TKMC logo TopPage index

NON-EDIT TALK : 泉谷しげる*中居正広

中居:
どうもこんばんは、中居正広です。みなさんごきげんいかがですか。寒いですねぇ。ああ寒いですねぇ。風邪ひいてますか? いや、ひいてませんよ。さあ、それではですね、えぇ。  

泉谷:
なんだ!? おまえ、その挨拶は。誰でもできるような司会してんじゃねえよ!!
こんばんは、坂東英二です。

中居:
ちょっと、今ワンショットなんでちょっと黙っててもらえます? すんません、あとで紹介しますんで。はい、それではですね、あの今回のゲストなんですけども、あの、僕も毎回毎回ゲストの方が、えぇと、この収録をする前にですね、いろいろと資料をもらって、ある程度のその人のまあ、ことをですね、頭のなかにインプットするんですけども。えぇ、今回、始まって以来かな? 資料を一切見ないでこちらのほうの現場に来ちゃいました。御紹介しましょう。放っといても喋ってくれるんではないでしょうか? 泉谷しげるさんです。

泉谷:
おまえ、ナメてんだろう! 資料をおまえ。

中居:
ああ、すいません。

泉谷:
おまえ、そういう事だろう? 手ぇ抜いてるってことだろう!? 

中居:
そんな事ないですよ!!  

泉谷:
おまえなんだい。日頃じゃあ、どんな資料読むんだい? おまえよぉ。

中居:
えっ? あの、その人の歴史であったり…。

泉谷:
歴史ぃ!? で、どういうこと聞くんだよ? 

中居:
えっ、昔のその音楽のね、あの、キッカケだったり。

泉谷:
すっと、俺にあまり聞くことはないと? 

中居:
そんなことないっすよ。聞きたいことはありますよ。

泉谷:
なにいってんだよ!? 言ってみろよおまえ。なに聞きてえんだよ。

中居:
その雑巾(泉谷の帽子)の訳を…。

泉谷:
雑巾!? これはなあ、その要するになあ、汗っかきなわけよ。

中居:
泉谷さん、汗っかきなんですか?  

泉谷:
汗っかき。テカテカしてんだよ。見ろ! テカテカしてんだよ(帽子をぬぐ)。…そうか。リアクションがないなぁ、リアクションが全然。普通ウケるんだけどなあ。

中居:
いや、ここはべつに笑いをとらなくてもいいんですよ、うん。普通に喋っていただければ。

泉谷:
そりゃそうですね

中居:
そうですね。今、僕、泉谷さんそんなに僕なんかと仕事してるわけではないんですよね。

泉谷:
うん、してないな。

中居:
でもなんかこう、親しみを感じますね。

泉谷:
だから野郎はな、こうやって親しみを感じてくれるけど、女だと怖がるな、うん。

中居:
そりゃ、それ、僕もわかるような気が…。だって僕も最初やっぱり喋るまでは、やっぱりなんか、うーん? 殺気っていうのかなあ? 

泉谷:
「なんか嫌だな」とか思うだろ。

中居:
威圧感みたいなのがあるんですよ。

泉谷:
恐らくな、こりゃあな、てめえらの先輩の時代があってさ、自分らがデビューした頃、大人っちゅうのがみんな恐かったんだよ。その、みんなその、無駄口たたくんだけど学生も恐かったわけ。学生運動もやった時代もあってさ、俺ら達ペーペーだったんだけど、どいつもこいつもなんかヘタなこといったらみんな殴られちゃうみたいな。

中居:
ふーん。

泉谷:
そんで、ヘタなこと、つまり論理的、理論的っていうのか? なんか意味あることを言わねぇと、「なにいってんだ! 貴様!!」みたいな。何つったらいいんだろうなあ? 笑え…笑う…? つまりリアクションで笑いでもしようものなら、「てめえナメてんのか!? この野郎!!」みたいな。

中居:
常に緊迫感みたいなのがあって? 

泉谷:
そうそう、そうそう。うん、そう。その、なんつうの? なんか互いに威圧させるのが癖みたいになっちゃってて。上下関係は激しいし。だから何つったらいいか、「そいつらをいつかぶん殴ってやろう」とかね「いつか叩きのめしてやろう」っていう気ではいらぁなぁ。

中居:
うんうん。

泉谷:
芸能界でもその、芸能界ってのは好きではないんだけど、その、ヤー公みたいなのばっかやん、なんかさ。田辺とかさ、なんかその、危ねぇじゃん、なんかさ。

中居:
そ、それ…。

泉谷:
なんかさ。だから常にこうして(ファイティングポーズをとって)ないと。

中居:
うん。それはもう、泉谷さんがちっちゃい頃っていうか、まあ若い頃からそういう状況で育ってきたから、それはやっぱ抜けきれないっていうか。

泉谷:
抜けきれないんだろうな。

中居:
うん。きっとそうですよね。

泉谷:
どっかこう、だからその、ほら、今のガキっつうか、あの、なに? 援助交際とかやってるガキなんかも、あらぁ、完全に大人をナメてると思うんだよな。「男は金になる」とかさ、「体売っときゃなんとかなる」とか、そう思ってるわけじゃない。そんで、そういうヤバい奴とか恐い奴にはそういうことは絶対ひっかけない。

中居:
うん。

泉谷:
その、「犯されちゃうんじゃねえか?」とかさ、なんか「連れ去られちゃうんじゃねえか?」とか。だから、どちらかいえば連れ去る側にまわろうと。

中居:
なんか、いわゆる恐い人じゃないですか。

泉谷:
だから、恐い人を演じてんのが楽しいっつうのがあんだよ、どっかで。で、人が「恐い」つって逃げてってくれたりなんかして、逃げてくれると、「やったぞ! この野郎!!」みたいな。

中居:
それが泉谷さんにとって美味しいんだ。

泉谷:
そうそう、そう。けっこう。そんで、ニヤニヤしたりしてんだ。「いいぞー!」みたいな。

中居:
へえー。いつでも戦闘体制みたいなのが? 

泉谷:
そういうわけでもねえんだけど、なんかこの恐い親父っつうのが好きなんだろうな。あの、だからその、親父の世代だろうが何だろうが、どいつもこいつも近所でもみんな恐かったじゃない、うん。

中居:
頑固親父とかそんなんですね。

泉谷:
そう、頑固。一軒は必ず頑固親父がいた、みたいな。今なんか「親父? どこいんだ?」みたいな状態で気の毒なんだけど。だいたい、夜の七時とか八時くらいになるとテーブルがひっくり返るわな、ガーンと。

中居:
はあ……。

泉谷:
すっと「ん? あの家やってるなぁ、おい。うちも負けずにやろうぞ!」みたいな、その。

中居:
でもそういう、僕ね、反発心ていうのかな? 例えば、自分を持ってないとできない、人に流されちゃ絶対できないことですよね。

泉谷:
そうそうそうそう。いや恐いですよだから。だから先輩、フォークだろうがロックだろうが、その、普通、ロックとか自由な音楽とかぬかしてはいるけど、すごい徒弟制度がうるさくて、誰がトリ取るとか決めてモメてんだよ。喧嘩してんだよな。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
俺たちなんかトリなんか取りたくねえから、終わったらさっさと帰りてぇじゃねぇ。だから、「裕也さん、どうぞ」とかね。まあ、「やって下さい」みたいな。

中居:
へぇー。

泉谷:
「最後までいって下さい、やって下さい」みたいな。

中居:
でも、それはでも、自分のその、ね、いわゆる突っ張った気持ちじゃないですけども、そういう気持ちをね、突き通すっていうのは、ある意味では周りを敵に回すようなことってのももちろんそういう。

泉谷:
うん、まあ、敵に回すだろうねえ。回すんだろう。だけどその、あの、気に入ってる奴は、まあ、ある意味で逆にいえば大親友も手に入るわな。

中居:
うん。

泉谷:
そうそう、そうそう。だから、全員に好かれようなんて気はさらさらねえし、第一、気持ち悪いわな。

中居:
うんうん。

泉谷:
そうそう、それは。

中居:
あ、それはあるでしょうね。

泉谷:
そんなん、嫌だよ。女だっていろいろ好みがあるわけで、「この女には好かれたくねえな」ってのはいるだろうよ、そりゃ。

中居:
ああ、なるほどね。

泉谷:
ああ。馬鹿馬鹿しいよ。ほんで、「こんな大人とは付き合いたくねぇなぁ」とか、俺、思うもんよ。で、それは同じミュージシャンでも自分が正直に「こいつ嫌いだな」とか思ってんのに、なんかテレビ上しょうがなく仲良くしなきゃなんないことなんか、たまにあるじゃん。

中居:
ええ。そうせざるを得ない時ありますよね。

泉谷:
あるだろ? 

中居:
ええ。

泉谷:
すっと、やっぱ終わったとき「てめえこの野郎!!」とか後ろでよくやってたりとかな。「これ本番は我慢したけどな! この野郎!!」みたいな。

中居:
すんごい嫌だ、そういうの。

泉谷:
逆にその、その逆もあったよ。取り囲まれたりとかな。テレビ局の後ろで。

中居:
「おまえなんなんだよ!? 今のはよう!」みたいな?

泉谷:
ようみたいな。「おまえ何突っ張ってんだよ!?」みたいなさ。

中居:
でも変な話、今の、僕らがやってるその、まあ音楽に限らずその活動っていうのは、そういうなんか突っ張った同士の肩のぶつかり合いみたいなっちゅうのは、ないですよね。

泉谷:
ないよね。だから、そういう意味ではやりやすいっちゃあ、やりやすいんだけど、ある意味では。その、遅くまで飲んだりとか、食ったりとか、そういう事しなくなっちゃったな。すごい喧嘩してんだけど、飲むと非常に意気投合しちゃったりなんかするようなことはよくあってさ。お互いに嫌いなんだけど。だけど、ついつい飲んじゃって「馬鹿野郎! てめぇの音楽はよぅ!!」とこう、ガンガンガンガンとこういいながら、「なんか結構いい奴じゃん、こいつは」みたいな。そういう仲良くのなり方を俺たちは常にしてて、好きな相手でもそうなわけよ。

中居:
どういう人ですか?

泉谷:
吉田拓郎とかそういうのも好きだったんだけど、「てめえアイドルじゃねえか! この野郎!!」みたいな。「スカすんじゃねえぞ!!」みたいな。その、なんつうの? ワザと突っ張るわけよ。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
ほんで、嫌なこと言うわけよ。

中居:
刺激を与えるんですね。

泉谷:
そうそうそう。だから、向こうは向こうで、蔑んでものを見ているみたいな。その、腹ん中では好きなんだけど。

中居:
うん、そうですね。僕なんかね、だからそういうのは、もしかしてなんつうの? 闘争心というのかな? いわゆる刺激し合ったり、張り合いみたいなのはもしかしてないかも知れないですね。 

泉谷:
ああ、そう。

中居:
「こいつを押しのけてまで俺がいってやろう」っていう。

泉谷:
うーん? いや、例えば、だからね、それはおめぇ、しんどいことでさ。いや、そうしないと負けちゃうわけよ。  

中居:
うんうん、うん。

泉谷:
だから本当に、そのうえ力があったから、みんなが。その、それぞれが。

中居:
ええ、ええ。ええ、ええ。

泉谷:
だからその、つまり、よく一緒にこうほら、あの、イベントに出るはめになるじゃない。すっと、前の人間がもうメチャクチャうけちゃったりなんかすると、あと通して俺が次に出る時なんかだいたい俺の悪口最初に言われちゃうわけ、「ガンガンガンガン」て。「あいつはロクなもんじゃねえ」だの「歌はヘタ」だの「最低な奴だ」みたいな。

中居:
うんうん、へへっ。

泉谷:
で、そのあと出ていくから笑い者になるわけよ。

中居:
「ああっ、こいつだこいつだ」みたいな? 

泉谷:
「ああっ、こいつだ」みたいなさあ。で、それをぶちのめしていくのにはねぇ、やはり相当な覚悟いる。

中居:
うん。

泉谷:
だから、いつもその、イベントでその、順番決めるときに「いちばん最初に出たほうが勝ち」とか、「トリとる奴は馬鹿」だとかいって。

中居:
へぇー。

泉谷:
それで、「おまえは暴れるからいちばん最後」っていつも後回しされちゃうわけよ。すっと、この世界ではその、いちばん最後ってのはこう、キメでなんか大物だっていう意識はあるんだろうけど「おまえはうるさいからいちばん最後」というその。「何なんだこれは?」みたいな。

中居:
でも、そういうのってすごい好き。あの、この前もあの、去年でしたっけね? 神戸かなんかでチャリティライヴ、いろんなアーティストの方が集まってやったじゃないですか。僕、ああいうの本当、好き。

泉谷:
でしょう?

中居:
なんか、アドリブ的なところっていうのかな? なんかしらやっぱり音楽の世界でブラウン管を通せばある意味では、人はよくてもライヴは悪かったりするわけですよね。

泉谷:
そうそう、そうそう。

中居:
好きでもライヴ悪かったり、うん。

泉谷:
そうそう、そうそう。

中居:
でもそう、いわゆるそのライバル達が、いつも敵対心を持ってる人たちが、まあ持ってないかも知れませんけど。

泉谷:
昔はあったわな。今はわりとそうでもなくなったけど。

中居:
んで、そういうのはまあ、少なくなってきましたけどね。そういう人達がみんなで集まって、一つの音楽じゃないですけども、同じ目的でひとつの目的を。

泉谷:
そうだなあ。

中居:
そういう姿勢が、みんなが同じ姿勢を。

泉谷:
だけどねえ、やっぱりそれぞれの親分やってるような奴等じゃない。なんだかんだいっても、やっぱりいくら目的がその震災の救済だと言ってもよぉ、やっぱわがままだぜ、みんな。本当に。

中居:
え? どういう事ですか? 

泉谷:
やっぱり「あの歌うたうんだったら、俺はやんねえ」とか言い出すわさぁ、「あいつがギター弾くんだったら、俺はやんねえぞ!」とかさ。「こいつが入ってくるわけ? じゃあ、俺やんねえよ」とか。ま、必ず始まっちゃうからね、それは。だから面白いんだけどさ。ほんで、「俺は天然水じゃないと飲まないから。いい水用意しといてくんないと困るよ」とか言うわけだよ。「なんだ!? その水道の水でも飲ましとけ。そんなもん、わかりゃしねえんだから」とかさ。だから、多少、だから全員が仲良くなるなんてことはあり得ないわけですよ。それはもう、わかってるわけよ。

中居:
それはやっぱ不可能なことなんですか? 

泉谷:
不可能だよ、そんなもん。そんな気もないよ、こっちも。だから、わざと楽屋も全部わけないの。もう、一個。全部、一個。

中居:
うわぁ、嫌な空気だな。

泉谷:
いやいや、いいんですよ、それで。

中居:
喋らざるを。

泉谷:
喋らざるを得ないから。

中居:
それ楽しんでんの? 

泉谷:
それ、すごい楽しいわけ。うん、楽しんでんだ。

中居:
へぇー。それ楽しんでんだ。

泉谷:
だからさ、すごい楽しんでて。だからその、メンバー選ぶんでも本当に、小田和正ってのが特にいろんな人を嫌う人で。俺なんか「笑いを取りたい」なんかいってさあ、王様なんかを出すじゃん。「あんなクズ入れんな!」とか言ったりとか始まっちゃってさあ。「うわぁ、まいったなぁ」とかさ。決まってても断らざるを得ないとかさ、その苦悩が大変、面白いっていうか。

中居:
だからその、そういうチャリティに集まる人、泉谷さんが集めてるんでしょうけども、そういう人達って個性的な人達が多いじゃないですか。

泉谷:
うん。だから、だからいいんじゃねえかなと思うんだよな。

中居:
昔は当たり前の事だったんですよね? 

泉谷:
うん。そうそう。好きか嫌いか言ってくれた方がいいわけで。なんかこう、我慢してやられるよりは。まあ、いくら救済と称したってな、やっぱ自分の好みってあるじゃない。「あんたとはやるけど、あんたとはやらん」と。こういうのは当たり前のことで、だから、すごいそれは、だから、あれが小田さんを取りたいのかそいつを取りたいのかって自分で量るわけじゃん、当然ね。

中居:
うん、うん。

泉谷:
ねぇ。拓郎を取るのか、それとももう一人ぜんぜん別のを取るのかっていうように考えれば、「うーん? やっぱ拓郎だとか小田さんのほうがいいな」とか思っちゃうから、こっちのいうこと聞いちゃったり。自分も揺れる。

中居:
揺れますよね。それはありますよね。

泉谷:
すごい揺れる。そいでうーん? と、揺れるんだけど、その面白さだな。で、年とったから、50近くぐらいになってきたから、少し「誰とでもできるのかなぁ?」って思いきや。

中居:
そう。僕も思うんですよ。

泉谷:
思うんだよ。 

中居:
ええ。「みんな和気あいあいとできるんじゃないかな?」って。

泉谷:
そんなこたぁない、そんなこたぁない。やっぱうるさい。

中居:
やっぱあるんだ?

泉谷:
やっぱあるね。

中居:
ほんでその、やっぱ新聞とかで見るじゃないですか。「あ、やったんだな。神戸でやったんだな」とかって。

泉谷:
それ言っちゃあ、あんまりきれい事すぎちゃうじゃない。あんまりにも美しすぎるでしょ。それが、俺はそういう事があって当たり前だと思うし。

中居:
それなりにやっぱ、ぶつかり合いみたいなのが? 

泉谷:
あっていいんじゃないっスかねぇ? だから、逆にステージに迫力出てくるし。一回目のステージが終わっても、今回2日間やったんだけど「泉谷の喋りが面白くない!!」ってんで、急に怒られたりね。

中居:
なに? それ。お客さんからですか? そのタレントさんから?

泉谷:
いやいや、小田さんから。チェックが入る、酔っぱらって。「なんだ!? おまえの司会は!!」とかさ、「最低だ! おまえは!!」とかさ。

中居:
へぇー。

泉谷:
自分の間違ったこと棚に上げてよぉ。自分、すげぇミスタッチしてんの。「自分はなんだ!?」って言いたいけどさ、「直しとけ!」「はいっ!」ってさ。

中居:
僕、そういうのすごい参加したいんです、もう。

泉谷:
ぜひぜひ。じゃあ、あの。

中居:
でもね、これは、ちょっと例えが違うかも知れないんですけど、あの、結婚式とかあるじゃないですか。

泉谷:
うんうん。

中居:
で、例えば、僕が友達の結婚式に行くと、お嫁さんと男性、式を挙げる二人じゃなく、僕があの、メインじゃないですけども、やっぱ周りの人は思いますよね。ワァーッてなるじゃないですか。

泉谷:
うん。

中居:
そうすっと、主旨がけっこうね、変わってきちゃったりするんですよ。

泉谷:
まあ、そうだな。

中居:
うん。だから、例えば、ホントに純粋に音楽が好きなアーティストの人が泉谷さんの周りに集まって、で、僕がその中に入ったとして、本当に僕は思ってても、なんか。

泉谷:
いや、だからそれはどうかなぁ? 俺は、まあアイデア言っちゃうんだけど、例えば、「じゃあ、アーティストアーティストってぬかすけどよぉ、アーティストらしくじゃあ、生きてんのか!? この野郎!!」とか思っちゃうわけよ。じゃあ、あの、まあ、一見「アーティストは歌謡曲は聞かねえ」だとかさ「演歌は聞かねえ」とか、「嘘つけ! 聞いてるじゃねぇかお前ら!」ってとこがあるわけじゃん。

中居:
うんうん。

泉谷:
「週刊誌読まねえのか?」ったら読んでんだよ。「テレビ見ねえのか?」ったら見てんじゃんかよ。だから、そんな嘘いっちゃいかんよって。だってアーティストの生活なんてしてないって。そんな奴いないよ。それは体面上、アーティストというとカッコイイから言ってるだけでよ。要するに、音楽やりたいお調子者なわけじゃない、はっきり言やぁよう。その、平たく言やぁ。で、要するに目立ちたいわけで、できれば人気があったらもっといいし、レコードっていうかCDが売れたらもっといいしみたいな。ただ、まあ、追求度はあるわな。

中居:
ええ。

泉谷:
その好みとか追求度は、それはあるとしてもさ。だから、それはもう自分の好みで人を選んだら、まず集まんねぇよな。

中居:
きりがないですよね。

泉谷:
ないない。あり得ないよ、そんなの。

中居:
うん。

泉谷:
だから、「自分と同じ人間集めて、なにが面白いんだ!?」と俺なんか思っちゃうし。だから、実名を言うと嫌がるだろうけど吉田拓郎。嫌ならカットしてもいいんだけどさぁ。彼なんて、大江千里なんて最初、絶対ダメだったわけよ。

中居:
ああ。

泉谷:
んで、大江はその、俺も最初は「なんなんだろなぁ?」と、よくわからない。わからなかったわけ。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
ね。「でも、あいつはボランティアもやってるし、炊き出しもやってるし、兵庫の高校も出てるし、大学も出てるから、ぜひ入れたいんだ」っつったけど、「いや、あいつとやるぐらいなら俺はやんねえぞ!!」とか始まっちゃってさあ。「参ったなあ」とかさぁ。

中居:
はぁ。

泉谷:
だけど、強引に入れちゃったわけ。

中居:
で、結果はどうだったんですか?

泉谷:
最初は口なんかきかないですよ、そりゃね。

中居:
ああ。

泉谷:
で、飲む機会を何回も強引に作ってさ。

中居:
けっこう大変なことしてますねえ。

泉谷:
大変ですよ。

中居:
気ぃ遣うんですね。

泉谷:
機微もんだよ、これはもう。こう見えてっけど、俺は世界で一番気ぃ遣う男だよ、おまえ。

中居:
………………。

泉谷:
なんだその眼その顔は! この野郎!!

中居:
いやいや。

泉谷:
だけど、恐らく俺、こういうのが向いてると思うんだよ。向いてるっつうのがさ、それは表面を、人のこういう画面に出てるこの「恐いオッサン」という固まりのイメージとは別にね。これは、結果こうなっちゃっただけであって、本人はべつに表に出る気はなかったし。どちらかといえば、そうやってタレント集めてっていうか、ミュージシャン集めて売りたかった人なのね。

中居:
ああ、裏側の人。

泉谷:
うん。裏側の。

中居:
作る人だ。

泉谷:
うん。実際そういう事務所を二十歳ぐらいの時に作ったんだ。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
そいで、どうしても売りたい奴がいたわけだ。

中居:
うんうん。

泉谷:
で、こうやって押し出してってレコード会社いったりなんかして、あるいはコンテストとかなんかにも連れてって。で、あるレコード会社がみんなの音を聞きたいっていうから、「よし! じゃあテープ入れとこう」って、要するに一番売りたい奴をメインに入れといて。で、余ったからカセットに俺の声入れといたわけね。

中居:
ええ。

泉谷:
そしたら、俺が受かっちゃったんだよな。その、余っちゃったやつで。

中居:
うんうん。

泉谷:
「えっ? 俺かよ? 参ったなぁ、おい」みたいな。

中居:
それがきっかけなんですね。

泉谷:
それがきっかけなんだよ。で、「弱っちゃったなぁ」って。俺、表に出たらさぁ、交通違反はやってるはさぁ、万引きはやってるし、ヤバいなと思ったわけよ。で、こういうのってのはさ、多少ヤバいことやってきてるじゃない。で、テレビ出たらさ、脅迫観念みたいなのがあってさ。

中居:
ま、「泉谷しげるは過去にこういう何々」とか。

泉谷:
「あそこで喧嘩してたあのしげるが? なに? 近所のあのしげるがなに? テレビに出んだぜ。何いわれるかわかんない」みたいな。「頼むから。頼むから私じゃなくて」とかいったら「いや、おまえでなきゃだめだ!」っていう話になって。「弱っちゃったな」とか。非常に出るまで悩みましたよね、だから本当は。

中居:
ま、自分のなかで、ま、ちょっとやってみたい。心のなかで。

泉谷:
もちろん。

中居:
出てみたいっていう気持ちはなくはなかったんですね? 

泉谷:
なくはなかったんだけど、どちらかといえばそんなものは、人気なんてものは一年もありゃあなくなっちゃうだろうと思いこんでたから。ワァーッ!! と暴れてそれで終わりっていう気持ちで、あとは自分の推したい人を推してって。ま、事務所みたいなのを作って、やりたいっていうほうが先だったの。

中居:
うんうん。

泉谷:
だけど、結果ぜんぜん違う方向へいっちゃったんだけど。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
だから、自分が受かっても、しばらく「そいつを頼むから一緒に売ってくれ」とか、「こいつをうち出してくれ」とか、ずっとやってたわけ。

中居:
へぇー。

泉谷:
だから、もともと好きなんだろうな。

中居:
作るのが? 

泉谷:
ま、そうだろうね。みんなとなんかイベントをやるのが好きなんだろうな、こりゃ。

中居:
うん。

泉谷:
だからすぐにあの「地震だ! 災害だ!」なんて起きると、「すぐまた泉谷から電話かかってくるぞ!」ってんで、みんなすぐ留守電になっちゃうんだけどさ。すっと、ワザと無言電話入れといたりしてさ。

中居:
あ、そうなんですか。

泉谷:
脅迫電話入れたりとかさ、いろいろ。ま、だけどさ、そっちのほうが出やすいと思うんだよね。だって、例えば「泉谷に脅されたから」とか、「あいつがうるせえから、しょうがなく出てやる」っていうほうが出やすいと思うんだよ。

中居:
うん。それはそうなんですよね。

泉谷:
おお。

中居:
自分からけっこう言いにくかったりね。

泉谷:
そう、言いにくいだろ? 

中居:
で、他の人から推薦、他薦されたりするとね。

泉谷:
おう。「もう泉谷うるさくてさあ、あいつが。んもう、わかったよ、やるよ」っていうほうがさあ、伸び伸びとやれるだろうし。だから、そういう役割は作戦上やるようにね。

中居:
ああ、あるかも知んない。けっこうみんなやりたかったりするんですよね。

泉谷:
そうそう。

中居:
自分が言えなくても。

泉谷:
そうですよ。

中居:
でも、我が我がでいくと「自分のアーティストのプライドが」みたいなのがみんなあるでしょうし。

泉谷:
そう。かけにくいだろうし。何とかしたいと思っててもな。だから、そこん時にやいのやいの俺から電話かかってくると、もう根負けしたかのように出てくというほうが。

中居:
あ、「もう、あの男に言われちゃしょうがねえや」と。

泉谷:
「しょうがねえや」と。

中居:
で、みんなで多分、周りで言ってるかも知れないですよ。

泉谷:
そう。みんなでそうやって、みんなそうやって悪口言うんですよ。で、悪口言えば、出てくれば出てくるほど、「おお、やったな」とか。結構気分いいわな。

中居:
うん。

泉谷:
その、俺にとっては褒め言葉だから。なんか非常に気安く「泉谷がよう」って言ってると、「ああ、うまくいってんな」とかすごく思うよね。

中居:
あ、すげぇわかる、それ。

泉谷:
だからほら、旗振りとかさ、まあ、あの、中居くんもSMAPのリーダーやってるけど、同世代でそれなりにわがままだと思うんだよね、みんなも。

中居:
それはありますよ。自分の頑なな意思みたいなってのが絶対ありますよね。

泉谷:
あるだろ?

中居:
ええ。

泉谷:
譲れそうもねぇ奴等が多いよなあ。

中居:
ええ、そうですね。

泉谷:
オートバイに走ったやつもいるわけだしよ、なぁ。

中居:
だからもう、僕らなんかでもそれはぜんぜん「ああ、もうそれは行っていいんじゃないの? 自分のやりたいことやっていいんじゃないか」っていう、そんな拒否する、止めるようなことはしませんでしたけどね。

泉谷:
そこがまたすごいなと思うし。だからそのリーダーとかっつうのは、けっこうあの、みんな気疲れするとは思うかも知れないけど、どっか向いてない? 自分のなかで。

中居:
どうなんでしょう? 僕もね、泉谷さんと一緒であの、作るのが好きなんですよ。

泉谷:
だから、まとめていくのがどっか好きだろ? 

中居:
うん。で、ライヴとかっていうのを、音作ったり、構成決めたり。

泉谷:
だろ?

中居:
ええ。やっぱ好きですね。

泉谷:
だから、自然とおまえそうなんだよ。

中居:
うーん?

泉谷:
だから、やっぱそういう単独なタレントとちょっと違うんだろうな。

中居:
逆に言えばほら、今、個人で仕事してますけども、やっぱ個人が一番向いてないのが僕だったりするんですよね。

泉谷:
ああ、よくわかる、今のは。その「個人が向いてない」ってのは名言でさ。その通りで、どっかあるわけよ。その異様に個人が向いてないんだよな。その対象物がないと燃えないっつうの? 

中居:
そうなんですよね。張り合うものがないと。

泉谷:
そう。ないとね、燃えねぇんだよ。その、一人ってのは何もしねぇからなぁ。

中居:
そうなんですよね。でも、泉谷さんずっと一人じゃないですか。そういう意味ではね。

泉谷:
ん、一人。イメージ、イメージだろうな。でも考えてみりゃ、あの、グループ交際みたいな、なんか変な話だけど。その、映画の仕事もやったりさ、なんつうの? つまりイベントでそういうグループ作ったりとか、そういうのやっぱり仕事的には多いよね。

中居:
うん、うん。

泉谷:
だから、本当は絵描きになりたかったんだけど。

中居:
絵描き?

泉谷:
うん。その、絵を描くとか。その、子供の頃からプロになるのは漫画家だと思い込んでたわけだよ、俺。

中居:
ええ? 

泉谷:
俺はな。

中居:
ええ。

泉谷:
で、また、子供の頃「絶対おまえは漫画だ。すごいぞおまえ! 天才だ!」とか言ったりして、「そうだ! そうだ!」ってんで、そう思い込んでたから。音楽なんつうのは、本当に片手間。 

中居:
へぇー。

泉谷:
だから、ぜんぜんそういう気はなかったわけ。で、ただな、時代が時代だったんだよな。やっぱり60年代の後半だったし、中半から後半ってのはベトナム戦争があって、フラワーチルドレンがあって、ジミ・ヘンドリックスだ、ビートルズだ、ローリング・ストーンズだ、学生運動だってのが街が騒いでるわけだよ。すっと、カリカリ自分のとこで、部屋で描いてるのがね、街の音が聞こえてくるわけよ。すっとなんか、「ん?」って。

中居:
ウズウズウズウズしちゃうんですね?

泉谷:
ウズウズしちゃうんだよ。すっと「アァーッ! 俺は室内競技に向いてない!」っちゅうもんでさ。ダメなんだな。血が騒いじゃって。

中居:
それだ。その反動ですね。

泉谷:
うん。

中居:
今の泉谷さんの。

泉谷:
うん。

中居:
溜まりに溜まったものがこう、爆発しちゃったんですね。

泉谷:
クククーッと。そうだな、ありゃあそうだな。その、ずっとほら、地味な作業じゃない、ずっと描くってのはさ。それ自体は好きなんだけど、絵を描いてること自体は。すごい気分いいんだけども、やっぱり雑音に弱いっつうの? すごい耳が立っちゃうっつうかさぁ。

中居:
うんうん。

泉谷:
うん。

中居:
集中できなかったんでしょうね。

泉谷:
出来ねぇなあ。

中居:
うん。

泉谷:
ほんで、「みんな面白いことやってんのになにやってんだ? 俺は」とかさ。なんか頼みもしないのにどんどんどんどん余計な場所へ出てって、その、よくイベント会場とか、そういういろんなことやってんじゃない。だいたい先頭に、前にいたりなんかしてね。「おらぁ! うらぁ! とりあえずやれ、こらあ!!」とかいって。「なんだ? このオッサン」とか言われて。

中居:
あ、なるほどね。

泉谷:
で、やっぱり結果、「あ、俺は出たがってる」という。

中居:
でも、泉谷さんは一人はけっこう苦手? 

泉谷:
うん、苦手な。

中居:
僕は苦手だと思うんですよね。

泉谷:
うん、苦手なところはあるなぁ。

中居:
うん。

泉谷:
うーん? 

中居:
常になんか、人を愛し。好きですね、人間が。

泉谷:
そうそうそう。だから、やっぱりね、あの、どんな役でもどんな表現でもそうなんだけど、人間の間抜けさとか緊張の間抜けとかさ、そういうの見んのが好きで。ま、自分もそうなんだけど。なんか、「肝心な時にオナラしちゃった」みたいなところを、そいつのなかから醸し出すと。

中居:
ああ、ハプニングが好きなんだ。

泉谷:
そう。なんか「こいつ可愛いな」みたいな。

中居:
ええ。

泉谷:
だから、あんまりたいそうな、その、たいそうな宇宙の力学がどうだこうだっていうよりも、人間のつまんないところとか、しょうもないところとか描いてる方が好きかも知んないね。

中居:
ねぇ、泉谷さんて、泉谷しげるを、まあ、演じてるって言ったらおかしいですけども。

泉谷:
ああ、そうだね。演じてるんだろうね。

中居:
うん。演じてる部分、絶対あると思うんですよね。

泉谷:
あの、演じてるっていうかね、俺はこのキャラクター、この「泉谷しげる」っていうキャラクターが勝手に一人歩きしてくれりゃいいなと思ってんだよ。

中居:
うん。

泉谷:
で、みんなその、「キャラクターがあるから嫌だ」とか「キャラクターが一人歩きしてると嫌だ」とかよくいうけど、「そうかな?」と思うんだよ。キャラクターで通っちゃうことっていっぱいあるし、逆にキャラクターになることで非常になんか、ね、つまり右のものが左になっちゃう時もあるし、面白いことにもなるわけよ。だからその、そのキャラクターってのはなんか、早く俺なんかキャラクターに入りたいよね。

中居:
うーん? 変な話、裏の泉谷さんじゃないけども、それをみんな知ってる人がいるからね。

泉谷:
そうだと思うよ。

中居:
ちゃんとだから、まあ、いわゆるキャラクターの中では暴言であったり、人の悪口であったり、いわゆるイメージの。僕は、よくない世間体でいう「泉谷しげるは、あいつはたちが悪い」。

泉谷:
そうそう。「グレてる。不良だ。あの野郎マリファナやってるぞ」みたいなさ。

中居:
そこまでは……。

泉谷:
「シンナーはやったことないけど、コカインまではいったぞ」みたいな。今はやってねえっつうんだ! おまえ。

中居:
そういうキャラクターのイメージっつうのが、やっぱありますよね。

泉谷:
うん。

中居:
でも、ちょっと一歩下がった泉谷さんっつうのは、みんなが知ってるから。

泉谷:
地味で。

中居:
知ってるから、だからこそやっぱり、そういうキャラクターを演じることが出来る気がするんですよね。

泉谷:
けっこう変に、変にその、喋らないっていうかさ。困っちゃうんだ、これがな。で、早くキャラクターに入りたいわけよ。で、どっちも本当だと思うんだよ。こういう所も、地味な所も。どっちが本当でどっちが嘘だとかないと思うんだよな、うん。

中居:
僕ね、最近思うんですけども、普通に、例えばバラエティとかで、「普通にしていただければいいですから」って言われるんですよ。

泉谷:
うん。

中居:
「ええ? 俺、普通ってどういうのだっけな?」って。

泉谷:
恐いよな。

中居:
「どんなキャラクターだった?」って。

泉谷:
普通って恐いよね。

中居:
だから、今喋ってる自分のキャラクターと「笑っていいとも!」のキャラクターが違ったりするんですよね。

泉谷:
うん。

中居:
「あれ? 俺、本当の自分ってどれだったっけな?」って思っちゃうんですよ。

泉谷:
そうそう、そう。わかるわかる。あの、本当の自分つうのは、その本当の自分が、本当の自分なんて、あんまり考えない方がいいんじゃないかなと思うんだよ。

中居:
うん。

泉谷:
だから、案外その、なんつうの? 何かの拍子で自分が見えちゃう時があってさ。誰かのきっかけによって自分が成立してるっていう関係できてるじゃない。影響されてない人なんていないわけでよ。その、自分だってよ、憧れる人がいたから。「ああなりたい」とか「ああはなりたくない」とか思いながらきてるわけでさ。自分なんつうのは、案外、完全なオリジナルなんてのはあり得ないと思わないとそれは。

中居:
けっこうでも、悩み。ま、悩みまではいかなくてもね、うーん? 「俺はいったい誰なんだろうな?」ってなりますよね。

泉谷:
バラエティやってて? ほんで芝居やってて?

中居:
芝居やって。例えば、芝居やってて役者さんに囲まれて。普通、日頃喋っている自分とテレビ出る自分と、兄弟でいる時の自分とって、けっこうみんなバラバラだったりするんですよね、うん。

泉谷:
あ、そう?

中居:
で、「あれぇ? メンバーといる時がやっぱり、いちばん本当の自分なのかな? いや、『いいとも』やってる時? いや、ニュース番組? いや、やっぱ『MUSICCLAMP』? あれぇ? 俺、誰が自分なんだろうな?」って。

泉谷:
全部自分なんじゃないかなぁ?

中居:
ま、全部自分なんですよね。

泉谷:
おう。だって、そんなてめえの素のところって、べつに風呂入ったりとかさ、飯食ったりとか、なんも考えてねえじゃん。べつにそんなもん、なんかさ。

中居:
そうですよね。

泉谷:
なんか、裸でいる時っていいじゃねぇ、楽で。なぁ。その、飲んでシャワーで「まったくもう、このかさぶたが気になんなぁ」みたいな。そんな大したことやってなくない? なんか。

中居:
ええ。日頃は本当もう。

泉谷:
なんてことないだろ? 

中居:
普通。本当もう、普通の普通ですよ。

泉谷:
うん。だからその、なんてことないとこから自分の、例えば中居なら「中居」っていうとこの世界にさ、どっかきっかけを作って入っていくわけじゃない。

中居:
ええ、ええ。

泉谷:
エンジンかけてさ。それは苦痛な人もいるよね、中にはね。でも、苦痛じゃないでしょ? べつに。

中居:
だから、たまに最近だからあの。

泉谷:
苦痛になんの!? あらっ。 

中居:
だからもう。

泉谷:
てめえ! 自分のキャラクターに責任持て! この野郎! おまえ。なに考えてんだ!? おまえは! 

中居:
本当、俺、キャラクターもけっこう面倒臭くなってきたなぁ。

泉谷:
面倒くさいのか? おまえそれね、おまえそれ。

中居:
贅沢ですよね。

泉谷:
贅沢だよ、おまえ。

中居:
で、僕すごくね、あの、世間の人にいい人、あの、好感度がいいんですよ。

泉谷:
おまえはそうでもないよ。悪い噂聞いてるぞ、おまえ。

中居:
へ? 

泉谷:
おまえ、けっこうパチンコ屋で煙草ふかして「中居、なんかたいそう態度がでけえぞ」みたいな。

中居:
ああ、新聞ですね。

泉谷:
新聞だぞ、おまえ。ああいうのが出てこなきゃダメだよな。

中居:
でもああいうのもほら。

泉谷:
出てこなきゃダメだよ。

中居:
自分のなかでは、もちろん、天使もいるし。天使だけじゃなくて。

泉谷:
悪魔もいるからな。

中居:
悪魔も絶対いるんですよ。

泉谷:
いるいる、いる。

中居:
「あのぉ、こんにちはー。いやぁ、そんなことないですよー」っちゅう自分も、もちろんいるんでしょうけども。「なんだ? ふざけんじゃねえよ! もうウダウダやってんじゃねえよ! この馬鹿!!」とそういうふうに思う自分ももちろんあるわけですよ。

泉谷:
当たり前ですよ、当たり前ですよ。

中居:
でも、こっちばっかり僕。

泉谷:
ま、いい人っていうイメージか? 

中居:
そう。

泉谷:
おまえ、べつにいい人に見えないけどね、そんなに。

中居:
な、なんやねん!? それ。

泉谷:
いやいや。だけどおまえ、じゃあそれ「いい人」って言われたらあれだろ? で、「いい人に見えない」っていうふうに言われたら怒るってのは何だよ? いったい。それは、おまえどっかでやっぱり「いい人だ」と思われたいってことじゃねえか。

中居:
そうなんですよ、だから。

泉谷:
何なんだ? おまえは。そっちのほうが何だな、おまえは。

中居:
すごいね、矛盾してんですよ。

泉谷:
だから贅沢だっっちゅうんだよ、それが。

中居:
贅沢な悩みですね。

泉谷:
それはおかしいじゃねえかよ。だから、それ「みんないろいろ言って欲しい。正直にいろんなこといって欲しい」。で言うと傷つくくせによぉ。ね。

中居:
その……。

泉谷:
で、結局、褒められてえくせにさ、遠回しに褒められてえくせによ。で、なんだかんだといいながらさ。

中居:
そうなのかなぁ? 

泉谷:
うん。で、俺は逆で、「人間全員を俺は好きになるなんて思ってない」と思ってるから。どんな良いことやったってな。

中居:
うん。

泉谷:
中には、「ヤバい奴は絶対ヤバいんだから、絶対嫌ってる奴はいるもんだ」と思ってるわけよ。例えば、ファンが会場でも1万人超えたらこれはもう、自分のファン以外の人が相当いると思ってるし。その、それは本当に好きな人って千人いないと思うんだよね。だから、もしかしたらな。

中居:
だから、さっきも泉谷さん言ってたように、例えば、番組で嫌いな人っていうか、自分が苦手な人と話を合わせなきゃいけない状況っていう。

泉谷:
とりあえずな。

中居:
うん。そういうのあるじゃないですか。 

泉谷:
うん。ムカムカしてっけど。

中居:
ええ。でもそれ以上ムカムカした顔、絶対出さないですよね。

泉谷:
出しますよ、けっこう。

中居:
それは汚いですよね。 

泉谷:
何でだよ!? おまえ。

中居:
僕らなんか絶対できないよ。出来ないっていうか。

泉谷:
だって、俺、キャラクターなんだもん。

中居:
それ、汚ねぇなぁ。

泉谷:
俺は、怒っていいんだもん。「なんだおまえ!? 嫌いだ!!」とかって言っていいんだもん。

中居:
それっ、それ。

泉谷:
それ、「泉谷しげる」が言わせるんだもん。

中居:
それ、僕、出来ないですもん。

泉谷:
だろ? だからそれは好感度をおまえ、どっかに喜んでるんところがあんだよ。おまえの中に。

中居:
でもそれはだけど、その人が不愉快じゃないですか。

泉谷:
不愉快だっておまえ、不愉快にさしてやんねえとさ、1回はさ。その、「こいつ嫌い」なんだから。

中居:
そんなこと言えないじゃないですか。

泉谷:
だから、言ってやんねえとさ、気付かねえんだから、田中康夫。

中居:
だからその、いわゆる自分の嘘の姿があるわけですよ。 

泉谷:
あ、そうか。

中居:
自分の嫌なね、「これについてどう思いますか」「いやぁ」。

泉谷:
だから、それはキャラクターだと言うえるっつうの。だから、多少の事で、素だったらなかなか言えないだろ? それ。素で言ったら、本当、マジじゃねえか、俺。

中居:
本当にになっちゃいますもんね。

泉谷:
本当だろ。たけしだってあれだけのことみんなに言って、嫌われてるか?

中居:
うん、そうですよね。

泉谷:
だろ?  

中居:
いわゆる人間性ですよね、本質的に。

泉谷:
だから、でも、けっこう彼は非常に気にし屋さんで。やっぱりほら、人に批判っつうか、悪口いう人間っつうのは、他人の悪口に弱いってところがあって一言いわれちゃうと。

中居:
ガクンときちゃうんですね。

泉谷:
ガクンときちゃったりする奴が多いんだよな。でも俺は「だいたい嫌ってるぞ」と思って常にいくから、人はあんまし。

中居:
でも、多分、泉谷さんはあれですよ。嫌いな人少ないと思いますよ。

泉谷:
そうなんだよ、以外と少ないんだよ。嫌んなっちゃったよ。

中居:
そうですよね。

泉谷:
で、思ったより殴ってんだけど、「俺おまえ好きなんだけど」って殴られてんだよ、みんな。「頼むよ泉谷、お、俺、おまえのこと…」「うるせえ! 俺は嫌いなんだ! おまえが!!」とかって殴ってんだよ。「だーい好きなんだからよぅ!」って泣いてんの、そいつ。「なんだよ、だったら最初から言え、この野郎!」とかさ。

中居:
勇気ありますねぇ、それ。

泉谷:
とんでもないよな。

中居:
だから、人に対する姿勢ってのが、僕、どんな人でも多分、泉谷さんは変わんないと思うんですよ。

泉谷:
うん。

中居:
僕に対しても。そんで、今ね、一緒にやってる慎吾君に対しても。その人に対する接し方っていうのが変わらないと思うんですよ。

泉谷:
その、綺麗なネェちゃんの時はちょっと態度変わるけどね。

中居:
それはね、ぼくも一緒なんだけどね。

泉谷:
さすがにね、好みのネェちゃんは。でもまあ、あんまり我慢できないな、やはり。

中居:
我慢しちゃいけないですよね。

泉谷:
ああ。だから、みんなの気ぃ遣いながらもさ、よくスタッフなんか笑っちゃうんだけど、「この野郎! おまえ。俺はあっちこっちのアーティストのいうこと聞いてっけど、俺は聞くような立場じゃねえぞ、この野郎! 俺はてめぇら、終わったらこの野郎、ただじゃおかねえぞ! この野郎!!」みたいなさ、ことをよく言ってんだけど。まあ、終わると感動しちゃってるから、まあ、全部消し飛んじゃうってところがあって。だから、仕事っていうのは、だから、仕事っちゅうかなんちゅうか。

中居:
仕事っていう感覚ではあんまりタイプじゃないなあ。

泉谷:
仕事っていうより、なんか出来事っていうのは、すごい嫌なことさんざんくるんだけど、終わるとなんか「嬉しい、楽しい、淋しい」というところがあって。そういう時「やったかな?」って感じになるし。あの、朝までついつい飲んじゃうし。まあ、こういう番組がある時でも節制なんかもしないしなぁ。

中居:
うんうん。

泉谷:
節制しない世代だからなあ。

中居:
そうかも知んないですね。

泉谷:
ああ。「肌荒れだ? 自己管理だ? この野郎!」って、帰ろうものなら殴られてましたからね。その、「帰るだ? この野郎!」みたいな。

中居:
うん。

泉谷:
だから、今はほら、自己管理しちゃってるじゃん、みんな。

中居:
そうですよね。

泉谷:
うん。

中居:
さがりますよね、みんな。

泉谷:
だいたい終わって帰っちゃう、みたいなところがあってさ。

中居:
うん、そうですよねえ。

泉谷:
だから、「ふざけんな!!」とか思うね、俺は。やっぱりあの、やはりこの、なんつうかな? そいつの魅力っつうのはさ、多少あの、そりゃあいい人かも知れないしさ、本当によくできたいい男かも知れないし、可愛い奴かもしんないけど。やっぱ人前出てきた時はさ、多少なんつうの? 多少のズルさだとかさぁ、そういうの色気だと思うんだよね。なんかこう、なんかただの「いい人」って面白くねえんだよ。

中居:
面白くないですよねぇ。

泉谷:
そう、面白くないんだよ。その、それはみんな思ってんだけど「いい人」って言われちゃうと、だいたい萎えちゃうから。

中居:
そのキャラクターがね、「通さなきゃいけないのかな?」とかやっぱり。ある意味では「崩しちゃいけないのかな?」ってね、思っちゃったりするんですけどね。

泉谷:
みんなだって、どいつもこいつもあれだもんな。テレビで映ってる裏のほうですげぇこと言ってるもんなぁ。

中居:
うん、エグいですね。

泉谷:
エグいよな。

中居:
エグいこと言ってますよね。

泉谷:
言ってるよなあ。わかってんのか!? 坂東英二!

中居:
そういうこと言っちゃいけません。え? 泉谷さん、今後は?   

泉谷:
今後は? 今後は……。弱っちゃったな、今後のこと聞かれちゃうと。

中居:
なんもないんですか。

泉谷:
なんもねえなあ。「なんもねえなあ」って言っちゃあれなんだけど。あの、1回1回が精一杯だから。「もうこれで俺はいつも終わりだ」と思ってやってっからよぅ。で、困っちゃうんだよな。「次なにやるんですか?」とか言われるとさ。

中居:
成りゆくままに。

泉谷:
いや、そう…なんだよな。だから、今やってることが精一杯だからよ。で、「これで俺、死んでもいい」って思ってるところがあるからさ、べつに。

中居:
もう悔いないんですか?

泉谷:
ないよ。1回1回。べつにもういいよ。十分だ、おまえ。二十何年もやってんだからさ。

中居:
もっとやりたいことないですか? 

泉谷:
いや、もう。だからやりたいことやってるわけよ。

中居:
うん。

泉谷:
やってるから。「べつに、いつ死んでも大丈夫だぞ!」みたいな。こういう奴に限って死なねぇんだけどよぉ。

中居:
最後の締めです。その、泉谷さんのその、突っ張ったって言ったらおかしいですけども、うん、その頑なな意思っちゅうのはね、いつまでも持っていたいなという。それは「泉谷しげる」というキャラクターのね、ものなのかも知れませんが。

泉谷:
いや、俺はこのキャラクターが好きだもん。その、好きっていうか早くこのキャラクターになりたいし。その、あるいはそのキャラクターが一人歩きをすればするほどさ、例えば、素の時間でお互いに会う時があったら意外なものが発見するかも知れないし。「あれ!? 泉谷!? あ、こういうとこあんだ!?」みたいな、中居あたりにからかわれたりなんかすると「ま、いいじゃないか」と思うんだよ。

中居:
ええ。

泉谷:
そして、そういう落差を楽しんで欲しいなと思うしね、みんなに。

中居:
うん。

泉谷:
俺はみんなが楽しんでくれりゃそれでいいしよう。

中居:
うん。そういう気持ちってのいうのは、僕はずっと持ってて欲しいなってありますね。

泉谷:
で、まあ好き嫌いはそのままいっちゃうし。まんまだし、ま、そろそろね、自分の子供の頃やりきれなかった「絵の仕事」やろうかなとは思ってるけどね。

中居:
ああ。

泉谷:
あれはやっぱりね、子供の頃にね、自分はやりたいと思ってやんなかったっつうのはね。

中居:
悔いがずっと残ってるんですね。

泉谷:
残るんだよ。

中居:
ずっと残ってるわけですよね。

泉谷:
ああ。

中居:
それは、わかるような気がするなぁ。

泉谷:
うん。だから「いつかやるぞ。いつかやるぞ」という。

中居:
「いつかやるぞ! この野郎!!」ぐらいに思ってて欲しいですね。

泉谷:
ああ、そうかそうか。

中居:
「やってやるぞ! この野郎!!」って。

泉谷:
「やってやるぞ! この野郎!!」って思ってんだけどね。ついぞさっき言ったように室内競技はダメだから。

中居:
どないやねん!? 

泉谷:
とかな。まだね、外に身体が疼いちゃうんだよ。

中居:
とりあえず素直に生きていく、僕、泉谷さんってのは、本当いいと思いますよ、うん。

泉谷:
ああ。なんかだからこういうセットの仕事かなんかないかねぇ? 

中居:
え? セットの仕事ですか?

泉谷:
うん。こういう建て増しだかなんだか知らないけど。

中居:
あ、今空いてますねえ。

泉谷:
空いてるか。なんかあの。

中居:
もしあれでしたら、じゃあ、あの、「MUSIC CLAMP」のあの。

泉谷:
どっか雇ってくんないかなぁ? 俺。

中居:
あの小道具が今あいてますよ。

泉谷:
小道具が空いてるか!? あのカナヅチ、トンカチ、ノコギリOKよ! って、よく壊してるって言われるんだけど。

中居:
うん、そうですよ。ねえ、あんまりそんなねぇ。

泉谷:
謙遜していってんだよ、この野郎! おまえ。

中居:
はい、すいません。あんまり怒らないで下さい。ま、ぜひともまたね、来て下さいね。今日はお金ないとこ本当にどうもありがとうございました。

泉谷:
今日はこのくらいで堪忍してやらぁ。わかってるのか!? 坂東英二! おまえ、やったんだろ!? おまえは。

中居:
言わないの。

泉谷:
ちゃんとゲロしろ!! 

中居:
そんなこと言わないの。すぐ敵に回す。はい、今週のゲストは泉谷しげるさんでした。どうもありがとうございました。

泉谷:
わかってるのか!? 坂東!

FUJI TR(C) FujiTelevision Network,Inc. All rights reserved.