2022.11.7 Mon. Update
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植野元
安田  顕さん

今回の企画を聞いた時に最初に考えたことは?
今回は、先に台本を読ませていただきました。とても心を打たれる内容でした。読み進めながら、命に対する向き合い方という大切なことを教えてもらえるような本でした。それに対して僕も、真摯に向き合って取り組まねばならぬ作品だと感じました。
演じるという意味では、どのような役柄でも難しさは同じなのかもしれませんが、医療ドラマということで特に意識された点は?
普段の自分の中にはない世界の職業ですから、使い慣れない用語であったり、「一体、どういう作業をしているんだ?」と思うような所作であったりというのは、医療監修の先生方のご指導をいただきつつ、やっていかなければならないですよね。ただ、そういう難しさももちろんあると思うんですけど、もっと奥深いところにある部分……北海道には55万人の子どもたちがいるそうですけど、子どもたちには未来があり、それを奪う権利は誰にもないのですから、そういう子どもたちの命と向き合うと言うのはどういうことなのかを考えながら演じたいですね。
ICU<集中治療室>という言葉は知っていましたが、PICU<小児集中治療室>という言葉は恥ずかしながら知りませんでした。
僕も知らなかったのですが、小児集中治療室、必要ですよね。北海道は本当に広大で、僕自身も北海道出身ですけど、その広大な土地で生まれた自分たちが誇らしいと思うこともあるんです。人は生まれた場所で、育ちとか自分が持っているものは変わってくると思うんです。冬を乗り越える逞しさや、自然と向き合う生き方というようなことは、僕の世代、僕の親の世代、おじいちゃん・おばあちゃんの世代、それよりももっと前の開拓者のころから、脈々と受け継がれている何かがあるわけです。その一方で、広大であるからこそ、必要なものはやっぱり医療なんです。そして、一番大切なものは子どもである。我々には大切な子どもたちを育てるという義務がある。そのために『PICU』というものが必要なんだ、ということがこのドラマを見てくれたみなさんへ伝わればいいなと思っています。
安田さんが演じられる植野元というキャラクターには、モデルになっている方(※埼玉県立小児医療センター小児救命救急センター長・植田育也医師)がいるわけですが、そういう面で特に意識されたことはありますか?
演じるキャラクターがフィクションであれ、実際にいらっしゃる方であれ、いただいた役を演じるのは僕自身なわけですから、ひとりの登場人物としてその物語の中で生きていく以上、そこに差異はないと思うんです。とはいえ、実話であるとか、実在している方がモデルである場合は、普段とは違う緊張だったり、モチベーションだったりというのが出てくるのは確かです。
植田先生にお会いになったと伺いました。
はい。実際にPICUも見学させていただいたんですが、印象に残っているのは、「弱った子どもたちが目を開けたときにどういった環境が必要か、と考えたときにそれは落ち着いた環境なんじゃないかと。だから僕は図面から引きました」とおっしゃっていたことですね。これまでもPICUを作るにあたって、より穏やかな環境だったり、心休まる環境だったりを整えることが、そこに運ばれてくる子どもたちやご家族にとっても必要だと感じて、準備にも立ち会われていると伺ったとき、植田先生がどのように子どもたちに対して寄り添っていらっしゃるのかが、伝わってきた気がしました。
ただ治療すれば良いということではないんですね。
記事で読んだのですが、看取りの医療という考え方も持っていらっしゃるようです。助かった子どもはそれで良い。ただ、残念ながらこの場所で命を落としてしまった子たちもいる。そういう子どもたちに対する思いを人一倍持っている方だと思いました。だからこそ、子どもたちや家族の方々が見ている窓は、良いものにしようと考え、そこに関わる皆さんにとってベストな医療とはどういうものなのかを常に考えていらっしゃる方なのかなという気がしました。
安田さん演じる植野先生はとても穏やかで優しいキャラクターですね。吉沢亮さん演じる“しこちゃん先生”こと志子田武四郎への眼差しはいつも優しくて……。
とても優しい人物だと思います。そうでないと若手が育たないですし、育たなければPICUを続けることも出来なくなってしまいますから。頭ごなしに何かを言うのではなく、一緒のチームとしてやってくれるメンバーに対する感謝の気持ちをちゃんと思っている人物であるような気がします。それは、植野でもあるし、植田先生でもあると思いますね。取り敢えず、セリフは穏やかにしゃべろうと心がけています。セリフ量が多いものですから、「間に合わなかったらどうしよう?」と思っていますけど(笑)。
植野先生は、“しこちゃん先生”を導いていく役割ですが、ふたりの関係は今後、どう変わっていくのでしょうか?
植野には、しこちゃん先生に対して「自分も若い時はそうだった」という思いはあると思います。それ以上に、何かしら似た者同士な部分もあるんでしょうね。だから惹かれていく。それが何なのか、という部分を、探っていくところです。
吉沢さんの印象は?
これまでも共演させていただいていますが、僕がこれ以上何かを言う必要がないくらい素晴らしい俳優さんだと思います。
舞台が北海道ということで、何か特別な思いはありますか?
あります。そういう作品に呼んでもらったのはやっぱり嬉しかったです。自分の故郷を舞台にしたドラマを作ってくださるというのは誇らしいですし、そこに参加できるのはとても光栄なことだと思っています。

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