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- 小室:
- こんばんは小室哲哉です。えぇとですね、テレビに最近あんまり出てないので、唯一この番組で見れるんじゃないかと思いますが。今日のゲストはですね、もっと…僕なんてもんじゃないですね。もう、ほとんど出てないんじゃないですか? テレビっていうのはね。
- 織田:
- 出てないねぇ。
- 小室:
- そういうゲストの方ですけど。織田哲郎さんです。
- 織田:
- どうも。
- 小室:
- どうも。
- 織田:
- よろしく。
- 小室:
- 出てないよね、ぜんぜん。
- 織田:
- うん。あのね、苦手だっていうことがつくづくわかったから。もう、出るだけ無駄だなって思って。で、俺はほら、すごくだから本当に小室君がね、この番組やってるの見てるとね「いやぁ、ちゃんとやってるなぁ」って。
- 小室:
- 「よくやってるなぁ」って感じ?
- 織田:
- いや、ほら、俺も昔、一年間ぐらい俺がホストするトーク番組やってたことがあるの。
- 小室:
- そうだよね。テレビでやってましたよ。
- 織田:
- そう。密かに夜中にやってたの。で、その頃はやっぱり一応なんでもやってみようと思って、テレビもね、ひょっとしたら一年ぐらいやってると何か変わってくるんじゃないかって思ってたんだけど。まあ、いつまでたってもぜんぜんダメで。「俺はもうダメだ」とか思って。で、もう本当に最低限やっぱりほら、自分の歌を聴いてもらう歌番組っていうのはともかくとして。本当にもう、今日なんて上がっちゃってんの。
- 小室:
- 久し振りですよね。
- 織田:
- うん。よろしくね。
- 小室:
- よろしく。きっとね、ちょうど中途半端ですよね、人の数がね。いるんなら、もうちょっといて欲しいですよね。
- 織田:
- ああ、そうだね 。それは言えるね。
- 小室:
- ちょうどお客さんでもないし、なんか関係者で。
- 織田:
- で、関係者にしては妙に多いよね。
- 小室:
- 多いですよね。ちょうど微妙なんですけどね。あの、織田君のことをね、個人的にも聞きたいことはたくさんあるんですよ。あるんですけど、やっぱり幅広いじゃない。もちろん自分の活動もあるし、作曲活動もあるし、最近はプロデュースもありますよね。だから、「織田哲郎」って言う時にどこの顔をみんな見てるのかな? っていうか、知ってるのかな? っていうのもあるし。僕なんかだと、やっぱりどうですかね? 織田君が自分でギター弾いて歌ってるような。もう古いかな? 古くから知ってるから、そういうイメージが強いけどね。アーティスト活動がやっぱりメインなんですよね? 自分の。メインていうか、どうなんですかね?
- 織田:
- うーん? だからね、自分の中でそういう区分けってないんだけどね。ただ言えることは、一個だけやってると、必ず煮詰まってくるの。
- 小室:
- あ、じゃあ、自分の例えば?
- 織田:
- そうだね 、だから例えばほら、俺の場合っていうのは、曲を作るとかプロデュースをする場合っていうのは、すごく幅が広くなるじゃない。それはね、本当にいろんなタイプの音楽が元々好きなわけ。で、それを全部自分でやろうとすると、もう、とっちらかって収拾が付かなくなってくるわけ。そんでほら、それがやっぱり「もっと俺よりもこの子が歌ったほうが向いてるな」っていうのは、「この子に歌ってもらおう」とか、そういうふうにしてないと。で、それで残ったのが「これは俺だ」っていう感じでね。
- 小室:
- ああ、「これは俺が歌ったほうがいいだろう」みたいなのもあるしね。まあ、織田君の場合はやっぱりヴォーカルとしてもね、しっかりありますもんね。けっこういいですよね、やっぱり。
- 織田:
- ありがとう。
- 小室:
- すごいプライベートなことですけど、結婚式のこのあいだのマツウラ君の時の聴かせてもらったのとかね、みんな注目してましたよ、あれは。このあいだもお話しましたけど。
- 織田:
- あれも緊張したよ。
- 小室:
- よかったですよ、あれは。
- 織田:
- そう?
- 小室:
- うん。
- 織田:
- そう言ってもらえると嬉しいな。もう結婚式で歌うのだけはね。今日もだから、妙にちょっと結婚式レベルのこの客の感じがどうも嫌だね。なんか本当、バァーッとお客さんとしていてくれるっていう状態だと、逆にすごくナチュラルにやれるんだけど。結婚式っていうのはね、もういい加減、何十回も人の結婚式で歌ってんだけどね、それでもやっぱり手が震えちゃうわけ。
- 小室:
- 弾き語りだからね、あれもね。けっこう間違えるとわかるとこだしね、ああいうとこって。
- 織田:
- そう。
- 小室:
- 俺もこのあいだピアノ間違えて。globeで3人でやった時もね、上がっちゃってね、けっこう。
- 織田:
- 上がるよね、あれ。
- 小室:
- もう、全てが集中してるからね、目がね。
- 織田:
- そう。
- 小室:
- なんか照明もないし。
- 織田:
- そう。照明がない感じって辛いよね。
- 小室:
- 辛いですよね。素でね。
- 織田:
- そう。
- 小室:
- でも、あれは本当「ああ、いい曲だなぁ」って思いましたよ。
- 織田:
- ありがとう。
- 小室:
- すごくみんなもジーンとしてたし。まあでも、ああいうのはやっぱり声がいいじゃないですか。歌があるから。あれはあれで、織田君の中で作曲家とかいろんなブランドがあっても、自分のもちゃんと一つは持てますもんね、あれでね。
- 織田:
- まあほら、声っていうのはある意味で最強の個性だからね。
- 小室:
- 最強ですよ。
- 織田:
- とりあえずまあ、「俺が歌っちゃえば俺だ」っていうのがね、まあ最強の部分としてあるからね。
- 小室:
- あの、ちょっと視聴者のためにチラッとだけお話すれば、作曲家の織田哲郎君ていうところにですね、焦点、スポットを当てると、すごいんですよ。
- 織田:
- いやいや。小室先生、何をおっしゃる。
- 小室:
- 本当に。ちょっとこれ、これだけはちょっと二人だけでね、なんかとっておきたいところもありますけど。この二人はすごいですよ、本当。自慢話ちょっとなっちゃいますけどね。この二人合わせたら、枚数でいったらもう、驚異的ですよ。日本の国内でいったら。そこはいいじゃないですか、二人だから。話しましょうよ、少し。
- 織田:
- ええ?
- 小室:
- 知られざるっていうことはないと思うけど、でもやっぱり知らない人多いですよね。
- 織田:
- やっぱり基本的にほら、本当にこういう商売だとすごく変なところと言われるんだけど、やっぱり人にあんまり顔とか名前とか知られるのが好きじゃないのね。で、特に顔を知られるのが好きじないっていうのが、一番テレビとか出たくないっていうのがあるのと。
- 小室:
- まああの、記号じゃないけど、織田哲郎っていう名前はもうすごいやっぱり必ず潜在的に目にしてますよね。みんな、音楽ファンていうかね。例えばカラオケで歌ったりする人だって、なんか見てるよね、絶対。
- 織田:
- そうだね 。
- 小室:
- そういう意味では名前は記号化はしちゃってるかもしれないね。
- 織田:
- そうだね 。
- 小室:
- 確かにもしかしたら、顔とかルックスとは一致してないかもしれないね、それはね。
- 織田:
- だから、それして欲しくない。
- 小室:
- して欲しくない?
- 織田:
- やっぱりね。
- 小室:
- 羨ましいよね、それはね。
- 織田:
- そういう意味じゃだから、小室君てほら、普通はプロデューサーっていうのはほら、後ろに立つっていう人じゃない。プロデューサーと言いながらビデオでギター弾いちゃうし。「おいおい」って感じだよ。
- 小室:
- 同世代のギタリストにはね、もう、からかわれっぱなしだしね。たまには怒られますからね。「そろそろいい加減にしてくんないかな」って。
- 織田:
- でも、ある意味じゃだからね、すごくそこのなんて言うのかな? 潔さっていうかさ。そういうふうに自分を「いや、俺がスターになることによって、もっと売れるんだからいいじゃなか」っていうやり方っていうのは、本当すごいと思うよ。
- 小室:
- リスキーであるとこもあるけどね。でも、これはね、やろうと思ってっていうか、流れで来ちゃったとこもあるんで。TMやってたっていうとこからね。
- 織田:
- ああ、なるほどね。
- 小室:
- 出ないように、出ないようにってしてた時期もあったんですよ、一応。
- 織田:
- 本当?
- 小室:
- うん、本当にあったんですよ。
- 織田:
- 俺はそんな時期知らねえぞ。
- 小室:
- まあ、織田君も含めてそこらへんにいる人たちとかいればね、昔のメンバーとかいればみんなにメチャクチャ突っ込まれるけどね。「テレビ好きなんだから」とか言われちゃって。
- 織田:
- でも、絶対好きだと思ったよ。
- 小室:
- 結局、そういうふうに突っ込まれると「ああ、好きなんだな」とか思っちゃうんですけどね、それはね。まあ、好きじゃなきゃさすがに出来ないでしょうけど。まあ、一応でも、そういう姿勢は持ったことあるんですよ。裏側に隠れてっていう。自分は無理ですね、やっぱりポジション的に。
- 織田:
- 好きだから。
- 小室:
- 好きだから。そういう結論になっちゃいますけど。あの、だから作曲のね、唯一すごい少ないわけですよ。何曲もたくさん作ってるわけじゃない。
- 織田:
- まあね。
- 小室:
- 提供も含めて。そこらへんでなんか、ちょっとぐらいはなんか苦労話とか聞けるのかなとか思ってるんですけど、楽曲的に。やっぱり僕を省いたら尋常じゃない数じゃない。このあいだあのね、カラオケ行ったわけじゃないんですけど、カラオケのそういう機械見せてもらって、作曲家がバァーッと出るのがあるんですよ。
- 織田:
- あ、そういうのがあるんだ。
- 小室:
- すごい数でしたよ、やっぱり。
- 織田:
- でもね、やっぱね、俺の何ていうのかな? その、飽きちゃうんだよね、基本的に。その、同じスタンスでいるっていうことにすぐ。で、とりあえず作曲をするっていうことにおいて、やっぱり作曲家としてすごくアピールしてる部分っていうのがあって。で、そうすると、一回一番になろうっていうのが確かにあったの。で、あの、それが何年前だっけ? 2〜3年前にね、その前の年の何年か、やっぱり2位ぐらいの年が続いて、やっぱり「一回1位にならんと、どうも気が済まんな」っていうのがあって。それで1位になったっていうのがあると、とりあえずまあ、作曲家としてもういいやっていう気になっちゃうんですよね。で、唄歌いとしてっていうことで、自分が歌を歌うっていうことには、基本的には売れるとか売れないっていうよりも、いっさい考えない。もう自分が要するに自分の中のプロデューサー的な部分ていうのを排除して、本当に残ってる、残ってるっていうか、ぜんぜん相反したものとしてね、アーティストサイドだけで作るっていうやり方をしてたから。で、結果的にだからまあ、すごく自分のは売れないっていう期間がすごい長かったわけ。で、それはそれで逆に言うと、その活動の中で売れる売れないと関係なく自分がアーティストとして音楽を作るっていうことの中で、一種、言ってみれば俺ずっと音楽療法みたいなことやってたんだと思うわけ。で、やっぱそれをやり通したことの中で、キチンと自分が成長できたっていうところがあって。で、なんかもう、本当になんていうのかな? 音楽病院から「もう退院していいですよ」って言われた感覚を持った時期があって。それまではだから、自分の音楽活動って純粋に自分のためだけにやってたんだよね。それで、それからなんか 、人のために自分が歌うっていうことを含めた音楽活動も出来るんじゃないかなって。その後1〜2年、本当に休んでたんだけど、俺。その後でまあ、そう思ってそれから出したのが「いつまでも変わらぬ愛を」ってやつで。
- 小室:
- あ、それからなんだ。
- 織田:
- で、あれはね、そう思って出したっていうのと、あと一つね、確かに自分の中でもシャクだっていうのがあったんだよね。やっぱほら、そういうカラオケの本とか見てさ、「織田哲郎っていう欄がない、それはシャクだな」っていうのも確かにあった。で、まあ、それで「いつまでも変わらぬ愛を」がたまたま1位になっちゃったんだよね。で、そうすると、「もう売るのはいいや」っていう気にすぐなっちゃうでしょ。ただまあ、やっぱり自分の中でアーティストとしての部分ていうのがね、また何ていうか、本当、自分がいいと思うものだけをやっていくっていうことを、いかにその中で最大のところを持ってくかっていうふうに考えてるんですけどね。やっぱ、そういうほら、何でもとにかくスタンス自体に飽きちゃうっていう俺から見てると、小室君のその飽きなさは何? っていう感じがすんだよ。
- 小室:
- いや、飽きてるかもしれない、もう。やっぱり「車は急に止まれない」っていうのと同じで。
- 織田:
- ああ、ああ。
- 小室:
- 急ブレーキかけるとね、事故が起きる可能性がありますね。自分もそうだし、周りの雰囲気もね。それはあると思うけど。まあでも、スタジオワークは好きだから。
- 織田:
- ああ、好きなんだよね。
- 小室:
- うん。それは好きだからね。もしもコンサートとかツアーをこれだけやったら僕はダメだと思うけどね。僕はああいうふうに転々といろんな街で、まあ偏食っていうのもあるけど。
- 織田:
- そうだよね。
- 小室:
- 食べられないっていうのもあるけどね。やっぱできないから。スタジオの中にいるんだったら平気かもしれないね。
- 織田:
- やっぱね、俺も「そうなのかな?」って自分で思ってたの。違うんだよね、俺は。やっり、それで「これはもうダメだ」って、今年はね、弾き語りライヴハウスツアーっていうのをやることにしたの。
- 小室:
- やるの?
- 織田:
- うん。
- 小室:
- それはまた価値が。
- 織田:
- 今度は全国各地、転々と。
- 小室:
- 行きたいね、それはね。聴きたいね。
- 織田:
- けっこう面白いと思うけどね。だから、俺は逆にね、すごくそういう、旅すること自体、もう本当好きなのよ。本当言うと、仕事なんか何もしないで、日本中、世界中、フラフラフラフラしてるのが一番好きなの。
- 小室:
- 旅が好きっていうのはなんかわかるよね、雰囲気としてね。
- 織田:
- だから、もうその旅好きを兼ねて、そういうノンビリしたライヴハウスツアーをね。
- 小室:
- ある種、贅沢ですよね。ツアーだけどね。
- 織田:
- まあね。
- 小室:
- すごい少ない人数でね、なんかやるわけですよね。そう、スタジオはね、素朴に織田君とかどういうレコーディングしてるのかな? って思ってるんですよ。基本はやっぱりギターで弾いて作る感じじゃないですか。イメージとしては。だから、スタジオとかでどうやってるのかな? って思って。
- 織田:
- うーん?
- 小室:
- だから、やっぱりスタジオをね、一作曲家に戻って打ち込みをしてっていう、そういうプロセスで作ってるのかな? って思ってたし。分けてますかね? それは。
- 織田:
- ん? 分けてるって?
- 小室:
- あの、作曲活動のレコーディングとかは、そういう作曲家としての作り方ですよね?
- 織田:
- いや、もうスタジオで作りだしちゃったら同じでしょう。入り込み方としては。だからあの、俺の場合はやっぱり、まずベーシックを打ち込んで、で、全部「早くギターパートに行きたい」っていう感じで、もう楽しみでやってるわけよ。
- 小室:
- ああ、ああ。
- 織田:
- 基本的に俺は、一番最初にミュージシャンになりたいって思ったのはギタリストだから。で、今でも俺は「俺は天才ギタリストだ」ってみんなに言ってんだけどさ。みんな俺が言わないと言ってくれないから、しょうがないから俺が言ってるんだけどさ。俺はやっぱりね、とにかくギターを弾くことが一番好きなんだよね。
- 小室:
- わかりますね、それはね。
- 織田:
- だからもう、自分が弾いて楽しいギターパートに行き着くまでの打ち込み。そういう感じ。
- 小室:
- なるほどね。あ、じゃあ、けっこうレコーディングの他の人のもソロとか弾いたりしてんですか?
- 織田:
- うーん、だから、自分がプロデュースしてるものに関してはね。
- 小室:
- あ、本当に。へぇー。
- 織田:
- だからあの、曲を作るものに関しては、もう曲だけのことが多いし。で、最近プロデュースした相川七瀬って彼女なんかはもう、なんていうの? 「俺のギターが彼女のサウンドの色だ」っていうやり方をしてるから。
- 小室:
- ああ、なるほどね。そうなんだ。けっこうあれ、ちゃんと聴いてますけどね。
- 織田:
- けっこう面白いでしょ?
- 小室:
- ギターじゃあ、織田君なんだ。
- 織田:
- そうそう。
- 小室:
- いやぁ、すごいギター出てるよね。彼女のはね。かなりロックな感じの。
- 織田:
- やっぱほら、ギタリストとしてやってる連中ってみんなね、ある意味じゃ上手くなりすぎちゃうわけよね。だから、上手さをどんどんどんどん追及してくと、みんな同じような感じになっていくじゃない。だからジョー・サトリアーニとかさ、あそこらへんの人たちって、みんな俺には同じにしか聞こえないってことになっちゃうわけ。で、俺はギタリストとして、もうなにしろ今でもアイドルなのはキース・リチャーズだからさ。で、あとね、マーク・ボランでしょ、ニール・ヤングでしょ、もう下手ばっか。
- 小室:
- マーク・ボランとかね、俺も大好きですけど。クラプトンに? あれ? ジョージ・ハリスンに教えてもらったんでしたっけ? あの人。確かクラプトンかどっちかに教えてもらってんだよね、マーク・ボランてね。
- 織田:
- うそ?
- 小室:
- なんか、そんなの聞いたことかありますよ。
- 織田:
- 本当? 教えてもらってあれなの? 何を教えてもらったんだ?
- 小室:
- 本当になんかそうみたいですよ。
- 織田:
- あ、そう。
- 小室:
- ほら、アコースティックじゃない、最初。
- 織田:
- ああ、そうだね 。
- 小室:
- 最初フォークギターで。そこからエレキになる時に。
- 織田:
- ああ、一応、弾き方教わったんだ。
- 小室:
- 「アンプなに買ったらいいか?」とか、聞いてたらしいですよ。僕も好きですけどね。
- 織田:
- やっぱ、ああいうほら、音が出たとたんに誰のギターだってすぐわかるじゃない。っていうのがいいよね。だから、さっき言ってた話だけど、その最強なのはどうしても歌じゃない。やっぱ、パッと出たとたんに誰だっていうのは最強なのはやっぱ歌だよね。で、その次は俺、やっぱりギターだと思う。
- 小室:
- そうですね。間違いないですね。もう、この二つには。やっぱりゲストの方ではね、ギターが多いんだよね。ギターの人ね。まあ、ヴォーカルの人も当然だけど。必ずその二つが持ってる人が多いから、いつもそういう話になっちゃうんだよね。この二つが出来る人いいなぁ。ない物ねだりって言われるんだけど。
- 織田:
- 逆に言うと、多分、小室君のプロデュースの原動力になってんのは、それをしないからかなって感じがすんだよね。だからほら、すごくアピールするっていうことは、全部人に任せるっていうところあるわけじゃない。
- 小室:
- それしかないっていうのもあるしね。自分でもやっぱり歌わないし。
- 織田:
- でも、歌うし。ビデオではギター弾くし。
- 小室:
- そう、この二つね。これはもう本当、趣味。僕も趣味で弾くんですよ。商品として使えるのはコーラスまでですから。1トラックでは保たないから。
- 織田:
- あ、そうか。
- 小室:
- うん。俺、レコーディング、最低8トラックやってる。
- 織田:
- ああ。いや、だからね、けっこう流れてくるのを聴いてて、コーラスじつはすごく厚いよね。
- 小室:
- うん、そうですね。
- 織田:
- ね。あの重ね方聴いてて、「あらまぁ、小室君てじつは歌うのすげぇ好きなんじゃないの?」って思ったもん。
- 小室:
- 歌、本当は好きなんでしょうね。好きなんだけど、やっぱり自分を自分で見て、「1本じゃ良くないよね」って厳しくは思ってるから。それは出来ないんですよね。
- 織田:
- やっぱ、そこらへんのその客観性の部分での判断能力って大事だよね。俺もね、グラム・ロック好きだったでしょ。化粧したことあるの。ぜんぜん似合わないんだもん。だからもうほら、俺はマーク・ボランになりたかったわけよ。で、あの頃のデビッド・ボウイ好きだったしね。
- 小室:
- グラムだよね。
- 織田:
- そういうつもりでメイクをするじゃない。なんか新宿二丁目の朝焼けっていうの?
- 小室:
- それは何? 鏡見て自分で判断したわけ?
- 織田:
- そう。
- 小室:
- 最初に?
- 織田:
- もう鏡見たとたんに「あ、ダメだ、こりゃ」って。
- 小室:
- それ、人に言われるよりは良かったかもしれない。
- 織田:
- そうね。だからやっぱり、そこまではさすがに自分でも持ってかなかったね。いろいろ試したのよ、じつはだから。密かにね。髪の毛、メイク、服とかさ。で、そういうとこへ行こうとすればするほどぜんぜんダメ。しょうがないから、なんか。俺は本来アメリカン・ロックって好きじゃなかったのね。
- 小室:
- あ、そうなの?
- 織田:
- うん。ロックなんてね、Tシャツとジーパンでロックをやるなんて、もっての他だと思ってたのよ。まずラメありきっていうさ。それがロックだと思ってたから。で、ほら、アメリカ人がやっていいのはフォークだ、白人はね、っていうそういうのがガチガチの意識としてあったわけ。だからあの、アメリカ人でいうとボブ・ディランとか、さっきのニール・ヤングとかね、そういうフォーク系はすごく好きなんだけど、やっぱロックはね、全部イギリスもんばっかりが好きだったから。似合わないんだからしょうがないんだよね。
- 小室:
- ああ、なるほどね。それは、俺も歌はけっこう出しちゃいましたけど、ソロアルバムとか、シングル出しちゃったりとか、TMの時にしたけど。やっぱり諦めましたね。ちゃんと諦めてるつもりはあるけどね。
- 織田:
- でも、またやるよ、きっと。
- 小室:
- いや、やんないと思うよ、歌は。
- 織田:
- そう?
- 小室:
- うん。歌はね、多分二度とやんないと思う。けっこう自分で気付いた時の、やっぱりその傷つきっていうのはあるからね。
- 織田:
- ああ、そうか。傷つくよね。おれも鏡見て傷ついたんだけど。
- 小室:
- きっとね、水際っていうか、けっこうきてたと思うんだよね。誰かがもしかしたら言ったかもしれない。もうちょっとしつこくやってたら。「小室さんは、バンドかなんかでカッコよくキーボード弾いてたほうがいいと思いますよ」とかって、なんか正攻法で意見とかされるギリギリだったかもしれなくて。でもまあ、その前にね、やっぱ自分でも「歌はやめたほうがいいなぁ」って。
- 織田:
- そうね、俺もその頃知り合ってて、一緒に酒飲んでたら言ってたかもしれないな。
- 小室:
- 言ってたと思う、絶対。近くのやつらではね、まあ、そういうこと言ってたやつもいるしね。だから、僕なんかもやっぱどっか少しは「もしかしたらいいかもしんない」とか、「『いい』って言ってくれる人もいるかもしれない」って思ってこととかあるからね。でもやっぱり、「絶対ダメだな」と思って。織田君なんかさ、もしかしたら4声ぐらいやっちゃったら、かなりEQで削んないとブ厚くなりすぎちゃうでしょ。
- 織田:
- そう、ぜんぜん。逆にいうと、最近はもうコーラスに向かない声になっちゃったんだよね。
- 小室:
- そうだよね 。
- 織田:
- だからあの、昔はね、けっこうコーラス重ねるのが好きだったの。好きな時代もあって、それはそれなりになってたの。最近ぜんぜんダメ。倍音がほら、なんていうの? 重ねちゃうとブザァー、ボァー、ジャー状態になっちゃうから。
- 小室:
- そうでしょうね。1chで倍音もう聞こえてる感じだもんね。僕なんかは4回ぐらいでダブルでハモりが3度とか4度でやったぐらいで急に裏声みたいなのが聞こえてくるのね。それでやっと倍音みたいに聞こえてくる。
- 織田:
- でもね、いろいろ聴いてるとコーラスとしてはすごくいいよね。
- 小室:
- うん、そうだね 。今はね、それが一番嬉しいよ。そう言われると。
- 織田:
- あれがね、俺の場合、逆にできないからさ。もうそうやって人のに声でなんか残そうとすると、なんか「オヤジ、出てくるな」っていうぐらいボッと声が出てきちゃうからダメなの。
- 小室:
- 存在感ありすぎるんだよね。
- 織田:
- 俺なんか「なんか残したいのに」って思うんだけどさ、たまに。
- 小室:
- わかる。ダブルとかだとけっこうウネっちゃう感じするんじゃないかなと思って、聴いててね。まあね、デュオとかデュエットみたいのがいいと思うんですけどね。
- 織田:
- そうだね 。だから歌としてっていうんじゃないと、厳しいよね。まあでも、そうなりたかったっていうのがあるからね。
- 小室:
- だからね、見てる方たちからすれば、ない物ねだりっていうか、隣の芝生的に聞こえるかもしれないけど、織田君の場合は歌は1本でいいなぁっていうのは何年も前からそう思っているこしだし。もしかしてギターでそうやってね。ギターはまあ、ギターも才能ないから、俺は。趣味で今ね、弾いてるけど。絶対形になるつもりもないし。で、そのさっきの「とりあえず一番とろうかな」っていうのもあるじゃない。で、やっぱ織田君先にね、1位バァーンと。もう1桁違う枚数で。
- 織田:
- 「これは当分抜けねぇだろう」と思ってたら、すぐ抜かれちゃったもんな。
- 小室:
- すぐじゃないでしょ。
- 織田:
- けっこう悔しかったよ。
- 小室:
- 3年ぐらいじゃない?
- 織田:
- そうだね 。
- 小室:
- あれは抜ける数じゃないですよ。1300万枚ですからね。
- 織田:
- 俺は「これは抜けないだろう」と思ってたら3年で抜いちゃうんだもん。ヒドいよね。しかもさ、俺は曲だけだよ。同じ数で詞まで乗るかこの野郎。もうけっこうね、あれはたまげたよ、本当に。正直いって。
- 小室:
- まあ、詞はついてきちゃったっていうのもありますけどね。
- 織田:
- いや、でもね、あんだけ詞を書くっていうのは、俺は本当にすごいと思う。
- 小室:
- 今、相川七瀬とか詞、書いてますよね?
- 織田:
- だから、チョコチョコとね。ただ、基本的には今後、本人の詞がメインになっていくだろうし。ある意味ではほら、デビュー、2作目ぐらいと方向性付けとしてやったけど、全部俺がやるなんていってたら、一枚アルバム作るのに5年はかかるよ。
- 小室:
- あ、そう?
- 織田:
- うん。今だから、俺のシングル作んなきゃっていってオケ作ってから詞が出来ないって言い出して1ヶ月経ってんだから。
- 小室:
- いいね、その余裕がね。
- 織田:
- いや、余裕じゃないよ。本当にもう胃がキリキリしてんだけどね。
- 小室:
- 俺、1ヶ月出来ないっていったら、レコード会社一個つぶれちゃうかもしれない。
- 織田:
- ああ、ああ。いや、だから、俺の場合、そうやって詞が書けないっていうことで、ずいぶん多くの人に見捨てられてるっていうのが俺の場合あると思うけどね。
- 小室:
- でも、それはスタンスでありスタイルで、それでリコメンドされてるところはね、それなりにもやりやすく道を開いてるっていったら変ですけど。
- 織田:
- まあね。
- 小室:
- それが羨ましいことの一つですよ。
- 織田:
- そう?
- 小室:
- それで、100万枚を自分の曲で、織田君が人にも提供しつつも自分の歌で100万枚って出したのも、当然ぜんぜん先じゃないですか。あれ何年前ですか? 4〜5年ぐらい?
- 織田:
- 4〜5年前だよな。
- 小室:
- あの時も「すごいな」と思ってたもんね、僕、見てて。「あ、いったよ、いったよ」でもう。あれ? っと思ったらもう100万枚とかいってたもんね。
- 織田:
- 俺もだから、自分でもびっくりしたもんね。
- 小室:
- なんかグッグッグッといきましたよね。
- 織田:
- うん。本当、正直にすごい嬉しかったし。やっぱり、それが一番嬉しかったのは、ある意味ではほら、それまですごく「俺の音楽は俺のためだけにやるんだ」っていうのっていうのはほら、それを支持してくれる周りっていうのも当然いるけれども、やっぱりそうやって商業的に自分の曲が100万売れたっていうのを素直に周りのスタッフとかがすごく喜んでくれるのがすごく嬉しかった。
- 小室:
- わかります。すごくわかりやすくしてあげられたっていうとこありますよね。あの、音楽は評価してくれててもね、やっぱりそういうものってね、サッと見えますからね。それが合致したわけですよね、そこでね。
- 織田:
- そうだね 。
- 小室:
- あれもね、いいなって思ってましたよ。羨ましいなって思ってたしね。
- 織田:
- あ、そう?
- 小室:
- この人もう、すごいいろんなことやってんですよ、記録を。そうやって作ってんですよね。
- 織田:
- いやいや、いやいや。
- 小室:
- ここだけの話になっちゃうんですけど、さっきので、ここだけの話じゃないけどね。
- 織田:
- ぜんぜんここだけじゃないよ。どこがここだけやねん? テレビで言うといて。
- 小室:
- このあいだのが数字上ではシングルで1400ぐらいですかね?
- 織田:
- 1400いかれちゃったんだよね。
- 小室:
- 二人足して2700万枚だからね、シングルだけで。
- 織田:
- そうね。
- 小室:
- でしょ。
- 織田:
- なんか、二人で縁側で茶でもすするか。
- 小室:
- すごいですよ。
- 織田:
- まあでも、やっぱりあれだよね。俺の場合は本当に自分じゃできないことっていうのがすごく多いから。だから、それをいろんな人間にいろいろやってもらいながら、とりあえず結果的にそういうとこまでもってってもらえたっていうところがすごく強いんだろうね。でも小室君はほら、システムごと自分で作っちゃうじゃん。あれ、異常だよ。
- 小室:
- 異常かもしれない。自分でも今やってることはね、ちょっと異常だと思いますけどね。なんでやれてんだろう? と思うけど。
- 織田:
- よっぽどワガママなんだよね。
- 小室:
- ああ、それはね、わかる。もうここのとこね、ずっとそれが原動力じゃない。それしかないんだよね。
- 織田:
- 絶対そうだよね。結局ほら、ワガママな人間ていうのは、自分の気が済むために自分でやらなきゃいけないパートが増えてくるわけじゃない。
- 小室:
- 本当にそうですよね。
- 織田:
- ほとんどワガママなんだろうね。
- 小室:
- だから、ちょっとそうだね 。結局どっかしてないところがあると、自分でやるようになっちゃうんだよね。
- 織田:
- だから、それをそこまでキチンと通してペイバックするっていうのは、本当にだから俺、潔いなぁと思うよ。
- 小室:
- それとさっき言った原動力っていうか、歌とギターのコンプレックスっていうか、コンプレックスとはちょっと違うと思うけど。
- 織田:
- まあ、コンプレックスじゃないだろうけど、やっぱそのなんていうんだろうな? そっちの部分で気が済んでくと、なんか気の済み方が早いんじゃないかっていう気が自分でするんだよね。
- 小室:
- 多分、僕もT-REXが一番好きだったからね。
- 織田:
- なんでそれでキーボードになっちゃったの?
- 小室:
- まあ、僕もすぐ諦めたわけじゃなくて、当然、両方ともできなかったから、どっかに憧れはあっても、プロとしては通用はしないと思ってたから。
- 織田:
- じゃあ、その後で?
- 小室:
- 高校の時とかは織田君のほうの学校の人たちとか、あっちのへんの人たちとかさ、噂はもうガンガン入ってたわけ。
- 織田:
- ああ、北島ケンジ?
- 小室:
- とか、いろいろいたじゃない、たくさん。
- 織田:
- うん、そうだね 。
- 小室:
- 高校3年ぐらいの時からもう知ってたから。俺たちは中央線沿線の吉祥寺、三鷹、国分寺チームだったから。
- 織田:
- ああ、そうか。
- 小室:
- まあ、プリズムとかね、はいたんだけど、国分寺とかに。そこらへんでもやっぱりランク的にはテクニック的にもぜんぜん下だったから。
- 織田:
- そうか。高校の頃ってじゃあ、何やってたの?
- 小室:
- 中学の時はだから、そういうの憧れたけど諦めて。今度はじゃあキーボードのほうがなんか上手く弾けたから。だからプログレのほうがいいっていうんでプログレいって。
- 織田:
- やっぱプログレいったよね。そうだよね 。そらそうだよね。
- 小室:
- で、イエスとELPと、まあ当り前だけどキーボードだったディープ・パープルやって。で、ギターのやつはマウンテンとか好きだったからマウンテンのキーボードとかちょっと手伝ってあげたりとかしてたわけだから。やっぱりね、あの、オールマンとかさ、あっちはキーボード上手いんだよね。ピアノの人とかにしてもみんなけっこう上手いじゃない。
- 織田:
- なるほどね。
- 小室:
- リトルフィートとかってメチャクチャ上手かったから。ああいうのは弾けなかった。せいぜいコピーできるのはパープルとかイエスぐらいだったから。で、結局あそこらへんやってて。もうそこでけっこう一番やりたいものから退いて。で、キーボードになってっていう形だったわけ。さらにそこでやっぱり、あの頃ふゅーじょんだったっけな? クロス・オーバーなのかな?
- 織田:
- ああ、クロス・オーバーね。
- 小室:
- クロス・オーバーだね。今度、そっちでも。
- 織田:
- ああ、ああ。
- 小室:
- すごい。
- 織田:
- 上手かったよね、確かに。
- 小室:
- メチャクチャ上手い人出てきて。これはかなわないと思ったし。
- 織田:
- だから、俺も本当ね、それでギターは捨てざるを得なかったの。だってほら、まず、同じ高校に北島ケンジがいた時点で「あ、ダメだ」って。もうほら、それから俺、パタッと人前でギター弾かなくなっちゃったのね。
- 小室:
- あ、そうなんだ。
- 織田:
- さすがに「あ、こういうのがギタリストって言うんだ」って。もうほら、しばらく本当に弾かなかったね。
- 小室:
- メチャクチャびっくりしたもんね、見た時。
- 織田:
- 上手かったよね、あいつは。
- 小室:
- なんか遠巻きに見てたもん、北島ケンちゃんのこと。遠巻きにしてたっていうか。
- 織田:
- そうか。北島ケンジバンドのキーボードもやってたんだよね。
- 小室:
- 1〜2回、トラでね。
- 織田:
- あ、トラなんだ。
- 小室:
- とてもメインにはなれない、もちろん。メインの人は誰だったんだろうな? あの時。
- 織田:
- 誰だろうな? コゾウじゃなかった?
- 小室:
- あ、やってたね。やってたかもしれない。あと誰ですか? マライアー系統の人ですか? 笹路さんとかもやってましたよね? それはレコーディングの時?
- 織田:
- レコーディングだけでしょ。
- 小室:
- まあ、とにかくそういう人じゃない、でも。とんでもないし。
- 織田:
- やっぱあの頃はほら、ミュージシャンっていうのはすごく、そういう技術的に上手いことっていうのがね、大事だったじゃない。俺、本当、フュージョンっていうのは今でも嫌いなんだけどさ。あれのせいで俺はギタリストになれなかったっていうさ。最近やっぱり楽器って、ある意味じゃ打ち込みっていうのがこんだけ一般化しちゃえば、もう上手いことの価値っていうのがあんまりなくなっちゃったからね。もう個性っていうことになってきてるからさ。
- 小室:
- そう考えるともう、逃げの歴史ですね、僕なんかね。それでキーボードいって今度、それが弾けないから結局コンピューターいったわけだから。
- 織田:
- あ、なるほど。
- 小室:
- コンピューターででもフュージョンの人たちのテクニックまでには、まだ打ち込みもいってなかったからダンス系の簡単なさ、シークェンサーだけでできる周期リズムしか作れないほうにいったんだもんね。
- 織田:
- まあでも、それは悪く言うと逃げかもしれないけど、やっぱり良く言うとその場その場の客観的な判断が出来てんだよね。
- 小室:
- まあね。どんどん引いてますね、そういう考えてみると、本当に。
- 織田:
- でも、どんどんそう引いてる割りにどんどん出てきてるなっていうのが。
- 小室:
- 本当そうだね 。だから技術の進歩に感謝するしかないよ、僕なんかね。今はやっぱり打ち込みとか、それはそれでテクニックがね、もう確立されてきてるから。それなりにプロフェッショナルな部分はもってきてるからね。それはわかるけど。いやぁ遡れば遡るほど、やっぱすごい人いたね。これはどうしょうもないって人、たくさんいたわ。
- 織田:
- 俺はあの、唄歌いになりたいっていうのは、俺もだから結果的にそれしかやれることがなくなって歌を歌うことになったんだよね。
- 小室:
- あ、そうなんですか。
- 織田:
- だからね、とにかく楽器が好きだったの。それでまずはギタリストね。で、次に好きなのドラム。で、キーボードもけっこう好きなのよ、本当は。
- 小室:
- キーボード弾きます? ピアノとか。
- 織田:
- CとGなら。
- 小室:
- 本当に?
- 織田:
- キーが。それで、好きだったんだけど、やっぱり特にフュージョンのご時勢だから。どれやっても上手いやついくらでもいるっていう状況の中で。やっぱりほら、元の気質があんまり番組出ないっていうほど、あんまり顔出すっていうのかな? なんていうんだろう? エンターティナー商売っていうのが好きじゃないし、結局、苦手なの俺は。苦手だから好きじゃないのかな? まあ、それでヴォーカリストってさ、バンドの中で一人だけエンターティナーなわけじゃない。でも、バンドは音楽をやってるんだよね。俺はそっちのほうがいいの。「なんか淋しいなぁ、俺」って感じなんだよね、歌を歌ってる時ってさ。俺だけ客商売で。で、やっぱり客商売のほうが向いてるヴォーカリストって世の中いるじゃない。やっぱり、ああいう人ってね、だからすごいなと思うんだけど、俺は憧れたことは一回もなかったんだよ。だから、例えばストーンズで言えば、俺はミック・ジャガーなんて最高のエンターティナーじゃない。でもミック・ジャガーになりたいって一回も思ったことない。俺はキース・リチャーズが好きだと。俺は楽器が好きなんだけど、なんかとりあえず北島なんかとバンド組んじゃったから、俺ギター弾けねえから「歌はやっぱり俺が一番うまいだろう」っていうさ。それはあったよね。
- 小室:
- いやもう、あの、ケンちゃんの最初のソロアルバムとか、本人から聴かせてもらったりしたこともあるわけでしょ。「歌、誰? これ」とか言ってたもんね。
- 織田:
- あれは本当、面白かったよね。
- 小室:
- 「すごいね、いるんだね、本当にこういう人たちが」って。聞いたら同じ年だったりとかするわけじゃない。学年的にもさ。びっくりしたもんね。「もうこれはダメだよね」って。三多摩地区の方がテクニック的にもね、やっぱり全体的なクォリティはね、まあ、低かったと思う。
- 織田:
- そう?
- 小室:
- やっぱり落ちたと思う。あそこらへんは何ていうの? 環八のへんていうの?
- 織田:
- なんだろうね? いわゆる目黒・世田谷。
- 小室:
- 目黒・世田谷関係だよね。都立高校のへんの。
- 織田:
- そうそう。
- 小室:
- あそこらへんにはかなわなかったね。
- 織田:
- でもさ、どっちかっていうと中央線沿線のほうが、カッコいいバンドは多かったのよ。
- 小室:
- うん。あのね、ビジュアルは。
- 織田:
- そう。
- 小室:
- すごい気遣ってたね。
- 織田:
- そうなんだよね。
- 小室:
- ルージュとかいたね。
- 織田:
- そうそう。知ってる知ってる。
- 小室:
- そう。ああいう人たちもいたからね。
- 織田:
- だから、なんかほら、世田谷あたりはそういう意味じゃやっぱり、根が真面目っていうか。だからクロス・オーバーだフュージョンだっていうのが流行出すと、ヒュッとそっちにいった連中がすごく多かったんだよね。
- 小室:
- 多かったね。じゃあ、織田君みたいに歌の人がそんなにいなかったの? ああいうふうにツェッペリンじゃないけど。
- 織田:
- うーん? 歌はやっぱり下手だったよね、みんなあの頃は。そういう意味じゃ、やっぱカラオケの影響ってすごいよね。確実に今、やっぱり日本て世界で一番、国民のレベルとして歌の上手い国でしょ。
- 小室:
- そうね。
- 織田:
- あの頃はやっぱり、ギターとかはけっこう上手いやつがやってるバンドでも、ヴォーカルはツェッペリンのオクターヴ下げて歌うとかさ、平気でそういうバンドあったからね。
- 小室:
- それはもう、当り前でしたね。俺たちもアマチュアのコンサートでヴォーカルを聞く耳を持ってなかったもんね。
- 織田:
- そうそう、そうそう。
- 小室:
- まあ、結局、俺はキーボードいくしかなかったな、あの時は。本当に。まあ、唯一キーボードソロとかね、そういうとこでのスポット浴びるぐらいしかなかったもんね。
- 織田:
- ジョン・ロード状態。
- 小室:
- ジョン・ロード状態しかなかったね。とは言っても、今話してるのもう、20年ぐらい前の話ですから。
- 織田:
- 本当だね。ここ、ほとんどカットされそうだね。わかんない話ばっかりじゃない。
- 小室:
- 恐いですよ。ついちょっと前まで「10年前だよね、こんなの」って言ってたのが、ちょうど20年前の話ですからね。
- 織田:
- いやぁ、いよいよなんか爺ィの茶飲み話状態になってきたねぇ。
- 小室:
- そりゃ20年経てば変わりますよね、それはね。
- 織田:
- そうだね 。でも、そういう意味じゃ本当にお互いあれだぁねぇ、20年音楽シーンていうものの変化をね。
- 小室:
- 生き字引きですから。
- 織田:
- そういう状態になってきたね。
- 小室:
- 大体、20年間で見てきてますもんね。本当に。
- 織田:
- だって、俺らが最初に始めた頃ってロックをやるなんていうのは絶対、基本的に飯が食えるものじゃなかったじゃない。
- 小室:
- そうですよね。
- 織田:
- 最近はほら、けっこう就職する意識で。
- 小室:
- だって、バンドの人とかでもいきなり売れちゃって、けっこういい稼ぎしてる人いるんじゃないのかな? 今またけっこうバンドね、たくさん出てきてるしね。ぜんぜん違うでしょ。
- 織田:
- 違うでしょ。
- 小室:
- ちゃんとバンドで、バイトでバックもやりながらだから、僕たちなんか。
- 織田:
- やっぱり、あの当時にそうやってプロになったような連中って、ある意味じゃ大馬鹿者ばっかりだよね。
- 小室:
- 本当にね。
- 織田:
- 基本的に「そんなのでは飯が食えないぞ」って世の中に言われてる状態でやってたからね。
- 小室:
- 本当、そうですよ。もう、渋谷の駅とか寂しく歩いてましたからね。リハーサルとかだいたい渋谷とかの練習スタジオとか多かったからね。けっこう夕方とか寂しかったね。みんな帰る時間にキーボードとか抱えて、若干の不安を覚えたよね。
- 織田:
- そうね。そういう意味じゃあ、今考えるとね、どういうつもりだったんだろうと思うなだけど。なんにも収入ない時とか、けっこうしょっちゅうあったんだよね。
- 小室:
- あ、そう。それ聞きたかったんですね、僕。何か描いてました? あの頃。その到達地点というか、そのメジャーっていうのかわかんないけど。
- 織田:
- うーん?
- 小室:
- 例えば外国はもう成立してたわけでしょ? そういうシステムが。
- 織田:
- そうね。確かにやっぱり一つあったビジョンは海外っていうこと。で、それとどうなんだろう? 確かにWHYっていうもので一番最初にデビューした時から、プロデューサー集団なんていう偉そうな名前付けてやってたの、あれじつは。だけど、今じゃないんだからさ、20ぐらいの子供がさ、プロデューサー集団なんつって出てきて何すんの? って銀座ナウで歌うしかないっていう。そういう状態の時だからあれだったけど。やっぱ俺は確かに一つ、そういう裏方として曲を作るとか、プロデュースするっていうことに興味があったことは確か。
- 小室:
- なるほどね。
- 織田:
- ただ、本来はそっから始まったにも関わらず、やっぱりヴォーカリストとしてプロになったからには、自分が唄歌いとしてっていうことを突き詰めようっていうことで、逆にぜんぜんアーティストとしてはどんどん突き詰めるっていう方向にいっちゃったんだけどね。
- 小室:
- まあ、そうだね 。ここ20年ていうことで、ここにこうやって二人で喋れてるっていうことは、やっぱりその頭はね、どっかに大馬鹿者なのかもしれないけど、それなりに生活の手段はきっと考えてたんじゃないのかな?
- 織田:
- ただね、俺の場合一つの強みは、俺、画家になろうと思ってたの。
- 小室:
- あ、それはぜんぜん初耳ですね。
- 織田:
- もう一番最初は中学の時に画家になりたいっていうのがあって。画家なんて絶対金になんないじゃない。で、俺はもう中学生の時に覚悟したのよ。俺はもう一生四畳半でもいいって。どっかとりあえず雨露しのげるところで、とにかく一生絵が描ければいいっていうのを、俺は中学生の時に覚悟してるから。そういう意味じゃあね、ミュージシャンは画家よりはぜんぜん金無いっつったってね、生活しやすかったからね。
- 小室:
- 幅がありましたもんね。じゃあまあ、さらにもう一段覚悟してたっていうのがあったんですね。
- 織田:
- そうそう、そう。それが確かに強みとしてあったんじゃないかな。
- 小室:
- 自分も今考えてたんだけど、何を考えて、何を目指してやってたのかわかんないもんね。今考えるとね。少なくとも、今のような状況はあり得なかったし。
- 織田:
- うん。
- 小室:
- こんなにビジネスが、ビジネスっていうかね、なんかでかいもんになってるとは思えないよね、あの頃はね。いやぁ。
- 織田:
- いやぁ。
- 小室:
- 振り返っちゃうと遠くいっちゃいますよ、もう。
- 織田:
- なんかね。そうだね 。
- 小室:
- サーッとね。
- 織田:
- なんか、いやぁ、本当にっていう感じだね。
- 小室:
- 口に出したくないね、なんかね。瞑想状態に入ってきちゃうね。そのぐらい長いですよね。
- 織田:
- 長いよ。
- 小室:
- よく考えてみるとね。
- 織田:
- 考えてみるとね。でも、考えないとアッという間だけどね、なんか。気が付いてみるとっていう感じもするし。
- 小室:
- そうですか。あの、まあ、一応これも締めがあるんで。
- 織田:
- あ、そうか。
- 小室:
- そろそろまとめなきゃいけないんですけど。けっこう話は尽きないんですけどね。お店でしたっけ? 話があったじゃないですか。
- 織田:
- ああ、ああ。
- 小室:
- 一応、考えてますんで。ぜひ。
- 織田:
- そうなの?
- 小室:
- 狙ってますから。織田君このあいだ話したじゃないですか。
- 織田:
- あ、俺のね。うんうんうん、それはもう、ぜひ。
- 小室:
- わかんないと思いますけどね。
- 織田:
- あまりにわかんないよ。
- 小室:
- っていうわけでじゃあ、ありがとうございました。いろいろと。
- 織田:
- ありがとうございました。
- 小室:
- あ、ごめんなさい、ライヴツアー。
- 織田:
- ああ、ああ、そうだ。ライヴツアーの宣伝を。
- 小室:
- ちょっと、でもそんなに入れないですよね。
- 織田:
- あ、そんなに客は…。
- 小室:
- 知らないんですか?
- 織田:
- 人気ないから。宣伝したいのよ。
- 小室:
- 宣伝もしないで?
- 織田:
- いや、宣伝してんのよ。してんだけど、売れないのよ、あんまり。ダメ。
- 小室:
- どこらへんで、どの規模でやるんですか?
- 織田:
- 本当にあの、ライヴハウスがあるとこだったらどこでも行きますよ。っていう形で。
- 小室:
- へぇー。
- 織田:
- だから、場所によって400人ぐらいの箱もあれば60人ぐらいの箱もあるし。
- 小室:
- へぇー。さすがにちょっとライヴハウス、名前も忘れちゃったなぁ。地方の。まだあるのかな?
- 織田:
- いや、けっこう潰れてると思う。地方のライヴハウスはね、難しいんだよね。やっぱ、昔あったとこって、どんどん潰れてく。やっぱり、今そうやってあるライヴハウス、本当に頑張って欲しいなぁって思うしね。
- 小室:
- それはなんか、価値あるんだよね。見れる人にとっては。
- 織田:
- ぜひ。
- 小室:
- はい。どうもありがとうございました。
- 織田:
- どうもありがとうございました。