TK MUSIC CLAMP

TKMC

NON EDIT TALK : 小室哲哉★甲斐よしひろ


小室:
こんばんは、小室哲哉です。間違いなくクリスマスの時期なんですが、僕もクリスマスソングは何曲か作っていますが、なかなか毎年々々聴いてもらえるクリスマスソングを作るのはね、難しいんですよね。今日のゲストの方はクリスマスソングを作ったことがあるか、ちょっと聞いてみたいと思いますが。今日お招きしている方はですね、甲斐よしひろさんです。

甲斐:
よろしく、どうも。

小室:
よろしくお願いします。一回だけ…。

甲斐:
そうそう、なんだっけかな?

小室:
こちらのスタッフのプロデューサーの菊地君の結婚式で。二次会ですけども。

甲斐:
二次会ですね。

小室:
はい、お会いできたんですけども。とりあえず今、振ってしまったんで、クリス甲斐マスソングって、甲斐バンドからも通してありますか? えぇとね、あの、そういうつもりで書いたんじゃなかったんですけどね、時期が来るとなんとなく、うっすらとは鳴ってるというので、『アンナ』っていうのがあって。

小室:
やっぱそうですか。

甲斐:
アレはまあ、なんかその手の、時期ソング風にはなってるみたいですね。

小室:
僕、一回か二回はカラオケで歌ったことありますよ、昔ですけども。あの、やっぱり断片的なんですけども、その今の曲もそうですけど、もっと前になって、もう昔の話しになっちゃうから、どうなんだかわからないんですけど『ヒーロー』だったりとか、あと『バス通り』でしたっけ?とか、もう本当、断片的にでもけっこう印象に残ってる曲があって。で、あとはやっぱり、甲斐さんの声ですよね。それが全部重なって、今、あってる甲斐さんの印象として残ってるんですけども。あの、ずっとデビューされてですか?20年ぐらい?

甲斐:
そうですね。ちょうど20年越したんですね。

小室:
越したんですか。それで今回のリリースもされてますよね。で、とりあえずそこらへんからお話ししたいなと思ったんですけど。ずっとそういうふうに続けていつて、僕なんかはよく「ズルい」って言われるんですけども、歌わないので自分の声をしょっていかなくていい、みたいなところがあって。その時代、時代でいわゆる自分がこう思った音楽とか、やりたい音楽とかで、ヴォーカルの人が代わったりとか、そういうことが出来ちゃうようなところがあるんですけども。甲斐さんの、もうとにかく声がありますよね。

甲斐:
だからなんか、それを因果なものと思うのかね、すごくポジティブなものに思うか、ネガティブに考えるかっていうことなんでしょうけど。確かにあの、声っていうのは、もうとにかく一発で入ってくるでしょ。だからそれをその、ナイスだと思うか、業の深いものだと考えるかだね。違いますよね。だから僕、わりとあの、なんていうのかな?もちろん、その主役が声だということで、サウンドクリエイトは地道なところでするんですよ。それは何かというと、自分が飽きたくないからね。自分がやってることに。で、自分がやってることに飽きるとバレちゃうじゃない、一発で、聴き手にね。だから、そういう配慮はしますけどね。ただなんか、最近はね、もう純粋に歌うっていうような、その例えばあの、だから僕、どっちかと言うと、ストーンズみたいなものの考え方なの。まあバンドっていうことだけじゃなくて、作品を作る時もね。やっぱり、全体のグルーヴとしてヴォーカルが乗っかってるんだ、という考え方をずっとしてきたんだけど、なんかあの、ロッド・スチュワートみたいに、もう本当にそういう意味では歌うっていうことに純粋に、ある種その、楽に向かうというアプローチも「羨ましいな」とやっと思うようになってきてね。

小室:
どうしても、その個性的な声の方にはお話しいつもするんですけど、どんなにやっぱりいろんなアプローチをされても、声が入ってきた瞬間に「あ、ナニナニさんだ」というふうなことはわかると、当然。そうすると、その時にやっぱり、それが僕たちというか、一般のユーザーからしてみれば、いいタイミングで、それが「あ、欲しいな」と思うタイミングで来ると、ぜんぜんいいんですけども。それが違うとあの、ロックでもなんでも「ああ、これナニナニさんでしょ?だって同じじゃん」みたいな感じになっちゃって、それっていうのが、僕なんかからしたら、ヴォーカルの人にはいつもそういうね「ないものねだりだよ」とも言われるんですけども「羨ましい」と思うんですね。

甲斐:
でもなんか、作ってる曲を聴くとね、声が聴こえるサウンドだよね。要するにその、あなたの声がね。それで、すごいな、と思うんだけど、僕、ここ2年ぐらいっで、2年間でベスト3を選ぶとしたら、あなたの作った曲が2曲ぐらい入るんですよ。

小室:
あ、そうですか。

甲斐:
うん。で、特にその浜ちゃん作ってるヤツって、アレ、作ってるヤツの声が聴こえるんだよね。最初ね、僕ね、混ぜてるのかな?と思ったの。

小室:
あ、まあ、確かに多少は入ってます。

甲斐:
うん、多少はね。もちろんわかるんですけど。全編にね、僕は最初。で、ずっと聴いてたらそうでもないから、それはやっぱり、みんな例えば小室君ていうと「曲」「曲」っていうじゃない。サウンドとかいうじゃない。でも、本当はそれだけじゃなくて、まあ当然なんだけど、俺は詞がね、メチャクチャいいと思うんだよね。

小室:
あ、そうですか。

甲斐:
うん。だって、詞が良くないとやっぱり、なんていうの?サウンドとグルーヴだけじゃ絶対に無理で。それはあの、俺も昔、なんかやっぱり戦略的なことを聞かれる時に、本当はすごくスプリングスティーンが好きだったりしてるのに、「いやぁ、ストーンズがね」っていった方が、ずっとみんなわかってくれる、とかっていうような、ものの言い方ってあるじゃない。そういうのは、よくしてましたけどね。だから実際はその芯食ってるとこと、ちょっと違う、若干ズレてるところで世間が受け止めてくれてて、楽だというところもあるし。まあ「本当はここもやってるんだけどね」っていいたいところもあるしっていうね。だから、あれはすごく僕、なんかでも多分、ある種のその時代をリードしていくスタイルっていうのは、その曲だろうとサウンドだろうとなんだろうと、声が聴こえてこないとね、なんかどっかで。地声というかね。そうじゃないとダメだと思うんですけどね。僕ただ、この番組すごく見てて、時々見ててすごく面白いなと思ったのは、ここはアレですよね、なんかこう、業界戦略裏つながり的なニュアンスじゃないよね、なんか。わりとみんな楽にアワアワと。

小室:
ああ、そうですね。そうみたいですね。

甲斐:
そうですよね。わりとこういう感じだとさ、なんか裏で菊地が立ち回ってるとかさ、なんかそういう感じがしたりするじゃない。もちろんその多少はあるんだろうけど、でもなんか、そういう感じじゃないよね、なんか。わりとみんな楽に。

小室:
そうですね。あの、それも話しにたまに出ることもあるんですけども、まあ、ミュージシャンの顔としてここにいるから、まあ、それなりに音楽の話しを普通にしてもいいや、という人もいらっしゃいますし。それからまあ、なんていうんですかね?まあでも、大体そうですかね。一応、音楽の話しから入り込んで、いくとこまでいけたらいっちゃおう、っていう人もいますかね。それはね、僕、これだけ何十人も見てるんで、「あ、ここでやめといた方が賢い」というふうにとる人もいるし。

甲斐:
僕、最初アレなんですよ、さっきいったみたいにちょっと披露宴で会った時に、僕、娘から頼まれてて、サインをね。

小室:
書きましたっけ?

甲斐:
そうそう、書いたんだよ。なんかね、みんなバァーッて帰ったんだけど、なんとなくちょっと二人だけ残っちゃったんだよね。

小室:
ええ、そうですよね。僕もあの、なんとなくね、ちょっとだけお話ししたいなって思ってたんですよ。

甲斐:
で、俺はなんかさ「ええ!やっぱり歌うことになっちゃった」的なところになっちゃって、最後にね、「じゃあ」っていって、なんかそこらへんに置いてあった生ギター持って歌い始めたら、左利きだから、右用のギターだったから、ボリュームを左手の肘がちょっと触って、ストロークしてると。で、なんかボリュームが下がっていったりして。

小室:
あ、思い出しました。なんか覚えてます。

甲斐:
左利きの悲しさっていうを、僕、あの時少し感じたんですけど。

小室:
そうですか。いや、僕もね、PAの方にいって「ギター上げてよ」って言いにいきたかったぐらいですよ、その時。そういえば思い出した。「甲斐さん、ほとんどア・カペラになってるよ」みたいな感じで。ずっとそう思ってたんですけど。

甲斐:
やっぱりそういう時アレですね、左利きなんていうのは、自分用のギター持ってこなくちゃいけないんでしょうけど。

小室:
そういうことで下がっちゃったんですね。僕ね、PAの人がね、マイクでとってるから、ラインの方をボリュームを上げなかったんじゃないかと思ってたんですよ。それで歌だけだったのかと思ってたんですけど。

甲斐:
そういうふうに考えるよね、俺たちはね。因果なもんだよね、披露宴でも。

小室:
披露宴でもそうやって思いますけど。でも、それでも、こういう機会だから声だけ聴こうと思ってたんですよ、あの時。ア・カペラで声だけ。「ああ、やっぱり生でこういう声なんだな」とか思って聴いてたんですけど。

甲斐:
「こんな声だ」って?

小室:
一人でそうやって聴いてて。もっと言っちゃうと「別にレコーディングでEQかけてないんだな」とかね。そこまで考えましたから。

甲斐:
なるほどね。

小室:
「けっこう生で録ってんだな」とかね。

甲斐:
それ、いいなぁ。

小室:
すごいエンジニアリング的なことを、あの時に思いながら聴いてましたね、そういえばね。で、なんとなく、まあそれもあったんですよ。それもあって、ちょっとだけでも立ち話でもいいから、ちょっとお話ししたいなとは思ってたんですけど、あの時は。

甲斐:
ええ、ええ。なんとなく、ツカツカとお互いに歩み寄るような雰囲気で。

小室:
ええ、そうなんですよ。で、cの時に、僕これね、いつもお話しして、何組の方もなんか時間があったりね、なんか僕が、できたらなんかやれたらやってみたいなって思う人、たくさんいるんですよ。それで、あの時に「MUSICCLAMP」じゃなかったんですけど、甲斐さんの場合もやっぱり、すごく声の魅力が僕の中ではあって。いつもよく聞かれるんですよ、「どういう基準で声を、歌う人を選ぶんですか?」みたいな話しが、よく質問としてあるんですけど。そういう意味でも甲斐さんの声って魅力的なんで、そういうところで興味があったんですよ。それでやっぱり「なにかやれたらやってみたいな」っていう声の持ち主の一人だと思ってるんですね。それもあって、なんかあれからずっとスタッフとかにも「甲斐さん」って思ってたんですよ。

甲斐:
この番組の菊地がね、酔っ払って口走ってた。

小室:
ああ、そうですか。

甲斐:
いつだっけかな?

小室:
よく今日、菊地でますね、名前ね。

甲斐:
某プロデューサーってもね、嫌だもんね、なんか。はっきりいった方がいいですよ。菊地っていう、水泳体育教師の、すごく面白い漫画があるんですけど、それとは関係ないんですけど。彼が二〜三か月前に、なんかいってたな、そういえば。それはなんか、酔っ払いの戯言なんだと私は受け止めてたんですけど。

小室:
そうですか。いや、それはね、言っちゃうとやっぱり、すぐ周りのレコード会社とかプロダクションの人が、「そんなことは、アリなんですか?」みたいな話しになっていっちゃうんで、なかなかこう、言えないんですけれども。甲斐さんには、今日はちょっと、お話ししようと思ってたんですけどね。あの、なんか、できるんじゃないかな、ってずっと思ってるんですよ、僕、それだけは。

甲斐:
じゃあ、アレだね、頭文字二人ともKだね。

小室:
ふふっ、そうですね。

甲斐:
K2 。K2 プロジェクト。

小室:
なんかね、僕が例えば、横にいてどうのこうのっていうのはわかんないんですけど、そういうのじゃないのかもしれないんですけど、サウンドかもわんらないですけど、なんか声を活かすサウンドアプローチはね、僕、ちょっとどっかに自信持ってるんですよ。だから、もしも甲斐さんの方で余裕があるか、なんか俺の音とかに「俺の声乗っけたら面白いかな」って思ったら、言ってくださいよ、それは。

甲斐:
歌詞書いてくれないかな?

小室:
それは…。歌詞はでも、甲斐さんけっこうアレじゃないですか、ライフワークじゃないんですか?

甲斐:
いやいや、だけどね、俺、みんなからそういうふうに、…こういう話しになるとビール欲しいな。

小室:
あります、大丈夫です。

甲斐:
俺ね、あの、そういうふうに僕、受け止められているんですけど、すごく時間かかるんだよね。でね、あの、なんかでも、意外と時間かかるヤツの方がねすごく受け取り手からすると、すごく楽に。どうもやっぱり練れてるせいがあって、楽に多分、感じると思うんだよね。もちろんその、そこにポイントがあるっていうか、そこにすごく肝心要のものを注ぎ込んでるから、余計に時間もかかるんだろうけど、けっこうかかるんですよ、俺。だからあの、なんていうのかな?あの、さっきの浜ちゃんのね、HJunglewithtのその3番の歌詞があるじゃない。なんだっけ?「流れる景色を毎日必ず見てる」ってあるじゃない。俺、アレね、本当にここ5年ぐらいで、あんなにジーンときたのないもんね。

小室:
そうですか。ありがとうございます。

甲斐:
要するにその「ウチに帰ったらあとは必ず寝るだけだから」ってあるじゃない。アレはそのテメエと近いからということじゃなくてね、この業界にいるからっていうんじゃなくて、その曲が始まって、一番、二番があって、間奏がはさまって、あそこで出てくるっていうところとか。どういうサウンドで、どういうグルーヴであの歌詞がハマってるのかっていうことなんだけど。そういうことでしか、もう感じられなくなってるじゃない、僕らって。

小室:
そうですね。

甲斐:
すんなりポンッて聴いて気持ちいいっていうのもあるけども、「いやぁ、絶妙なタイミングだよな」っていう感じってあるじゃん。だからその、今日もそのぜんぜん違う人と僕、話ししてたんだど、スポーツってお好きですか?

小室:
まあ、並ですね、べつに特別好きっていうわけじゃないですけど。

甲斐:
あのね、ロッテオリオンズってあるでしょ。あそこの球団が去年、最下位から2位になって、すごい客が入ったのね。で、外人の監督だったわけ。

小室:
バレンタインさんですね。

甲斐:
そうそう、そう。彼がとんじゃったじゃないですか。で、それをまあ画策したのかはわかんないけども、一応、間に立ってるのが広岡っていうゼネラルマネージャーで。で、どっちかって言うとほら、ちょっと僕もずっとプロデュースやってきてるんで、ちょっとプロデュースマインドのある人を、ついつい見たくなっちゃうでしょ。やっぱりあの、あれだけね、市民というかファンを無視してやるスポーツっていうのはすごいなぁって、ちょっとこのところ思ってて、昼間にその話しをしてたわけ。彼はあの、西武の監督の時に、選手に「君達は肉を食べてはいけないんだ。玄米と野菜だけでダメなんだ」って言って、自分は肉を食べすぎて痛風になった人なんですよ。ね?そういう全科があるにも係わらず、ちょっと話し長くなりますけど、セ・リーグとパ・リーグの東西対抗っていうのが、つい何日か前にあったの。そしたらね、セ・リーグが8千人で、パ・リーグが3万人入ったんですよ。そうすると、それはもう、偏にイチロー人気なわけね。ということはやっぱりね、もう今はいい試合、いいゲーム、いいファイトをやらないと、もうスポーツだろうと音楽だろうと絶対みんないいファイトしか見たくないんだよね。格闘技ももう、映画も、音楽も。だから、すごくあなたなんかは時の人だからさ、ニーズっていうことにすごく敏感だろうし、その買い手の声っていうものに対して敏感だと思うのね。だから、そういうのじゃないと、ぜんぜんもうダメな時代にきてるじゃない。だから、少なくともそのネットワークっていうことに関して、ものすごく敏感になってないとマズいというね。それがね、まだそういうスポーツがね、しかもあのプロ野球がって、そういう感じで今日ずっとそういう話ししてて。そういえば今日、そのニーズに柔軟な小室君の番組に出るんだなと、その時そういう話しをしながら思ったんですけどね。

小室:
なるほど。プロデューサーっていうのは、お金を預かっている人ですよね。

甲斐:
そう。バジェットちゃんと預かって、あとは要するにどれだけエンターティメントになるかというね。

小室:
そうですね。勝てばいいっていうだけじゃダメですからね。

甲斐:
ダメ。ダメダメ。僕ジャイアンツがわりと好きなんですけど、ジャイアンツみたいな野球はもうダメだっていうことなんだよね。どんな組み合わせだろうが、いいファイトしないと。だからあの、美女と野獣ぐらいコントラスト強い方がね、面白いですよね。

小室:
なるほどね。野球もそうなんですね、結局ね。今なんて、どっちかって言うと、野球はだから、野茂やイチローということで、それでとりあえず人気は一般的にアレですけど、もうJリーグの方が心配ですからね。

甲斐:
Jリーグ心配ですね。本当に。

小室:
僕はあんまりサッカーとかわからなかったんで、半年ぐらい見てて、やっと「ああ、こうやって見れば面白いのか」ってわかったところだったんで、けっこう今はもうね。

甲斐:
あのスポーツってね、すごい面白くて。絶対に家族単位で動くんだよね。

小室:
ああ、そうなんですか。

甲斐:
あの、日本のスポーツって、家族ってあんまり出てこないじゃないですか。なんかあの、契約更改の時に奥さんがすごい強くて、奥さんが乗り込んできたとか、そういうのがプロ野球であるぐらいで。基本的にはほとんど家族は出てこないでしょ。サッカーっていうのは絶対に家族単位で動くわけ。で、あれはつまり、やっぱりワールドワイドなんだね、すごく。家族単位で動くっていうこと自体がもう。アレいいですよね。ああいうスポーツがどんどん浸透しないと、なんか仲間とか家族とかっていうふうに、単位が動いていかないとなんかね。べつに一匹狼もカッコいいんだけど。

小室:
そうですね。あの、みんな、ジーコ選手とかね、子供いつも出てますもんね。まああの、だからエンターティメントっていう意味で見たら、そういうスポーツとかも、そういう目では見てますけどね。だからまあ、音楽も自分の、これは本当正直なんですけど、自分の音楽もやっぱり確実にずっとやりっぱなしだと飽きるわけじゃないですか。

甲斐:
飽きる飽きる。

小室:
だから、バランスがないとダメだから。

甲斐:
そうですね。

小室:
それで一応、僕はまだ今、こうやってやってられるのは、そのバランスがわかるからだとは思ってるんですよ。だから自分でやってるのとこっち側ですね、こっち側がどういう人が頑張ってくれれば自分も生き残れるかって思ってるんですよ。それで、こっちが見えないとっていう感じなんで。だから、こっちの人たちで例えばすごくロックテイストが強いとか。

甲斐:
だからあの、小室君が僕をプロデュースするとするじゃないですか。そうしたらあの、これはぜんぜん厭味な言い方じゃなくてね、カタログとしてはものすごく重厚になっていくよね。面白いよね。

小室:
そう思います、すごくね。

甲斐:
で、なんか俺ね、見ててすごくね、最初ね、『寒い夜だから』が好きだったわけよ。で、俺「これ、絶対好きだろうな」と思ったの。書いた作者は。この曲、絶対に好きなんだろうなって思ってたら、翌年もまたなんかプッシュしたじゃない。

小室:
はい、はい。

甲斐:
シングルに。

小室:
ええ。

甲斐:
「ああ、やっぱりそうだよな」って思ったのね。アレね、作者がね、書いたヤツはすごく好きなタイプだと思うんだ。キャッチーだからとかね、そういうことじゃ…でもあるんだけど、それじゃなく、一つのなんか流々と流れる脈絡があるでしょ、アレ。一曲の中に。例えばパーツ、パーツでつないでいったっていう感じ?

小室:
じゃないですね。

甲斐:
じゃないよね。すごいダサい言い方だけど、なんか、青春賛歌してるじゃない、じつは。だけどアレをああいうリズムでやって乗っけるから、すごく新しいグルーヴって感じがするけど、僕、すごくいいなと思ったんです。でね、あの時にね、要するにその、みんな君の顔を見ててそう思ってはないんだけど、絶対、獣の勘がある、すごい獣の勘が強いタイプなんだろうなと思ったの。そんなふうに言われます?

小室:
いや、初めてですね。

甲斐:
僕、絶対ね、獣の勘がものすごい強いタイプなんだと思うんだ。だから、みんなすごく理性的で冷静だと思ってるんだけど、本当はすごくそれを着き動かしているものっていうのは、衝動とか獣の勘的なとこで、そういう男って僕、わりと信用するんですよ、なんか。絵に描いたようにすごく図面を書くような人っているじゃないですか。で、僕は昔、7〜8年前ぐらいかな?よく教授とね、坂本としょっちゅう遊んでて、夜。

小室:
ああ、そうなんですか。

甲斐:
で、彼も全くじつはそういうタイプなんですよね。すごく使用動的で獣の勘があるヤツで。僕はやっぱりその、時の人っていうかその、あんまりそういう言い方はアレなんだけども、なにかをリードしていく人って、絶対じつはその、そういう衝動的なものがないと「食えないヤツだな、コイツ」って感じがするじゃない。「疲れるな」って思うじゃない。「今は売れててすごいけど疲れるよな、コイツ」っていう感じするでしょ。それは何かというと、あまりに抑制されてて、あまりに図面ばっかり書きすぎてたりっていうかな。だからなんか、どっかに迂闊な部分と、どっかで少し抜けてるんだけど、その抜けているところも全部当たっていくっていう方が面白いわけで。ね?

小室:
はいはい、はい。

甲斐:
だから、僕はすごく直感的にそういう感じがしてて。

小室:
そうですか?

甲斐:
僕みたいな声が揃うと、ちょっと面白いですよね。カタログの中に。重厚っていうと今みんな嫌がるからやめよう、こういう話しは。

小室:
あの、なんていうのかな?ちなみにとりあえずちょっと、今の『寒い夜だから』の話しからいくと、12月の11日にtrfのね、ウィンターアルバム出したんですけど、それにレゲエバージョンで『寒い夜だから』を入れてるんですよ。もう3回目でやってるんですけど。それはもうバッチリで大正解なんですけども。あの、それじつはそれでよくて、甲斐さんの声でっていうか、甲斐よしひろさんていうことではなくて、「あ、なに?今度はそこからきたの?」っていう、素晴らしく抜けた道のここのポジションで。それで「なるほどね」っていうふうに思えるような、そういう宝捜しじゃないんですけど、そういうようなところはあるのかな?ってずっと思ってたんですよ。べつに僕、いつもこうやってタレント名鑑見てるわけじゃないですから。

甲斐:
そういうヤツいるよね。それと、なんか図面書いちゃって、この音がないからここはバァーッていくっていう、この計算はいいんだけど、あの、なんていうの?ほら、なんだっけ?系譜のようにさ、系譜を辿っていくタイプっているじゃない。僕、アレ、ダメなんだよね。だから、僕が『ヒーロー』書いてた時に、こんな昔の話ししててもしょうがないけど、その時に一番疾走感があるヤツだと言われたかったわけ。で、一番その時代でリードしてるヤツって、じつは速いじゃない。いろんな意味で。疾走感がある。で、また、ちょうどその時になんかこう、まだフォークとロックとニューミュージシャンみたいのが、もうすごく混在してて。ロックってみんな言ってるんだけど、それは『ザ・ベストテン』ていう番組で乗っかってちょうどいいロックで。

小室:
『ヒーロー』見ましたよ、僕、ちゃんと。

甲斐:
それで、あそこにちょうどハマるロックはマズいんじゃないか?ってそういうのがあって。で、あそこから、あそこにも乗っかれるんだけど、あそこを出た時にすごくはみ出してる、だからその、石原裕次郎とか渡哲哉みたいな映画俳優がテレビに出た時に、すごいはみ出してるっていうのがあるじゃない。ああいうふうにはみ出さないと、絶対にロックじゃないんだけどなっていうのはすごくあったのね、僕。戦略的には。だから、そこをずっと狙っていったところがすごくあるんですけど。そういうなんかハマらないっていうの?それは十年経つと、もちろんそれは淘汰されていくんだけども、時代の中で。それはバッチリOKじゃない。

小室:
あの、多分、同じことだと思うんですけど、コードでね、甲斐さんの曲でC→Am→F→Gっていうコードに『ヒーロー』とか乗っかってたとしても、ハマってないですよね。メロディラインとあと、声のザラッとしたものがC→Am→F→Gつていう、もう黄金のポップスコードにハマらないものを持っているんで。

甲斐:
でもそれは、あなたもありますね。

小室:
あ、そうですか?

甲斐:
あの浜ちゃんに作ったヤツって、あれ基本的に拓郎ディランパターンでしょ。コード進行。

小室:
はい、そうですね、まあ。

甲斐:
AmからCにいくような雰囲気ですよね。C→Am→F、Cにいくパターンですよね、アレね。アレもいいと思ったんだよね。

小室:
だから、そこらへんはあの、きっと僕も好きだと思うんで、そこらへんずっと感じてたと思うんですけど。あの、ハマらないですよね。だから、もう本当ローコードで普通にコード弾いて、何かちょっとメロディを口ずさんでも、甲斐さんの声で、あとラインでいっちゃうとズレて聴こえるっていうか。

甲斐:
そのズレとブレって気持ちいいよね。

小室:
ええ、そうです。それがとんでもない方にいく人もいますから、間違いなく。それは時代時代でね、ハマってったと思いますけどね。ただ、なんていうのかな?そこらへんの僕その、ずらし方っていうのが、まだ今、多分、わかってるんですよ。今の時代で。だからもう、今「また同じ?」とは言われないように、なんとかしてるんですけども。

甲斐:
去年あの、初めてあるプロデューサーと組んでね、全部任せたんですよ。で、俺、初めてなんですよ。ずつと自分でやってきたから。で、あの、曲だけ書いて、素材を渡して、で、やってったっていう。あの乗っかり感もね、なかなか具合いいんだなって初めて思って。まあそれは、セオイチゾウというね。

小室:
ああ、瀬尾さんですか。

甲斐:
僕、瀬尾ちゃんていうはあの、すごい古いんで。もう本当に20年ぐらいの付き合いがあるんですけどね。あの乗っかり具合もなかなか。それでさっきあの、ロッドの話しを僕がちょっとしたでしょ。歌っていうか、なんていうか、歌い屋っていうのか、そういう部分でのね、乗っかり具合は確かにすごく重要なんだなと。まあその結局、声ということなんだけど。

小室:
なるほどね。いや、本当にね、今日はそれでお話を絶対しようと思ってたんですよ。その部分は。

甲斐:
いいな、ここ。この番組。

小室:
これは初めてですよね。

甲斐:
もう、すごい私的でいいな。「まあ、私的」っていうぐらいのもんで…。すいません、どうも。睨むんだもん、あのカメラマン。いいじゃん、それぐらい。

小室:
寺尾に似てるんですよね。似てないですか?あ、ゴメンなさい、間違えました。舞の海。寺尾はもっとダンディでした。ゴメンなさい。こういう話しはですね、初めてです、僕は。大体もう、完璧に聞き手に回ってますから。

甲斐:
俺、一回なんか、槇原君かなんか出た時、偶然なんかバーかなんかで見たんだ。そう、こんなちっちゃなテレビで。あれ面白かったね。

小室:
ああ、そうですか。

甲斐:
ずっと二人が噛み合ってないんだもんね。

小室:
ああ、ああ。

甲斐:
僕ね、ああいうズレって好きなんですよ。どっちもすごくそれを一応自覚してるんだけど、でも無理になんていうか、合わせにいかないっていうか。ああいうのいいですよね。いや、僕ね、ああいう番組ってね、絶対やった方がいいってずっと思ってたの、昔から。

小室:
槇原君はね、槇原君でやっぱり話したいことがすごくたくさんあったし、僕にも率直に聞きたいこともたくさんあったんですよ。素朴にね、あったし。僕も聞きたいことあって、それでなんか、聞きたいこと状態で、両方とも。なんかよくわかんなくて。

甲斐:
ああ、でもアレは面白かったよ。アレってほら、すごくラジオっぽいじゃない。ああいうことって。

小室:
毎回ね、ありますよいろいろ、ドラマが。これはこれで。

甲斐:
あるよね。

小室:
ええ。

甲斐:
「あるよね」って言っちゃいけないんだ。いや、僕も一応あの、FMよく昔やってましたから、6〜7年。

小室:
そうですか。かなり重い番組だったと思いますね、トークをそのお声でずっとそれてたら。

甲斐:
いや、僕あの、基本的に自分の喋りになると、ものすごく、いきなり冗談にいくんですよ。

小室:
あ、そうですか。でも、本当に低音から高音までありますね。

甲斐:
僕ですか?

小室:
ええ。

甲斐:
高音がある方が好きでしょ?

小室:
もちろん好きなんですけどね。

甲斐:
好きですよね。高音がないと面白くないよね。

小室:
ただあの、サンプリングしても下がちゃんとある人ですよね。声質的にね。すごくそう思いますね。

甲斐:
参ったな、なんか。僕、結婚式って嫌いなんですけど、披露宴も出てみるもんですね。

小室:
まあ、そうですね。

甲斐:
EQしてない声は「あ、同じ声だ。EQしてないんだ」っていうのすごいよね。

小室:
あの、よく披露宴で出会った人って結婚しますからね。

甲斐:
あ、そう。本当?とんでもないね、それ。

小室:
そういう話し、聞いたことありますから。

甲斐:
花束を受け取った瞬間かなんかに、「次は私も!」って思ってっていう人はいるでしょうけどね。

小室:
まあ、それもありますから。二次会で盛り上がっちゃって、とかでね。

甲斐:
ああ、なるほどね。三次会にもいったりしてね。なんか、たまたま一緒に歌ってしまったとかね。

小室:
そうですよね。あると思いますよ、そのへんも。

甲斐:
嫌だね。

小室:
あの、ついでにちょっと、いろいろ伺っておこうかな。あの、ビジュアルとかってどうなんですか?今。ずっと甲斐さんのやってきたバンド編成からソロになったりもして、今のスタイルっていうのはさっきのスプリングスティーンとか、ロッドとか、ストーンズとかありましたけど、自分の中で一番シンプルな感じというか、それだとどんな感じなんですかね?

甲斐:
やっぱりアレですよね。あの、あんまり洒落系に見られてないんで、楽なんですよ、俺はわりと。

小室:
あの、ぜんぜん今じゃなくてある時期なんですけど、すごく水商売っていうのかな?夜にまだカラオケがなかった頃でも、そういった例えば、ママさんが大好きだとか、そういうのありませんでした?

甲斐:
ああ、あった、あった。

小室:
ありましたよね、きっと。

甲斐:
そう。もう、なんでそんなにわかるの?なんで知ってるの?

小室:
いや、もう本当、子供ながらに、きっとこれは着物のママさんとか好きなんじゃないのかな?と思ってたんですけどね。

甲斐:
変な話しなんだけど、例えば僕、テレビにずっと出てなかったじゃないですか。御存知のように。例えばその『ザ・ベストテン』に一回だけ出たぐらいなもんで、基本的にはもうほとんど出てなかったんでよ。で、そういう方が面白いゲームができるっていう時代があったんだね。で、僕、すごくゲーム好きなんで、そういうゲームの仕方をその時してたんですけど。そうすると、普段の日とか僕、このまま歩いてもぜんぜんわからないんですよ、その時代って。ところがコンサート終わって10時ぐらいに食事したりして、それから「ちょっと一杯」とかっていきますよね、バーに。そのバーに行くととたんにつかまるんですよ。で、みんな知ってるのね。それはなんでかというと、その人たちはテレビっていうのを当然まあ見ないし、ジャケットを曲を聴きながら何十回とか何百回とか反復してるんだよね。だから、そのジャケットをずっと見ながら聞いているのか知らないけど、多分そういう雰囲気なんでしょうね。そういう人たちからはもう、一発でバレるんだよね。

小室:
ああ、そうですかね。僕はなんか、わかんないんですけど、あの出てくる女性像たいなのも自分にある程度当てはめてる人もいただろうし、とは思ったんですけどね。

甲斐:
それとなんか、なんとなく少しなんていうか、「太陽が燦々と」系じゃないですからね。

小室:
そうなんですかね?

甲斐:
どうなんでしょうね?

小室:
それはでも、わかりますよ、すごく。

甲斐:
なんか、声の質感といきかたのアプローチっていうのが、どうもちょっとキーっぽいっていうか、スイッチを押しそうなとこもあるんでしょうね。

小室:
それはあると思いますね。だから、べつにビジネスでどうのっていうんじゃないんですけど、とはいっても圧倒的に…。

甲斐:
菊地、うれしそうだね、なんか今のこの話し。

小室:
その、夜の時間帯にバッチリ合いそうですよね。

甲斐:
でもなんかあの、なんていうのかな?夜の時間系といってもホスト系じゃないんだよね。

小室:
ホスト系じゃないですよね。それは違いますね。

甲斐:
そこらへんがちょっと誤解なきように。

小室:
ホストじゃないですよね。違うと思いますから。やっぱり、片巣で飲んだくれてる系ですよね。どっちかって言うとね。で、着物のママさんがですね、着物じゃないんですよ。着物をもう着替えて、普通の私服に戻って、もう髪もおろして、みたいな感じで横にいる感じですよね。どうしてもそういう印象がありますね。

甲斐:
それはどこから芽生えたのかな?なんていう小学生だ、それ。

小室:
小学生じゃないですよ、もちろん。中学か高校ぐらいにはなってたと思いますけど。

甲斐:
俺、だって、今話し聞いてたら恥ずかしいもん、自分が。

小室:
でも、そういう感じしましたね、すごくね。

甲斐:
ギター弾いてたんですか?

小室:
ギターは弾いてたんですけど、ぜんぜんヘタで。最近やっと、なんでも勝手にやれるようになったから弾いてたりするんですけど。

甲斐:
でもなんか、弾きながら歌ってたっていう感じはするよね。

小室:
それはもちろんやりたかったですけどね。

甲斐:
そういうのがすごく大事だよね。いきなりシンセからいってる人っているじゃない。アレ、どっかでね、なんかが致命的だもんね。

小室:
やっぱりね、シンセで弾き語りできないですよ。ショワ〜ンとかいってて。

甲斐:
できないよね。でもほら、今はそういう系が多いじゃない。

小室:
そうですかね?

甲斐:
いや、多い、多い。

小室:
それはマズいですよね。

甲斐:
マズい、マズい。

小室:
もっと乾いた音がでないと。

甲斐:
そう。それとレアなね、レアな音がでないとマズいよね。

小室:
やっぱりキーボードだったらピアノで歌わないと。

甲斐:
あ、左利きなんですか?

小室:
いえ、左利きじゃないですよ。左もどっちも。御飯とか左で食べますよ。

甲斐:
なんかで見たんだけど、なんで見たのかな?写真かなんかで。なんでどっちも使うんですか?

小室:
なんかね、ある時期からどっちもやってたんですよ。左利きに憧れてた時期もあったんで、僕は。

甲斐:
俺は右利きに憧れてたんだよね、だから。

小室:
右利きって普通じゃないですか。

甲斐:
いや、だけどほら、自分が違うから。学校給食の名残で、スプーンだけは右なんですよ。だから箸も字も左なんだけど。

小室:
このあいだ教授見てて、左でこうやって書いてたから。

甲斐:
気持ち悪いんだ、坂本と飯食うと。一回ね、坂本と俺とその間にいる女の子とね、カウンターに三人だけ座ってたの。そしたら、ここにバーテンが一人いるじゃない。なんか料理が出てきた時に、一緒に三人で食べだしたのね。そしたら女の子も偶然左利きだったの。そしたらやっぱりね、ものすごい変な顔してたけどね。

小室:
左利きの感覚ってでも…。

甲斐:
やっぱりその、不特定多数だっていう思いがあるじゃない、頭の中に。そういう人間が三人も目の前にいて、一斉にっていうとやっぱりちょっと。

小室:
ああ、なるほどね。あの、女性で左利きの人っていうのはどうですか?じゃあ。

甲斐:
なんか、クセ強そうですよね。松ちゃんも左利きなんだよね、ダウンタウンの。

小室:
あ、そうですか。じゃあ、右利きの人に憧れてたっていう意味では、やっぱり右利きの人のがいいですか?普通の。

甲斐:
いや、そういうのはね。

小室:
関係ないですか。

甲斐:
まあ、どうでもいいですけど。ただ、なんかあの、左利きの女性の方って、なんかすごくアクが強い感じがなんとなくしますね、僕ね。

小室:
あんまり出会ったことがないんでわかんないですけどね。

甲斐:
ポール・マッカートニーってあの人も両刀なんですよね。彼っていうのは、どちらも弾けるんだよね。

小室:
あ、そういえば右で弾いてるのを見たことありますね。

甲斐:
それであの、僕もそうなんですけど、僕、右のギターをそのまま左で弾くんですよ。

小室:
あ、そうなんですか。え?持ち方は?

甲斐:
逆に持って。で、左利き用にチューニングすると俺、弾けないのね。で、ポールは左利き用のチューニングと、俺みたいにただ持ち替えただけで弾くのと、どっちもできるらしいのね。

小室:
へぇー。

甲斐:
嫌なヤツだよね。すごい嫌なヤツだなと思って。

小室:
じゃあ、Gって、こうやって押さえるんですか?

甲斐:
こうやるのかな?もっとすごいのは1フレットのB♭あるじゃない。こうだよ、こう。

小室:
ああ、そうですか。

甲斐:
僕、一年間かかったもん。それでね、僕、兄貴がいるんですけど、対面して二人で弾いてたの。兄貴はもう楽々とB♭を弾いてるから、「おんしいな?」と思って「なんでそんなに簡単に弾けるの?」ってずっと聞いてたのね、何回も。そうしたら、「おまえ、それ逆さまに弾いてる」って話しになって。俺、ぜんぜん自覚がなくて。自覚がないまま一年間弾いてたんですよ、逆に。で、その時はもうコードももうずいぶん覚えちゃってたし、まあ、楽しいじゃない、とにかく。弾けて歌えるっていうことはね。で、「まさかこのままプロになるわけないし、どうせいいさ」って思ってたらプロになったんですよ。だからすごく恥ずかしいんですけど。

小室:
なるほどね。じゃあ、ずっとそうなんですか、もう。

甲斐:
自分でだから、2フィンガーとアルペジオ、3フィンガーまで作りましたけどね。

小室:
あ、自分でね。

甲斐:
自分で。だから1弦と5弦をオクターヴする、親指と薬指で。っていうんで一応まあ、3フィンガーまで作りましたけどね。

小室:
じゃあ、よく聴くとわかるかもしれないですね、ギターを。レコードとかで。

甲斐:
うん。そうそう。だからカッティングが逆だからね。

小室:
そうですよね。

甲斐:
だから、高音の方が妙に鳴ってるという時は僕が弾いてたり。

小室:
なんかでも、そういうのは詞になりそうですよね。

甲斐:
詞になりそう?おかしいね。おかしいこと言うなぁ。そうですか?

小室:
すごいそう思いますけど。

甲斐:
なんかいいですよ、さっきの着物を着たママが着替えて髪をおろしてるっていうところまでいく感じが。

小室:
もう、ずっと浮かんでるんですよ、頭に。さっきから。

甲斐:
それ、メチャクチャ好きだね。最初いいなって思ってたけど、でもそのことは俺についていってるんだなって思った瞬間、俺、顔赤くなったもんね、さっき。

小室:
いろいろ浮かびますね。浮かばない人もいます、たくさん。だけど、甲斐さんの場合はかなり。

甲斐:
じゃあ、よろこんでいいんですね。

小室:
…かどうかはちょっと、わかんないですけど。だから、これでまあ、もうすぐ今年も終わっちゃいますからね。あの、来年もちろん、ずっと僕、当然、今いっぱいきちゃって埋まってるんですけど、なんとかですね、これはやりくりしてですね、一応なんか、お願いにいってみようかなと思ってるんですよ。今日は宣言してますけど。

甲斐:
じゃあ、K2 ということで。

小室:
ちょっと考えてみたいと思ってます。

甲斐:
わかりました。いや、もう、真面目に考えます。

小室:
というような感じでいいですかね?なにかありますか?

甲斐:
時事放談のような終わりになってしまいましたけど。

小室:
大丈夫です。こういう回はね、まだないんですよ、一回も。

甲斐:
髪をおろしたママの話しがが出てくるっていう回はないですよね。気に入ったな、それ。

小室:
ありがとうございました。

甲斐:
ありがとうございました。


FUJI (C) FujiTelevision Network,Inc. All rights reserved.