。

坂本:
御無沙汰です。お久し振りです。

小室:
お久し振りで。実際にこうやって、二人で話をするってっていったらもう。

坂本:
10年ぐらいです。

小室:
10年ぐらいですかね? 10年ぶりぐらいですね。変わらないですね?

坂本:
小室さんも変わらないですね。

小室:
俺は、もっとガキだったじゃないですか。

坂本:
まあ。

小室:
って感じですよね、きっと。けっこうはっきり覚えてるんですけどね。

坂本:
あ、そう?

小室:
ええ。六本木でどっかで、階段かなんかで。

坂本:
ああ、六本木のね、ヘンなとこ、スナックみたいなとこでね。

小室:
なんであそこで会ったんだか、かわかんないですけど。

坂本:
そうそう、わかんない。

小室:
それからしたら10年ぐらいですね、本当に。

坂本:
小室さんあれですか?あの、音楽用ソフトはパフォーマーですか?それともヴィジョンですか?

小室:
ええと、最近ですね、ここ一年ぐらいでヴィジョンにしたんです。 

坂本:
あ、そうですか。

小室:
それまでずっとシンクラヴィアだったんですよ。

坂本:
あ、シンクラヴィアの中で。シーケンスも?

小室:
そうです。

坂本:
じゃあ、それまではマックなんかも使ってなかった?

小室:
マックなんかも使ってなかったです。いきなりすごいハイなところから。

坂本:
めずらしいですね。

小室:
ずーっと、その10年前の時に、とかであの、やっぱあの、教授のなんですか? あの頃はなんでしたっけ? 使ってたの。オーストラリア製の。

坂本:
ああ、フェアライト。

小室:
フェアライトですね。

坂本:
使ってたでしょ?

小室:
フェアライトね、僕はほとんど使ってなかったんですよ。

坂本:
なんか僕の印象としては、T.M.Nっていうのは、あの、なんかフェアライトを使ってベースにした、最初の音楽バンドみたいな、そういうふれ込みじゃなかったでしたっけ?

小室:
じゃないと思いますね。

坂本:
あ、そう?なんかそういう印象が、すごくあったんですけど。

小室:
あ、そうですか? ぜんぜん。あの、音としては使ったことあってもね。

坂本:
いきなりハイブロー。

小室:
いきなり高度な、高度なのかわかんないですけど。ちょっとついでに聞いちゃうとですね、あの、いつも、このあいだのGEISHA GIRLSのね、あの曲、タイトル難しくて忘れちゃいましたけどね。「炎のなんとか」でしたっけ?じゃなくて?

坂本:
あ、「炎のオッサン」。

小室:
の、僕たちが作った曲あるじゃないですか?

坂本:
ああ、「炎のミーティング」。

小室:
「炎のミーティング」。まあ、あれもそうなんですけども、あれと他のサン・トラとかと一緒にしたらまあ、失礼かもしれないんですけど、全部とにかく教授のパッドの音。例えば僕ね、FMで日本の番組で、なにげに車で流れてきてもわかるんですよ。

坂本:
あ、そう。

小室:
一番最初GEISHA GIRLSが去年かなんか出た時も、ワァーッて入ってきた時に、「あ、これ絶対、坂本さんだな」って思ったんですよ。

坂本:
なんにもしてないですけどね、べつにエディットも。

小室:
けっこうあれですか? 手グセですか?

坂本:
あの、最近はそうでしょ? やっぱり。僕もすぐわかりますけど。

小室:
本当に? 

坂本:
あの、やっぱ押さえ方じゃないですか?

小室:
押さえ方なのかな? トップと下の音がやっぱり、決まってんですかね?

坂本:
そうでしょうね。あの、トップのキーに対する内声とか、ベースの動きがやっぱどうしても、そこで決まっちゃうんでしょうね。

小室:
かもしれないですね。もうね、だから確かに一発バーッて出た時は、「あれ?」と思うんだけど、次のコード移る時ですね。

坂本:
コード移る時ね。こう、どこが開いてるかとかね。そこでわかりますよね。

小室:
移る時に、「ああこれ、教授だな」って思うんですよ。

坂本:
多分そうでしょう。だって、最近ほら、あの、モジュールなんかもプリセットがもうね、128とか300いくつとか入ってますから。もうほとんどなにもしなくても、まあ選ぶ、ほとんど選ぶだけでしょ?

小室:
音はね。

坂本:
ね、音はね。

小室:
そうかもしれないですね。前ギターのね、フォーク・ギターとかでこう、コード押さえて離す瞬間の、あの感じですかね。

坂本:
そうかもね、ギュッっていう感じとかね。

小室:
ギュッっていう感じでね。もういつもね、それは常々思ってて、どの音聞いても絶対にこう、まあ、多分、弾いて実際に弾かれるのもたくさんあるし、打ち込むのもあるのかなと思うんですけども、それにしても音わかっちゃうんですよね。

坂本:
小室君の特徴は、やっぱ転調でしょ。

小室:
そうですかね?

坂本:
これ、意識してるでしょ? だって。

小室:
もともと、音楽理論から入ってないんで、そこらへんはあの、98のね、カモン・ミュージックからやってたんで、単にこう、バチッとトランスポーズを押してみたんですよ。

坂本:
トランスポーズするってことなの、なるほど。そうしたら新鮮だったと。

小室:
そう。サビを、思いっきり3度上げちゃえとか。

坂本:
で、適当に。けっこうじゃあ、今の、今のっていうかまあ、前からやってるけど、ハウスの人もさ、そうじゃない。こう、コード弾けないから、自分でコード弾いといたものをサンプリングして、で、サンプリングしちゃえばもう、和音になってるから、あれを今度は3度上げたり、3度下げたり5度上げたりとか、もうフレーズで和音弾いちゃうでしょ? そういう感覚とちょっと似てますね。

小室:
それに近いですね。

坂本:
なるほどね。

小室:
そうです、だから、AメロBメロを、こうね、その頃初めて入れ替えてみたりとか、とっといたりとかっていうのができたんで。だから、後からですね、僕なんかはね、そういうのでね。で、ずいぶん遅ればせながらって感じで、リズムもそうやってループっていうのをやっと、まあここ5年ぐらいですかね、ニュー・ヨークの友達から聞いて、「ま、リズムもそうやんだ」っていう感じで。それまではイントロからエンディングまで、もうずっと打ち込んでたんですよ。

坂本:
打ち込んでたの? うそ!? うわー、大変ですね。

小室:
自分をドラマーと思って、まずこう、ハイ・ハット入れて、スネアも、とか入れて。ま、今でもね、やってるとこもありますけど。

坂本:
まあ、そうですけどね。だったらその、ジャングルっていうのは懐かしいっていうか、けっこう昔やってたことに近い。つまりあれも、あの、ループじゃなくて、サンプリングのループじゃなくて、打ち込みが基本だから。

小室:
そうですね。

坂本:
そういう意味では、やりやすいっていう。

小室:
やりやすいっちゃあ、やりやすいです。だから、細かいのをゆっくり打ち込んで。

坂本:
で、テンポ、バッて上げてね。

小室:
上げてみるとカッコよくなってるっていう感じでね。ニューヨークはまだぜんぜんジャングルとかって、そんなにないですよね?

坂本:
うん、そうですね。まあアメリカ全体あの、ある意味ですごく保守的な国なんで、あの、なんていうのかな?で、アメリカの中でも、ニューヨークはニューヨーク、L.AはL.Aみたいなとこがあって。

小室:
ぜんぜん違いますよね。

坂本:
あの、特にロンドンから入ってくるものとか、あんまりこう、日本の人みたいに受け入れようとしませんね。だから、いまだにまあ、アンビエント系のなんかでも、すごい。

小室:
トライバルっていうのは?けっこうありましたよね?

坂本:
トライバルはちょっとありましたけどね。でもジャングルは流行んないですね。   

小室:
じゃあもう、やっぱり主流はあれですか。やっぱアンビエントもそうかもしんない。ハウスの基本。

坂本:
うーん? やっぱ主流はもう、完全にヒップ・ホップですね。

小室:
ヒップ・ホップですか。

坂本:
もう9対………、もっとかな? 9対1か、もっとかもしれない。もうあの、テクノ、ハウス系も、もう本当に一部のマニアだけっていう感じで、普通の子はもうみんなヒップ・ホップですね。

小室:
ヒップ・ホップですか。もうそれはラップだろうが、歌だろうが?

坂本:
ええとね、それも、今度はマニアックにいろいろあって、すごく本当にギャングスター・ヒップ・ホップだけ好きな人と、今ほらR&B系とヒップ・ホップがこう、混じっちゃってて。あの、ラップもあるけど、サビのところはちゃんとメロディがついてるみたいな、R&B系も多いんですけどね。全体好きな人もいるし、やっぱそういうのダメだっていって、本当にもっとハード・コアなの聴いてる子もいるし。ただもう、道歩いてるともう、白人の子も黒人の子も全員がヒップ・ホップみたいな格好してるから、あの、そういう受け入れる層っていうのかな?が厚いんだよね。まあそういう犯罪とか、そういうのも一般的にあるわけだし。

小室:
じゃあ、あれじゃないですか? 東京とか戻ってきて、街とかちょっと見たら、ずいぶん格好とかは、みんな近くなってるなって感じじゃないですか。日本の男の子とか、女の子とか。

坂本:
そうですね。ファッションは近いと思いますけど。で、よく言われるんだけど、あの、「日本はファッションだけだ」。でも、向こうだってファッションなんですよ。だけど、でもファッションを支えるなにかっていうのがある。まあそれは、あの、マイナス面だと犯罪だったりとか、ドラッグだったりとかするんだけど。なにかはあるのね、やっぱりその、社会的なものが。それは日本にはあまり、ないような気はしますね。だけど、ファッションだから悪いっていう気もないし、で、向こうだってファッションだし、っていう面と、だから、難しいとこあるな。

小室:
まあ、僕なんかは、まあ、個人的には好きなんですけど、今の東京の感じで、若い子たちのね、は安上がりでお洒落にできるんで、今の格好だと。なんかあの、そんな無理がないかな? という気もする。まあ、シャネル狂いもいますけどね。

坂本:
あの、今の日本の若い子が、やっぱり世界でも一番お洒落っていう意味では、お洒落だと思いますよ。お金も一番使ってると思うし。

小室:
そうですね。

坂本:
そういう意味ではね。それから、もっと言っちゃうと、今の日本の若い男の子は、世界でも一番可愛い人種だと思いますよ。

小室:
そうですかね? 一番僕が思うのは、あの、女性と向こう行った時にね、女の子はみんなモテるんですよね。で男の人は逆に女の人に、そんなにモテるってことあんまりないような気がするんですよ。そんなことないですかね? どっちかっていうとあの、まあ、もうちょっと違う意味でゲイ的な感じで、人気があるっていうか。

坂本:
そうですね。あの、日本の男の子を海外から見たら、みんなゲイの子に見えるでしょうね。

小室:
見えるって感じでね。

坂本:
だから、逆にアメリカ人の女性なんかは、男としては見えないと思うんですよ。小室君なんか見ても多分、14〜5。

小室:
14〜5ですかね?

坂本:
の男の子に見えるから、その、恋愛の対象とかっていうふうに思わないかもしれない。

小室:
そうですね。いって21〜2って言われるぐらいですね。

坂本:
そうでしょうね。

小室:
相変わらずね。え、坂本さんでどれぐらいに見られるんですか?

坂本:
僕でさえまあ、10ぐらいは若く見られますよね。

小室:
あ、でも、30代には。

坂本:
そうですね。

小室:
それはやっぱ風格ですかね?

坂本:
どうなんでしょう?

小室:
あっちでも30代には見られますか?

坂本:
ええ。30代前半って言われますよね。

小室:
ああ、でも日本人の男の人はそういうふうに、やっぱりなんかツルッとしてますしね、雰囲気的ね。

坂本:
そうそうそう。余計、醤油顔になってきたしね。あの、あれは固い物食べないからだってね。形が変わるのは。

小室:
あ、そうだってね。へぇー。まあ、そういう感じで、日本人の男の人がね、やっぱりいまだに、僕も今ずっとヨーロッパとかのダンス・チャートとかには送り込んでて、やっとチャート入るようになってきたんですよ。

坂本:
あ、そう。

小室:
このあいだミュージック・ウィークってあるじゃないですか。あれで29位まで、ポップ・チャートでも。ユーロ・グルーヴっていうやつで。

坂本:
ああ、ユーロ・グルーヴ。

小室:
ダンス・チャートではね、クラブ・チャートとかはまあ、ベスト10とかは必ず入るようになってきたんですけど、ポップ・チャートで29位まで入ってきたんです。

坂本:
あ、そうですか。それはあの、イギリス人のミキサー使って?

小室:
イギリス人。そうです。もう歌手も全部。

坂本:
やっぱりそういうマーケットに、なんていうかな? その、さっきのニューヨークにロンドンのものが入ってこないっいて言ったけど、本当にそうで。なんかそこに住んでる人の音っていうのがあって、作ってる側も、あの、聴く側もなんか、非常によく見えてるっていうか。例えば日本的なあるいは東京的なマーケットだと、あまり聴く人の顔って見えないでしょ?

小室:
そうですね。

坂本:
見えにくいでしょ?

小室:
ええ、見えにくいですね。

坂本:
でもまあ、向こうのヒップ・ホップにしても、それからロンドンのそういうダンス・シーンにしても、作ってる側と、享受する側が非常に近いところにいて、お互い顔が見えてる。だから、そういう場所にね、僕らのようなねいわば部外者がね、外国人が入っていって、まあそれにかなり近いものを作ってね、供給しても、まあそれで成り立つことは成り立つんだけど、ちょってなんていうのかな? 一瞬、うしろめたさっていうか、他人のウチに土足で入ってるような感じはあるんですけどね。

小室:
そうですね。僕もだから、とにかく向こうのスタッフで。A&Rからプロモーターからなにからなにまでイギリス人がやっていて。 

坂本:
そうしないとね。

小室:
で、やっとそういう形になって。で、まあ唯一じゃないですけど、その、作曲家とか作詞家であったりプロデューサーっていう名前には、僕が入ってるんで。だからそこがあれば、まあ一応いいなっていう感じではやっているんですけど。じゃないと、これでさっきの話じゃないですけど、僕がヒョッて出てってった時に「少年がやってんのか?」みたいな感じで「こいつがやってんのか? 本当」にみたいになんのかな? と思って、ちょっとそこらへんが怖いんですよね、まだね。

坂本:
そうですね。

小室:
だから、今んとこ顔とかは一切、出てないんですけど。

坂本:
でも、本当は自分が出たい、っていう気持ちはあるわけ?

小室:
うーん? も、あんまないんですけどね。そんなには、それほどっていう。

坂本:
うん。ないんじゃないかなっていう。けっこう、あの、裏方の作業が楽しいのかなっていう。はたで見ていると。

小室:
そうなんですよ。

坂本:
そうでしょ。

小室:
もともとあの、小学校の学芸会でさえ、自分、出たくなかったほうですから。あの、作るほうだけで。もともとそんなには好きじゃないんですけどね。まあでも、外国のそういうチャートとかはね、すごい嬉しいですね。なんとなくね。

坂本:
そうでしょうね。あの、なにかの雑誌で読んで、まあ、ウチの娘がね、小室さんのすごいファンなんで。

小室:
ああ、なんか、ずいぶん前からそれは、よくこう、風の噂では聞くんですけど、おいくつなんですか?

坂本:
ええと、ついこのあいだ15になったんですけど。

小室:
ああ、もうマーケットとしてはバッチリですね。

坂本:
そうですよ。子供だ子供だと思ってたら、もう完全にハマってるんですけどね、あの、それで彼女に「これ読んでみなさいよ」なんて言われて、小室さんのなんかインタビューを読んで、もう「自分のやっていることは100%マーケティングだ」と。「マーケティング・ミュージシャンだ」っていう。で、けっこうその潔さっていうか、潔白な感じで、あの、彼女はすごくいいっていうわけ。僕なんかは、それがなかなかできないタイプの人間だから。うーん、そうかなぁ。やっぱ僕なんかは「音ありき」で、まあ、音から始まる。でね、なかなかね、学ぶことがありますけどね。

小室:
そんなことはないんですけど。あの、だから、裏方は好きなんですけど、ウケるのは好きなんですよ。もう、基本的にウケないとやだっていうとこが昔からあったから、その、「どういうのが好きなの? 聴きたいの?」っていうのを、まずやっぱり知りたいっていう習性からだと思うんですよね。だから、それを聞かない前に出しちゃうと、怖いと思うんですよ、自分では。

坂本:
ただ、さっきもいったように、その、「どういうのがウケるの?」っていっても、100万200万単位の人間を相手にね、まあ100万人いれば100万人のテイストがあって、まあ、日本人が画一的だとはいっても、かなりいろんな趣味趣向の人が増えてきた中で、100万人っていう単位の人を想定するっていうのは、非常に困難だと思うんだけど、小室さんはその、なにか方法があるんですか?

小室:
まあ、その、単位はわかんないですね、やっぱりね。TMの時に、自分たちのファンクラブだったり、固定ファンっていうのがね、決まってたんで、すごく嫌だったんですよ。もうあの、レコード会社がアタマくるぐらい、きれいにイニシャルを決めてきて。

坂本:
で、そのまま計算通りなの?

小室:
バックもピッタリ。もう品切れは起こさないし。

坂本:
ああ、なるほどね。

小室:
もう、きれいに消えてくんですよ、在庫が。で、もうアタマきちゃって、それが。とにかくそれが嫌で、なんかそれを覆すような、「今日も品切れで、もう予想外です」っていうのをやりたかったで。なんかそういうとこから考えてったら、だんだんあの、パイは増えてったんですよね。もうそれは壊そう壊そうと思ってて。だからまあ、一種まあ、それも自分の表現なんですけど、例えばファンクラブ自分で持たないようにしたりとか、そういうので固定をするのを避けてて。

坂本:
でも、他にじゃあソースって、なんだろう? なんかそういう想像する。

小室:
うーん? 

坂本:
なんかまあ、聞くところによると、足繁くディスコに通ったりとか、クラブいったりとかもしたんですか?

小室:
とかはもう、いまだにはしてますけど。

坂本:
あ。そうですか。

小室:
でもまあ、そんなの大したことないですよね、人数ったって。

坂本:
それはね。いってもね、何百人とかね、単位だから。

小室:
もう本当、喋るのなんて数人だし。だからあんまりそれはなんか、そういう証明にはならないと思いますけどね。

坂本:
そうですね。そうするとなんかカンなのかな?

小室:
うん。と、あとは、ある程度は自分で今、かき回すこともできるんで。

坂本:
あ、それはあるのね。TM時代からこう、ヒット曲作ってきて、ある種その、なんていうのかな? 日本人の耳をね、教育しちゃったとこがあって。あの、まあ、僕なんてちょっと困るとこもあるんだけど、教育されちゃうと。あの、なんていうのかな? 小室流のメロディ・ラインとか、まあ、転調とかアレンジも含めて、そのビート感も含めて、あの、なんていうのかな? 先生としてこう、教育しちゃったから、その、ある層をね。だからそれに引っ掛かるようなパターンを出すと、必ず売れるっていう現象が今起こってると思うわけ。この10年ぐらいで、そういう教育活動やってきたんじゃないの?

小室:
教育活動? そうですかね? やっぱりなるべく自分だけのね、リズム感とかビート感は、その、押し付けないようにしようとしてて。なるべくはこう、数字で打ち込みなんで、自分ではここはよくてもまあ、ここらへんはどうかとかは、ある程度は考えてるんですけど。でもやっぱり色は出ちゃうんでね。

坂本:
そうですね。

小室:
困っちゃいますね。

坂本:
あ、じゃあやっぱり、曲作る時にもう、その、言ってみれば一個一個作ってって、あらゆる可能性を一応考えつつ、あのまあ、一種マーケティング的に選択しつつ、前に進むっていう性格ですか?

小室:
そうです。進む時もだから、一歩一歩本当考えて、そこでまず立ち止まって考えてってことは多いですね。だからあの、今も、浜ちゃんの新しいのやったりしてんですけど、歌入れした後ぐらいでも一回そこで立ち返って。

坂本:
残すとこは残すと。

小室:
またちょっとこれは少しこっちにって、修正することは多いんですけどね。

坂本:
じゃあもう、歌を録ってミックス手前って段階で、また今度リズム・トラック全部変えちゃったりとか、極端に言えば、そういうこともありうると。

小室:
そうですね。だからすごく、歌手の方にはある種、失礼かもしけないですけど、とりあえず全部サンプリングさせてもらって。

坂本:
そうだね。取りはずしてね。

小室:
で、タイミングは、自分のその。

坂本:
へタするとテンポも変えちゃったりとかね。

小室:
「売れる」と自分で思ってるタイミングに、若干は。だから下げてもらったりとか。

坂本:
なるほど。

小室:
だからサビ前とか、「はい」っていう感じのありますよね?

坂本:
ありますね。

小室:
その時に、やっぱりそれにハメたいんですよ、どうしても自分のを。こうフィルがダッダッダッダ、ダーッっていう時の。               

坂本:
タイミングはね、微妙にズレてるからね。

小室:
それの時とかは、やっぱり直しちゃったりしますね。

坂本:
あ、僕もそれはやりました、このあいだ。GEISHA GIRLSやった時。あの、全部サンプリングして、それでまあ、タイミングとピッチと、かなり大作業、大工事しましたけど。あの、浜田さんの時はあんまりやんなかったんですか?

小室:
「WOW WAR TONIGHT」はね、すごいもう、二週間ぐらい特訓してくれたんで。密かに練習しててくれて。

坂本:
彼らはあの、タイミングっていうかリズム感いいですよね。

小室:
いいですよね。

坂本:
いいほうだと思いますけどね。

小室:
あの、今の話じゃないんですけど、彼はぜんぜん違うテリトリーでその、今の時代のマーケティングっていうのは、すごく得意だと思うんですよね。

坂本:
そうね。自分の客観的な役割とかも、つかむの早いしね。

小室:
だからなんか、すんなりできたと思うんですけど。でも、ぜんぜん関係ないですけど、あの、娘さん「彼女」って言っても似合いますね、なんかね、さすがに。なかなかお父さんて、似合わないですよね。

坂本:
あ、子供いないんですか?

小室:
僕、いないんですよ。

坂本:
子供は、楽しいですよ。

小室:
いいですね。一時期ほしいなと思った時あったんですけど、チャンス逃しちゃって。

坂本:
まだ遅くないですよ。

小室:
遅くはないと思うんですけどね。

坂本:
ピカソみたいに。

小室:
うらやましいですよね、そうやって一緒に話せるのってね。

坂本:
そうですね。あの、おもしろいですよ。あの、赤ちゃんの時は、テクノで育ってるでしょ?

小室:
あ、そうか。YMOの時。

坂本:
そうですね。ちょうどYMOの時ですね。だからYMOとかクラフト・ワークっていうのが子守唄だったのね。だから、どんなこう、我々が想像できないような子供になるのかな?って思ったら、15になってみたら、もう小室さんにすっかり教育されてしまって、で、YMOとかクラフト・ワークとか、懐かしくもないらしくて、すっかり小室サウンド、小室系の。

小室:
まあね、すぐ卒業すると思いますけど。

坂本:
そうですか?

小室:
あの、もう本当そのままの言葉が当てはまってて、学校の先生らしくて、卒業してっちゃうんですよ、けっこう。だからある時期、15歳から18歳、ちょうど高校ぐらいの時期なり中学ぐらいの時期を、いつまでたっても僕、受け持ってるんですよ。担当してて。

坂本:
いますよね、そういう先生がね、ずっとね。

小室:
いつまでたっても、その年をやってるんですよね。

坂本:
で、どんどん世代交代してくというね。

小室:
そうなんですよ。だから新しい人が、入学してくる限りは一応やってけてるんですけど、けっこうもう卒業しちっちゃうっていう感じあります。

坂本:
あと、僕あんまり得意じゃないんだけど、小室さんはあの、詞も作るでしょ。

小室:
はい。

坂本:
これがなかなかすごいなと思うんだけどね。

小室:
詞はあの、だから、曲に限界があるんで、自分のその、やっぱりヒット・シングルとかになると。だからもう、あれはそれのための応用編で。そこで色を変えたりできるんで、助かってるんですけどね、今はね。

坂本:
よくあれだけ、でも、言葉数が出てくるなっていうのもあるけど。だけど、詞を組んでるとかしてないわけでしょ?

小室:
してないですね、ぜんぜん。

坂本:
だからいいんてだろうな。喋り言葉がそのままきてるでしょ?

小室:
そうですね。だからあの、仮歌で自分でメロディ作る時は、オケ全部作ってから歌を自分で乗っけるんですけど、で、曲作るんですけど。その時に出てくる言葉が、前はみんな多いと思うんですけどね、メチャクチャ英語ですよね、っていう感じの。だけど僕の場合、今、日本語も出てきてる時があるんで。

坂本:
それがすごいね。

小室:
それでだと思うんですけど。あの、これはでも、女の子たちとかから学んだことで、けっこうみんななんか、作業しながらとかでも、鼻唄でけっこう作詞作曲してるんじゃないですかね?替え歌かもしれないんですけど。「ああ、ああいう発想なのかな?」っていうとこもあって。なんかポロッて出ちゃったらそのまま使っちゃおうかなっていう。

坂本:
そうポロッって出たなって感じですよね。

小室:
考えに考えたってことはないんですよね。

坂本:
それがだからあの、ラップじゃないけど、ラップはラップでべつに話し言葉ではないけど、まあ、歌とこう、話し言葉のちょうど中間みたいだけども、小室さんの曲に付いてる詞っていうのも、いわゆるプロの作詞家が作った、書いてあるものではなくて、いわゆる話し言葉って感じが、僕はすごく新鮮だと思ったね。

小室:
そうですかね? 一番僕があの、気をつけてるのがやっぱり、英語をね、無意味に英単語が入ってくるのが、昔からあんまり好きじゃない。あの、敢えて狙ってとんでもない英語をポッカリ入れるのはよかったんですけど。あの「日本語でいいじゃん」って思うとこに、あんま英語が入ってったりすんのは。

坂本:
ずいぶん長く続いてますよね?

小室:
まだ続いてますね。

坂本:
まだ続いてますね、英語入れるのがね。

小室:
「このシーズンが好きかい?」とか例えばあったとして、「この季節」でいいじゃないかって思う時も多かったりしますから、そういう時やっぱり僕はもう、さすがに使わないですよね、英単語はね。

坂本:
まだ続いてるし、だから、あの、言ってみればテレビのコマーシャルなんかでも、やっぱり外人、白人がたくさん出てくる。それからこう、雑誌見てもモデルはみんな白人の。黒人さえ使わないっていう感じだもんね。あれは、アメリカだともう、社会問題ですけどね。それぞれヒスパニック系、白人、黒人、アジア人と使わないといけないっていう感じかな。

小室:
僕たちから見ると、ああいうなんていうんですか? ベネトンとか、ああいうのの前のとかああいうの見ると、相当気を使ってるのかなと思いますけど。

坂本:
そうそうそう。それは普通のテレビのコマーシャルなんかでも、みんな気を使ってるし。その、それぞれのグループの代表として、そのモデルたちを出さないと、その商品が売れないしね。だからやっぱりそういう意味で、日本はその、人種っていうか、人権の感覚がちょっと、まだ遅れてるのかもしれないけど。

小室:
いつもその、すごく僕が思うのは、やっぱその日本のマーケットを、どう、いつもね、頭の中で意識されてるのかなと思ってて。

坂本:
それは難しいですね。

小室:
やっぱワールド・ワイドじゃないですか、活動が。

坂本:
で、さっきも言ったんですけど、ワールド・ワイドといっても、あの、本当にマーケットによってぜんぜん違うんですよね。

小室:
まあ、そうですね。

坂本:
イギリスと日本とぜんぜん違うでしょ?で、ヨーロッパといっても、イギリスとフランスとイタリアではぜんぜん違うし。ドイツも違うし。だからあの、そうするとさ、あまりにも細かくマーケット別に、ミックスを変え歌も変え、ってやっていっても、しょうがないってとこもありますよね。だから、僕の中では大きく日本、ちょっと日本人的なんだけど、日本と、日本以外っていうのに別けているのね。ただ日本を単体で考えるっていったら、それと同じようにアメリカとイギリスも、べつべつに考えたり本当はしなくちゃいけないのかなと思うんだけど、でもね、そう考えても日本のマーケットっていうのは、やっぱり特殊だと思うんですよ。

小室:
特殊ですよね。僕が特殊だと思うのは、外国のチームからプロデューサーで最近オファーが来るようになったのが、よっぽど特殊でわかんないんだなと、外国の人達が。っていうのがすごいわかりました。C&Cとかとやったりとかっていう時も、C&Cのみんなも、日本のマーケットっていうのがわかんないです。

坂本:
だから、わかってそうなヒット曲を書いている小室さんに。だから、こっちでは小室さんがイギリス人の使うのと同じような感じでしょう。でも、わかんないと思うな。

小室:
特にC&Cの二人は、最初にジュリアナかなんか去年いっちゃって、で、「これがそうなのか」っていう感じになっちゃったら、「もうテクノやんなきゃ売れないじゃん」みたいな話になって、もうそっから頭がゴチャゴチャになっちゃって、その後作ってきたのがなんかテクノだったんですよ。「あ、違いますよ、もうテクノは流行ってないですよ」みたいなこといったりして。もう、わけわかんなくさせちゃうような、すごい力があって。

坂本:
そうです。あと、やっぱりメロディが特殊だな。

小室:
特殊ですか。あ、それはじゃあ僕も含まれてますよね?

坂本:
でも、小室君の曲を、完全にまあ英語とかでやるとどうなのかしら?まあ曲によっても違うんだけど。

小室:
うーんと、やっぱり日本向けに作ったのは、無理があると思います。やたら長いですよ。

坂本:
無理があるでしょ。例えば篠原さんのとかさ、あれ無理ですよね。

小室:
涼子のとかはもう、典型的な日本的なヒット・シングルなんで。なにもあんなにBメロで落とさなくても、向こうの場合はいいと思いますから。

坂本:
そう、あと、そのわりとね、やっぱ日本の一般的な傾向として、日本のヒット曲っていうか、日本の流行ってる曲、あの、なんか学校唱歌形式っていうのかな? きちんとAがありBがありCがあり、またリピートされるっていう形が多いんだけど、あの、まあ、向こうのっていうのは変なんですけど、日本以外の、まあ欧米のっていうか、そうなってないものが、ずいぶん多いですね。むしろ演歌に近い。演歌ってほら、すごく言葉によって左右されてるから、Aが9小節だったり、Bが6小節でCにいっちゃったりとか、フレキシブルでしょ。それに近いものがあるんですよね。それから一番と二番のメロディの上がり下がりか違ってたりとか。そういうのが普通なんですけどね、向こうだとね。そこが日本だとそれがダメってことはないんだけど、あの、非常にこう、パターン化されてる。それが興味深いなって。いわゆる小学校の唱歌みたいな、ずっと持ってるんだろうけども。

小室:
もうそれは僕たちもいけないと思うんですけど、パターン化しちゃってるんでね。変えなきゃいけないとは思うんですけど。

坂本:
ただでも、作る側、売る側からいうと、むしろ簡単っていうとこがね、ありますね。

小室:
そうなんですよね。もう、お決まりのでハメとくと、自分の中ではちょっともう、半分なげやりなところがある時もあるんですけど。例えばサビアタマとか、ああいうのは「またサビアタマ?」とか思うんですけど、そのほうがタイアップの人がね、よかったりとか。いろんなことがあるんで、結局ここ1〜2年ずっとそういうふうになっちゃってきてますから。

坂本:
だから、あの、ちょっとね、そういうパターン化されてないと売れないっていう面があるんで、あの、残念ながらその、音楽シーンとしての、音楽マーケットとしての成熟度は、ちょっと下がるのかなっていう。まあ、購買層が、まあ本当に僕の娘みたいに、14〜5が中心っていうことから見てわかるように、マーケット全体のその成熟度っていうのは低いな、と僕は思うんだけどね。

小室:
そうですね。それは僕も思いますね。

坂本:
だったらそれは、直したほうがいいのか、それでいいものなのか、それとも直さなくてもいいじゃないか、っていう意見もあるだろうし。むしろ、作ってるほうとしては、好都合ということもありますね。

小室:
そうですね。音楽はやっぱりあの、ユーザーっていうことに関して言えば、冒険しなくなってると思います。

坂本:
そうですね。

小室:
まあこのタワーレコードもそうなんですけども、もうバァーンと売れるのは、ガァーンと提供しますから。僕は渋谷のタワーレコード行ったことないんですけども、でもやっぱりもう、お薦めのは多分ブワァーッと置いてあると思うんですよ。で、スッと手に取れるように。僕たちが一時間も二時間も、ずっとこうやってやってるような、プロデューサーの名前でとか、そういうのはすごく少ないから。

坂本:
もっとマニアックにやってた、昔はね。ギターリストとかさ。

小室:
やってました。もう本、下調べに下調べしてね、それから買いにいったりもしたんで、そこらへんで、まあだから、もう全体にそうなっちゃって来てはいるんで。   

坂本:
だから、本当に少数ながら、こうマニアックにタコツボ的にいろんなジャンルで、くわしいヤツはいるけど、それはもうそれぞれそうだなあ、一万人とかぐらいの単位でちょっとづついるんでしょうね。

小室:
あの、桑田さんとお話しした時も、Mr.Childrenの桜井君っていう若い、僕よりもさらに12歳ぐらい下の人がいて、一緒にやった話の時に、同じような話が出て、僕たちみたいに雑食じゃないと。聴くのがこう、なんでも節操がなくなくて、もう本当にそういう貪欲な聴き方じゃなくて、たまたまなんか入ってきたコマーシャルとか、テレビであったりとかっていうんで聴いてみたりとか。やっぱり日本のフォーク・シンガーだロック・シンガーであったりとかっていうのを、テレビから聴いたりとかっていうんで、そういうまあ、節操さがない聴き方はしてないっていってて、ぜんぜん違うって言ってましたね。

坂本:
まあ、桑田君なんかも、非常にマニアックに聴いてきたほうでしょうからね。

小室:
聞く限りはそうみたいですね。

坂本:
もう、そういう人、多かったですよね。山下達郎君なんかもそうだし。

小室:
で、僕も多分そっち側に入っちゃうほうなんで、へぇーって聞いてたんですけどね。かなりかわってると思いますね、人種的には。

坂本:
その、小室君の場合、70年代からユーロ・ディスコ系みたいのは好きなんですか?

小室:
そうなんですよ。あの、ミュンヘン・サウンドとか、ジョルジォ・モルダーとか、けっこうインパクトあったものなんで。 

坂本:
あ、そう。ボニーMとか?

小室:
ボニーMとかです。

坂本:
僕も好きだったな。

小室:
ボニーMのあの、キックの音とかがね、もう不思議で不思議でしょうがなくて、なんでちっちゃい音でも大きい音でも、こうドォッて出るのかっていうのがわかんなくてね。今聞くと、このあいだ久々に聴いたんですけど、ぜんぜんなんでもなかったですね。

坂本:
ショボいんでしょ。

小室:
ショボかったんですけど、まだあの、バグルスのラジオ・スターかなんかのキックのほうが、マイクかなんか叩いたとかっていう話ですけどね。ああいうのが音が良かったりして。

坂本:
ミュンヘン・サウンドの、弦にかかってるリバーブがものすごい長くて、よかったですね。

小室:
だから、僕が自分でシンセ弾いてて、シンセとそういったダンス・ミュージックはべつに、あの、高校ですごいソウルとか好きなヤツばっかりだったんで、それとシンセとが混ざったのはそこだったんですよ。「あ、こうやればいいんだ」って。   

坂本:
いや、でも、ロジカルといえばロジカルですよね。

小室:
そうですね。

坂本:
シンセ・ミュージックと、その、まあ、ディスコ、ダンス・ミュージックの流れで合わさったところが、まさにジョルジォから始まってるわけだから。

小室:
そうなんですよ。で、もうドナ・サマーのとかは、ただシーケンサーがずっと鳴ってるのはもう、気持ちよくて。困っちゃったんですよ。

坂本:
僕も衝撃を受けました、あれは。

小室:
で、ローランドかなんかのシーケンサーで、あれぐらいだったらできたんで、ちょっと。

坂本:
できますよね、あれだったら。

小室:
それは、聴いてから4〜5年たってから買えたんですけど、やれたりしてもう、本当気持ちよかったんですよ。なんか15分ぐらいA面かB面使ってずっとありますよね?

坂本:
ありました。

小室:
ありますよね、ああいうのとかでも、「これにずっと浸って聴いてたい」とかあったんで、まあやっぱ、あそこらへんは、よくよく考えてみると、一番、今のね、自分のやってる仕事を考えると、深いのかなとか思ってんです。

坂本:
そうですね。それでボニーM的なヒットの出し方っていうのも、いわば今やってるtrfなんかのに近いですね。あそこもさ、なんていうの? リード・シンガーで売れたわけでもないし、こう、全体のサウンドプラス、バンド。それからあの、いってみれば、ボニーMのヒットのすごいところは、あけは何語圏でも絶対ヒットできる曲作り。ひとつのリフしかない。それだけでもう、みんな引っ張られちゃうっていう曲作りでしょ。それは僕はすごいなって思ってるんだけど。

小室:
坂本さんがボニーMを聴くとは思いませんでしたよ。

坂本:
あれは参考になります。

小室:
そういうほうから入ると、まあ、納得いくけれどね。あの、ちょっと後半ですけどね、バビロンとかああいうのとかは「あ、やってくれたな」と、あの後ずっと同じパターンで来てああいうのがきたんで、かなりやっぱり、そういう作り手側からの感動が、すごいあったんですよ。で、あれをね、なんかファンとしては聴けなかったですよ。

坂本:
そうですね。僕もファンとして聴いたんじゃないな、それは。作り手としてだな。「こういうヒットの出し方もあるんだ」っていう。

小室:
そうです。だから話すると、いろんなそういうのが出てきますよ、ポンポン。あの、3〜4年前に初めてシンセで、僕それまで5度対4度とか、1音にピッチ変えて、コードとか弾いちゃうことって、やったことなかったんですよ。で、trfで初めてレコーディングしたんですけど、でなんか弾いてるうちに、YMOに似てきちゃったんですよ。

坂本:
あ、本当。

小室:
で、「あ、YMOってこうやってたんだ」って、もうアマチュアの子とかが、みんなよく知ってることだったんだと思うんだけど、僕なんかそこではじめて知って、「これ、ビハインド・ザ・マスクじゃん」みたいな感じでやったりとかしてて。そういう、なんとなく聴いてて、で、実際形に最近してるものも、けっこうあるんですよ。

坂本:
そうでしょうね。

小室:
だからまあ、一応まだやれるっていうか、やってるとこもあるんですけども。昔のノウハウとかがね、最近出てきたりとかもすごいしてて。

坂本:
それはありますよね。で、けっこう70年代とか、まあ、カムバックしてるから、昔のノウハウとかが、まあ自分でも新鮮だったりして。あの、聴くほうの人も新鮮に聴いたりして。そういうのありますよね。

小室:
そうですか。あの、なんか日本でこういった、今、僕がこうやって動いて、で、坂本龍一さんとしては、なんか「俺はこういうのを提案しよう」みたいのなんかありますか?

坂本:
いや、べつに提案ないですけど。

小室:
なんかでもあの、そろそろ、これすごい贅沢なんですけどもね、やっぱり教授であったりなんなり、いわゆるそのキーボードなりシンセの音で、もう一音色違う、ゴォーンっていう音。あの、トレバー・ホーンがね、フェアライトでガァーンと出た時の音みたいな感じでね、なんか出てくると、なんか助かるかなって、嬉しいなってとこもきっとあると思うですげね。

坂本:
そうですね。あれは衝撃的だったですよね。

小室:
なんかそこらへんの音が、ポッと対抗馬で。今なんかっていうと、その、ある種そういう、日本の中ですけど、まあ、娘さんもきっと、知ってらっしゃると思うんですけど、ミス・チルとtrfってこうあるんで、いわゆるギターで、アコースティックだったりとか、清涼感がね、あるものが一つこっちにあって、で、僕が作るようなダンス・ミュージックっぽいものがあったりするんで。こっちはまあ、もともとあるものなんで、こっちのシンセの音での。

坂本:
そうやって大きく二つ分けちゃうと、僕もこっち側なんで、いちおう同じサイドに。僕もだから、こうやってギター弾けないし、ガーッて歌うほうじゃない音楽やってるから、まあ、じゃあ、共同してなにか考えましょう。

小室:
そうですよね。これでなんか色がもうガンッと一個あるとね、さっきの成熟じゃないですけど、まあなんか出てくるかなと思うんですよ。もうただ、シンセの音とかはもう、一番やっぱり悩んじゃいますよね。

坂本:
うん、そうですね。

小室:
驚け、と思っても、もうあんまりないんで。

坂本:
もうないですよ。あまりにも情報量が多過ぎて、テレビからもラジオからも街歩いててもね。それで、あらゆる、まあ、今のところ、今のテクノロジーで考えられるあらゆる音が、出尽くしているから、非常に難しいですよね、それは。

小室:
なんかそこらへんは、もしも隠し玉が教授のほうにあったりとかね、したらなんか、その音でなんかやりたいなとか思ってたんですよね。このあいだ電話で話したじゃないですか、ちょっと。とか思ってたんですけどね。

坂本:
そうですね、なんか考えましょうか?

小室:
っていう感じですね。あの、じゃあOKも出たんですが。

坂本:
ずいぶんあるね。時間的に。

小室:
あるんですよ、でも、このあいだ、また違うゲストの方で、なんかやっぱこれ長いんですよ。30分なんですけど、つまんないから長いのかな? って話もあったんですけども、意外とトーク番組として、ちゃんとね、長く感じるんですよ。

坂本:
あ、本当に。

小室:
けっこう流れますよ、ちゃんとね。今回はまたすぐかえっちゃうんですか?

坂本:
一週間で。

小室:
そうですか。一週間て短いですね。

坂本:
短いですよ、すごく。ぜんぜん自由な時間ないですからね。

小室:
じゃあ、またあの食事でも。

坂本:
うん、しましょうね。

小室:
お願いします。

坂本:
今年の10月11月、ツアーでまた長くいるので、ぜひ時間あったら。お酒は飲むんですか?

小室:
飲みます。ええ、体調さえ良ければ、けっこう強いほうだと思うんですけど。

坂本:
忙しいでしょうけど。

小室:
ありがとうございました。


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