2018.11.23 FRI. UPDATE

アメリカ版の原作はどこまでご覧になりましたか?
シーズン6までです。噂は以前から聞いていたのですが、見てみたら本当に面白くて単純にハマりました。ただ、半分はそういう風に視聴者として楽しみつつ、もう半分は、「これをどうやってドラマ化するんだろう?」「ジェシカ(ジーナ・トーレス)さんをどこまで真似て、どこまで違うように演じられるんだろう?」と思っていました。普段、映画やドラマを見るときとは違った感覚でしたね。ジェシカは一番読めない人なんですよ。だから「ジーナさんはどういう風に役を分析しているんだろう?」と考えると、とても難しいな、と思いました。
特にジェシカは意味深なセリフも多いですから。
しかも、あまり動きを出さないんですよね。常に、どちらにも行けるようなポジションにスッと立っているというか。
漫画や小説が原作となったドラマは多いですが、
もう映像として完成している作品、
しかもシーズンを重ねているような作品が元になるというのは、
役者さんにとっても大きなプレッシャーになるのでは?
そうですね。それぞれが向き合っていかなきゃいけない課題だったと思います。
チカというキャラクターを演じるにあたって意識されたことは?
私の中では、『SUITS/スーツ』をバディものだととらえています。そこにはいろいろなバディ関係があって、もちろん甲斐(織田裕二)と大輔(中島裕翔)のバディがあって、甲斐と蟹江(小手伸也)のバディがあって、甲斐と伽耶子(中村アン)のバディがあって、さらに大輔と真琴(新木優子)のバディもある……という中で、チカと甲斐のバディもあればチカと蟹江というバディもあり、さらにその3人のトライアングルもありますよね。例えば、チカが蟹江と何か共謀しているとき、そこはある意味、甲斐には入れない世界だったりもするわけです。そういう関係がそれぞれ上手いこと成立すれば面白い作品になるな、と思いました。なので、その人間関係のベクトルみたいなものをしっかりやりたいな、と。あとは……オリジナルのジェシカさんと違って身体も小さいですし(笑)、年齢的にも甲斐と近いので、上司と部下というより半分は同級生的な感覚もあり……という中で出せる面白さも見つけていきたいなと思いました。
チカは、大きなファームを取り仕切っている存在ですし、
あれだけアクの強いキャラクターをまとめている手腕から考えても、
女性の持つ強さみたいなものも感じます。
出そうと思っています、強く(笑)。難しいんですけどね。でも、もしかしたら意外と、一般的な弁護士事務所の代表のイメージをもう一歩乗り越えた、本当に実力がある人って実は軽やかだったりすることもあるんじゃないかと思ったんです。なので、多面的な、軽い柔らかみのようなところも所々で出せるんじゃないかと。衣装も、最初に衣装合わせをしたときは私ひとりだったんですけど、その後、キャストのみなさんとお会いして、ビジュアルのバランスをちょっと修正したりもしました。
ジェシカさんが「同じ服は二度と着ない」と言うシーンもありました。
そうそう(笑)。しかも、シリーズが進んでいくと、どんどん大胆になっていってましたし。「背中出てる!」みたいな(笑)。でも、見ていてもとても華やかですし、楽しいですよね。
織田裕二さん、中島裕翔さんと共演されてみての印象は?
私は、おふたりが撮影に入られてからひと月くらい後に参加したんです。だから、その間にコンビ感がしっかり出来上がっていて、羨ましくもあり……という感じでした。
放送前に『東京ラブストーリー』が再放送されて話題になりましたが、
感慨深いものもあったのでは?
どうかなぁ?  『東京ラブストーリー』の時も織田さんとふたりだけでやっていたわけではないので、スタッフも含めてチームとしての楽しかった思い出ではあるんですけど……。なので、そんなに感慨にふけるというわけではなかったのですが、セット撮影のときに、「織田さんの声のトーンが懐かしいかも……」と思って。声って変わらないので、「このトーンだなぁ」というのをふと思い出したりはしました。
若い世代には新鮮に映った、
という記事も出ました。
それは、坂元裕二さんが天才だということだと私は思います。彼のセリフ力は凄い、と常々思っているので。
中島さんに関してはいかがでしょうか?
ジャニーズのトップアイドル、というイメージより、もっと大人の男の人だなと思いました。懐が深い人だと思ったし、クレバーだし、余裕があるというか……。織田さんとも堂々と渡り合っていますからね。
中島さんは「めちゃくちゃ緊張している」
とおっしゃっていましたが……。
ウソ~(笑)。「ただの爽やかなイケメンではないな」みたいな感じですよ(笑)。すっかり打ち解けているように見えますから。
台本をお読みになって感じたことは?
アメリカと日本では、文化的にも司法制度的にも異なる部分がありますし、オリジナルはアメリカの中――特にニューヨークの中での“あるある”みたいな部分を結構色濃く出しているので、同じには出来ないんですよね。でも、台本を読むと、「なるほど、こういう風に組み込まれているんだな」と思う部分もあるので、あとはそこにどう色付けしていくか、ということですね。
そう考えると、困難なことに挑んでいる作品ですよね。
そう。凄く難しいと思います。コーヒーを飲むシーンひとつとっても、格好良く描くのは難しい。アメリカのエグゼクティブたちが、朝コーヒーを買って、しかもみんな自己流にアレンジしている。で、それを秘書がキッチリ把握していて持ってくる、ということでふたりの関係を表すような部分も、私たちはいろいろ見ているので知識としては知っていますけど、それをそのままやっても、日本では文化として根付いていないし、そういうところのさじ加減も難しいですよね。5話で、チカが甲斐と蟹江に歌舞伎のチケットを渡すシーンが日本版ならではのものかもしれないですけど、かといって「和」のものを持って来ればいいということではないし、「パーティーで私が着物を着ていたらオリジナリティを出すことになるだろうか」と考えましたから。やり過ぎてしまうと、逆に幼稚に映ることもあるので、背伸びしてやっているようにはしてはいけないな、と思いました。(セリフも)そもそも日本では、映画とか小説の引用で何かを表す、ということはあまりしないんですよね。外国の小説を読んでいると、古い詩の引用がよく出てきて、例えばそれが残されたメモにサラッと書いてあったりする。一度、凄く考えたことがあったんですけど、欧米の教育では「詩」をよく教えるんですね。そのフレーズを暗記したりして。じゃあ日本人は俳句なのか、それとも「雨ニモマケズ」とかなのか、って考えると、やっぱり文化の違いを感じます。根付いていないものを無理矢理、「カッコいいでしょ」というのは逆にカッコ悪いことになる危険性がある。
形だけを真似ても仕方ない、ということですね。
そういう意味では、それぞれの人間関係がちょっと成熟してきている……甲斐とチカ、甲斐と蟹江の関係が、全部言わずにどこかわかっている中での会話で成立したり、3手くらい先を読んでお互いに会話していたり……。答えはわかっているんですけど、質問形式で投げかけていたりするのも、「答えはわかっている、あなたが理由を語りたいのもわかっているけど……」みたいなことをやっているところがあるので、そこを上手くやれるといいのかな、と思うんです。織田さんとも話して、そういうことが出来そうなところには、ちょこちょこ散りばめようとはしています。
最後に、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
日々、プレッシャーを感じつつ、ベストなものを探しながら出来る限りのことにトライしています。最後まで応援していただけたら嬉しいです。

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