2020.9.28 MON. UPDATE interview #05玉井伽耶子役 中村アンさん

ひとつの役を長い期間演じるということは、
役者さんにとっても大変なことだと思うのですが、いかがでしょうか?
私の場合は、むしろ喜びの方が大きいです。シーズン1のときに出来なかったことをもっとやろう、という思いもありましたし。
出来なかったこと、というのは?
シーズン1のときは、原作のアメリカ版『SUITS』のイメージをどこまで保てばいいのか、どこまで私たち独自のカラーを出していいのか、という部分に関して手探りの部分もあったんです。私の場合は「本家のジェシカ(ジーナ・トレース)さんだったらこれはやらないよね?」という部分を、どこかで自分の中のブレーキにしていたような部分もあったんですね。でも、今回のシーズン2では、「ジェシカさんだったらやらないけど、チカだったらあり」という塩梅をもうちょっと出して、どうしようか迷ったらやる、強弱で言ったら強い方で演じよう、と心がけるようにしています。
今回は、放送が始まってすぐにコロナ禍があり、
撮影も自粛しなければいけなくなりました。
いつ再開されるか誰にもわからない状況でしたが、
その間はどのように過ごされていたのですか?
最初は結構がっかりして、1回気持ちが落ちました(笑)。思った以上に撮影が出来ない、ということがショックだったというか……。生きるモチベーション、みたいに言ってしまうととても大げさなんですけど、日々生活して、1週間、1ヵ月、1年……という風に時間を過ごすための大きなモチベーションが仕事だったんだな、ということに気づいて、その手段を失ってしまったことで、何だか悲しくなってしまったんです。まあでも、その後は逆に時間があったので、オリジナルのアメリカ版をもう一度見直したりしていました。というのも、シーズン1は1話完結的な、ひとつの訴訟案件をどう解決していくのか、というのが基本的な流れでしたけど、シーズン2は長くて複雑な展開をしていて、訴訟案件だけではなく対上杉(吉田鋼太郎)さん、という対立の構図も加わっているので。オリジナル版もサラッと見ていると「いまのはどういう意味だったんだろう?」と思うような場面とか、裏の裏の裏、みたいな部分もあったりするので、そういうところを見直して、新たな発見もあったので、結果的にはとても良い機会になりました。だから、私の取り組み方としては、シーズン2の1話2話と、休止明けの4、5、6話くらいは、中身的にも結構変わっていると思います(笑)。
再開後、現場に戻ったときのお気持ちは?
この現場にくればすぐに感覚も取り戻せるものなのでしょうか?
どうだったかな……。初めは、感染対策でちょっと慣れない作業をしなければいけなかったりもしたので、緊張感もありました。気を許すとネガティブな方向に引っ張られそうになるというか、「何でこんなことしなくちゃならないんだろう?」「ここまでして撮影する意義ってどうなんだろう?」というような、心の奥の整理がつかない気持ちに戸惑うこともありましたけど、撮影できるという喜びの方が勝ったので。
現場の雰囲気はどうでしたか?
シーズン1を経てチームワークも
出来上がっているとは思いましたが……。
そういう意味では、コロナのことで休止があったりすることで、より結束は強まったと思います。私以外のキャストのみなさんも、台本を読み直したり、同じようにオリジナル版を見たり……特に織田くんは凄く見ていますから。話しているうちに、自分たちが演じる話なのか、オリジナル版の話なのかごっちゃになるくらい(笑)。「そのときジェシカはさ……」「いや、それは私!」みたいな(笑)。ただ、そういうこともとてもプラスになっていると思うんです。それぞれの中で理解が深まって、いろいろなアイデアも生まれて、分かりづらいところを相談することも出来るようになりましたから。
シーズン2は、かなり原作のエピソードに忠実であると同時に、
日本版ならではの分かりやすさもあって、
より見やすくなっていると思います。
なっています? そう思ってもらえたら良いですけど(笑)。そういう部分は、もしかしたらずっと試行錯誤しながら探っていく部分なんじゃないかな、と思うんです。どこまで日本的にアレンジするか……例えば、日本ではこういうことはないけど、でも『SUITS/スーツ』という世界観ではこちらの方がカッコいい、みたいなこともあると思うんです。テレビドラマですから、あまりにリアルだけを追及する……そういう作品ももちろんあって良いんですけど、私たちの『SUITS/スーツ』の場合は、「こんな人、いないよ!」「こんな法律事務所ないよ!」と思われても、そこにひとつのファンタジーが成立しているのであれば視聴者の方にも楽しんでいただけると思うんです。その折り合いの付け方は、脚本はもちろんですけど、例えば美術に関してもそうでしょうし、私たち演者のモチベーションもそうで、それぞれが自分の領域でどこまで考えるか、ということだと思うんです。正解のないものではあると思うんですけど、その中で、その日その日のベストを探っていくしかないと思って取り組んでいます。
改めて、この現場での織田裕二さん、中島裕翔さんの印象を
お願いします。シーズン1から変わった部分はありますか?
変わってはいないと思います。彼らはもう揺るぎないですから(笑)。よりコミュニケーションが取りやすくなっているんですけど、同時にもっとコミュニケーションを取らなきゃ、という思いはみなさん感じているんじゃないでしょうか。
小手伸也さんも、
「前回より近づけた感じがする」とおっしゃっていました。
制限がかけられているせいで、撮影できるチャンスというのも限られていますから、その限られたチャンスを最大限に使いたいという気持ちは強くなっているんだと思います。例えば、以前と違って、「休憩時間にみんなでお昼を食べようよ」みたいなことも出来なくなったので、いままでだったらそういうときに何となく世間話をして……みたいなことが出来なくなった分、違うところでもっと会話をするようになったり。みなさん大人だし、プロだから、その方が絶対収穫はあるというのは感じていると思います。
最後に、今後の見どころを含め、
視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
この『SUITS/スーツ』の世界って、出来る大人たちがカッコ良く暮らしているだけではなくて、まだまだみんな成長過程なんです。鈴木先生(中島裕翔)とか、真琴(新木優子)ちゃん、玉(中村アン)ちゃんは若いからもちろんなんですけど、実は甲斐もチカも蟹江(小手伸也)も、まだ成長過程にある――そこが一番の見どころだと思っています。一見、カッコいい大人たちみたいだけど、実は欠落している部分、幼い部分、意固地な部分があったりして、チカ自身もそういうところを上杉に突かれたりしているんですよね。なので、「この人たち、いい年してまだまだ成長していけるんだ」というところを最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

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