2020.3.25 WED. UPDATE interview #01甲斐正午役 織田裕二さん × 鈴木大輔役 中島裕翔さん Special Talk

シーズン2が始まります。今回の注目ポイントは?
  • 中 島
    今回もいろいろな事件に巻き込まれていって、スリリングかつ軽妙な雰囲気の中で物語が進んでいくんですけど、シーズン1よりもファミリー感が強く色濃く出ているんじゃないかなと思います。台本を読んでいるときに、ファーム内の人たちを家族に置き換えてみると、「ああ、お父さんがんばっているな」とか(笑)。いや、お兄ちゃんなんですかね、甲斐先生は?
  • 織 田
    家族に置き換えて見ることも可能なドラマだなと思っていたんです。そこに『幸村・上杉法律事務所』なのに今まで唯一出てこなかった上杉が出てくるんです。大雑把に言ってしまうと、ダメ親父が帰ってくるみたいな(笑)。前作は、横軸となる1話完結の話が多かったと思うんです。後半以外は。今回はより連続性が高まっていて、つながっている要素が前作よりも強いなと感じています。前作は、1話完結の話をどう作るかという意味で、わりとカタログ的な要素が強かったと思うんです。「こういうキャラクターの人がいます」って、それぞれの人物像を紹介していくような。それが、前作の後半にあったように、少しずついろいろな話がつながってきて、よりスリリングで、来週も見たいと思ってもらえる感じのパート2ですね。そこが全然違います。
それぞれの役柄についてはいかがですか?
変わった部分、変わらない部分でいうと。
  • 中 島
    大輔は、甲斐先生から「1年半ボストンに行ってこい」と言われて、成長して帰ってきたんですけど……。ボストンで人間関係とかいろいろと学んだと思うんですよ。甲斐先生に便利に使われて、いろいろな仕事をこなしていくうちに勉強したっていうことなんですけど。でも、日本に帰ってきて、実務をこなしてみると、そんなに成長してなかったというか(笑)。ただ、何となく雰囲気が変わった感は、視聴者のみなさんにも感じていただけるんじゃないかな、と思うんです。相変わらず、男同士の小競り合いだったり、見栄の張り合いだったりというところは、ちょっとクスっと笑えるポイントだと思いますけど。
  • 織 田
    (中島さんの肩に手をやって)もうこの年の1年半は、学ぶことがいっぱいあるでしょうね(笑)。だから、すごく成長してる。でも、弁護士として一人前になるかっていったら……。何も知らなかった、仕事もなんかとんでもないことをやっていたような男が一人前になるのはそう簡単にはいかない。経験をたくさん積まなきゃいけない。だからもっともっと成長が必要なんだと思います。普通だったら、最低でも10年経って弁護士として一人前に育てば、というところなんでしょうけど、彼を早く弁護士にさせなきゃいけない理由が甲斐にはあって。何故かっていうと、(大輔は弁護士資格がない)インチキだから(笑)。シーズン1から言っていたんですけど、蟹江(小手伸也)はハーバード卒にこだわっている。だけど、甲斐はどこだっていいって言ってるんですね。学歴なんて問わないって。資格さえもどうでもいいって言う。ちょっと言い過ぎかもしれないけど。そういう問題提起を彼はしていて。普通は、「早く資格を取らしちゃえばいいじゃん」って思うんですよね(笑)。もしかしたら、甲斐はそういう問題提起を抱えながらやっているのかなって思うんです。で、もう一人いるんですよ、真琴(新木優子)っていう、試験恐怖症の女の子が。実際、よくできたパラリーガルで、ほかのハーバード卒で弁護士資格を持っているスタッフより、むしろ優秀なんです。「それっておかしいよね」っていうのが、もしかしたら甲斐の中に、どこかくだらない反発心みたいものがあって、今の制度に対して刃向かっている部分があるのかもしれないっていう解釈で、僕はあえて資格は取らなくていい、という立場でやっています(笑)。
再びこの現場で一緒に演じられて「この感じは
この作品ならではだな」と思うような瞬間は
ありましたか?
  • 中 島
    クランクインの2日前からセットリハーサルをやったんです。早めにセットが完成したので、実際にメークもして衣装も着て、(実際のセットに)入ってやりましょう、ということだったんですけど、そこで久しぶりに織田さんとセリフを掛け合いをして。今回、スタッフさんがガラッと変わって、監督(平野眞)も初めてなんです。すごく『SUITS/スーツ』をやりたかった、と言ってくださっている監督で、その監督が現場で僕らのやりとりを見終わったあとに、「おお、『SUITS』だ!」って(笑)。一人のファンみたいな。でも、客観的視点ってすごく大事だなと思って、周りから見た『SUITS』ってこうだよねとか、こうであって欲しいという部分は事細かくアドバイスいただけるので、すごくためになっているし、僕もそれで気づけることもあるし、助けられることもあります。なので、あまり1年半ぶりに会ったっていう気はしなかったんですよね。(織田さんに)どうでした?
  • 織 田
    この作品は、表面的にはおしゃれとかスタイリッシュという言葉で言っていますけど、凄く真面目な人たちが楽しみながら頭使って作った作品だなと思っているんです。逆説的であったり、セリフもまんまじゃなかったり、置き換えがあったり、遠回しだったり、「伝わるのかな、これ?」って思うんですけど。それは、スタイリッシュっていう風に見せたいが故のことで、本音で言えば結構ちゃんとしてるんですよね、このドラマは。「大人のマナーって何だ」、「仕事において大事なことは何だ」とか。だから、僕は二人の成長物語と捉えていて、彼は何も知らないところから成長している。僕は、プレーヤーとしては超一流で、向かうところ敵ナシ。でも、次のステップは常にあって、前回はジュニアからシニアパートナーという共同経営者――要はお金を出して経営者側に回っているんですね。そこまでの成長の過程が大きな一つのテーマだったです。「で、次は?」ってなったときに、今度は代表なんですね。甲斐は、何故代表にしてもらえないのか。母親なのかお姉ちゃんなのかわからないんですけど、「代表(チカ・鈴木保奈美)は何故そうしてくれないのか、息子を?」って考えた時に、まだ経験が足りない。圧倒的に欠けているもの――プレーヤーとしては超一流だけど、経営者としてのことは目配りできているのか?  周りの人には気を配っているけど、末端にいる下のフロアの人たちや、アソシエイト、僕たちよりもベテランの弁護士たちへはどうか?  代表になるにはシニアパートナーの過半数以上の票が必要なんですよ。チカは「その人たちにも嫌われてない?」、「そういうことの政治っていうものをちゃんとやらないと、ただ一流プレーヤーだけじゃ、代表は務まらないのよ」って思っている。そういう意味では、蟹江の方がむしろリードしているのかなっていうのが自分の中にあったりもするんです。アイツは(プレーヤーとしては)2軍なんだけど、プレーヤー兼アソシエイトの監督もやっているんですよね。「ああ、オレより上じゃねえか、負けてるな」って、勝手に思っているんですけど。彼とは、ハーバードの同期で、僕は二卵性双生児って勝手に思ってやっているんですけど(笑)。でも、そういう意味では、超一流だっていう自信があったけど、自他共に認められる弁護士だけれども、監督経験とかそういう意味では、蟹江の方が上なんですね。甲斐としては、次はそこを目指さないといけないんだな、と。そういう1つ1つが凄く良くできている物語ですし、それを説教臭くなくいうのが『SUITS』の魅力で、楽しい会話のキャッチボールの中に、「仕事って何だ?」っていうテーマが根底にはちゃんと隠されているので、そこを大事にしていきたいと思います。
前回の時も甲斐と大輔の関係は素敵だなと思ったのですが、
今回こんなシーンに挑戦してみたいなという願望はありますか?
  • 中 島
    挑戦してみたいシーン……。
  • 織 田
    ベッドシーンか?(笑)。
  • 中 島
    いやいやいや(笑)。
  • 織 田
    この間、もうラブシーンは撮ったんですよ。蟹江ともやったし(笑)。
  • 中 島
    そうですね(笑)。蟹江とのラブシーン、と呼んでいるということで。
  • 織 田
    仕事に忙殺されている中で、家族の絆とか、厳しい中でも根底には愛情があっての厳しさだっていうのが『SUITS』だと思うので、たまにしか見せませんけど、そういう甲斐も出てきますから、見逃さずに見てもらいたいなと。この後どうなるんだろうね?
  • 中 島
    そうですね。
  • 織 田
    質問の答えになってなかった(笑)。
  • 中 島
    でも今回は、「あれ?  この人がこんな顔するんだ!?」っていう、珍しい顔とか表情とかも伺えたりすると思うので、だからこそグッとくる、その人の人間味だったり魅力だったりを、より感じてもらえるかなと思うんです。さっき「ラブシーン」って言葉が出てきましたけど、凄くもどかしい思いの中、「こうしなきゃいけないってわかっているんだけど、でも……」みたいな場面もあるんです。それもわかってる甲斐先生との親子っていうか、またちょっと特別な関係性の中で育まれる場面も……。
  • 織 田
    親子三代の話なんですよ、簡単に言っちゃえば。
  • 中 島
    そうですね。単純に言えばね。
  • 織 田
    ほぼ息子なんですよ。教えてる親父、みたいな。
  • 中 島
    そう、息子なんですよ。だから、そこが伝わるんじゃないかなと思うんですよ。そこが凄くいいシーンだったので。
  • 織 田
    そのくせに、でも打算的なところもあって、面白いよね。
  • 中 島
    そうですね。
  • 織 田
    僕らの関係はベタベタしない。元々ウイン‐ウインの関係だから成り立っているのかもしれない。
  • 中 島
    割とさっぱりというか。
  • 織 田
    だから、珍しいラブシーンだったね。いつも、ヒントを投げつけて終わりだもんな。頼ってきても、「自分で考えろ」ですから。ヒントは、出したりはするけど、出さないときもあるし(笑)。
  • 中 島
    そうですね。
中島さんは、織田さんのことを尊敬しているとおっしゃっていましたが、
具体的にはどういう部分ですか?
  • 中 島
    もう全部ですよ。ご自身の役柄のことだけじゃなくて、話全体のことを考えてくださって、この人のキャラがここで立つためにはどうすればいいか、セリフ一つ一つすべてこだわって、全体を見てくださっている。監督、プロデューサーくらいの勢いで背負ってくださっているし、逆に、織田さんからも「ここ、おもしろいアイデアない?」って求めていただけることもあるので、そこでいろいろ出していったり、生まれていくものだったり。「オレが主役だ、ついてこい!」だけじゃなくて、ほんとファミリーです。
  • 織 田
    「オレが主役だ、ついてこい!」って凄いな(笑)そんな昭和な俳優、見てないわ。
  • 中 島
    結構、そういうリーダーシップ取りがちな人っているじゃないですか。
  • 織 田
    いや~、オレは苦手だわ。
  • 中 島
    だから、凄く近寄りやすい、親しみのある存在でもあって。
  • 織 田
    そんなに年がら年中面倒見られないからね。
  • 中 島
    はい、それはもう。だから、それが凄く素敵な主役像だなって思っています。もう、語り出したらキリがないんですけれども、僕が一番近くで織田さんを見ているという自負があるので。座り方ひとつとっても、何か一番正解かっていうことに妥協せず、突き詰めて演じられる方なので、僕もそういう姿勢を見習いながら演じていきたいです。

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